ラインラント地方へ行って来た。ラインラントの主要都市の一つ、ケルンは私の古巣である。ドイツに来て最初の7年間を過ごした懐かしい町。ラインラントは今住んでいるブランデンブルク州とはかなり違い、様々な民族が共存し文化の混じり合うミックスカルチャーな地方だ。そのためか人々のメンタリティも一般的にオープンで気さくな感じがする。久しぶりに来た私もすぐに景色の中に溶け込める気がした。この辺りは人口が密集しており、観光スポットが充実している。
ではさっそく「まにあっくドイツ観光ラインラント編」、行ってみよう。最初はデュッセルドルフ近郊、Mettmannにあるネアンデルタール博物館から。
ネアンデルタール博物館はネアンデルタール(ネアンデルの谷)にある。その名を聞けば誰もがピンと来るだろう。そう、ネアンデルタールは、旧人「ネアンデルタール人」(正式名称、ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス(Homo sapiens neanderthalensis))の骨が発掘された場所である。
1856年、ネアンデル谷のフェルトホッファー洞窟で石灰岩を採掘中の労働者が洞窟の地下60cmほどの深さに人骨が埋まっているのを発見した。全部で16ピースの骨は頭蓋骨が洞窟の入り口に向いた状態で埋まっていた。
実は、ネアンデルタール人の骨が発掘されたのはこの時が初めてではなく、それ以前にもベルギーやジブラルタルでも見つかっている。しかし、それらは科学研究の対象とはなっていなかった。ネアンデル谷での化石発掘の3年後、チャールズ・ダーウィンが「種の起源」を発表し、センセーションが巻き起こったことから、たまたまタイミングよく見つかったネアンデル谷の化石が注目を浴びることになったそうだ。しかし、石灰岩採掘の際に洞窟ごと切り崩してしまったので、化石の正確な発掘場所がわからなくなってしまい、そのまま長いこと忘れ去られていたそうだ。1997年と2000年にネアンデル谷で考古学調査が行われ、1853年に発見されたものと同じ人骨のピースが新たに見つかり、ようやく発掘場所が特定された。ネアンデルタール博物館ではネアンデルタール人についてはもちろんのこと、人類史全般について展示している。
ネアンデルタール人の使っていた石器。これまでに他の考古学博物館で見たホモ・サピエンスの石器とは形が違う。ホモ・サピエンスのはもっと細長くて先端が鋭いものが多かったけれど、ネアンデルタール人のものは手のひらにすっぽり収まりそうだ。握り方や手の動かし方が違ったのだろうか?
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの頭蓋骨が並べて展示してある。
ネアンデルタール人は目の上の出っ張りが発達していて(眼窩上隆起)、おでこが平ら、頭の形もホモ・サピエンスほど丸くない。ホモ・サピエンスは耳の後ろの骨に大きな突起があって、顎が前に出ている。
ネアンデルタール人の歯の多くにはこの図のような溝が見られる。道具を使って歯と歯の隙間を掃除していた跡らしい。
この博物館の展示で特に面白いのは、ネアンデルタール人を始めとした化石人類を実物大に3D復元していること。
今、地球上の人類はホモ・サピエンスだけになってしまったけれど、かつては複数の種類の人類が地球上にモザイク状に共存していたのだよね。
ドレスアップしたネアンデルタール人さんとツーショット。ネアンデルタール人男性の平均身長は160cmくらいだそうなので、私のパートナーでも違和感ない!?
人類、皆兄弟。集合写真も撮れます。
これはタンザニアの火山灰に残っていた36万年前のヒトの足跡。1974年にエチオピアで発見されたルーシーと同じアウステラロピテクス・アファレンシスのものだそう。
壁画に関する展示は、展示スペースの下に穴が開いていて、洞窟の中に入った気分で展示を見ることができてなかなか良い。
他にも前回こちらの博物館で見た穿頭(トレパネーション)に関する説明や、地球の環境変化と人類の適応、世界で見られる様々な埋葬習慣についてなど、いろいろ興味深い展示があった。
さて、博物館を見終わったので、ネアンデルタール人の化石が発見された場所を見に行くことにしよう。博物館からデュッセル川沿いに400メートル歩いたところにある。
フェルトホッファー洞窟は切り崩されて今は存在しない。かろうじてその一部が残っているだけだ。
発掘場所。えっ、これだけ?と一瞬、拍子抜け。
でも、ネアンデルタール人が食べていたと思われる植物が植えられた区画があったりなど、当時が想像できるような工夫がしてある。
大人目線でレポートしたけれど、ネアンデルタール博物館は家族連れに人気のお出かけスポットのようで、賑わっていた。展示もわかりやすく、周辺には小さな動物園や遊歩道もある。
まにあっくドイツ観光ラインラント編はまだ続きます。