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久しぶりに化石収集に行って来た。今回もこれまでにも何度か参加しているGeoInfortainmentを通じてこちらの日帰りエクスカーションに申し込んだ。今回の目的地は、ジュラ紀の化石が豊富に出ることで知られるドイツ中南部フランケン地方のグレーフェンベルク(Gräfenberg)だ。

バイロイトの南西50kmちょっと、ニュルンベルクの北東30kmちょっとの地点

グレーフェンベルク一帯は、中生代ジュラ紀(今から約1億9960万年前〜約1億4550万年前)には浅い海だった。その頃の気候は暖かく、空気中の酸素と二酸化炭素の濃度は現在の1.3倍から5倍もあったそうだ。そして位置的には現在よりもずっと南の、現在のサハラ砂漠あたりの緯度に位置していた。

今回、化石採集をしたグレーフェンベルクの石切場の地層はジュラ紀後期(マルム期)キンメリッジアン(Kimmeridgian)の地層である。ここでは特にアンモナイトの化石がザクザク出るという。

今回の化石採集の場。ここで採れる石灰岩はセメントの原料になる
手前の石の山の中から化石を探し出す

早速、化石探しを開始。本当にどこもかしこもアンモナイトだらけ。開始から数分以内にもう見つけた!

化石を含む石にノミを当て、ハンマーで軽く叩いて石を割り、化石を取り出す

アンモナイトの表面が青みがかっている。このようなアンモナイトはGrünlingと呼ばれ、グレーフェンベルクの地層に特徴的なものだそうだ。地層に含まれる海緑石(Glaucornite)によって表面が青緑になるという。

化石だらけとはいっても、多くは割れたり欠けたりしている。うんと小さいものは完全な形で地面に落ちていることが多いので、簡単に手で拾えるけれど、大きいものは石を割らないと取り出せない。石が硬いと割るのに力がいるし、うまくやらないとせっかくの化石まで一緒に割ってしまう。ここの地層からはリヤカーがないと運べないほど大きなアンモナイトが見つかることも少なくないそうだが、初心者の私たちには難しい。初心者とはいっても、一番最初に化石探しをしたときは化石の形跡がちょっとでもあったら嬉しくてなんでもかんでももって帰って来ていたが、今回はそれなりに綺麗な形のものを拾おうと試みた。

がんばった結果がこちら。

初回のゾルンホーフェンでのエクスカーション(以下の過去記事)の成果と比べると、少し進歩したかな。今見ると笑ってしまうが、ゾルンホーフェンで拾えたのはバリバリに割れたものばかり。

家に帰ってから、拾ったアンモナイト達の汚れを落としてきれいにした。

アンモナイトは種類がとてもたくさんあって、主催者からもらった画像リストと見比べたけれど、残念ながらどれがどの種類のものなのかはよくわからない。

一番気に入ったのはこれ!

それにしてもすごいよね。私たちよりも1億5000万年くらい前にこの地球に生きていた生き物たちとこうして対面するって。人間はたかが1年や2年の経験の差をもって先輩だ後輩だと言うけれど、このアンモナイトは1億5000万年もセンパイなのだよ。そう考えると、リスペクトの念が湧いて来て、なんだか拝みたくすらなって来る。

これは形は完全じゃないけど、結晶化しているのがよい

アンモナイト以外の化石もいくつか拾った。

大中小のアンモナイトや貝、べレムナイトが埋まった石塊
貝とか小さなハート型のウニ、腕足動物なども見つかった

エクスカーションは午前10時から午後4時まで。たっぷり6時間も化石探しができる。飽きたら途中で帰ってもOK。この日はカンカン照りだったので、さすがに6時間は長過ぎたので早めに切り上げたけれど、楽しかったなあ。化石採集は奥の深い趣味なので、やればやるほど楽しくなる。

今月末はシュヴェービッシェ・アルプ地方での週末エクスカーションに申し込んだ。その1日目の地層は待望のホルツマーデンのポシドニア頁岩なので、今からワクワク感が半端ない。去年、ホルツマーデンの化石博物館で素晴らしい標本を見てものすごく感動したから。自分ではたいしたものは見つけられないだろうとはわかっているけれど、ホルツマーデンで化石探しができるというだけで夢のようなのである。

前回のまにあっくドイツ観光では、フランクフルトのゼンケンベルク自然博物館でメッセル・ピット化石地域で発掘された化石の数々を堪能した。

化石って面白いよね!ということで、今回は自分で化石を探してみることにした。実は過去に2度、化石集めをしたことがあった。1度目はデンマーク、モン島の海岸でベレムナイトの化石を拾い集めた。2度目は南イングランドのジュラシック・コーストで化石探し。どちらも楽しかったが、ガイドツアーには参加せずただ個人的に探しただけだったので、今回はもうちょっと本格的にやってみたいなあと思い、夫と共に化石ハントの週末エクスカーションに申し込んだ。(エクスカーション提供は、Geo Infotainment

化石探しができる場所はドイツにたくさんある。今回参加したのは、北バイエルン地方アルトミュールタール(Altmühltal)での二日間のエクスカーションだ。アルトミュールタールは日本では「ゾルンホーフェン」という呼び方の方が知られているかもしれない。ゾルンホーフェンはアルトミュールタールにある小さな地域の名で、その一帯からはジュラ紀の化石を多く含む「ゾルンホーフェン石灰岩」が産出される

ゾルンホーフェン石灰岩は古代ローマの時代から浴場の壁や床材、彫刻や暮石用の石として使われていた。19世紀にはリトグラフ(石版印刷)に盛んに使われた。現在は主にタイルに加工され、建材として世界中へ輸出されている。こうしたことからアルトミュールタールには石灰岩の採石場が多くあり、絶好の化石ハンティングスポットが集中しているというわけ。

 

さて、エクスカーションの一日目はMörnsheimにある観光採石場 (Mörnsheimer- Besuchersteinbruch)へ連れて行ってもらった。入園料を払えば誰でも化石探しができる。見つけた化石は持ち帰りOK 。ただし、万一、恐竜を発見した場合には園外に持ち出しませんという書類にサインさせられた。(笑)

Mörnsheimの地層はジュラ紀後期のチトン期の地層で、石版石灰岩(Plattenkalk)が重なっている。

こういう板状の石灰岩を一枚一枚剥がして、間に化石が挟まっていないかどうかをチェックするのだ。

小型のハンマーで塊の側面を叩くと隙間ができるので、隙間に道具を差し込んでパカッと開く。

小さいアンモナイト!アンモナイトは中生代の示準化石なので、たくさん見つかるよ。

今度は大きいのが見つかった!

化石は特に地層中のSchiwammschichten (sponge beds)とRosa Schichten (pink beds)という部分に集中している。前者はカイメンの層ことで、貝やウニ、腕足類(Brachiopoda)や植物などの化石が多く埋まっている。後者の層は鉄分を多く含むため赤っぽい色をしていてわかりやすい。主にコッコリソフォリッドという原生生物の死骸が堆積してできたものだそうだ。この層からはアンモナイトや魚、爬虫類などの化石がよく見つかる。

でも、初心者がアンモナイト以外のものを見つけるのはなかなか難しい。一枚一枚割って中を見て、何もなくてガッカリの繰り返し。

あれっ、これは?海藻か何か?と思ってガイドさんに聞いてみたら、これはマンガンなどが結晶化したデンドライトと呼ばれるもので、よく化石と間違えられるが好物だとのこと。なあんだ。でも、綺麗だよね?

残念ながら一日目はそれほど収穫がなかったが、石版石灰岩を剥がすのは初めての体験だったので楽しかった。

売店にはいろんな化石が売っていた。

 

二日目は贅沢にも3箇所の採石場を回った。一日目と違い、観光採石場ではなく、産業用の採石場で、通常は一般人は入れない。Geo Infotainmentが入場許可を取ってくれていた。

すごく広い採石場。ここの岩はMörnsheimのような石版石灰岩ではなく、ブロック状の礁性石灰岩で、簡単に割ったり剥がしたりできない。大きなハンマーで塊を叩いて割らなければならないのだ。

このような力仕事は非力の私には到底無理、、、、。ということで、夫と分業することに。視力の良い私が岩の間を歩き回って化石の入っていそうな石を見つけ、「ここになんかあるよ!」と叫ぶと夫がハンマーを持ってきて石を割る。

一見、乾燥して見えるけれど、前日の夕方に雨が降ったので、地面はすごくぬかるんでいて大変だった。履いていた靴はドロドロに。化石探しはとても楽しいけれど、汚れたくない人、日焼けしたくない人にはおすすめしないわ。

ベレムナイトだ!でも、これを取り出すのは至難の技。

割れちゃったので、アンモナイトのパズルになった。

わざわざ石を割ったりしなくても拾える化石もある。ウニはいたるところに落ちていた。トゲのないタイプがほとんど。

2箇所目の写真を撮り忘れた。ここは3箇所目。

石の表面にベレムナイトやアンモナイトが乗っていて、簡単に剥がせる!

二日目は朝9時にホテルを出発して夕方の4時まで、みんなお昼ご飯も食べずに黙々と作業していた。私と夫は完全な初心者だったけど、他の参加者は化石ハンター歴が長い人も多かった。ガイドさんとその奥さんなどはGPSデータ付きの化石ガイドブックの情報を手がかりにヨーロッパ中、化石ハントをしているそうで、休暇は化石のあるところにしか行かないと言っていた。マニアックだなあ。

 

家に帰って戦利品を広げる。

アンモナイトはたくさん採れたけれど、アンモナイトは種類がたくさんあるから、どれが何なのかわからない。これらは採ってきたままの状態で、プロはこの後、プレパレーションという清掃・補修作業をするらしい。Geo Infotainmentではプレパレーションのワークショップにも参加できる。

これはなかなか良くない?アンモナイトの内部に結晶ができている。

ベレムナイトは取り出しにくいか、落ちているものはボキボキ折れてしまっているのがほとんどだった。バルト海海岸で拾う方が簡単だ。

でも、綺麗な断面を見つけた。

これはウニ達。ボタンみたいで可愛い。

これらは貝かと思ったら、腕足類だと他の参加者が教えてくれた。

 

初の本格的(?)化石ハントはこんな感じで、まあ、まずまずの成果だったのかな。今回エクスカーションに参加してみて、ガイドさんの説明を聞いたりアドバイスしてもらったのがとても良かったし、趣味の集まりというのも情報交換できて楽しいものだなと感じた。南ドイツにはアルトミュールタールだけでも化石探しのできる場所がたくさんあり、その他の地域も含めると相当多くのスポットがあるようだ。今回は大人向けのエクスカーションだったが、小学生の女の子も一人参加していた。ファミリー向けの化石スポットもあるので、子どもづれのお出かけにも良いと思う。もちろん、自分で化石を探さなくても、化石博物館もたくさんあって、見るだけでも楽しい。

 

化石に関してこの記事に書ききれなかったことをnoteで配信中のポッドキャスト「まにあっくドイツ観光裏話」でお話ししました。お聴きくださると嬉しいです。

まにあっくドイツ観光裏話4 化石の宝庫ドイツを満喫しよう!