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ここのところ、「まにあっくドイツ観光マップ」作りにすっかりハマっている。ドイツ全国にある観光スポットのテーマ別マップを作成しようという試みで、これまでに「ドイツ考古学スポットマップ」と「ドイツ自然史博物館マップ」を作った。第三弾として植物園・植物関連施設マップを作成中である。ドイツ全国にある植物園の他、植物に関する博物館や学習施設の情報を集めていたら、ふと以前訪れたベルリンのヘンプ博物館を思い出した。大麻に関する博物館で、この「まにあっくドイツ観光」ブログを始める前に行ったので記事化していなかった。でも、写真とメモはあるので思い出しつつ記事にしておこう。これが、なかなか面白い博物館なのである。

 

ヘンプ博物館入り口

ヘンプ(大麻)はマリファナなどの違法な嗜好品の原料にもなることからなんとなくタブー視されていて、植物としてのヘンプについて詳しく知っている人はあまりいないのではないか。私もよく知らなかった。ヘンプはその部位ごとに用途が異なる。花は医薬品原料や嗜好品として使われ、種からはオイルが採れる。茎の繊維はテキスタイルや断熱材、建材などに利用できる。産業革命による近代化以前、ヘンプは生活のあらゆる場所で使われていた。ヘンプから採れる繊維は縄や布の原料となり、オイルは食用や石鹸の原料として使われた。

館内に展示されているヘンプの苗

ヘンプを原料とする様々なもの

しかし、近代化にともなって多くの労働力を必要とする大麻の栽培は衰退して行った。また、戦後、学生運動が盛んになると嗜好品としてのマリファナ消費が広がり、その撲滅キャンペーンの流れの中で大麻は産業用も含め全面禁止された。

しかし、1990年代からエコロジカルな建材としてヘンプが再び見直されるようになる。ドイツでは1996年に規制が緩和され、一定の条件のもとで産業用ヘンプの栽培が許可されるようになった。とはいえ、栽培許可が得られるのは専業農家のみで、使用できる種も認証を受けたもの(薬理効果を持つ成分、テトラヒドロカンナビノール、THC濃度が0.2%以下の種類)に限られる。また、栽培が禁じられていた20年ほどの間に栽培技術の継承が途切れてしまったため、ノウハウを持つ農家がいない。ヘンプは丈夫で生育が早く、わりあいどこでも育つのであまり世話は必要ないらしいが、収穫はかなり大変で人手がかなり必要なことや、せっかく収穫しても加工業者がいないなど、ヘンプ栽培に踏み切るために農家が超えなければならないハードルは多いようだ。

 

ヘンプの食料としての利用

農作物としてヘンプを栽培する際にはもう一つ厄介な問題がある。茎から採れる繊維の質が最高の状態になるのは種が熟する8〜12日前なので、昔は収穫してからしばらく置いておき、種が熟すのを待っていた。しかしそれでは工程が多くて効率が悪い。現代では繊維を利用するか種からオイルを採るかのどちらかに特化しなければ採算が取れない状況である。今後、ヘンプ栽培を拡大していくためには、繊維と種の両方を同時に利用する方法の確率が必要だとのこと。

私がこの博物館を訪れたのは平日の昼間だったが、中学生グループが来ていた。展示を見ながらメモを取っていたので、「学校の課題?」と話しかけると、「はい、そうです」と返事が帰って来た。

展示の前半はヘンプの様々な用途や利用の歴史についてだったが、嗜好品としてのヘンプ消費(つまりマリファナ)についても少なくない情報が提示されている。

大麻文化を描いた絵のギャラリー

水パイプなど

この博物館は別に怪しい博物館ではなく、ヘンプという植物に関する総合的な情報が得られる場所なのだが、大麻の合法化を求めるデモ「Hanfparade」参加者の集いの場にもなっているそうで、博物館内に「合法化しようよ」という空気が漂っていないと言えば嘘になる。ちなみに、ドイツでは医療用は2017年に合法化された。

ミュージアムショップにはいろいろなヘンプグッズが売っている。もちろん、薬理作用を持つTHC成分を含まない合法な商品ばかりだ。

ヘンプに関する書籍もいろいろ

ヘンプコンドーム

せっかく来たから何か買っていこうと、いくつか選んでみた。買ったのはヘンプ茶、ヘンプチョコレート、ヘンプドリンク。(念のためもう一度言うけど、THC成分は入ってないので、摂取してもハイにはなりません)

ヘンプチョコレートは甘さ控えめで独特の食感で美味しい。ヘンプ茶はそれほど美味しくはなかったが、飲めないこともない。しかし、ヘンプドリンクは強烈な味だった!あまりにもまずくて、どうしても飲みきれなかった。