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前回の記事で紹介したドイツ貴石美術館を見た後は、続けてドイツ鉱石博物館(Deutschas Mineralienmuseum)へ行った。こちらでは貴石に限定せず幅広い鉱石のコレクションが見られる。貴石博物館がイーダーにあるのに対し、鉱石博物館はオーバーシュタインにある。似たようなミュージアムといえば似たようなのだが、私は敢えて装飾品としての観点を前面に出している前者を美術館、より学術的な後者を博物館と訳してみた。美術館も博物館もドイツ語ではMuseumなのだけれど。

建物は貴石美術館よりは地味

特に説明することもないので今回もほぼ画像のみで紹介することにする。

巨大な結晶が並べられた展示室。多くはブラジル産のもの。

このスモーキークオーツはなんと2トンもある

古い鉱石研磨作業用の作業台。首を研磨機の方へ向け、窪みにお腹をつけてうつ伏せの姿勢で腕を前に伸ばし、研磨機の回転部分に鉱石を当てて磨いていたらしい。かなり不自然な体勢での作業だよね。

宝石の様々なカット

アクセサリー用にカットされた石よりも鉱物の結晶構造を眺めている方がワクワクする私なので、いろんな結晶が見られてとても楽しかった。

板状結晶のバライト

これは何だったか、メモ取るのを忘れてしまった

藍銅鉱

松茸水晶

亀甲石(セプタリア)

展示は全体的に見応えがあるが、なんといってもメノウコレクションが凄い。

メノウの部屋

展示の仕方はかなり地味。でも、一つ一つの石が素晴らしくて感動!全部写真を撮りたいと思ってしまうほど。気に入ったものの画像を並べていたらキリがないので、ほんのいくつかだけ。

まるで真珠のようなブラジル産のメノウ

メノウ化した珊瑚

デンドライトメノウ

パイライト入りのメノウ

美しい模様の涙型マンデル

シマウマ模様のジャスパー

一つのメノウから作った銘々皿(?)

パエジナストーンもある

蛍光鉱物のコーナー

鉱石を使った美術品の展示コーナーもとても良かった。

素敵なクリスタルのチェス盤。私はチェスはしないけれど、チェス盤にはとても惹かれる

鉱石を使って様々な人種を表したもの。これは現代の感覚では、、、、。

鉱物結晶コレクションの充実度では以前見たフライベルクのTerra Mineralia(記事はこちら)には敵わないものの、かなり満足できる博物館だ。そして、メノウコレクションは私が今までに見た中では最も素晴らしかった

これでイーダー・オーバーシュタイン観光の鉱石編は終了。でも、イーダー・オーバーシュタイン観光自体はもう少し続く。

イーダー・オーバーシュタイン鉱石観光の続き。

鉱石探しエクスカーションで水晶を収集するというアクティビティを楽しんだ翌日はイーダー・オーバーシュタイン近郊の観光貴石鉱山、Edelsteinminen Steinkaulenbergを見学した。この鉱山では遅くとも14世紀には鉱石採集が行われていたことがわかっている。19世紀後半に採算が取れなくなり閉鎖されたが、現在は観光鉱山として一般解放されている。ドイツには観光鉱山はいくつもあるが、岩肌で貴石を直接見ることのできる観光貴石鉱山は欧州全体でもここだけだということで(真偽のほどは定かでないが、テレビでそう紹介されていた)、とても楽しみだった。

こちらがEdelsteinminen Steinkaulenbergの受付け

内部の坑道の長さは約400メートル。ガイドさんに案内してもらって中を歩く。

入り口

内部は薄暗いが、ところどころライトアップされている

前の記事にも書いたように、このあたりの地層は溶岩流が流れて形成されたもので、岩石には溶岩内の気泡が冷えて固まった晶洞(ジオード)という空洞がたくさんできている。その空洞の内部に周辺の岩石中のミネラルが溶け出して結晶を作る。大きく成長した美しい結晶は装飾品や芸術品に加工された。この鉱山で採れるのは主に水晶、アメジスト、スモーキークオーツ、メノウ、ジャスパーだ。

岩肌のあちこちに結晶ができていて、それをこんな風に間近で見られるよ

アメジストや水晶の大きな結晶があちらこちらに

綺麗・・・・・

鉱脈が斜めに走っている。晶洞の涙型から溶岩の流れた方向がわかる。丸い側が頭で細くなっている方がお尻。

これはカーネリアン(Carnelian)という半貴石。カーネリアンのカーネは「肉」を意味するCarneに由来する(チリ・コン・カルネのカルネね)。確かに生肉っぽい色をしている。肉といえば、イーダー・オーバーシュタインの名物料理はシュピースブラーテン(Spießbraten)という肉料理である。シュピースというのは串のことで、肉の塊を串に刺して火で炙ったもの。全国で食べられる普通のドイツ料理だと思っていたのだが、イーダー・オーバーシュタインが発祥地だそうだ。19世紀に入りイーダー・オーバーシュタインの貴石採掘業の採算が取れなくなると、多くの人が南米へ移住した。ブラジルで大きな鉱脈を掘り当て、石を持ってイーダー・オーバーシュタインへ戻って来たが、ブラジルで知った炭火焼の肉の美味しさが忘れられず、故郷に戻ってもブラジル式串焼きが定番料理となった。余談だが、イーダー・オーバーシュタイン市は西のイーダーと東のオーバーシュタインが合併してできた町で、シュピースブラーテンの作り方はイーダーとオーバーシュタインで少し違うらしい。また、串焼きと言いつつ串に刺していないこともある。

採石が行われていた当時の鉱夫が使っていたハンマーとランプ。コツコツと岩を叩いて坑道を掘って行った。ライトアップされているとこの程度には明るいのだけど、、、

ランプの灯だけだとこんな感じ。ほとんど何も見えないに等しい。手探りでどこにあるかわからない石を求めてハンマーを打つとは、あまりに骨の折れる作業だ。鉱山の中は湿気が酷く、粉塵を吸い込んだりして健康を害する鉱夫が多買った。当時の鉱夫の平均寿命は35歳くらいだったという。

ところで、内部が結晶で完全に満たされている晶洞はドイツ語でMandelと呼ばれる。

メノウのMandel

それに対し、結晶が内部を完全に満たしておらず、中心に空洞があるものをドルーズ(Druse)と呼ぶそうだ。

これはジャスパー(碧玉)。メノウと同様に微細な石英の結晶が集まったものだが、不純物を多く含むため不透明となる。

鉱山出口に置かれた石アート

イーダー・オーバーシュタイン鉱石観光はまだ続く、、、、。

 

(おまけ。以下はドイツ語の関連テレビ番組です。)