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週末にバルト海に面するリューゲン島へ行って来た。リューゲン島は広い島で保養地ビンツやナチスの海水浴場プローラなどいろいろな見どころがあるが、今回は白亜の崖とブナの原生林が残る世界自然遺産、ヤスムント国立公園方面へ 直行した。そこに目当ての博物館、「チョーク博物館(Kreidemuseum Rügen)」があるからだ。白亜の崖の「白亜」というのはつまり白亜紀に堆積した地層を意味している。そして白亜とは何かというと、円石藻などの化石から成る未固結の石灰岩、つまりチョークのこと。そのチョークの博物館に行ってみたかったのだ。

海岸沿いの町、Saßnitzに取った宿に到着し、早速レセプションの人に「ここからチョーク博物館へは何分くらいかかりますか」と聞くと、「チョーク博物館って?」と聞き返された。地元のホテルの人でも知らないとは、かなりマイナーな博物館のようだ。

Saßnitzからは車で約20分で着いた。

チョーク博物館は現在は閉鎖されているかつてのチョーク採石場の敷地内にある。

建物に入ってすぐはリューゲン島のチョーク産業史の展示室。

チョーク採石の様子。リューゲン島のチョーク産業の歴史は古い。ハンザ同盟によってバルト海沿岸の貿易が栄えた時代には、リューゲン産のチョークは主に色素や肥料、燃料などとして使われた。現在は化粧品や医薬部外品、タイルなどの床材として使われるほか、環境分野でも様々な用途に使われている。「チョーク」と聞くと真っ先に思い浮かべるのは白墨だけれど、現在使われている白墨はチョークではなく石膏(ギプス)を固めたものなんだそう。

様々なチョーク製品

かつてチョークの採石が行われていた博物館の裏手は現在、こんな風景だ。

そして、少し離れた場所にあり現在も採集が行われている石切場の風景。

チョーク博物館は定期的にこの石切場へのガイドツアーを提供している。
ツアーの目的は化石探しである。このチョークは化石を豊富に含んでいる。ドイツには化石ハンターがたくさんいるようで、全国の多くの石切場が特定の日にハンターに場を開放している。有名なところでは、私と夫が先日行ったゾルンホーフェンなどがある。

リューゲンのチョークの中に見つかるのは、たとえばベレムナイト。白亜紀に絶滅したこの頭足類は現生のイカのような形状をしていた。化石として残るのは写真のような先端部分のみ。

ベレムナイトの他にも貝やウニなど、いろいろな化石が埋まっているけれど、白いチョークの中にチョークにまみれた化石を見つけるのはなかなか難しい。

チョークの地層は白亜紀の浅い海に微小な原生生物の石灰質の殻(円石藻)が堆積してできたもので、それ自体が化石である。写真の丸いのが円石藻(Cocolith)。リューゲン島のチョーク層には1㎤あたり約8億個もの円石藻が含まれているんだって!!

そして、このコッコリスの山の中には、しばしばフリント(Feuersteine)が形成されている。白い地層の中に帯のように黒く光沢のある石が並んでいるのが見えるだろうか。フリントは火打ち石とも呼ばれるもので、非常に硬い上に簡単に剥離するので石器時代の人類はこれを加工して道具や武器を作っていたんだよね。私はフリントが好き。外から見ると白いのに割ると中が艶々と黒くて不思議。考古学博物館ではフリントで作った石器をよく見かける。だから、フリントを手にするとなんだか自分が過去の世界と繋がったような気がするのだ。

私の手持ちフリント。リューゲンやデンマークの白亜の崖で拾ったもの。(注: 左下の丸くて黒い、斑点のある石はフリントではありません)

チョーク博物館にはいろいろなタイプのフリントが展示されている。海岸などで見かけるフリントはこういう感じに白と黒がぶちになっているタイプが多いんだけど、

縞々タイプとか、

鉄分を含んだ赤いものもあるようだ。

でも、そもそもフリントってどうやってできるんだろう?「Geologie Deutschlands(ドイツの地質)」という本のリューゲン島のページを見たら、フリントとは潜晶質石英が長い時間をかけて地層の中で塊になったものであると書いてあった。チョークは湿っていれば柔らかく、モロモロとしてすぐに崩れるが、中にフリントが入っているとずっしりと重い。

博物館内にはいろんな化石の標本も見ることができる。化石には、古生物自体が残っているもの(体化石)と痕跡だけのもの(生痕化石)があルガ、生痕化石には古生物の内側の空洞に詰まった堆積物がその生物の形に固まったSteinkern(石核)と呼ばれるものも含まれる。こんな見事な石核を見てびっくり。

すごくない、これ?

地元のボランティアらにより運営されているというこのチョーク博物館、マイナーだけれど私にはすごく興味深かった。でも、まだまだ地学分野の素養が乏しくて理解が不十分。少しづつ学んでいこう。

チョーク博物館でチョークの展示を見た後、Saßnitzからチョークの崖に沿って歩いた。

岸辺の石はフリント。

崖に斜めの帯状のフリント層があるのが、わかるかな?

目に見える化石が埋まっていないか探したけれど、残念ながらほとんど見つけられなかった。大雨が降って土砂が崩れると探しやすくなる。今年のドイツは日照りで雨がほとんど降っていないからなあ。たまたま親族に円石藻の研究者がいて、私が「化石が見つからなかった」と報告したら、「私にとってはその地層の全てが化石」だと言った。なるほど確かに。そう知ると、もともとロマンチックな白亜の景色がますます魅力的に感じられるね。

 

今週末、写真ワークショップに参加するため、バルト海へ行って来た。

しかし、実は目的は写真ワークショップだけではない。バルト海といえば、「バルティック・アンバー」。そう、バルト海は世界有数の琥珀の産地である。バルト海沿岸の町には琥珀アクセサリーの店がたくさんある。私は美しい琥珀については知りたいが、琥珀アクセサリーを身につけたいとは特に思わないので、Ribnitz-Damgartenという町にある「ドイツ琥珀博物館 (Deutsches Bernsteinmuseum)に向かった。

 

 

ドイツ琥珀博物館は、修道院の建物の中にある。

 

ミュージアム内部は3階まであり、なかなか見ごたえがあった。

 

1階部分にはバルト海の琥珀に関する説明と、様々な種類の琥珀が展示されている。ケース越しのため、あまり綺麗に写真が撮れなかった。(実物はもっと綺麗)

 

 

 

天然樹脂が化石化してできる琥珀はドイツ語でBernsteinと呼ばれるが、 これは燃える石(Brennstein)を意味する。琥珀は炭素80%、酸素10%、水素10%でできており、ロウソクのように燃える。軽く、塩分を含む水中では浮き上がること、爪よりも少し硬いくらいの硬さで穴を開けたり彫刻のように削ったりしやすいのが特徴だ。

バルト海の琥珀は起源となる地質年代が非常に古く、世界で最も産出量が多く、種類豊富で品質が高い。また、学術研究も非常に進んでいる。インクルージョンと呼ばれる虫や植物が混入したものが多く見つかり、古生物学の貴重な標本でもある。インクルージョンの分析から、フェノスカンジアと呼ばれる北欧の森は5000年前には亜熱帯性気候であったことがわかっている

 

 

木の幹に止まった虫が樹脂の中に閉じ込められることは少なくないが、植物を含む琥珀は非常に珍しいそうだ。バルト海以外の場所でも琥珀は産出され、日本では北海道などで採れるが、白亜紀のものでバルト海の琥珀ほど起源が古くない。

人間は石器時代から琥珀を収集し、利用して来た。網で海中を探る原始的な採集法が大規模な採掘に取って代わられたのは19世紀後半で、海岸だけでなく、陸も掘り起こして採集するようになった。石器・青銅器時代から穴を開けて装飾品などに使われ、中世にはロザリオにも多く使われた。

 

 

また、現代医学が普及する以前は、民間医療にもよく使われていたらしい。細かい粉にして薬として飲んでいたというから驚きだ。

 

ミュージアムの2階にはキッズコーナーがあり、琥珀を使った工作ができる。

 

 

子どもの作ったステンドグラス風窓飾り。

 

 

数ユーロを払って好きな琥珀のかけらを選ぶと、磨いてペンダントに加工してくれる。5ユーロの小さな琥珀をペンダントにしてもらった。

 

3階には琥珀の美術品が展示されている。

 

チェスボード。

 

 

 

サンクト・ペテルブルクにあるエカテリーナ宮殿の琥珀の間の写真。ちなみにベルリンのシャロッテンブルク宮殿にも「琥珀の間」がある。

 

ミュージアムには琥珀アクセサリーのショップもある。夫はインクルージョンのある琥珀に大変ロマンを感じるようで、綺麗だね、買ったら?と私にしきりに勧めて来たが、私は5ユーロのペンダントで十分なので辞退した。

Ribnitz-Damgarten郊外には大きな琥珀アクセサリーの直売センター、Osteseeschmuckもある。バルト海産の琥珀は日本へも多く輸出されているが、日本ではおそらく割高と思われるので、プレゼントに良いかもしれない。

 

 

この週末、バルト海に面した保養地、Zingstへ行って来た。

ベルリンから車で北上すること3時間。人口わずか3000人ほどの小さな村で、特別珍しい建造物などがあるわけではないが、知る人ぞ知る観光地である。というのは、Zingstは美しい海岸を持ち、クアオルトと呼ばれる国指定の保養地の一つであるだけでなく、豊かな自然を利用した写真ツーリズムに大変力を入れているのである。

 

今回、私がZingstを目指したのは、週末ワークショップに参加するためだ。

 

 

Zingstは、細長く東西に弓のように伸びたFischland-Darß-Zingst半島の東部に位置する。この村がどのくらい写真ツーリズムに注力しているかというと、まず第一に毎年5月の末から6月にかけて、2週間以上に渡る大規模な自然写真フェスティバル、Umweltfotofestival Horizonte Zingstを開催していることが挙げられる。このフォトフェスには国内外の著名なプロ写真家及び4万人を超えるアマチュア写真愛好家が集まる。ギャラリー、ワークショップ、コンテスト、講演会、マルチメディアショー、写真・カメラマーケットなど、写真に関するあらゆる体験ができる一大写真イベントだ。パートナーにはEPSON、OLYMPUS、Leicaなどが名を連ねる。

 

私は去年、たまたま休暇でこの村を訪れ、そのときには残念ながらフォトフェスはすでに終了していたのだが、ギャラリーの一部がまだ残っており、展示されている写真のクオリティの高さに感動した。しかし、Zingstではフェトフェスの期間だけではなく、一年中、写真イベントやワークショップを開催している。そこで今回、私は週末ワークショップの一つに参加してみた。

 

ワークショップは、村の中心部にある、Max Hünten Hausというフォトスクールで行われる。

 

 

私が参加したのは金曜の午後から日曜のお昼までの風景写真ワークショップで、最初に導入として理論を学んだ後、計4回の撮影エクスカーションがあり、最後に写真の現像と批評会をする。定員は12名で、参加者はドイツ全国から来ていた。その中では私が一番の初心者だった。(しかし、自分のペースで撮影すればいいので、レベルが違うからついていけないというわけではない)

 

このワークショップでは主に海岸で日の出や日の入りを撮影することになっていたのだが、残念なことにこの週末は天気が悪く、内容が大幅に変更になってしまった。そのため、Zingstらしい風景写真はあまり撮れず、また、私の下手な写真では説得力に欠けるとは思うが、以下にアップするものに大幅に上乗せした内容だと考えて欲しい。

 

初日の夕方のワークショップでは夕日を撮影する予定が、雲がかかっていたため、近くの森で撮影することになった。森はうちの近くにもいくらでもあるので、ちょっとガッカリ。

 

 

水面に映った木を180°回転させてみた。

 

翌朝の日の出撮影も小雨で変更に。隣村の閉鎖された動物農場へ連れて行ってもらった。自然風景のワークショップに申し込んだのにと不満たらたらの参加者もいたが、廃墟はどんよりとした空にマッチしていて、私にはなかなか面白かった。

 

 

 

 

夕方のエクスカーション時には雨は止んでいたものの、サンセットは見られず、、、、。

 

 

 

最終日になって、ようやく良い天気に。

朝焼けにはならなかったけど、うっすらと夜が開けて来た。

 

 

 

西の空には月が。ズームが足りなくて、遠すぎ、、、、。

 

 

 

 

 

ようやく海辺らしい写真が撮れた。。

 

今回は天気には恵まれなかったが、その代わりにいろいろな種類の写真が撮れたから、まあ良いとしよう。

 

Zingstはまた、大量のツルが飛来することでも知られている。ツル観察&撮影イベントも魅力的だ。風景写真以外にも、動物、ポートレート、ルポルタージュ、ヌードなど、様々な写真テクニックを学ぶことができる。写真の好きな人にはとにかくオススメの観光地だ。写真の趣味はない人もサイクリングをしたり、お魚を食べたり、天気の悪い日にはクアハウスのテルメやクナイプバス、マッサージやエステでくつろぐなど、様々な楽しみ方がある。