前回の記事で、一見、観光資源に比較的乏しそうに見えるブランデンブルク州は実はネイチャーツーリズムを楽しむのにとても適していることについて書いた。森林をハイキングしたり、広大な景色の中をサイクリングしたり、湖でウォータースポーツを楽しんだりできるだけでなく、野生動物を観察することができる。いろんな生き物がいるが、特に野鳥の種類と数はとても多く、特に冬季は渡り鳥の群れをあちこちで観察でき、その光景たるや壮観である。

でも、もっとお手軽に野生動物を観察する良い方法がある。それは自宅の周りで楽しむバードウォッチングだ。自宅周辺なのに「ツーリズム」と言うのはちょっと違うかもしれないけれど、わざわざ遠くまで出かけなくても視界が変わって新鮮な感覚を味わえて、とても面白いのだ。

実は庭仕事があまり得意ではないので、我が家の庭は荒れ放題とまではいかないが、かなり野性味溢れる庭だ。ご近所さんたちは庭を綺麗に手入れしているのでちょっと恥ずかしく思っていたのだが、自然に近い状態のせいか、うちの庭には結構いろんな野鳥がやって来る。

「いろんな鳥が来る」と書いておきながら、実は最近までどんな種類の鳥がどんな時期に来ているのか、ほとんど把握していなかった。「あー、鳥がいるなー」くらいのぼんやりした認識しか持っていなかったので、「具体的にどんな鳥が来るの?」と聞かれたら、「えーと、クロウタドリ(Amsel)とか、、、」と真っ黒で誰でも簡単に見分けられる鳥の名前しか出て来ない。それじゃつまんないよね。

うちに来る鳥を見分けられるようになりたい!

そこで、積極的に庭に野鳥を呼び寄せることに決めた。具体的には、テラスに餌台を設置したのである。

夫がホームセンターで買って来た、こんな適当な餌台(娘には「ダサい!」と言われた)。これにカラス麦など穀物をのせて、横にはファットボールをぶら下げてみた。すると早速、野鳥がやって来た。これはシジュウカラ(Kohlmeise)だ。

この餌台の他に、野鳥がよく来る桜の木の枝にもファットボールをぶら下げたところ、その日から、入れ替わり立ち替わり野鳥たちが餌を食べにやって来るようになり、あっという間に我が家の庭はちょっとした野鳥園に!

アオガラ(Blaumeise)
ヨーロッパコマドリ(Rotkehlchen)
エナガ(Schwanzmeise)
スズメ(Feldsperling)

ドイツにはスズメは上の画像のような日本でもお馴染みのスズメ(Feldsperling)と頰の黒い丸のないイエスズメ(Haussperling)の2種類がいる。一般的によく目にするのはイエスズメの方だけれど、うちには両方やって来る。

餌台に置く餌は日替わりでいろんなものを試してみた。今のところ、ダントツで人気なのはヒマワリの種で、カラス麦やレーズンもそこそこ好まれる。ピーナツは殻つきのまま置いたら、殻を剥くのが面倒なのか、売れ行きが悪かったので殻を剥いたものを提供したら、急にみなさんの目の色が変わった!笑

カケス(Eichelhäher)

カケスはピーナツをくわえてサッと高い木の枝に飛び乗り、邪魔されないところでゆっくりとピーナツを堪能、、、、のつもりだったようだが、気の毒にもこの直後、うっかりピーナツを落としてしまった。

クロウタドリ(Amsel)は地面から餌を拾うことが多い
モリバト(Ringeltaube)

画像の鳥の他にこれまでにゴジュウカラ(Kleiber)、カササギ(Elster)、カンムリガラ(Haubenmeise)、アカゲラ(Bundspecht)なども確認できた。

これら野生のお客さんを窓の中から眺めるのがすっかり日課になった。今は冬で庭に出るのは寒いからね。それに、バードウォッチングは木々に葉っぱがなくて鳥の姿がよく見える冬だからこその楽しみともいえる。

なにか鳥が来たらすかさず写真を撮り(撮れないことも多いが)、画像をネット上の鳥類図鑑の画像と比較して種類を特定する。ついでにその種の生態や分布も読んでいるうちに、少しづつ野鳥の名前を覚え、多少の知識もついて来る。バードウォッチング、楽しいな。春になったらまた違う種類の鳥たちがやって来るのではないかとワクワクしながら庭を眺める毎日である。

旅行大好き、観光大好きな私だが、必ずしも遠くまで出かけて行かずとも、視点を変えれば住んでいる環境の中でも観光気分を大いに味わうことができる。面白いものはどんな場所にもあるよね。ただ、それに気づくか、気づかないかだけ。

 

長年の趣味の博物館巡りに加え、近頃、熱中していることがある。それは野生動物の観察。私が住んでいるブランデンブルク州は首都ベルリンをぐるりと取り囲む面積3万㎢弱の地域だが、大都市ベルリンとは対照的に周辺は人口密度が低く大きな産業もないので、よく「何もない場所」と言われる。そのブランデンブルク州に住むようになって14年。何もない場所に住んでいて退屈かって?いやいや、住めば住むほど、いろんなものがあることに気づいてどんどん面白くなる。正確には「いろんなものがいる」というべきかな。ブランデンブルク州は人は少ないが、その代わりに人間以外の生き物が多い。つまり、野生動物でいっぱいなのだ。

上の地図の通り、ブランデンブルク州は森林(緑色の部分)や湖(水色の部分)の面積が広く、その多くは自然保護区に指定されている。日常的にシカ、キツネ、リス、ウサギ、イノシシ、ハリネズミ、テン、アライグマ、野ネズミなどいろんな野生動物に遭遇するし、自然保護区ではオオカミ、ヘラジカ、野生ネコなど稀少な動物も確認されている。

せっかくそういう環境にいるからには、楽しまなければ損!

というわけで、カメラを持って野生動物探しに熱中する今日この頃である。野生動物は動きがすばやくてなかなか良い写真が撮れないが、外を歩けばほぼ確実になにかに遭遇するので楽しい。外を歩くので健康にもいいし、お金もかからない。

キタリス(Eurasische Eichhörnchen)

 

ノロジカ(Reh)

ダマジカ(Damhirsch)


アカシカ(Rothirsch)


私の住むブランデンブルクには野生のヘラジカもいるが、まだ遭遇したことはない。

わかるかな、、、野ウサギ(Hase)


アライグマ(Waschbär)



アカギツネ(Rotfuchs)

ビーバーに齧られた木も水場のあちこちにある。でも、ビーバーそのものを見つけるのは難しい


もちろん、野鳥もたくさん。

ノスリ(Mäusebussard)

コウノトリ(Weißstorch)

ニシイワツバメ(Mehlschwalbe)

ハイイロガン(Graugans)の群れ


クロヅル(Kranich)

クマゲラ(Schwarzspecht)

カワアイサ(Gänsesäger)かな?

ホシムクドリ(Star)が木の枝に鈴なりに

渡り鳥の移動が見られるのも気に入っている

首都の周辺がこの環境って、凄くない?ブランデンブルク州では大都市ベルリンと野生の王国のコントラストを満喫できるので、とても気に入っている。もちろん、ブランデンブルク州に限らず、ドイツは全国に自然保護区があり、野生動物の保護活動も盛んなので、都市から少し郊外に出ればいろんな生き物を観察することができる。これも1つのマニアックな観光ジャンルではないかな。ドイツにおけるネイチャーツーリズムについても、これからシリーズとして少しづつまとめていくつもり。

 

追記:

野生動物への興味が高じて、2022年、アニマルトラッキングの本格的な講座を受講した。野生動物そのものの姿が見られないときでも、動物の痕跡は至るところにあることに気づき、ますます楽しくなった。

関連記事:

ドイツで「アニマルトラッキング」を習い始めた

アニマルトラッキングの講座を終了

雪の日のアニマルトラッキング