ドイツのラジオ放送の発祥地、Königs Wusterhausenの無線技術博物館

近頃、ベルリン周辺の都市の面白さがじわじわとわかって来た。ストーブ生産で栄えたフェルテン、光学産業の発祥地ラーテノウ、旧東ドイツ(DDR)の計画都市アイゼンヒュッテンシュタットなど、特色ある町が多い。たいして何もなさそうに見える場所でも、行ってみると実は歴史的に重要な町だったことが判明するのである。2018年のまにあっくドイツ観光第一回目はベルリン中心部から南西に35kmほどのところにあるケーニッヒ・ヴスターハウゼン(Königs Wusterhausen)へ行って来た。

 

 

町の中心部にお城がある以外はそれほど見栄えのしない町だが、ケーニッヒ・ヴスターハウゼンはドイツの歴史においてかなり重要な役割を果たしている。なぜかというと、ここは「無線の町」で、ドイツのラジオ放送はケーニッヒ・ヴスターハウゼンから始まったのだ。

ケーニッヒ・ヴスターハウゼンの丘で初めて無線通信実験が行われたのは1911年。デンマークの技術者、ヴォルデマール・ポールセン(Valdemar Poulsen)により開発されたポールセン・アーク送信機を使った送信実験だった。実験がうまく行ったことから1915年に送信所が建てられ、軍事通信が開始される。1919年からは帝国郵便の事業の一つとなり、本格的な設備が建設された。その後、いろいろあって(下で説明します)、現在は事業を行なっていないが、残った送信所の建物が無線技術博物館(Das Sender- und Funktechnikmuseum)として一般公開されている。

博物館入口。

メインの展示室では無線通信技術の発展とケーニッヒ・ヴスターハウゼンの無線事業の歴史に関する展示が見られる。

軍事通信で始まったケーニッヒ・ヴスターハウゼンの無線事業は1920年12月22日に歴史的な瞬間を迎える。ローレンツ社製のポールセン・アーク送信機を使い、ラジオ波に音楽の生演奏を乗せて放送したのである。郵便局の職員数名が集まり、ピアノといくつかの弦楽器、クラリネットを演奏し、歌を歌った。このクリスマスコンサートは英国、オランダ、ルクセンブルクや北欧などでも受信され、好評を得た。しかし、この時はまだドイツ国内では一般人がラジオを聴くことは法律で禁じられていたそうだ。

クリスマスコンサートの演奏が行われたスタジオのセット。

1923年にはラジオ放送が解禁となり、1926年からは毎週日曜日に音楽を放送するようになる。これはSonntagskonzerte(サンデーコンサート)として親しまれた。

当時、歌手は音響を良くするため、バスタブの前にマイクを置いて歌った。楽器奏者や歌手にとって、観客のいない状態で本番生演奏をするというのは慣れないことで、最初はなかなか難しかったらしい。

初期のラジオ受信機。

いくらか改良されたもの。

ケーニッヒ・ヴスターハウゼン送信局の設備は急速に拡張され、1926年には近隣のZessenにも新たな送信所が建設された。1929年にはドイツ発の短波放送が開始される。しかし、ナチスが政権を握ると、ラジオ放送は政治的プロパガンダの道具として利用された。

ナチス時代のラジオ受信機、Volksempfänger。「Volks(フォルクス)」というのは「国民の」という意味。

このようにドイツのラジオ放送の発祥地となったケーニッヒ・ヴスターハウゼンであるが、東ドイツのあらゆる産業と同じように、第二次世界大戦敗戦後、ロシア軍によって一旦解体され、旧東ドイツ時代に復活し、そしてドイツ再統一により廃業という運命を辿る。ああ、いつもいつもこのパターン、、、。

 

展示室は他にもいくつかあり、無線通信の様々な設備が見られる。

 

 

 

機械室にも入ってみよう。

機械室は現在はコンサートホールとして使われている。後ろや横の棚には古いラジオがずらり。

 

 

ケーニッヒ・ヴスターハウゼンの送信所のモデル。

全盛期には全部で22本あった鉄塔のほとんどは、すでに解体されてしまっている。

でも、一番高い243メートルの鉄塔、Mast 17は残されている。真下まで行ってみよう。

近くには古い給水塔も建っている。なかなかいい感じだ。

現在は給水塔としては使われておらず、記念物に指定されている。中はカフェ・ビアガーデンになっているようだ。では、コーヒーでも飲んで帰ろうかと思ったのだけれど、残念ながら現在、修理中でカフェはお休みだった。残念!

こちらのサイトで給水塔の内部の動画が見られる。

こんなわけで、ケーニッヒ・ヴスターハウゼンも興味深い町だということがわかり、とても満足。

 

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