投稿

一気に気温が上がってようやく本格的に春になった。お出かけシーズンの到来だ。とはいっても私は季節や天気に関係なくいつもウロウロしているのだけれど、、、、。

今回は私が住んでいる地域の観光スポットを紹介しよう。それは、Märkisches Ziegelmuseum Glindowというレンガ博物館。うちのすぐ近くなのに、行ったのは今回が初めて。「レンガ博物館なんて面白いの?」と思われそうだけれど、これがかなり面白かった。ホフマン窯の中を見学できるのだ。

まずはいつものようにロケーションから。

地図の通り、レンガ博物館はグリンドウ湖という湖に面したところにある。

Märkisches Ziegelmuseum Glindow

この塔が博物館。長い伝統を持つレンガ工場、Neuer Ziegelmanufaktur Geltowに隣接している。1890年に建てられたもので、当時工場で作られていたいろいろなレンガが使われている。博物館という名前がついてはいるが中は小さく、見るものはそれほど多くない。でも、ここで入館料を払うと係の人が隣の工場を案内してくれる。

Glindowのレンガ生産の歴史は古い。Glindowという地名はスラブ語に由来し、「粘土に富んだ土地」を意味するそうだ。古文書によると遅くとも15世紀にはレンガを生産していた。18世紀にはプロイセン王家が工場を所有し、ポツダムを中心にプロイセン時代の建築物の多くにGlindow産のレンガが使われた。

いろんなレンガ。色の違いは粘土に含まれる鉱物の種類と含有量による

実はこのレンガ工場は特別かつかなり重要な工場である。なんと300年前の製法を今も守り続けているドイツで唯一のレンガ工場なのだ。ドイツには教会や修道院、城など文化財に指定されている建物が多くあるが、老朽化したり戦争で破壊を受けたりしたため、修理・修復の必要なものが少なくない。しかし、現在ではそれらの建造物が建てられた頃とはレンガの製法が変わっており、当時と同じようなものを作ることができない。Glindowのこの工場ではそのような建物に特化して伝統の製法でレンガを作り続けている。そして、ドイツ全国だけでなく、なんとフランスやベルギー、スエーデンなど欧州のいろんな国からも注文を受け、カスタムメイドの高品質のレンガを生産しているんだって!

作られたレンガは船に乗せて運搬した

工場敷地

塔の中で展示を見ながら説明を聞いた後、工場に案内してもらった。ところが、工場の中は写真撮影厳禁と強く言われてしまった。残念〜。これは外から撮ったもので、真ん中に見えるのはホフマン窯というものである。こちらの記事にも書いたが、ホフマン窯とは1858年にフリードリッヒ・エドアルド・ホフマンが特許を取得したレンガの焼き窯で、独立したいくつもの区画が煙突を取り囲むように並ぶのでリングオーブンとも呼ばれている。この窯の発明以前は焼成ごとに窯が冷えるのを待っていたが、ホフマン窯では区画に順番に火を移すことで連続で焼成ができるようになった。大量生産を可能にしたこの画期的な技術は日本へも導入されている。(参考

ガイドツアーではレンガ生産過程の最初から最後までの設備を一通り見せてもらえる。これがすごく面白い。一番興奮したのはホフマン窯の中に入ったこと。写真を撮ることができなかったので説明のしようがないけれど、うちに遊びにいらっしゃる方は、よければこのミュージアムにご案内します。一見の価値がありますよ。

釉をかけたカラフルなレンガも

焼成温度は900〜1200℃。1300℃を超えるとレンガがこのように溶けてしまう

床材見本

円形、ひし形、六角形などいろんな形がある

素敵だな〜。でも、上述したようにこの工場は主に文化財用の高品質レンガに特化していて、一般人が自宅用に購入するには高価過ぎる。うちの最寄りの工場だからうちのテラスのレンガはここで注文するか、というわけには残念ながらいかないようだ。でも、地元の伝統ある産業について知るのは興味深い。ちなみにレンガ生産の最盛期にはGlindowにはなんと76もの窯があった。レンガ職人の仕事はハードで、冬場などは高温の窯とマイナス気温の外を出たり入ったりと体への負担が大きく、平均寿命は48歳くらいだったとのこと。

 

帰り道のロータリーに何やらレンガが積んである

 

寄付者の名前?

 

こちらも是非合わせてお読みください。

タイルとストーブ生産で栄えた町、Veltenのストーブ博物館