もう7年も前になるが、ドイツ西部の火山地帯を訪れたことがある。一般に、ドイツには火山のイメージがないと思うけれど、アイフェル地方は現在も火山活動が続いている地域だ。ただし、山頂から噴煙が上がったり、溶岩が流れ出したりという、視覚的にわかりやすい火山活動ではなく、森の中で静かに水をたたえるマール湖や地層の中の岩石にその痕跡が見い出し、湧き出る美味しい炭酸水に火山活動の恩恵を感じるという、わりあい地味なものである。
でも、それはそれで意外性があって、とても面白いのだ。アイフェルの火山地帯については、こちらの過去記事シリーズに詳しく書いている。いろんな角度から楽しむことができたけれど、このとき一つだけ、見そびれたものがある。それはコブレンツ近郊アンダーナハにある間欠泉、ガイジール・アンダーナハ(Geysir Andernach)だ。
間欠泉とは、一定の周期で地下から蒸気や熱水が噴き出す自然現象のことで、アイスランドのゲイシール(Geysir)が特に有名だ。Geysirという言葉はそのままドイツ語で「間欠泉」を意味する言葉になっている。火山大国、日本にも間欠泉は各地にあり、それ自体は特別珍しいものではない。でも、ドイツにあるGeysir Andernachは、同じ間欠泉でも、ちょっと違うのだ。一般的に間欠泉というと、噴き出すのは熱水だ。地下水がマグマの熱で温められ、100度を超えて蒸気になるときに体積が大きく膨らみ、その圧力で地下水が勢いよく噴出する。それに対し、アンダーナハでは、地下深くにたまった二酸化炭素(CO₂)が水と一緒に地上に噴き出て来る。このような現象はドイツ語ではKaltwasser-Geysir(直訳すると、「冷水の間欠泉」)と呼ばれる。
このたび、とうとうガイジール・アンダーナハに行って来た。以下はそのレポートである。
間欠泉を見るためには、Geysir Expeditionというツアーに申し込む必要がある。博物館とボートによる間欠泉見学がセットになった観光アトラクションだ。間欠泉はライン川岸辺の自然保護区にあり、ツアーボートに乗らないとアクセスできない。

アンデルナッハ中心部にある博物館(Geysir Museum)
展示は、鉱山のリフトを模したエレベーターに乗って地下4000メートルに潜るという演出から始まる。エレベーターが下降するにつれて気温がぐわーんと上がって地下の高温の世界がイメージできるなど、なかなか凝っている。その後は地中から地表へと水と二酸化炭素が上昇していくルートをたどりながら、地球の内部構造や火山活動、そして冷水間欠泉の噴出メカニズムを学べるようになっている。


ビジュアル的に面白く、ハンズオンの展示も豊富で、ファミリー客で賑わっていた。展示の説明もわかりやすい。
アンダーナハの間欠泉は、1903年に天然のミネラルウォーター源の探査ボーリング中に偶然発見された。古い火山地帯であるこの地域では、岩石の割れ目や断層にマグマ由来のCO₂が蓄積され、それが地下水に溶け込んで炭酸水となっている。地層に閉じ込められて高圧状態になっているのがボーリングによって一気に解放され、CO₂がガス化して地下水ごと勢いよく噴き出し、不思議な現象として注目を浴びた。現在、観光資源となっているのは2006年に新たに掘られた深さ350mの井戸だ。
博物館で予習をしたら、 Namedy号に乗って、噴出地点のNamedyer Werthへ移動する。

ライン川沿いの崖には粘板岩の層がむき出しになっている。
Namedyer Werthは現在は岸と合体して半島になっているが、もともとは中州だった地形で、自然保護区に指定されている。

橋を渡って上陸。
噴出はだいたい2時間毎で、その時間に合わせてツアーが組まれている。

アイスランドのゲイシールを見に行ったことがあるが、アイスランドでは地面がゴボゴボッといったと思うと、次の瞬間にバッシャーンと爆発的に熱水が噴出し、それで終わってしまう。なので、シャッターチャンスを逃さないようにするのが大変だった。その経験が頭にあったので、カメラを連写モードに設定して挑んだのだが、アンダーナハの間欠泉は、なんと15分間も噴出し続ける。最初はおお!と思うけれど、長過ぎて、見ているうちに飽きてしまった。

最大で高さ60メートルまで噴き上がり、世界で最も高く上がる冷水間欠泉としてギネスブックにも載っているそうだ。水の温度は10〜20℃で無臭。

噴出開始からピーク時までは周りに人だかりができていて噴出口が見えなかったが、みんなが船に戻るために移動し始めた後に見たら、井戸の周りに石が積まれている。うーむ。なんだかディズニーランドの仕掛けみたいだなと、やや興醒め。でも、この間欠泉が人工的な噴水ではなく自然現象であることは確かで、地質学的にとても興味深い。





































































実はまさにこのときエトナ山は噴火していたのだった。この角度からは黒煙は見えないので気付いていなかったのだが、後から知り合った人に「9月21日にエトナ、噴火したよね。うちの車に火山灰が降ったよ」と言われて気になって


































































ロープウェイ降り口付近から見た、どこまでも広がる真っ黒な景色。大きな火山だと実感する。周辺を見回すと、右側の小山に登っている人たちがいる。私たちも登ってみることにしよう。


































化石コーナー。
