首都サン・ホセを出発した私たちがまず向かったのは、アレナル火山国立公園 (Arenal Volcano National Park)だ。計画では、旅の最初の3日間はモンテヴェルデ熱帯霧林自然保護区(Monteverde Cloud Forest Nature Reserve)でバードウォッチングを楽しむはずだったのだが、こちらの記事に書いたようなハプニングの連続で、その3日間が丸ごと吹っ飛んでしまったのだ。ああ、無念。でも、嘆いていてもしかたがない。仕切り直していこう。

アレナル火山国立公園は、サン・ホセから北西におよそ90kmに位置する。アレナル火山とチャット火山という二つの火山を囲む、広さ1万2000haの自然保護区だ。

アレナル火山はコスタリカで最も活動の激しい火山で、1968年からずっと噴火活動が続いている。富士山にも似た円錐型が美しい山だけれど、てっぺんが雲に隠れていることが多く、上の写真のようにくっきりと全容が見るのはなかなか難しいらしい。私がボルカン・アレナル国立公園を訪れるのはこれが2度目で、写真は前回の滞在時にかつてのスミソニアン研究所の火山観測所を改装したホテル、Arenal Observatory Lodge & Trailのテラスから撮ったもの。このときは1週間滞在して、溶岩原のトレイルを歩いたり、ネイチャーガイドによるナイトハイクに参加したり、近郊のタバコン温泉に浸かったり、ジップラインで熱帯雨林を滑走したりした。ジップラインについては書きたいことがあるので、別の記事にまとめよう。

今回の滞在では、前回やり残した、フォルトゥーナ滝までのトレイル(La Fortuna Waterfall Hike)を歩いてみた。

ちなみにトレイルは有料で、チケットは1人20米ドル。トレイルの長さは片道1.2km。たいしたことがないなと思ったけれど、高さ70メートルの滝を見るためには、急な階段530段を降りなければならない。

途中で木の上にホエザルがいるのを発見。

 

途中のプラットフォームから見たフォルトゥーナ滝。遠くてスケール感がよくわからない。

 

間近まで行って見ると、なかなかの迫力。

滝壺で泳いでいる人たちもいたけれど、危ないので私はここでは泳がずに、

少し離れた場所で泳いだ。透明なブルーの水が綺麗で、大きな魚もたくさんいてテンションが上がる〜。

しばらく泳いだ後は、また530段の急な階段を登って帰らなければならない。そこそこキツい。でも、これはまだ序の口。観光地だけにこのトレイルはよく整備されていて歩きやすく、後から思えば、これからコスタリカ滞在中に歩くことになる数々のトレイルのための準備運動だった。

さらに今回は、アレナル火山の西側、人口湖アレナル湖の南端近くに位置する蝶園、 Butterfly Conservatoryへも行ってみた。

これが意外にとてもよかった!「きっと観光客目当ての施設で、たいしたことないんだろう」となんとなく思っていたが、とんでもない先入観だった。

ブルーモルフォ (Morpho)

メムノンフクロウチョウ (Caligo memnon)

オオカバマダラ (Danaus plexippus )

シロモンジャコウアゲハ (Parides iphidamas iphidamas)

ラウレンティアアメリカコムラサキ (Doxocopa laurentia cherubina)

キングスワローテイルバタフライ (Heraclides thoas)

コスタリカにはおよそ1500種の蝶がいるとされている。中央アメリカに生息するすべての蝶の90%がコスタリカで見られる。今回の滞在中には至るところでたくさんの蝶を見ることになったが、常にひらひら動き回っていて写真を撮ることはおろか、じっくり見るのすら難しかったので、この蝶園でいろんな種が見られたのはよかった。

蝶だけでなく、カエルもいろいろ飼育されている。

アカメアマガエル(Agalychnis callidryas)。コスタリカは中央に山脈が走っており、その西(太平洋側)と東(カリブ海側)とでアカメアマガエルのお腹の色が違う。これはカリブ海側のアカメアマガエル。

マダラヤドクガエル(Dendrobates auratus)

そして、さらに嬉しいことに、蝶園の敷地内にはトレイルもあり、熱帯雨林の中を歩くことができる。観光客にはそれほど存在を知られていないのか、私たちの他にはほとんど誰もいなかった。

なんて癒される空間だろう。素晴らしいー!

 

 

この記事の参考サイト:

Arenal Volcano National Park

Costa Rica Butteflies, motos, and the Blue Morpho Butterfly

 

セイシェルでは大部分の時間を海の上で過ごしていたが、クルーズの半ばにプララン島に上陸し、ヴァレ・ド・メ自然保護区(Vallée de Mai Nature Reserve)を訪れた。広さ20ヘクタール弱のヴァレ・ド・メ自然保護区は天然のヤシの森がほぼ手付かずの状態で残る、世界最大の種を持つヤシの木、オオミヤシが生息することで知られる。


オオミヤシは実の驚異的な大きさ(平均15-20kg)だけでなく、その魅惑的な形状のために多くの伝説を生んで来た摩訶不思議な植物だ。オオミヤシは、セイシェルの島々が発見されるよりも以前から、その存在が知られていた。ときおり、インドやアフリカ、モルディブの海岸に流れ着く魅惑的な木の実が一体どこからやって来るのか、そしてそれはどんな木の実なのか、長い間、誰も本当のことを知らないまま、観賞の対照として、また薬効や魔力があると信じられ、多くの国で珍重された。セイシェルでオオミヤシがフランス語で「海のヤシ」を意味するココデメール(Coco de Mer)の名で呼ばれるのは、かつてオオミヤシは海の底に生えているのだと信じられていたことに由来するのかもしれない。ヨーロッパへは交易の旅から戻ったポルトガル人によって初めてもたらされたそうだ。学名がLodoicea maldivicaなのは当時モルディブでよく見つかっていたからだそう。

しかし、オオミヤシの木が自然に生育するのは、世界中でプララン島とキューリーズ島だけだ。他の場所でもオオミヤシを見ることはできるけれど、それらはすべて人の手で植えられたもので、育てるのが非常に難しいので成功例は多くない。ちなみに、ベルリン植物園の温室にもオオミヤシがある。

真ん中に割れ目があるオオミヤシの実

これまでに見つかったうち最大のものは42kgだという。両手で抱えてもずっしりと重くて、長いこと持っていられない。真ん中に割れ目のあるハート形が女性のお尻を連想させることから、セイシェルでは豊穣のシンボルとされる。

オオミヤシは雄雌異株、つまり雄花と雌花をそれぞれ別々の個体につける。雄株の花は長い鞘状をしていて、これまたまるで男性の生殖器を思わせる形状なのだ。人々にあらぬ想像を掻き立てたのも無理もない。オオミヤシのオスとメスは嵐の夜に巨大な葉をワサワサと揺らしながら結合すると言い伝えられて来た。しかし、それを実際に目撃したものはいない。なぜなら、目撃した者は呪われ、死ぬ運命だからだ。

葉も異様に大きい。生育に必要な水分と養分をたっぷりと集めることができる。

森でよく見るヤモリはオオミヤシの受粉係

オオミヤシの雌株

オオミヤシの成長はゆっくりで、雌株が実をつけるようになるまでには25〜40年もかかる。

現在、4000本ほどのオオミヤシの木が存在するが、外来種の侵入や違法な採取、森林火災などで減少が危惧されており、厳重に保護されている。1983年にヴァレ・ド・メ自然保護区はUNESCO世界遺産に登録された。オオミヤシの実の中にはゼリー状の果肉があるが、食べるのは絶対禁止。1980年代まではアーユルヴェーダの薬の原料として年間100個のオオミヤシがインドに輸出されていたが、現在は停止しており、販売許可されるオオミヤシの数は限定されている。1つ数万円するそうだ。

オオミヤシはセイシェルの人々にとってナショナルアイデンティティだ。観光客向けのお土産もオオミヤシの実を象ったものがたくさん売られている。ペンダントなどもあって、ちょっと惹かれたけれど、オオミヤシのことを知らない人が見たら、その形から何か勘違いされるかもと思ったので、買うのはやめておいた。

森にはオオミヤシの他に5種のヤシが生育する。

ジャックフルーツもたわわになっている。

ヴァレ・ド・メはクロオウムの最後の生息地の一つでもある。鳴き声はしていたけど、残念ながら姿を見ることはできなかった。

 

この記事の参考文献及びウェブサイト:

ガイドブックシリーズ Richtig Reisen、”Seychellen” (2010) Dumont Verlag

Robert Hofrichter “Naturführer Seychellen: Juwelen im Indischen Ozean” (2011) Tecklenborg Verlag

Seychelles Island Foundationのウェブサイト