2020年春に庭にライブカメラ付きの巣箱を設置し、シジュウカラの営巣の様子を観察している。2020年と2021年の観察記録は過去記事(2020、2021)の通りだが、3年目の今年も4月に営巣が始まった。
巣箱で営巣するメスには名前を付けている。このメスは「マイちゃん(Meiseのマイちゃん)」と命名。長い枝で巣のフレームを作ろうとしているが、なかなかうまく置けないのか、枝をぶんぶん振り回している。
営巣を始めて1週間後。卵を産む準備が整ったのか、巣箱の中で寝始めた。
動物の毛など、フワフワの素材を次から次へと運んで来てクッションを整える。ネコの毛のような白い毛だけでなく、茶色や緑色など、いろんな色の素材があり。ブロンドの人毛らしき束も混じっていてびっくり。そういえばうちの裏の人、ときどき庭で散髪しているなあ。
パートナーのオスも、甲斐甲斐しく餌を運んで来る。マイちゃんは多産ではないようで、21日までに卵を2つ産んだのみ。でも、毎日マメに巣を整えていて順調な様子。と思っていたのだが、今日の昼間、ふとカメラを覗いたら、巣箱の中で異変が起きていた。なぜか巣の真ん中にクロジョウビタキが座っており、その背ろでマイちゃんがオロオロとしているのである。何事かとびっくりして自動録画をプレイバックしてみたところ、なんとマイちゃんがちょっと巣を離れた隙にクロジョウビタキが巣箱に入り込み、戻って来たマイちゃんと大バトルになっていたのだった!
ショッキングな映像なので短くカットしたが、実はこの激しいバトルは数十秒続き、クロジョウビタキはマイちゃんにコテンパンにやられてしまった。クロジョウビタキにしてみれば、良さそうな巣箱があったからちょっと入ってみただけだったかもしれない。しかし、マイちゃんにしてみれば、大事な卵がある巣に近寄られてはたまらない。必死に卵を守ろうとしたのだった。
マイちゃんは戦いには勝ったものの、ぐったりしたクロジョウビタキは卵の上にうずくまったまま動かない。そこをどいてくれないと卵を温められない。どうしたものかと困り果てるマイちゃん。その状態ですでに2時間が経過していた。映像を見ながら、夫と私も「どうする?」と言い合った。野生の生き物同士のことに人間はできるだけ介入すべきではないけれど、このままだと卵もダメになってしまう。ここは巣箱の大家の権限ということで、夫が介入することになった。(私は背が低くて巣箱に手が届かないので)
まず外から巣箱をノックして、鳥たちが自分から外に出て来るかやってみたが、出て来る様子がないのでドアを開けたら、マイちゃんは穴から外に飛び出した。クロジョウビタキはボロボロの姿だったが出血はしていなかったので、空いている別の巣箱に入れて、中で休んでもらうことに。そちらの巣箱にもカメラがついているので、しばらくカメラ越しに様子を見た。パートナーが巣箱の穴から中を覗き込んで呼びかけているのを見てせつなくなる。彼らもきっとこれから子育てをする予定だったのだ。数時間後、クロジョウビタキは亡くなった。自然界は厳しい、、、。
マイちゃんの方はどうなったかというと、人間が介入したことで抱卵をやめてしまうのではないかと心配したが、じきに巣箱に戻って来た。
何事もなかったかのように(内心では「あー、やばかったー」と思っているかもしれないが)、巣を整えている。2つの卵も無事だったみたい。よかった、よかった。
……とホッとしたものの、この2日後からマイちゃんは巣箱に戻らなくなってしまった。
何が原因なんだろうか?この巣箱は子育てに適していないと判断して放棄した?それとも、夫が介入して人間の匂いがついたので放棄したのかもしれない。あるいは、マイちゃん自身の身に何かが起こって巣箱に戻れなくなった可能性もある。
そんなわけで、今年のシジュウカラの育児観察はヒナが生まれる前に終了してしまってとても残念。
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後日談。
数日前、家の中にいたら、窓の外から「ヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ」というシジュウカラの幼鳥の声が賑やかに聞こえて来た。しばらく後に庭の餌台に取り付けたカメラを除いたら、なんと若いシジュウカラが5羽も餌を食べに来ている!
もうかなり大きくなっているので、巣立ってから数週間経過していそうだ。巣箱での抱卵を放棄したマイちゃんが別の場所で新たに営巣して産まれた子達なのか、それとも別のシジュウカラのメスの子達なのかはわからないけれど、こうして元気なシジュウカラの子どもたちの姿が見られて嬉しい。