2月になって、少しづつ日が長くなっているのを感じる。とはいえ、まだまだ寒い日も多く、先週は地面にうっすらと雪が積もった。こちらの記事に書いたように、去年の5月からアニマルトラッキングを学び始めたのだが、雪が降るとトラッキングがとても楽しい。雪の上に残った動物の足跡は見つけやすいから。

キツネの足跡。

 

ノウサギ。

 

小さなハート型の可愛い足跡はノロジカのもの。

こちらもシカの足跡。副蹄がくっきりとついている。ダマジカかもしれない。

 

シカが倒木を超えていった跡が木の幹の表面についている。真ん中からやや左の手前にはキツネが前足を揃えて幹に乗せた跡。

 

これは大きさと形から、クロウタドリの足跡と思われる。

 

これはカラスの足跡っぽい。

大きさからして、この辺りにたくさんいるズキンカラスでしょう。

 

これもカラスだけど、さっきのより大きくて太い。雪が溶けている部分に降り立って、歩いていったのだろう。周りにはキツネの足跡もたくさん。

このサイズのカラスはワタリガラスしかいないよね?

 

確信ないけど、たぶんアオサギ。

 

尻尾を引きずって歩いたヌートリアの足跡。

 

最高に可愛いのはリスの足跡。倒木を端から端までぴょんぴょん飛んでいった跡がくっきり残っていた。

 

アニマルトラッキングのためのガイドブックはたくさん出ている。

Joscha Grolmsの”Tierspuren Europas”はヨーロッパのアニマルトラッカーのバイブル的な本で、とても詳しい。でも、情報量が膨大なので、初心者にはちょっと使いづらいかも。真ん中上の”Tierspuren und Fährten”はイラストのガイドブックで、使いやすい。すべてドイツ語なので用語をその都度調べる必要があるけど、野生動物の足跡やその他の痕跡が読めるようになって来ると、森の国ドイツでの散歩が何倍も楽しくなる。

 

 

バードウォッチングを初めて3年ちょっとが経過した。最初のうちはとにかく目についた野鳥の写真を撮っては種名を調べることに熱中していた。それから季節が何度か巡り、身近にいる種がだいたい把握できたら、今度はそれぞれの種について知りたくなった。庭にやって来る野鳥の種類も増えて、いろんな種に親しみを覚えるようになって来た。

バードウォッチャーとしてまだ日が浅いけど、それぞれの種についてこれまでに観察したことと本で読んだり詳しい人に聞いたことをまとめていこう。第一弾は「キツツキ」について。

キツツキとは名前の通り、木をつつく習性のある鳥を指す。でも、キツツキというのはキツツキ科に含まれる鳥のことで、「キツツキ」という種名の鳥がいるわけではない。日本語ではキツツキの仲間には「〜ゲラ」という種名が付けられている。ドイツ語ではキツツキの仲間は「ナニナニSpecht」と呼ばれる。

 

ドイツに生息するキツツキ科の鳥は以下の10種。

  • アカゲラ  (Buntspecht, Dendrocopos major)
  • ヒメアカゲラ (Mittelspecht,  Dendrocopos medius)
  • コアカゲラ (Kleinspecht, [Dryobates minor)
  • ヨーロッパアオゲラ (Grünspecht, Picus viridis)
  • クマゲラ (Schwarzspecht, Dryocopus martius)
  • オオアカゲラ (Weißrückenspecht, Dendrocopos leucotos)
  • ミユビゲラ (Dreizehenspecht, Picoides tridactylus)
  • ヤマゲラ (Grauspecht, Picus canus)
  • シリアンウッドペッカー? (Blutspecht, Dendrocopos syriacus)
  • アリスイ (Wendelhals, Jynx torquilla)

これまでに見ることができたのは、アカゲラ、コアカゲラ、ヨーロッパアオゲラ、クマゲラの4種である。この4種についてわかったことをまとめよう。

まず、ドイツで個体数が最も多いアカゲラについて。

アカゲラはその名の通り、お腹の下の方が赤い。下腹部が赤いのはオスメス共通だけれど、オスは後頭部も赤い。メスの頭は真っ黒である。この写真はうちの庭によく来るアカゲラで、見ての通り頭の後ろに赤い部分があるのでオスだとわかる。

アカゲラは環境適応力が高いため他のキツツキよりも生息範囲が広く、そこらじゅうにいると言っても言い過ぎではない。ドイツ人がSpechtと言われて真っ先に頭に思い浮かべるのはアカゲラだろう。ドイツでは散歩がポピュラーなアクティビティで、みんなよく散歩に行く。森の中を歩くと、アカゲラのドラミングの音がよく聞こえてくる。ドラララン、ドララランという明るく小刻みの音が特徴だ。

キツツキのオスは他の多くの鳥とは異なり、美しいさえずりではなく木をつつく音でメスにアピールする。ヴォーカリストというよりもドラマーだ。メロディよりもリズム感で勝負、というとなんとなくカッコいいけど、せっかく演奏してもメスに注目(注耳?)してもらえなければしょうがない。だから、乾燥した、よく響く木を選んでつつくのだ。キツツキの求愛期間は長い。これを書いている現在は2月の初めだが、近所の森にはすでにアカゲラのドラミングの音が響き渡っている。なかなかパートナーを見つけられないオスは延々とドラミングを続けることになる。喉が枯れるほど歌うのとクチバシを木に叩きつけまくるのとでは、どっちがより疲れるだろうかなどと無意味なことをつい、考えてしまう。また、アカゲラのドラミングはパートナー探しだけでなく、ナワバリを主張するためでもある。

うまくパートナーのメスが見つかったら、今度は子育ての準備開始である。ここでも木をつついて開けて巣穴を作る。アカゲラの場合、巣穴の使い回しはあまりせず、ほぼ毎年、新しい巣穴を作るそうだ。2週間ほどかけて完成した巣穴にはコケなどのクッション材を置いたりはせず、メスは木屑の上に白くて光沢のある卵を4つから7つほど産む。抱卵はオスメスが交代でおこなうが、夜間はパパの担当だそうだ。卵は10日ほどで孵化し、それからヒナが巣立つまでの3週間ほどの間、親鳥はせっせと巣に餌を運ぶ。

 

巣立ちが近づくと、幼鳥は餌をもらうときに巣穴から顔を出すようになる。これがなんともかわいくてたまらない。バルト海沿岸の森で親に餌をもらうアカゲラの幼鳥を見かけたときには感激して、ずっと愛でていたかった。でも、幼鳥にとって、不用意に巣から顔を出すのはキケンだ。捕食者があたりに潜んでいるかもしれない。だから、親が戻って来るまで幼鳥は巣穴の中で待っている。戻って来た親鳥は近くの木から「餌持って来たよー」と鳴き声で知らせ、それを合図に顔を出した幼鳥は素早く餌を受け取って、またサッと穴の中に戻る。巣立ち間近な幼鳥はそれを頻繁に繰り返していた。

この親鳥も頭の後ろが赤いから、パパだろう。幼鳥は性別に関係なく頭のてっぺんが赤い。巣立った後も、しばらくの間は親に餌を食べさせてもらったり、餌の見つけ方を教えてもらったりする。去年の春、うちの庭の餌場には親鳥が子連れでやって来た。「ここのファットボールは安心して食べていいからね」と親に言われたのだろうか。そのうち子どもは単独でも食べに来るようになった。しかし、餌場の管理人(つまり、私たち)が無害でも、油断は禁物だ。周辺の森にはオオタカ(Habicht)やハイタカ(Sperber)など、キツツキを捕食する猛禽類がいる。まだ世の中に慣れていない幼鳥は特に狙われやすい。キツツキは警戒心が強いのか、頻繁に上方を確認する習性がある。餌場で餌を食べるときにも約1秒ごとに顔を上げてキョロキョロとあたりを確認しているのを、いつもキツツキらしい仕草だなあと思いながら観察している。

 

気をつけていてもやられるときはやられる。これは近所の森で見た惨事の跡。羽の大きさから見て、捕食されたのは大人のアカゲラのようだ。

ところで、森の中を歩いていると、ときどき、木の股や裂け目に松ぼっくりが挟まっていることがある。

これはドイツ語ではSpechtschmiede(「キツツキの鍛冶場」、の意味)と呼ばれるものだ。アカゲラは松ぼっくりをこのように固定してから、鱗片の裏側にある種子を取り出して食べるのだ。鍛冶場の下の地面には種子を取り出した後の松ぼっくりがたくさん落ちている。

こういうのを目にするたびに、生き物の行動って面白いなあとつくづく思う。

さて、身近なアカゲラの観察も楽しいが、それ以外のキツツキを見る機会はぐっと減るので、見つけるととても嬉しくなる。私が特に好きなのはクマゲラ。ドイツに生息するキツツキのうちで最も大きく、体長50cmほどもある。

光沢のある黒い体に赤い帽子がお洒落。ちなみに、赤い部分が頭全体を覆っているのはオスで、メスは後頭部に小さな赤い部分があるだけだ。

クマゲラは、自然破壊や捕獲によって19世紀半ばにはドイツ北部からほぼ消滅していた。保護の甲斐あって最近はそれほど珍しくなくなっている。クマゲラはオオアリ(Rossameisen)やキクイムシ(Borkenkäfer)の幼虫を好み、巣はブナの木に作ることが多い。クマゲラの作る巣穴は他のキツツキのものよりもずっと大きく、楕円形をしていることも多い。ドラミングの音はアカゲラのそれよりも低く、ドラミングの長さも長い。クマゲラは喉が大きく、ヒナに与える餌を親鳥が喉に溜めておいて、吐き戻して与えることができるので、広範囲に餌を集めることができるそうだ。

これは多分、クマゲラが穴を開けた木

キツツキの作る樹洞は当のキツツキだけでなく、他のいろいろな生き物が利用する。クマゲラの穴は大きいので、 主にヒメモリバト(Hohltaube) やキンメフクロウ(Raufußkauz)、ホオジロガモ(Schellente)がよく使うらしい。意外なことにゴジュウカラも利用者だという。あんなに小さいゴジュウカラには入り口が大き過ぎて捕食者が入り放題になりキケンでは?と思ったら、ゴジュウカラは穴の入り口に泥を塗って固め、ジャストサイズにするらしい。ゴジュウカラを意味するドイツ語”Kleiber”は「貼る」という意味の動詞”kleben”が語源だと知った。

こちらはヨーロッパアオゲラのメス。オスは目の下が赤いので、写真を撮れば見分けることができるけれど、遠目に見分けるのはまず無理だろう。アリが主食のアオゲラは伝統的な果樹など開けた場所を好む。キツツキだけど地面にいることが多いのだ。長くてベタベタした舌でアリを捕まえて食べ、ヒナに与える餌もほぼアリのみ。ドラミングはもっぱらパートナーとのコミュニケーションの目的のみで、ナワバリの主張のためにはしない。アオゲラはドラミングをあまりしない代わりによく鳴く。目立たない体の色をしているけれど、キョキョキョキョという特徴的な鳴き声なので、姿が見えなくても声でああ、近くにいるなとわかるようになった。アオゲラは巣穴を作ることに関してはあまり熱心ではなく、同じ穴を何年も使うそうだ。

 

そしてもう1種。雪の降る日に森の中で一度だけ目にした小さなキツツキはコアカゲラだった。体重はわずか2ogほど。キツツキというよりも小鳥という感じ。葉や枝についた虫を食べる。

 

ドイツに生息するキツツキはすべての種が保護の対象だ。森にキツツキがたくさんいれば、リス、マツテン、ヤマネ、コウモリなど哺乳類からハチやアリなどの昆虫まで、キツツキが枯れ木に開けた穴を利用する生き物の密度が高くなり、またそれらの捕食者も増える。キツツキは森の生物多様性に不可欠な存在なのだ。

これから春にかけて野鳥の活動が活発になる。今年もキツツキの親子を見ることができるだろうか。まだ目にしたことのない光景が観察できたらいいな。

 

参考文献:

Volker Zahner, Robert Wimmer (2021) “Spechte & Co. Sympathische Hüter heimischer Wälder”

 

野生動物が好きなので、数年前から地元ブランデンブルク州の自然保護団体がおこなっているヨーロッパヤマネコやビーバーのモニタリングプロジェクトにボランティア調査員として参加している。モニタリングとは、対象となる動物の痕跡を探して記録する活動で、集まったデータは保護活動やその基盤となる科学研究に使われる。

野生動物の痕跡を探す活動を「アニマルトラッキング(ドイツ語ではSpurenlesen)」と呼ぶ。痕跡というのは、動物足跡はもちろん、たとえばビーバーであれば齧られた木やビーバーダム、巣など、そこに動物がいたことを示すものすべてを含む。自然の中を散歩しながら生き物の痕跡を見つけるのはとても楽しいので、本格的に学びたいなあと思い、去年からWildnisschule Höher Flämingという自然教育の学校でアニマルトラッキングを習っている。

詳しくはこちらの記事に書いた通り。

トラッキングを学ぶのに大事なことは、とにかく野外を歩いて自然を観察すること。参考書も読むけれど、家の中にいては学べない。日々観察して気づいたことや写真を今年からTumblrに記録することにした。TumblrはSNSなので趣味や興味が似ている人をフォローしたりできるが、投稿すると、こんなふうにブログが自動生成されるのがとても便利!

 

ブログのテーマはいろいろなものから選べ、カスタマイズもできるようだ。自分のための記録が目的なので凝ったことをするつもりはなく、見やすく、後から検索しやすければいいかな。アーカイブも月毎及び投稿の種類ごとに自動生成されるようだ。

そもそも自分はインターネットを使って何がしたいのか?と自問してみると、「自分の興味を広げたり深めたりしたい」ということに尽きる。自分一人で黙々と興味のある情報を集めるのもいいけれど、同じような興味を持つ人の発信を参考にしたいし、自分も気づいたことをネット上にアップしておけばどこかの誰かの参考に多少なりともなるかもしれないと思って書き留めているのである。SNSのフォロワーを増やして影響力を持ちたいとか、注目されたいというわけではないし、仕事の一環としてやっているわけでもない。Tumblr は適度にマイナーなSNSで人目を気にせず好きなことを投稿でき、世間話よりも趣味について話したい自分のニーズに合っている気がする。投稿を後から編集できるのも嬉しい。

ということで、今後は旅の記録は引き続きこのChikaTravelブログに、日々の自然観察については姉妹ブログ「チカの自然観察日記」に書いていくことにしよう。

Tumblrのアカウント名は、chikawildlife。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の旅のテーマは主に「海の生き物」だったけれど、陸の生き物にも大いに興味がある。陸にいた時間は短かったけれど、それでもいくらかの生き物を目にすることができた。その中で特筆すべきはセイシェルの固有種、アルダブラゾウガメ とセーシェルオオコウモリだろう

まず、アルダブラゾウガメは、主にセイシェルの外諸島に属するアルダブラ環礁に生息する陸亀で、今回回った内諸島ではキューリーズ島、クザン島、ラ・ディーグ島、グラン・スール島で多く見た。

アルダブラゾウガメ

オスは最大で体重400kgにもなる巨大なリクガメである。英語ではAldabra Giant tortoiseと呼ばれる。かつて、インド洋には何種ものゾウガメが生息していたが、環境破壊や捕獲によって19世紀半ばに絶滅してしまい、唯一、生き延びたのがアルダブラゾウガメだとされていた。ところが、近年、「セーシェルセマルゾウガメ」と「セーシェルヒラセゾウガメ」という2つの亜種が、世界の動物園などで生き延びていることが確認されているという。これについて調べていたら、たまたま名古屋市の東山動植物園のウェブサイトがヒットした。同園の「アルダブラゾウガメ舎」で飼育されているアルダブラゾウガメのうち、1匹のオスの甲羅の形が他の個体と違うことに気づいた飼育員さんが不思議に思って調べてみたところ、「アシュワル」という名のその個体はセーシェルヒラセゾウガメである可能性が極めて高いということがわかったそうだ。なんて興味深い。(詳細は以下のリンクの記事の通り)

東山動植物園オフィシャルブログ 「アルダブラゾウガメのアシュワルは他と少し違うかも?」

ゾウガメは地球全体では他にガラパゴスゾウガメ(Testudo elephantopus)がいる。アルダブラゾウガメとガラパゴスゾウガメは見た目はよく似ているけれど、近縁ではない。アルダブラゾウガメはガラパゴスゾウガメよりも大きく、頭が小さく、頭部分のウロコが大きく、鼻の穴が縦長で、鼻から水を飲むことができるという特徴があるらしい。

言われてみれば、細長い鼻の穴。

現在、およそ10万匹の野生のアルダブラゾウガメの98 %が生息するアルダブラ環礁は、1982年からUNESCO世界自然遺産に登録されている。

基本的に草食で、草や葉っぱを食べる。

ちっちゃーい

内諸島のキューリーズ島にはアルダブラゾウガメの保育園があり、ゾウガメの赤ちゃんを観察することができる。

キューリーズ島の水場の周りにはアルダブラゾウガメのものと思われる足跡がついていた。趣味でアニマルトラッキングをやっている私は動物の足跡に興味があるのだ。

当たり前だけど、私の住んでいるドイツではこんな足跡を目にしたことはない。象って、こんな足跡なのね。

アルダブラゾウガメの足。なるほどね〜。

キュリーズ島のマングローブの林を流れる小川の横にもゾウガメの足跡が続いていた。

と思ったら、いた!

野生のゾウガメがたくさん見られてとても嬉しい。

さて、セーシェルオオコウモリについても書いておこう。ヨットクルーズの前日にマエー島のホテルに1泊したときのこと。首都ヴィクトリアから山を少し登ったところにあるホテルで、とても眺めが良かった。

マエー島の山の景色

木々を飛び回る野鳥をテラスからなんとなく眺めていたら、猛禽類のような大型の鳥が行ったり来たりしているのが目についた。でもどこか飛び方が普通ではない。一体なんだろうと目を凝らすと、それは鳥ではなく、大きなコウモリだった。

広げた翼は1メートルにも及ぶ。

オレンジ色のふさふさした頭のコウモリは、セーシェルオオコウモリ。英語名はSeychelles Fruit Bat。その名の通り、果物を食べる草食性のコウモリである。

果物を食べるセーシェルオオコウモリ

哺乳類コウモリ目には大きく分けて、ココウモリとオオコウモリがいる。セーシェルオオコウモリはもちろん、オオコウモリに属する。ココウモリとオオコウモリの違いは単に大きさだけではない。目がよく見えないため超音波で獲物の距離や方角を測る能力を発達させたココウモリと違って、オオコウモリは視覚を使って行動するので、目が大きく、その代わり耳はあまり発達していない。顔はキツネっぽく、英語ではFlying foxとも呼ばれる(ちなみに、ドイツ語ではFlughundと呼ばれ、これは「飛ぶ犬」という意味である)。これまでにオーストラリアやスリランカでもオオコウモリを見たことがあったけれど、いつ見ても、その大きさに興奮してしまう。

じゃれ合うセーシェルオオコウモリ。鳴き声は結構うるさい。

セーシェルオオコウモリは今回訪れたほぼすべての島でたくさん見ることができた。かつて無人島だったセイシェルの島々に人間がやって来たことで、島に固有の生き物の多くが絶滅してしまったが、セーシェルオオコウモリにとっては人間の到来はむしろ幸運だったようだ。なぜかというと、いろんな果物の木が島にもたらされ、農園が作られたから。逆に、農園の経営者にとっては果物を食べてしまう邪魔者である。オオコウモリの肉は美味しいらしく、捕まえて食べてしまうこともあるそうだ。

その土地に固有の生き物を見るのは旅の大きな楽しみだ。今回も珍しい生き物が見られて嬉しい。

 

 

セイシェルの主な産業は観光業と漁業である。同時に、セイシェルは自然保護に大きな力を入れている国でもある。美しい自然以外の観光名所はないので、自然環境を維持できなければ観光業も成り立たなくなってしまう。また、観光マーケティングでは「楽園」とか「秘境」「手付かずの自然」といった言葉が安易に使われがちだけれど、過去に深刻な環境破壊を経験して来たことではセイシェルも例外ではない。

「楽園」と形容されるセイシェルの自然だけど、、、

セイシェルという国の歴史は浅い。もともと人が住んでいなかった島々が1770年代から フランス、そして英国の植民地となり、シナモンやココナツ、タバコなどの大規模なプランテーション栽培がおこなわれた。20世紀初頭までにプランテーションはセイシェルの全域に広がり、自然林は広範囲に失われてしまった。人間が入って来たことで島に外来生物が導入され)、食糧として生き物が捕獲された。また、セイシェルのサンゴ礁には「グアノ」と呼ばれる海鳥の糞などが堆積し化石化したものが多くあったが、肥料になることから大々的に採集された。そして、20世紀後半に農薬が導入されたことによって、環境破壊は複合的な問題となった。

 

しかし、1970年代から80年代にかけて、プランテーション経営の採算が取れなくなったため、セイシェルは観光業へと大きく舵を取る。その結果、セイシェルは小さな国でありながら、環境の再生においては世界のトップレベルにあるという。現地の環境保護団体、NatureSeychelles と土地の所有者、政府が一丸となって、ラットの除去、島の再森林化、固有種の動物の再導入などに取り組み、成果を上げているのだ。絶滅の危機に瀕した種を保護することでツーリズムのポテンシャルが高まり、それがホテル所有者の環境保護努力を後押しすることになる。セイシェルはオーバーツーリズムにならないよう、観光客の数も制限している。

クザン島(Cousin Island)へは現地の自然保護センターの有料ツアーに参加することでしか上陸できない。保護センターからヨットまでセンターの人が小型ボートで送迎してくれる。

 

数々の取り組みのなかで、クザン島の野鳥保護活動はセイシェルの自然保護の看板ともいうべき大きな成功例である。1969年、絶滅の危機に瀕していたセイシェルの固有種セイシェルウグイス(Seychelles warbler) の最後の29羽を保護するため、野鳥保護団体International Counsil of Bird Conservation(現  BirdLife International)がクザン島を購入した。これがセイシェル初の生態系再生プロジェクトのきっかけとなった。自然保護の成功例を見に、クザン島へ行ってみよう!

ガイドさんと一緒に森へ入る。ガイドツアーは英語またはフランス語。

かつて、クザン島ではココナツの集約栽培が行われていたため、自然再生はココナツが無制限に増殖しないように木から落ちたココナツを拾い集めることから始まったという。努力の結果、海鳥が種を運んで来た固有種が再び繁殖するようになった。1975年、セイシェル政府は島を特殊保護区に指定した。1990年代初頭までには残っていたココナツ農園も概ね除去され、現在、島の植生は、その大部分が固有種となっている。幸い、クザン島にはラットが全く入って来なかったので、駆除のためにネコが導入されることもなかった。

 

野鳥の島だと聞いてはいたが、ガイドさんと一緒に歩いてみて、島の野鳥密度には驚くばかりである。狭い森の至るところに野鳥がいるのだ。

クロアジサシ(Brown Noddy, Anous stolidus)またはインドヒメクロアジサシ (Lesser Noddy, Anous tenuirostris)。島には両方いるが、色が微妙に違うだけなので、見分けがつかなかった。

シロアジサシ (White Tern, Gygis alba)。セイシェル空港のロゴにもなっているエレガントな鳥。巣は作らず、木の股に卵を1つだけ直接産む。

木の上で親を待つアジサシの幼鳥

セイシェルの野鳥保護のきっかけとなったセイシェルウグイス(Seychelles warbler, Acrocephalus sechellensis)。個体識別のための足輪をしている。

クザン島の鳥たちはまったく人を恐れる様子がない。ガイドさんにあらかじめ「鳥にストレスを与えないため、1メートル以内には近づかないでください」と言われたが、「え?たったの1メートル?」と耳を疑った。近過ぎでは?なるべく近づかず、望遠レンズで写真を撮った。

シラオネッタイチョウ (White-tailed tropicbird, Phaethon lepturus)。地面に卵を生む。長い尾をひらひらさせて飛ぶ姿はとても優雅だ。

シラオネッタイチョウの幼鳥

少し大きくなった子ども

セーシェルシキチョウ (Seychelles magpie robin, Copsychus sechellarum)。かつてはセイシェルの花崗岩の島にはどこにでもいたが、地面でしか食べない鳥なので、ネコが入って来てから激減してしまった。クザン島に再導入され、繁殖している。

森の中で見た石壁。ココナツのプランテーション栽培をしていた頃の名残で、リクガメによってココヤシが傷つけられるのを防ぐために作られたものだそう。リクガメについては改めて記事にする。

クザン島は野鳥だけでなく、トカゲやヤモリの生息密度も世界トップクラスだ。

Seychelles Skink(Seychellen-Mabuye)という、セイシェルでよく見るトカゲ

こちらはより珍しいWright´s skink(Trachylepis wrightii)。一回り大きい。ラットのいない4つの島にしか生息していない。

ヒルヤモリの1種。似ているのが複数いるので学名はわからない。

セイシェルブロンズゲッコー(Seychelles Bronze-eye gecko, Ailuronyx seychellensis)

さらに、クザン島はインド洋における最も重要なタイマイ(hawksbill turtles, Eretmochelys imbricata)の繁殖地の一つだ。年間30-100個体のタイマイが浜辺に産卵にやって来る。世界の他の場所ではタイマイは夜間に産卵するが、クザン島では昼間も産卵の様子が見られるという。

島ではタイマイの産卵のモニタリングがおこなわれている。

クザン島では生態系保全のブートキャンプをやっていて、世界から参加者を募っている。1回につき6名限定の小規模なキャンプだ。こんな場所で野鳥やタイマイのモニタリングができたら楽しいだろうなあ。
クザン島には是非行きたいと思っていたので、今回、行くことができて本当によかった。

 

この記事の参考文献・サイト:
Adrian Sekret & Ian Bullock  “Birds of Seychelles” (2001) Princeton University Press
Robert Hofrichter “Naturführer Seychellen: Juwelen im Indischen Ozean” (2011) Tecklenborg Verlag

いつからか、野生の生き物を観察することが大きな趣味の一つとなっている。自宅の庭や周辺でバードウォッチングをするほか、アニマルトラッキングや野生動物のモニタリングボランティアなどもしている。しかし、私の住んでいるドイツは国の北側にしか海がなく、北海やバルト海は夏でも水が冷たくて泳ぐのにはあまり適していない。だから、トロピカルな海に飢えているところがある。

そんなわけで、セイシェルではシュノーケルで海の生き物を見ることをとても楽しみにしていた。10日間のクルーズ中、毎日数時間シュノーケルをすることができたので、とても満足だ。セイシェルの内部諸島の多くはこちらの記事に書いたように、花崗岩の島だが、その周囲をサンゴ礁が囲んでいるので、シュノーケルスポットは豊富にある。たくさんのシュノーケルスポットに連れて行ってもらったうち、特に気に入った場所は、サン・ピエール島の周辺。その他、マエー島近くのサンタンヌ海洋公園(Sainte Anne Marine National Park)のサンタンヌ島とモワイヨンヌ島の間のコーラルリーフもとても良い。

サン•ピエール島。この島は花崗岩ではなく、海の生物の死骸が堆積してできた石灰岩でできた小さな無人島だ。

たとえばどんな生き物が見られるのか、GoProで撮った動画をいくつか貼っておこう。

イカの群れ。

シマハギ、パウダーブルーサージョンフィッシュ、ニシキブダイなど。

サンゴ礁は世界の海全体の1%に満たないが、海の生き物の25%がサンゴ礁に生息するとされている。セイシェルのサンゴ礁はおよそ300種のサンゴが形成し、魚は400種ほどだという。ただ、セイシェルの海でもやはり気候変動によるサンゴの白化現象はかなり進んでいるように見えた。サンゴには浅い海に分布する造礁サンゴと深い海に分布する宝石サンゴがある。シュノーケルで見えるのは造礁サンゴで、本来は褐色系の地味な色をしているものが多い。それは、サンゴは共生する褐虫藻が光合成によって作る栄養分に依存して生きているから。ところが、海水の温度が上がると褐虫藻が抜け出し、サンゴが餓死してしまう。つまり、白くなったサンゴは死んでいる。それでもかなりいろいろな魚を見ることができたけれど、本当に残念で、心配だ。

たぶん、ニセタカサゴの群れ。

スズメダイやマツカサの群れ。

ツバメウオ、スナブノーズポンパノなど。

マダラトビエイ。

ナンヨウブダイかな。

過去にシュノーケルをしたときには水中動画や写真は撮らなかったので、水中にいるときには感動しても、時間が経つと何を見たのだったかすぐに忘れてしまった。今回はこうして記録できたので、図鑑を見ながら種の同定を試みている。まったく知識がないので、図鑑を見てもあまりに種類が多くて、最初のうちはなかなか同じ魚を見つけられなかったけれど、しばらく取り組んでいたら少しづつ大まかなグループが把握できるようになって来てとても楽しい。また、水の中で見ているときには1つの種だと思っていた魚が実は微妙に異なる3〜4種だということがわかったりして面白い。地味な魚は同定が難しいけれど、ブダイやベラなどの派手なものは調べやすい。でも、ブダイだけでもすごくたくさんの種類があるんだなと驚く。未知の世界に足を踏み入れてしまった。

サザナミヤッコの幼魚

これは何ブダイ?

ミヤコテングハギ

ニシキブダイ

チェッカーボードベラ

トゲチョウチョウウオ、キガシラチョウチョウウオ

これまでに見分けることができたのは50種ちょっと。写真を撮れなかったものや、不鮮明でよくわからないものも多いので、ざっと70種くらいは見ることができたかな。

シュノーケルは本当に楽しい。お魚の種類を調べるのも楽しい。これで、ハマることがまた一つ増えてしまったのだった。

 

この記事の参考文献:

Mason-Parker & Walton “Underwater Guide to Seychelles” (2020) John Beaufoy Publishing Limited.

山城秀之 「サンゴ 知られざる世界」(2016) 成山堂書店

2019年の秋に庭でバードウォッチングを始めて、約2年半が経過した。最初は庭のテラスに餌台を設置してひまわりの種やピーナツなどを置き、家の中から窓越しに餌台を訪れる野鳥を眺めて楽しむことから始めたが、ただそれだけのことでも生活の楽しみが激増した。

過去記事: ドイツのネイチャーツーリズム 2 自宅の周りでバードウォッチング

さらに餌台に野生カメラを取り付けたら、それまで窓越しに観察していた以上にたくさんの種がやって来ることがわかり、ますます楽しくなった。

過去記事: 野鳥カメラで餌台に訪れる野鳥を観察する

これまでの2年半に自宅の庭で確認できた野鳥は37種。まさかこんなにいろいろな野鳥が来るとは想像もしていなかった。ちょっとした思いつきで始めたバードウォッチングだったのに!

野鳥たちは餌を食べに来るだけでなく、庭で子育てもする。一昨年はシジュウカラ、昨年はシジュウカラに加えクロウタドリの営巣と子育ての様子をカメラを通して観察することができた。今年は同じ巣箱でシジュウカラが営巣を始めたものの、こちらの記事に書いたような事情で中断してしまったのが残念である。

しかし、今年は今年でとても面白い展開になった。というのは、去年までは餌台は冬の間だけ設置し春には片付けていたのを、今年は出したままにしておいたのだ。そうしたら素晴らしいことが起こった。冬の間は個別に餌を食べに来ていた野鳥たちが、それぞれパートナーを連れてやって来た。餌台に入れる小鳥たちだけでなく、モリバト、カササギ、カケスなどの大きな鳥もみんなカップルで現れ、小鳥たちが芝生に落とした餌をついばんでいた。そして、しばらくすると庭やその周囲でそれぞれのカップルが巣作りを始め、やがて生まれたヒナ達に食べさせる餌をせっせと取りに来る姿が見られるようになった。クチバシに詰め込めるだけの餌を詰め込んで巣へ戻っていく親鳥たち。がんばってるなあ。

幼虫をくわえたウソのオス

それから数週間が経過し、ヒナ達が続々と巣立ち始めた。

巣立ったばかりのアオガラの兄弟

カササギに巣を狙われ、父鳥の必死の防衛の末、無事に巣立ったクロジョウビタキのヒナ

オークの木の巣から生まれたゴジュウカラのヒナ

 

巣立ったばかりのヒナを連れて、いろんな種の親鳥達が餌場に集まり、口移しでせっせと子どもに食べさせる。なんとも微笑ましい光景にほのぼの。

親からエサをもらうアオガラの子ども

しばらくの間はそれぞれ親に食べさせてもらっていたが、だんだん大きくなって飛ぶのも上手になると、子ども達だけで餌場にやって来るように。

イエスズメの子どもたち

 

シメの子ども

 

シジュウカラの子ども

 

カケスの子どもはギリギリ餌台に入れる大きさ

 

兄弟でやって来たアカゲラの子ども

最も数が多いのがイエスズメの子どもたちで、10羽以上いる。アオガラとシジュウカラはそれぞれ5羽ほど、アカゲラも2羽生まれた。そんなわけで今年の春は大繁殖と言っていいレベルで野鳥の子どもたちが庭を飛び回っている。

今後はどうなっていくのかな。

 

 

 

今年(2022)の5月から10月までの半年間、アニマルトラッキングを学ぶことにした。

アニマルトラッキングは野生動物の痕跡を観察する活動で、ドイツ語ではSpurenlesenという。野生動物の痕跡には地面に残った足跡や巣、何かを食べた形跡、糞などいろいろなものがある。野生動物の痕跡を観察することで、その環境にはどんな野生動物が生息し、どのように行動しているのかを知ることができる。

身近な環境を散歩していると野生動物の痕跡らしきものを見かけることがよくあって、「何の動物の痕跡だろう?」といつも気になるのだ。特に2020年からヨーロッパヤマネコのモニタリングに参加し、そして今年からはビーバーのモニタリングも始めたことで、ますますいろいろな痕跡を目にするようになった。

凍った湖面に降り積もった雪の上についた動物の足跡

アナグマの巣穴?

面白いものを見つけるととりあえず写真に撮ってネットや手持ちの図鑑などで調べるのだが、よくわからないことが多い。知りたいなあ、見分けられるようになったら楽しいだろうなあと思っていたら、たまたま近場にアニマルトラッキングを教える学校があることに気づいた。これは良いチャンス!とすぐに申し込んだ。

私が参加することになった講座はWildnisschule Hoher Flamingという野外スキルを学べる学校の成人向け講座で、月1度、週末に4日間のキャンプをしながらアニマルトラッキングを学ぶ。申し込むまでまったく知らなかったのだが、米国ではブッシュクラフトと呼ばれるサバイバルスキルの一環としてアニマルトラッキングが捉えらることがあり、トラッキングスクールがたくさん存在するらしい。私が申し込んだ学校は米国の先住民からスキルを学んだ伝説的なアニマルトラッカー、Tom Brown Jr.や、その弟子のJon Youngのメソッドに基づいているという。

これまでに全部で5まであるモジュールの1と2を終了した。参加してみて、その濃さにびっくり。学校の敷地に各自テントを張り、朝7時頃から夜10時過ぎまで野外活動。野鳥の囀りに耳を傾けたり、動物の足跡や巣穴を観察したり、野生動物の骨格や歩き方を学ぶ。ハードな運動をするわけではないけれど、一日中外を歩き回って、同時に頭もフル回転させなければならないのでかなり疲れる。でも、講座の他の参加者たちとは妙に波長が合って、すぐに仲良くなることができた。少人数の講座で、年齢は20代の若者から60歳くらいまで様々だけど、好奇心が強いという点ではみんな一緒なのだ。

アニマルトラッキングで大切なことは野生動物の痕跡を見たらすぐに種を特定することではなく、まずは五感を使ってじっくりと観察し、なぜそこにその痕跡があるのか、その痕跡を残した生き物はどう行動したのかを考えることだそうだ。種名の特定は深い観察の後から自然について来るもので、すぐに種を特定してそれで満足してしまうよりも、問いを丁寧に解いていく方が野生動物をよく知ることに繋がるという。なるほどなあ。そして、観察の際にはスケッチをすることがとても重要だと教わった。講座の提供者は先生ではなくメンターと呼ぶ。答えを識者に教えてもらうのではなく、各自が自らの観察眼を養うことが講座の目的だからだそうだ。

モジュールの間はとにかく忙しくて写真を撮っている暇はほとんどない。最初のエクスカーションでクロヅルの足跡をかろうじて撮った。

 

想像していたよりもハードコアな内容に圧倒され続けているけれど、ほんの少し学んだだけでも景色が変わって見える。身の回りの景色の解像度が上がって、ずっとそこに合ったけれど今まで認識していなかったもう一つの世界を肌で感じられるようになるというか、不思議な感覚である。この地球環境を私たち人間は他の生き物たちと共有しているのだということを急に強く意識するようになった。夜、テントの中に横たわって、響き渡るナイチンゲールの歌を聴きながら眠りに落ちていくのは特別な感覚だ。

アニマルトラッキングを学ぶことにしたのには、身近な自然、とくに野生動物について知りたいということの他に、これといったスキルを持たないので何か一つくらいスキルを獲得したい、というのもあった。どうせなら、あまり多くの人がやらないことをやってみたい。歳と共に体力が衰えるのが心配で、なるべく野外で体を動かしたいというのもある。自然観察にはほとんどお金がかからないし、体を動かすのと同時に知的好奇心も満たされるのが良い。そして、トラッキングスキルを身につけることで今後の旅行もより充実したものになりそうな予感がする。

 

 

2020年春に庭にライブカメラ付きの巣箱を設置し、シジュウカラの営巣の様子を観察している。2020年と2021年の観察記録は過去記事(20202021)の通りだが、3年目の今年も4月に営巣が始まった。

 

巣箱で営巣するメスには名前を付けている。このメスは「マイちゃん(Meiseのマイちゃん)」と命名。長い枝で巣のフレームを作ろうとしているが、なかなかうまく置けないのか、枝をぶんぶん振り回している。

 

営巣を始めて1週間後。卵を産む準備が整ったのか、巣箱の中で寝始めた。

 

動物の毛など、フワフワの素材を次から次へと運んで来てクッションを整える。ネコの毛のような白い毛だけでなく、茶色や緑色など、いろんな色の素材があり。ブロンドの人毛らしき束も混じっていてびっくり。そういえばうちの裏の人、ときどき庭で散髪しているなあ。

 

パートナーのオスも、甲斐甲斐しく餌を運んで来る。マイちゃんは多産ではないようで、21日までに卵を2つ産んだのみ。でも、毎日マメに巣を整えていて順調な様子。と思っていたのだが、今日の昼間、ふとカメラを覗いたら、巣箱の中で異変が起きていた。なぜか巣の真ん中にクロジョウビタキが座っており、その背ろでマイちゃんがオロオロとしているのである。何事かとびっくりして自動録画をプレイバックしてみたところ、なんとマイちゃんがちょっと巣を離れた隙にクロジョウビタキが巣箱に入り込み、戻って来たマイちゃんと大バトルになっていたのだった!

ショッキングな映像なので短くカットしたが、実はこの激しいバトルは数十秒続き、クロジョウビタキはマイちゃんにコテンパンにやられてしまった。クロジョウビタキにしてみれば、良さそうな巣箱があったからちょっと入ってみただけだったかもしれない。しかし、マイちゃんにしてみれば、大事な卵がある巣に近寄られてはたまらない。必死に卵を守ろうとしたのだった。

マイちゃんは戦いには勝ったものの、ぐったりしたクロジョウビタキは卵の上にうずくまったまま動かない。そこをどいてくれないと卵を温められない。どうしたものかと困り果てるマイちゃん。その状態ですでに2時間が経過していた。映像を見ながら、夫と私も「どうする?」と言い合った。野生の生き物同士のことに人間はできるだけ介入すべきではないけれど、このままだと卵もダメになってしまう。ここは巣箱の大家の権限ということで、夫が介入することになった。(私は背が低くて巣箱に手が届かないので)

まず外から巣箱をノックして、鳥たちが自分から外に出て来るかやってみたが、出て来る様子がないのでドアを開けたら、マイちゃんは穴から外に飛び出した。クロジョウビタキはボロボロの姿だったが出血はしていなかったので、空いている別の巣箱に入れて、中で休んでもらうことに。そちらの巣箱にもカメラがついているので、しばらくカメラ越しに様子を見た。パートナーが巣箱の穴から中を覗き込んで呼びかけているのを見てせつなくなる。彼らもきっとこれから子育てをする予定だったのだ。数時間後、クロジョウビタキは亡くなった。自然界は厳しい、、、。

マイちゃんの方はどうなったかというと、人間が介入したことで抱卵をやめてしまうのではないかと心配したが、じきに巣箱に戻って来た。

何事もなかったかのように(内心では「あー、やばかったー」と思っているかもしれないが)、巣を整えている。2つの卵も無事だったみたい。よかった、よかった。

……とホッとしたものの、この2日後からマイちゃんは巣箱に戻らなくなってしまった。

何が原因なんだろうか?この巣箱は子育てに適していないと判断して放棄した?それとも、夫が介入して人間の匂いがついたので放棄したのかもしれない。あるいは、マイちゃん自身の身に何かが起こって巣箱に戻れなくなった可能性もある。

そんなわけで、今年のシジュウカラの育児観察はヒナが生まれる前に終了してしまってとても残念。

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後日談。

数日前、家の中にいたら、窓の外から「ヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ」というシジュウカラの幼鳥の声が賑やかに聞こえて来た。しばらく後に庭の餌台に取り付けたカメラを除いたら、なんと若いシジュウカラが5羽も餌を食べに来ている!

もうかなり大きくなっているので、巣立ってから数週間経過していそうだ。巣箱での抱卵を放棄したマイちゃんが別の場所で新たに営巣して産まれた子達なのか、それとも別のシジュウカラのメスの子達なのかはわからないけれど、こうして元気なシジュウカラの子どもたちの姿が見られて嬉しい。

 

 

 

 

この数年、身近な環境で野生動物を観察するのに夢中になっている。あくまで趣味の範疇なのだけれど、多少なりとも自然保護に貢献できたらいいなと思い、2020年の冬から自然保護団体BUNDによるヨーロッパヤマネコのモニタリングプロジェクトに参加している(実践レポはこちら)。今年の冬で3年目になり、なかなか楽しいので、別の野生動物モニタリングもやってみたいなあと思っていたところ、ブランデンブルク州ヌーテ・ニープリッツ自然公園でのビーバーモニタリングに参加しないかと声をかけられた。二つ返事で参加を決めた。我が家の近くの湖畔や水路沿いにビーバーに齧られた木や巣らしきものをよく見かけるので、以前からビーバーが気になっていたのだ。

ビーバーに齧られた木

ビーバーはかつては北半球の水域のほとんどに生息していた。毛皮や肉、肛門の香嚢から分泌される海狸香を求めて乱獲され、およそ100年前にヨーロッパ全域でほぼ絶滅したが、保護・再導入活動の甲斐あってかなり増え、現在はドイツ全国に4万個体を超えるビーバーが生息している。

ビーバーにはアメリカビーバー(学名:Castor canadensis)とヨーロッパビーバー(学名: Castor fiber)の2種類がいる。ヨーロッパビーバーの大きさは体重およそ30kg、体長1.35mほど。ヨーロッパにおける最大の齧歯類である。

ビーバーモニタリングの目的はビーバーの縄張りを確認し、ビーバーが生息できる環境を保護することにある。なぜなら、ビーバーは個体数が少なくても存在することによって生態系に大きな影響を及ぼす「キーストーン種」だからだ。ビーバーは水域にダムを作ることで知られるが、ビーバーダムによってできる湿地は多くの生物種の生息地となり、生物多様性を高める。また、ビーバーダムは洪水や火災リスクを下げ、有害物質を含む堆積物を堰き止めることで水を浄化する役割も持つ。だから、ビーバーを保護することはビーバーそのものだけでなく、生態系全体を守ることに繋がる。

モニタリングプロジェクトには誰でも参加することができる具体的にどんなことをするかというと、担当地域の水域に沿って歩き、ビーバーの痕跡(齧られた木、ダム、巣など)を探す。

ビーバーに齧られた木

ビーバーに齧られた木は目立つので、見つけるのは難しくない。ただし、古い噛み跡はビーバーが現在そこに生息していることを示すものではないので、齧られてから時間が経っていない場所を見つけることが肝心である。ビーバーは草食で夏に食べる植物の種類は数百種に及ぶが、冬場には主にポプラやヤナギの木の皮を食べる。

噛み跡は簡単に見つかるが、ビーバーの巣(ドイツ語でBiberburgという)を見つけるのは、慣れないと少し難しい。

湖の縁の斜面を利用して巣ができていることが多い。枝が重なり合い、間に泥などが詰まって盛り上がっている。巣の出入り口は水中にあるので見えない。ビーバーは水中では耳や鼻の穴を塞ぐことができ、口の中も歯の後ろを塞げるので、水中でも木を齧ることができる。この巣は長年手入れがされていないようなので、今は使われていないと思われる。

こちらは新しい枝が載っているので、使用中かな。

水場から数メートル離れたところに巣があることもあって、よく見ないと見落としがちである。ビーバーの縄張りは水路1〜3kmほどで、縄張りの中に複数の巣があることもある。ビーバーは一夫一婦制でパートナーを変えない。巣で生活するのは夫婦とその年に生まれた子ども、そして前の年に生まれた子どもである。子どもは2年たつと独立して新しい縄張りを作る。

こちらはビーバーのダム。わかりやすい。

別のダム。

ダムで明らかに水位が変わっているのがわかる。

小さなダム。縄張りの中に複数の小さなダムを作ることもある。

ビーバーは主に夜行性で、人の気配を感じると隠れるので、ビーバーそのものは滅多に目にすることができない。でも、水場を歩けばビーバーがいる痕跡をたくさん見つけることができるので楽しい。モニタリングは繁殖期が始まる前の冬におこなうので、冬場の良い運動にもなって一石二鳥なのだ。

これは私ではなく、プロジェクトメンバーのある女性

でも、モニタリング作業は実はそんなに楽ではないのだ。ビーバーがいるのは人がほとんど来ないような場所なので、遊歩道になっていたりはしない。うっそうと生い茂る葦やいばらの茂みをかき分けて進まなければならないし、基本的に湿地なので靴がびしょびしょになることも。冬だから虫に刺されないで済むのはいいけれど。

ビーバーの痕跡を見つけたらスマホで写真を撮り、GPSで位置を確認してプロジェクトのデータベースにコメントとともにアップロードする。集まったデータはマッピングされ、縄張りが確認された場所は保全の対象になるというわけだ。

 

(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

パナマ旅行の最後の数日はパナマシティに滞在し、そこから日帰りできる場所を楽しむことにした私たち。パナマシティは近代的な高層ビルの立ち並ぶ大都市だが、都会は他の国にもいくらでもあるので、パナマではできるだけ熱帯の自然を楽しみたかった。

パナマは首都周辺も自然がとても豊かだ。パナマ運河地帯は広範囲が森林に覆われていて、いくつもの国立公園や自然保護区がある。他の場所では絶滅の危機にある希少な動植物が多く生息しているそうだ。運河の右岸に細長く広がるソベラニア国立公園(Soberania National Park)はパナマシティからわずか25km。森林をハイキングしたり、チャグレス川をボートでクルーズしながら動植物を観察できるという。

行ってみて、その素晴らしさに驚いた。特に野鳥の多さは感動的で、小一時間ほどのクルーズの間にすごくたくさんの水鳥を見ることができた。ソベラニア国立公園で生息が確認されている鳥類は525種にも及ぶそうだ。ボートの上から撮影したのでピンボケの写真ばかりになってしまったが、たとえば、

ルーフェセント・タイガー・フェロン(Rufescent tiger heron)

アメリカササゴイ(Green Heron)

ヒメアカクロサギ(Little Blue Heron)の幼鳥?

キバラオオタイランチョウ(Great kiskadee)

アメリカムラサキバン(Purple Gallinule)

アカハシリュウキュウガモ(Black-bellied Whistling-Duck)

アメリカヘビウ(Anhinga)

アメリカレンカク(Northern Jacana)の幼鳥?

痛感したことは、熱帯に行くときにはその土地の野生動物や植物が載っているフィールドガイドを持って行った方が絶対にいいということだ。見たことのない生き物ばかりなので、フィールドガイドがないと「綺麗な鳥」「変わった動物」というので終わってしまう。それでも楽しいことには変わりないけど、なんという種類なのかわかった方がより楽しさが増すと思うのだ。私はパナマえはそれ以前のコスタ・リカ旅行の際に現地で買ったフィールドガイドを持って行った。生態系に共通項が多いので、まあまあ役に立った(画像の下の種名は今、この記事をリライトする際に調べて書いた。間違いがあったら是非コメントで教えてください)。実はこのときまで野鳥にはそれほど興味がなかったのだが、ソベラニア国立公園でたくさんの野鳥を見てすっかり魅了され、今ではすっかりバードウォッチャーになっている。

ボートから水鳥や亀、魚を眺めて楽しんでいると、そのうちにボートの運転手が「サルを見せてやる」と言って小島の岸辺にボートを寄せた。「バナナ持ってる?」と聞かれたので「ない」と答えると、「ちぇっ。ないのか」と言いながらも島の木々の上の方に向かって奇声を発してサルを呼んでくれた。餌をもらえると期待したノドジロオマキザルが数匹、木を降りて来た。枝伝いにボートに近づいて来る。

こういう展開を想定していなかったので、餌を用意していなかった。でも、野生のサルに餌付けをするのはどうなのかなあ。持ち合わせがなくてかえってよかったのかも。しばらくすると他の観光客らを乗せたボートが近づいて来て、彼らのうちの一人がバナナを岸に向かって投げたので、サルたちはそちらへ行ってしまった。

さて、私たちはそろそろ戻ろうかと思ったときだった。「見ろ!イグアナだ!」。夫の声に岸辺を見ると、そこには立派なイグアナがいた。すると、ややっ?2ひきのノドジロオマキザルがイグアナに近づいて行って威嚇を始めた。

そしてこのような結末に。予期せず面白い場面に遭遇し、興奮に沸く私たちであった。

 

ボートクルーズの後は公園内の森を散策。

「公園」とはいってもジャングルだからね。靴はすぐにドロドロになってしまう。汚れるのが好きでない人にはおすすめしない。毎日のようにこんなことをしているので、どんどん汚くなって行く私たち。

首都から30分の地点でこんな豊かな自然体験ができるなんて、パナマは信じられない国だ。そして、私たちはすでに2週間以上に渡って野外活動を楽しんでいる。こんな贅沢な機会を与えてくれるパナマの自然環境に感謝するのみである。

 

 

(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

滞在している場所からそう遠くないところにコウモリの棲む洞窟があることがわかったので、行ってみた。

コロン島は長さ13.6km、幅7.2kmの小さな島だけれど、道路が穴だらけで穴をよけながら運転しなければならない。また、コロン島に限ったことではないものの、犬がとても多く、必ずしも野良犬ではないが基本的に放し飼いになっていて路上をたくさんの犬が歩いている。そんなわけで、ちょっと移動するにも結構時間がかかる。

洞窟の看板があった。自然保護のために一人1ドルの入場料を払ってくださいと書いてあるが、受付は見当たらない。道路を挟んで向かいの民家からおばさんが出て来て、「洞窟?一人1ドルね」と言うのでお金を払った。「懐中電灯、ある?なければ貸すけど」「持って来ました」「中に入ってぐるっと回ると出口があるからね」。

洞窟は鍾乳洞で、下には水が流れている。

中から外を見るとこんな感じ。最初は岩づたいに進もうとしたが、ぬるぬるしていてとても滑りやすく、危険だ。諦めて水の中を歩くことにした。靴が濡れてしまうがしょうがない。でも、水は綺麗で不快さはなかった。

洞窟に入って数メートルのところで立ち止まり、頭上を見ると、

いるいる!小さめの黒いコウモリだ。

コウモリは窪んだ場所に集まっているようだ。この写真は現像の際に明るくしたので、肉眼ではこんなにはっきりは見えない。黒い塊があるなというくらいである。

野生のコウモリは何度も見たことがあるが、洞窟の中で見たのはこれが初めて。私たちの住むドイツにもコウモリがたくさん生息していて、南ドイツのカルスト地形の洞窟など、コウモリの寝ぐらになっている場所が少なくないが、コウモリの冬眠を邪魔しないように冬眠の時期には洞窟が立ち入り禁止になることが多い。コロン島のこの洞窟は年中入れるようで、熱帯だからコウモリは冬眠をしないのだろうか?ときどきコウモリがバサバサバサと飛んで、顔の横をかすめていく。寝ているところを私たちが起こしてしまったかな。

洞窟の中は蛇行しているが全長は100メートルちょっとだろうか。入り口と出口のあるトンネルのような洞窟だった。出口の少し手前に来ると、おびただしい数のコウモリがぶら下がっていた!

これはすごい、、、、。野生のコウモリを間近で数匹見られるだけでも十分だと思っていたので、ここまでの数は期待していなかった。

あとで調べたところによると、コロン島には13種ほどのコウモリが生息している。ところで、コウモリは狂犬病ウィルスに感染している場合があるので注意が必要だ。自然の中を歩くことが好きな私は破傷風などのワクチン接種を定期的に受けていて、初めての国へ行く際には、追加で受けるべきワクチンがないか確認している。

洞窟の周辺には動物に齧られた植物の実がたくさんあった。何の植物かわからないけど、食べかすが洞窟の中にたくさん落ちていたので、きっとコウモリが洞窟に入る前に食べたのだろう。

ミステリアスな洞窟を通り抜ける体験は面白かった。しかし、マジカルなパナマの自然体験はこの後もまだまだ続くのである。

 

 

(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

コロン島に来るにあたってとても楽しみにしていることがあった。それは森の中のツリーハウス風の小屋に宿泊すること。旅行計画を立てているときに偶然ネットで見つけ、良さそうだったので予約しておいた。コロン島の宿は港のあるボカスタウンに集中しているが、私たちが滞在するのはタウンから少し離れたブラフビーチ付近にある。

壁のない開放的な造りで窓にはガラスもなく、網戸だけなので自然をダイレクトに感じることができそうだ。

ドイツでは聞いたことのない種類の鳥たちがさえずり、虫が鳴いている。海が近いので、潮騒も聞こえる。静寂とはとても言えない賑やかな環境だ。でも、自然の音に包まれながら眠り、朝はホエザルの吠え声で目が覚めた。気分は最高。

高い場所なので鳥たちが飛び回る様子がよく見える。キッチンから尾の黄色い大きな鳥が数羽、忙しそうに何かをしているのが見えた。「見ろ、紐みたいなのを引っ張ってるよ!」と夫が興奮して叫ぶ。

網戸越しなので画像が不鮮明だけれど、黒い大きめの鳥が植物の繊維を引っ張り出して、その繊維で何かを編んでいるようなのだ。ツリーハウスだからいきものが観察できるかな?と期待はしていたが、初っ端からこのようなものを間近に見られるとは。

何の鳥だろう?生き物の種類を特定できるように家から中米用フィールドガイドを持参していた。それによると、どうやらmontezuma oropendoraという鳥だとわかった。日本語名は「オオツリスドリ」。植物の繊維で袋を編んで巣にするらしい。残念ながら葉っぱが邪魔して巣がよく見えない。ネット検索したら、ナショナルジオグラフィックに連載記事を書いていらっしゃる昆虫研究者、西田賢司さんのオオツリスドリに関する記事に巣の画像が載っている。編んだ袋は枝にぶら下げてヒナを入れておくようだ。私なんて、手が2つ指が10本あっても編み物は得意じゃないのに、クチバシだけで編むなんてオオツリスドリは器用だなあ。

他にもいろんな鳥が飛んでいる。「ティリッタラ、ティリッタラ、ティリッタラ」と可愛い声でリズミカルに歌い続ける鳥もいる。何の鳥だかわからないけど、すごく気になる。(残念ながら、最後までその鳥の名はわからなかった)

ツリーハウスから鳥を観察したり、外に出て周辺の植物や虫を眺めるだけでもかなり楽しくてそれだけでも私は満足だ。

でも、家族がじっとしているのは退屈だ、何かしようとうるさい。近くにコウモリの洞窟があるというので行って見ることにする。それについては次の記事で。

 

 

(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

前回に引き続き、私たちがパナマで訪れた野生動物保護施設について。娘がネットで調べたところ、ボケテタウン近隣のVolcánというところにもRaquel´s Arkという保護センターがあることがわかった。ボケテタウンからは車で片道1時間半くらいかかるが、娘が是非とも行きたいと言うので出かけることにした。(結果は行って良かったと思える場所だった)

マップを見ながらたどり着いた場所はこんな場所。左側に民家があり、横の塀にRaquel´s Arkとスプレー書きしてある。ここが動物保護施設?どうやって入ったらいいのかわからない。民家の窓から中を覗くと人がいたので、窓ガラスを叩いた。すると中にいた女性が、ドアは開いているから入って来いと合図するので、建物横のドアを押して敷地内に入った。

ドアを開けるとこのような池があり、その奥がテラスになっている。テラスに向かって進むと、家の中から6歳くらいの女の子が出て来た。スペイン語で「私たちは動物が見たい」と伝えると、女の子は頷いて家の中に入って行った。

そして、まもなく大きなぬいぐるみを抱えて再び出て来た。「はい、どうぞ」とぬいぐるみをこちらに渡そうとする。いや、見たいのはぬいぐるみじゃなくて、、、、と思ったら、えっ?目が動いてる?これって本物?ていうか、これナマケモノじゃないの?

びっくりしていると、オーナーのRaquelさんが出て来た。「よくいらっしゃいましたね。さあ、どうぞどうぞ。ナマケモノを抱っこしてください」といきなり!

予期せぬ展開、なにがなんだかわからない。でも、ナマケモノ可愛い!!今まで何度か野生のナマケモノを目にしたことはあるが、高い木の上にいるので下からフカフカの丸いお尻を眺めるだけで、なかなか全体像を捉えることができなかった。望遠鏡で顔を確認できれば上出来だ。そのナマケモノを間近で見られるだけでなく、抱っこできるとは。ナマケモノは嫌がる様子もなく、腕を絡ませて来る。

Raquelさんが保護しているナマケモノは二匹。私が抱いている方はかなり大きく、ずっしりと重い。もう一匹は小さく、紙おむつを当てていた。「赤ちゃんなんですか?」「いえ、二匹とも同い年で9歳ですが、種類が違うんです。小さい方は雌なので、その違いもありますね。小さい方は今日、ちょっと下痢気味で、それでオムツしてるんです」。「ナマケモノは何年くらい生きるのですか?」「30〜40年生きますよ」

とにかく可愛くてたまらない〜。

他にも動物がいるはずだが、ナマケモノが可愛すぎていつまでも抱っこしていたい。しばらく楽しんだ後、他の動物も見せてもらうことにした。

オーナーの方が二匹のナマケモノを布で包み、ベンチの背もたれに立てかけて置いた。「そろそろ寝る時間だから」。「そうやって寝かせるんですか?」「そうよ」。

ナマケモノを寝かせた後、敷地の奥へ案内してもらった。

初めて見るネコ科の動物がいる。「それはジャガランディ」。光沢のある毛並みが美しい。

家猫のように擦り寄って来た。ジャガランディを撫でていると、ラケルさんが「Don´t touch the jaguar.」と言う。え?え?ジャガーって?と振り返ると、

後ろのフェンスの向こうにはジャガーが!わ、びっくりした。「どういう経緯でジャガーを保護することになったんですか?」「ペットとして飼われていたんですよ。狭いところに閉じ込められていたのをうちで引き取ることになりました」「ペット?ジャガーをペットとして飼うことは違法ではないんですか?」「この国には、それをはっきりと禁じる法律がないのです」。

「それではサル達を見に行きましょう。うちでは若いホエザルとフサオマキザルを保護しています」。サルと聞いて喜ぶ娘。ここではケージの中に入ることができた。

ホエザルの子どもと戯れる娘

娘はエクアドルで主にサルの世話をしていたので、さすが慣れているなあ。と思って眺めていたら、後ろから誰かに髪の毛を引っ張られた。

「ちょ、ちょっと待ってよ、、、」

なぜかやたらと指を舐めたがる。でも、可愛いわ〜。ホエザルはとどろきのような大声で鳴く大型のサルである。以前休暇を過ごしたコスタ・リカのオサ半島では明け方になると怪獣のような恐ろしい鳴き声が森に響き渡った。その体験から、可愛いという存在ではないと思っていた。でも、子どもはやっぱり可愛いね。

夫はホエザル2匹とフサオマキザル1匹にまとわりつかれている。フサオマキザルは夫の頭にシラミがいないか探してくれているようだ。そしてこの直後、夫は彼におしっこをかけられた。笑

その他、ハナグマとアライグマも保護されていた。Raquelさんに「いつから動物保護活動をしていらっしゃるんですか」と聞くと、「もう20年ほどやっています。以前は中南米のあちこちを転々として活動していましたが、6年前からここに定住して保護している動物に尽くしています」と仰った。センター名のRaquel´s Arkはノアの箱舟(Noah´s Ark)をもじったものだろう。

動物保護センターというと専用の敷地や建物があるものだと思っていたので、Raquel´s Arkのように個人の自宅がそのまま保護施設という事実には驚かされたが、その分アットホームで私たちの突然の訪問にも快く対応してくれて感激だった。動物を見せてもらうのは無料だったが、感銘を受けたのでわずかながら寄付金を置いて来た。また、Raquelさん宅はAirBnBを通して部屋も提供している。野生動物と触れ合うことのできる宿なんて最高だよね。

(追記: この訪問から3年経った現在も、FacebookでRaquel´s Arkのページをフォローしている。抱っこさせてもらったナマケモノの他、現在ラケルさんが保護している野生動物についてリアルタイムで知ることができ、いつかまた訪ねていきたいなあと思う日々である)

 

 

 

(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

今回の旅行では娘が滞在地の周辺情報を調べ、行きたいところを連日提案している。この日はボケテタウンに隣接するPalmiraというところにある動物保護センター、Jungla Wildlife Rescue & Rehab Centerを訪問したいと言う。

娘は動物好きで、高校を卒業してすぐ、エクアドルアマゾンにある野生動物レスキューセンター、Merazoniaへボランティアに行っていた。Merazoniaは怪我をしたり密輸されかけ保護された野生動物をケアし、また野生に戻す活動をしている組織で、娘はそこで1ヶ月半、保護されたサルや鳥、ハナグマ、キンカジューなどいろいろな動物の世話をさせてもらった。その経験から、パナマでの動物保護についても知りたいのだという。私も大いに興味があったので、見学に行くことにした。

Jungle Wildlife Center

娘がボランティアをしていたエクアドルの施設は、動物を自然に戻しやすいように施設自体がジャングルの中にあるが、ここは町外れのファームのような場所で、かなり雰囲気が違うと娘は感じたようだ。

建物の中に入ると若い男性が出て来たので、施設を見学させて欲しいと伝える。男性はボランティアスタッフの一人だった。10ユーロを払うと現在保護している動物を見せてくれるとのことで、早速、案内してもらう。どんな動物たちが保護されているのだろうか。

大きなケージではスパイダーモンキーのデイジーとピーターが保護されている。

デイジー

サルのケージには見学者は入ることができず、金網の隙間からピーナツをやるだけ。その他の動物のケージには入らせてもらうことができた。

このアライグマはペットとして飼われていたことがあり、人馴れしている。自然に還してもきっとまた人のいるところに戻って来てしまうだろうとスタッフは説明した。スタッフがドライフードの載ったトレーと水をはった金だらいをアライグマの前に置くと、両手でドライフードを少しづつすくっては水の中に入れて洗って食べていたのが可愛かった。

メガネフクロウ

クロコンドル

トゥーカン

トゥーカンは他の鳥たちと異なり、小さいケージに入れられている。娘が質問した。「この子は野生に戻す予定ですか?」センターのオーナーの女性が「ええ。そうしますよ」と答えると、娘は「飛べるように大きなケージにして、中に枝を置くなど、自然に近い環境にしないのですか?」と突っ込む。「もちろん。この子はたった今、ここに運ばれて来たばかりなの。これからこの子のために良い環境を作りますよ」

キンカジュー

オーナーの女性に案内され、物置小屋の戸をそっと開けると、中にキンカジューが寝ていた。「この子は夜行性で昼間は出かけるんだけど、昼間はなぜかいつもこの物置に入って寝ているのよね。ここが好きみたいで」

この日センターで見た動物たちの他にも、昼間は出かけて夜だけセンターに戻ってくる動物もいると聞いた。また、野生動物の他にもヤギや馬のような家畜、犬や猫もたくさん保護されている。犬は10匹ほど、猫は25匹もいるとのこと。

この馬は目が見えないが、なぜか娘に擦り寄って来た。

この犬も目が見えない。でも、他の犬と元気にじゃれ合って、楽しそうにしている。犬や猫は広い敷地の中で放し飼いになっていて、自由気ままだ。

センターのオーナーの女性はアメリカ人で、動物たちの世話はボランティアスタッフが支えている。保護されている動物たちの多くは怪我をして飛べなくなっていたり、目が見えなかったりと問題を抱えているが、よくケアされていて幸せそうだ。この動物保護施設にはとても良い印象を持った。

次の記事では、翌日見学したもう一つの動物保護施設、Raquel´s Arkを紹介する。

 

 

 

 

(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

ボケテ高原3日目。この日はTree Trek Adventure Parkというところで吊り橋ツアーに参加することにした。吊り橋を渡りながらハイキングするツアーで、ネイチャーガイドさんが動植物について説明してくれるという。

現地に着き、受付でツアーに申し込もうとすると、「今、最初のツアーが出たばかりなので、次は1時間後です」と言われてしまった。1時間も待つのかあとがっかりしていたら、別の男性が隣の部屋から入って来た。受付係りはその男性と何やら話している。そして受付の人が急に言った。「やっぱり今すぐツアーできます。彼について行って」。わけがわからないが、出発できると聞いてついて行った。

「私、今日は本当はガイドの担当じゃないんですが、ちょうどヒマなので特別に案内しますよ。他の参加者と一緒の大きなグループより、あなた達だけの方がいいでしょ?」どうやらスケジュール外のプライベートツアーを通常料金でやってくださるということらしい。ついている。お願いすることにした。

ハイキングするのはLa Amistad Friendship International Parkといって、コスタ・リカとパナマにまたがり、両国が共同管理している自然公園だ。渡る吊り橋は全部で6つ。最初の橋の高さは40m、長さは135m。

怖そうに見えるかもしれないけれど、ジャングルの中は植物が生い茂っていて地面が見えないから、全く怖くない。ガイドさんがいろいろな植物や動物について説明してくれるのを聞きながらの散策はとても楽しかった。ガイドさんがいなければ気づかずに通り過ぎてしまうものばかり。但し、山を登りながら写真を撮るので精一杯でメモを取ることができなかったので、教えてもらった植物や虫の名前全部忘れてしまった。とても残念。

「この蜘蛛の巣を見てください。蜘蛛がまるで小枝のようでしょう?」なるほど擬態しているのか。面白い。

綺麗な花がたくさん咲いている。「これ、花びらがずいぶん硬いね」と花を触りながら娘が言う。「それは本当の花びらじゃないんですよ。本当の花はこっち」

歩いていると頭の上をいろんな鳥が飛んでいく。ガイドさんによると、鳥は赤、黄色、白しか認知できないので、ジャングルを歩くときにそれらの色の服を着ていると花と勘違いして鳥が寄って来やすくなるそうだ。

ガイドさんは今度は地面近くを指差した。斜面の下の方の少し窪んだところに細い透明な糸のようなものが張られている。

「これは蜘蛛の巣のようなものだけど、蜘蛛によるものではないんです。ほら、この白い細長いもの、この虫が蜘蛛のようにネバネバした糸を出しているんですよ。この虫は夜になると光ります」

ツマジロスカシマダラ (Glasswing butterfly)

うまく写真が撮れなかったが、羽がほぼ透明で向こうが透けて見える綺麗な蝶がいた。

2つ目の吊り橋を渡り終わって少し歩いたところで、ガイドさんが「上を見て。ケツァールがいますよ」と言った。目を凝らして指さされたあたりを見ると、枝の間に赤と鮮やかな青をした小さな何かがいるのが見えた。双眼鏡で見ると、本当にケツァール!?ケツァールは世界一美しい、幻の鳥と言われている鳥だ。それがそんなに簡単に見られるとは驚きである。写真を撮ろうとしたけれど、望遠レンズでも遠くてダメだった。「尾がありませんね。売り物にするために尾を切ってしまう人がいるんですよ。だから、尾のないケツァールが多いんです」

上から先に出発したハイキング客のグループが戻って来てすれ違った。「あの方達が予約したのはハーフツアーだから、3つ目の吊り橋で引き返して来たんですね。私たちは6つ全部渡りましょう」。

3つ目、4つ目と高度を上げながら吊り橋を渡って行く。4つ目の橋の高さは70m。吊り橋から見下ろすジャングルは素晴らしい。そして吊り橋から眺める滝も。

「あのオレンジの実は食べられますか?」

「あれはまだ熟していませんね。サルの好物ですよ」

「こっちは熟している」ガイドさんは一粒つまんで口に入れた。「あなた達も食べてみて」。食べてみるとそれほど甘くはなく、トマトのような味がする。でも、あ、あれっ?「後味がピリッとするでしょう?」かすかに唐辛子のようなスパイシーな後味が残った。

「あ、Black guanがいる。ほら、あそこ!」見ると、黒くて大きな鳥がいた。「あなた達、今日はずいぶんラッキーですね。バードウォッチングツアーでもblack guanはなかなか見られないんですよ」。日本語名はクロシャクケイというらしい。こちらも残念ながら写真は撮れず。

さらにいろいろなシダ植物や蘭などを見ながら歩いて行く。ふと足元に目をやると、赤いキノコが生えていた。「これ、毒キノコ?」

「そう。毒キノコです。ちょっと待って」。ガイドさんは小枝を2本拾い、キノコの赤い部分を両側から挟んでぎゅっと押した。

真ん中からパフッと胞子が出てくるのが見えた。「吸い込んじゃダメ。吸い込むと象が空を飛びますよ」「象が空を飛ぶ?幻覚を見るってことですか?」「そう、このキノコは幻覚作用のある毒キノコなんです」。あたりを見回すとあっちにもこっちにも生えている。

「あれえ?カニだ!何でジャングルにカニが?」驚く娘。「サワガニだね」と私。でも、ずいぶん高いところにまでいるんだなあ。

「さあ、一番高い場所に着きましたよ」。ここがトレイルの頂点。なんてクールな場所なんだろう!

さあ、ここからは下り坂だ。

「わ、見て。毛虫がこんなにびっしり!」「毒ありますか?」「これは毒なしだから触っても大丈夫。柔らかいですよ」。そっと触ると、毛がふわふわだ。小さなヘビやトカゲもいた。

マラカイトハリトカゲ (Sceloporus malachiticus)?

いろんなものを見てご機嫌な私たち。5つ目の吊り橋を渡っている時だった。先頭を歩いていたガイドさんが急に血相を変えて振り返った。口に人差し指を当てて「静かに」の合図をしてから吊り橋の下の茂みを指差す。「プーマがいる」。

ええっ!プーマ!?まさか、聞き間違いだよね?

「あそこ。見えますか?プーマですよ」。必死で目を凝らすが、見えない。どこ?

するとガサガサっと葉の動く音がし、茶色い大きな猫が茂みの中を走るのが見えた。呆然とする私たち。

「す、すごい、、、、」。ジャングルの奥地でもないのに、サファリツアーでもないのに、野生のプーマに遭遇するなんてことがあり得るんだろうか。信じられない。

ガイドさんもしばらく感慨深そうに橋の上に立ち尽くしている。

「あなた達は本当にラッキーですよ。私はよく一人でジャングルを散策しますが、いろんな動物を見つけることができます。でも、お客さんと一緒のときには難しい。あのプーマは多分、今夜この辺りで寝ていたんでしょう。あなた達の前に出発したグループ、途中で引き返しましたよね。もし彼らがここまで来ていたら、その時点でプーマは逃げてしまっていたと思います。だから、あなた達はラッキーだった。私がなぜプーマに気づいたと思いますか。かすかに唸り声が聞こえたんですよ」

驚きと感動で言葉が出て来ない。「ワオ、、、」と言いながら三人、顔を見合わせるばかり。ただの吊り橋ツアーだと思って申し込んだのが、記念すべき特別なものとなった。優秀なガイドさんに何度もお礼を言い、チップを多めに渡してお別れした。

ああ、本当に素晴らしい体験だった。パナマ、なんて素敵なところなんだ。

 

 

 

 

まだ9月の声を聞いていないのにすでに秋になったようなドイツである。今年の夏はなんだか短かったなあ。

私が住むブランデンブルクでは春から初夏にかけてコウノトリが多く繁殖する。ブランデンブルクで繁殖行為を終えたコウノトリたちは8月にはアフリカに向けて移動する。彼らが飛び立つ前に、コウノトリの村、リューシュテットへ行って来た。ブランデンブルクの外れにあるこの小さな村はドイツ最大のコウノトリの繁殖地でコウノトリの保護に力を入れている。アクセスが大変なのだが、ラジオで偶然、なぜこの村に多くのコウノトリが集まるのかについて聞いて、是非とも行ってみたくなったのだ。

すでに7月だったのでピークシーズンは過ぎていたが、それでも多くのコウノトリを見ることができた。コウノトリは大きな鳥だけあって、たくさんの個体が集まっている様子はなかなか壮観だった。野鳥観察は本当に楽しいなあ。

YouTubeチャンネル「ベルリン・ブランデンブルク探検隊」にスライド動画を公開したので、ご興味があったらぜひ見てください。

前回、前々回の記事でシジュウカラの育児観察についてまとめたが、今年は同時にクロウタドリの営巣も観察するチャンスに恵まれた。

以前から我が家の庭にはクロウタドリが3ペアほど出入りしていて、そのうちの1ペアが生垣の中に巣を作ることがよくあった。でも、その生垣は奥行きが2メートル以上あり、去年までは観察用カメラも持っていなかったので、巣の中を見たことはなかった。今年はその生垣を撤去したので、うちの庭にはもう巣を作らないだろうなあと思っていた。でも、垣根を取り除いた場所に花などを植える作業をしているとクロウタドリが飛んで来て、すぐそばの地面で忙しそうに虫を集めている。お隣か裏の家の庭に巣を作ったのだろうなあ。

 

ところが、5月の終わりに庭の反対側の地面にクロウタドリの卵が落ちているのを発見した。

 

こちら側にも小さい生垣がある。もしや、と思って葉をかき分けて中を覗くと、クロウタドリの巣があった。

巣には卵が1つ。そのそばの枝には割れた別の卵の殻が引っかかっている。どうやら、カラスか何かに巣を荒らされたらしい。この巣はこのまま放棄されるのだろうか。せっかく巣作りしたのに、残念だなあ。しかし、この後、休暇に出かけたりして、そのままこの巣のことはすっかり忘れていた。

旅行から帰って来て庭を見回っていると、生垣のあたりが何やら騒がしい。クロウタドリが生垣に出たり入ったりしている。あれ?ひょっとして?

覗いてみると、メスが巣に座っているではないか。そして右側にはヒナらしきものの姿が!母鳥は残った1個の卵をちゃんと温め、ヒナが生まれていたのだ。気づいた私と夫はワーワー大騒ぎ。夫が大急ぎで観察用カメラを生垣の中に取り付けた。

 

やった!これでクロウタドリの巣も観察できる。シジュウカラの観察カメラは巣箱の天井につけたから真上からの映像しか見れないが、こちらは横にカメラを設置したのでまた違うアングルから観察できるのもグッド!でも、あれれ?ヒナは2羽いるぞ。巣を荒らされた後もさらに卵を産んでいたのか。

と思ったら、4羽いた!いつの間にこんなに卵を産んでいたんだろう。

気づいたのが遅かったので、ヒナはすでにある程度大きくなっていて、最初から観察できなかったのがちょっと残念だが、みんな元気いっぱいで見ていて楽しい。それもそのはず、親鳥がすごくがんばって育てているのだ。

餌としてヒナに与える虫を集めるお母さん

 

お母さんだけじゃないよ、お父さんも超働き者。夫婦で力を合わせて4つ子育児に奮闘している。私たちがテラスに座っていると、お父さん鳥が頭上をビュンビュン飛んでせっせと餌を巣に運んでいく。そして、このお父さんはなかなか慎重で、巣に直接は飛び込まず、まず近くの別の場所に留まってあたりを見回し、誰も見ていないのを確認してからサッと生垣の中に消える。そして、子どもたちもお利口さんなのだ。母鳥も巣から離れて餌探しをすることがあったが、親がいない間は子どもたちは巣の中に頭を引っ込めて静かにじーっとしている。ふと、「オオカミと7匹の子ヤギ」の話を思い出した。悪い奴がやって来て、食べられてしまったら大変だからね。

 

ぐんぐん成長して、数日後にはこんなに大きくなった!

 

そして7月7日。私は朝から胸騒ぎがしていた。今日あたり、彼らは巣立つのではないかという気がしたのだ。なのに、その日に限ってキャンセルできない予定が入っている。出先でカメラアプリを頻繁に覗き込む余裕もなさそうだ。私が家にいない間にすべてが終わってしまうかもしれないと巣を気にしつつ、家を出た。

数時間後、夫からメッセージが入った。

「オレのビーサンの中にヒナがいる!」

「はあ?」

あああ〜!やっぱり、出ちゃった。でも、なぜ、サンダルの中に着地!?夫はこれをどうしたものかと迷ったが、そのままにしておいたら親鳥が迎えに来て一緒にいなくなったとのことである。

私は慌てて家に帰ったが、時すでに遅し。巣はもぬけの殻であった。

自動録画された映像を巻き戻して巣立ちの瞬間が映っていないかを見たところ、最後の1羽はなかなか飛び立てなかったようで、巣の縁に上がっては中に降り、また縁に上がっては降りをしばらく繰り返した後、ついに飛び出した。

 

生垣の中だから、華麗に飛び立つというより、近くの枝や葉っぱに乗りながら出ていくという感じだね。

 

こんなわけで、シジュウカラのヒナもクロウタドリのヒナも無事に巣立ち、めでたしめでたし。そして私はまた空の巣症候群に陥るのであった。

 

 

前回の続き。

いよいよ始まった、シジュウカラの子育て。

2つ目の卵はいつ孵るかなと思って見ていたが、何が良くなかったのかヒナは生まれなかった。つまり、モコちゃんの赤ちゃんは一人っ子である。去年はたくさんのヒナが成長する様子が見られたので、今回は1羽だけというのはちょっと寂しい気がした。でも、しばらく見ていたら、これはこれで観察のしがいがあることがわかった。ヒナ同士が重なり合うことがないので、その分、体の成長をよく見ることができるのだ。

最初のうちは皮膚が透けていて、体の内部まではっきり見える。非常に興味深い。でも、見ようによってはちょっとコワイ画像かもしれないので、ここにクローズアップを載せるのはやめておこう。

 

生後8日。頭が黒くなり、羽が生えてシジュウカラらしくなった。一人っ子なので、パパとママがせっせと運んで来る餌を独り占めできる。だから、グングン大きくなった。

生後9日。お座りができるように。

生後10日。ママに抱っこしてもらっていたら、パパが餌を運んで来る。大事に育てられているなあ〜。見ていると、ほのぼのしてしまう。

 

生後11日。羽ばたきの練習が始まった!いよいよ巣立ちか!?

と思ったけれど、ここからがなかなか大変だった。この子(ピヨちゃんとしよう)は発育状態はとても良いのだが、どうも甘えっ子のようなのだ。母鳥のモコちゃんは「そろそろ巣立てそう」と判断したのか、この翌日から、餌を持たずに巣箱に戻って来て、ピヨちゃんを外に誘い出すような仕草をするようになった。が、ピヨちゃんはなかなか出ようとしないのである。

生後14日目。巣箱に戻って来たモコちゃんに「ママ、ごはんちょうだい、ちょうだい!」とねだるピヨちゃん。モコちゃんは「ダメダメ」というように首を振り、我が子の前に回李、手本を見せるように飛んでみせる。しかし、ピヨちゃんは怖がって出ようとしない。モコちゃん、今度は餌を見せながら「ママと一緒に外に出られたら、これをあげるからね」とでも言うかのように説得を試みる。しかし、それもうまくいかない。延々とそれを繰り返していたら、夜になってしまった。どうやら巣立ちは翌日に持ち越しのようである。

生後15日目。ピヨちゃん、ようやく出ようという気になったのか、ときどき飛び上がってはみるのだが、やっぱり怖いようだ。兄弟がいれば、先に飛び立つ兄弟の勢いにつられて出やすいのかもしれないが、なんせ一人っ子。モコちゃんは延々と根気よく飛ぶのを促している。イヤだイヤだ、こわいもん、とグズるピヨちゃん。いやはや、子どもを巣立たせるのも大仕事だね。私もこの日は今か今かと、10分おきにカメラを覗き込んで、手に汗握っていた。

 

そして、今日もまた出ないで終わりかなあと思いかけた夕方の5時過ぎ、ついにピヨちゃんは勇気を振り絞って巣箱を出たのだった。

 

巣箱から出る瞬間を外から見ようと思っていたのだけれど、ちょうどこのとき取り込んでいてすぐには庭に出られず、気づいたらもう巣箱にピヨちゃんの姿はなかった。慌てて自動録画されていた動画を確認する。動画に残った音からして、ピヨちゃんはスムーズに飛び立ったというより、出口でジタバタしているうちに偶然飛び出せたという感じだったのではと推測する。庭に出て、それらしきヒナがいないか探してみたが、見当たらなかった。残念!でも、パパとママに守られてオークの木のどこかにいるはず。成鳥と区別がつかなくなる前に姿が見られるといいなあ。

 

というわけで、今年は1羽だけだったけれど、巣箱からシジュウカラが無事に巣立った。大家の私と夫にとっては嬉しい限りである。

 

去年、初めて庭に野鳥のための巣箱を設置し、内部にカメラを取り付けた。設置後数時間でシジュウカラが営巣を始めたので、巣作りから抱卵の様子、そしてヒナ達が巣立つまでを観察した。カメラを設置したのも野鳥の育児を観察するのもまったく初めての経験で、ワクワク、ハラハラな数週間を送った。

その一部始終をこのブログに「シジュウカラの育児観察記録」(その1からその10まであります)および「帰って来たシーちゃん、シジュウカラ2度目の営巣」(その1からその3まであります)としてまとめたところ、多くの方が読んで下さったようだ。

それにしても、野鳥の育児観察がこんなに面白いなんて!巣箱は数ユーロで市販されているので気軽に設置できる。カメラも一度用意すれば壊れるまでは使えるから、これからは毎年観察が楽しめる。よし、2021年もいくぞー!とやる気満々でシーズンの到来を待った。今年は巣箱を2つに増やし、古い方を旧館、新しい方を新館とした。それぞれの内部にカメラを取り付けて2月から観察を開始。今年はリアルタイムではブログに記録せず、一連のプロセスが終了してから手元に残った画像と映像記録、メモをもとにまとめることにしたのでリアルタイム観察の躍動感は伝わらないかもしれないけれど、以下、まとめである。

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結果から言うと、今年も去年同様、シジュウカラの営巣からヒナの巣立ちまでを観察することになったが、今年は去年とはだいぶ様子が違っていた。まず、なかなか本格的な営巣が始まらなかった。2月の終わりにかなり暖かい日があって、新館の方でも旧館の方でもアオガラとシジュウカラが代わりばんこに巣箱に入って中を偵察してはいた。気の早いアオガラが新館に巣材を持ち込み始めたが、数日後に冬に逆戻りしたような低気温になり、アオガラはあっさり断念。4月に入って今度は旧館でシジュウカラが営巣を始め、結構いいところまで進んだ。しかし、5月に再び寒い日が続いてこちらも中断。ニュースによると、今年の5月は30年来の寒い春だったそうだ。日が長くなって来ても昆虫の姿もほとんど見られない。これではヒナが生まれても与える餌もないだろう。私も毎日巣箱カメラを覗き込んでは何も起こらずガッカリする毎日。

しかし、ようやく気温が安定して来た5月29日、旧館でようやくシジュウカラが中断していた巣作りを再開!

営巣再開から3日目の様子

今度こそ、子育て本格開始か!?

やっぱり暖かくなるタイミングを待っていたのだろう。すごいスピードで巣が整えられ、6月3日、卵が一つ産み落とされた。

 

去年、この巣箱で営巣したシジュウカラのシーちゃんとは別のメスのようだ。うなじの白いあたりがしーちゃんとは違う感じで、巣の作り方もかなり違う。季節がズレているから手近にある巣材の種類が違うからかもしれないけれど、なんだか随分とモコモコした巣を作るなあと思って、このメスは「モコちゃん」と命名。

シーちゃんは毎朝1つづつ卵を産んだけれど、モコちゃんはそうではなく、1つ目の卵を産んでから6日目にもう一つ産んだ。そして、それきりもう卵を産まなかった。シジュウカラにしては少ない。今年の春は気候が安定しなかったことと関係があるのか、別の理由なのかはわからないが、モコちゃんは多産ではないのだった。

ここからモコちゃんは抱卵モードに入ったが、6月に入ると今度はいきなり猛暑となり、30度越えの日が続いた。巣箱の中は一体、何度あるんだろう?卵が煮えてしまうのでは?と心配になる。モコちゃんもそれを心配してか、それとも自分が暑くてとても座っていられないのか、立ち上がって上を仰ぎ見て口を開けていることが多かった。大家の私としては、エアコンつけてなくてすみませんと謝りたくなる気分である。

そして、最初の卵が産み落とされて20日が経過、卵の1つが孵った!かわいい〜!生まれたての我が子を愛おしそうに見つめるモコちゃん。モコちゃんのダンナもせっせと餌を運んで来て、夫婦力を合わせての子育てが始まった。

 

長くなったので、続きはその2に。