投稿

北海道ジオ旅も終盤。いよいよ待ちに待ったアポイ岳UNESCOグローバルジオパークへ行くときが来た。アポイ岳ジオパークは、日高地方南部、様似町を中心に広がるジオパークで、「幌満かんらん岩」と呼ばれる、学術的にとても貴重なかんらん岩が観察できる。

かんらん岩というのは地球の上部マントルをつくり、玄武岩マグマのもととなる岩石である。地球はよく卵に例えて説明されるが、地殻を卵の殻だとすると、マントルは白身の部分にあたる。かんらん岩を構成する造岩鉱物のうち主となるのはオリーブ色の「かんらん石」で、大きくて綺麗な結晶はペリドットと呼ばれている宝石だ。かんらん岩は地球の体積の8割以上を占める圧倒的に多い岩石だけれど、厚い地殻の下にあって、そう簡単にはお目にかかれない。アポイ岳を含む日高山脈はおよそ1300万年前にユーラシアプレートと北米プレートが衝突することでできた山脈だが、その際、北米プレートの端っこがめくれあがって大陸プレートの上に乗り上げ、マントルの一部が地表に露出した(例えれば、ゆで卵の白身が殻の外にはみ出してしまった状態)。かんらん岩は変質しやすい岩石で、地表に露出すると普通は蛇紋岩という別の岩石になってしまうが、アポイ岳とその周辺ではほとんど変質していないかんらん岩を見ることができる。それが「幌満かんらん岩」なのだ。


アポイ岳ジオパークは、「幌満峡エリア」「アポイ岳エリア」「様似海岸エリア」「日高耶馬峡エリア」「新富エリア」の5つのエリアに分かれている。できれば丸2日は時間を取ってじっくりと全部のエリアを回りたいところだけれど、お天気と宿泊の事情で日帰りコースになってしまったので、今回はアポイ岳に登るのは諦めて、「幌満峡エリア」と「様似海岸エリア」、「日高耶馬峡エリア」を見ることにした。その前に、まずは「アポイ岳エリア」にある「アポイ岳ジオパークビジターセンター」でジオパークの概要を掴もう。

アポイ岳ジオパークビジターセンター

幌満かんらん岩体はプレート境界の東に、東西8km、南北10kmにわたって広がって露出する。

ビジターセンターに展示されているプレートの衝突現場

ビジターセンターに展示されている世界のかんらん岩標本の中に、ドイツのアイフェル地方産のものがあった。

アイフェル地方のかんらん岩は現地で実際に見たことがある。

アイフェル地方のかんらん岩

ただし、同じかんらん岩でも、アイフェルで見つけたのは火山噴火で飛び出して来た溶岩の中にかんらん岩が捕獲されているゼノリスというもので(詳しくは過去記事を参照)、アイフェル地方ではアポイ岳のように大規模なかんらん岩体が地表に露出しているわけではない。ちなみに、溶岩に捕獲された状態で地表に転がっているかんらん岩はカナリア諸島のランサローテ島でも見た。

ランサローテ島のかんらん岩捕獲岩

大きな結晶!

ひとくちにかんらん岩といっても、様々な種類があることがわかった。かんらん岩はかんらん石だけでなく、斜方輝石(飴色)、単斜輝石(エネラルドグリーン)、スピネル(黒色)、斜長石(白色)などでできている。その割合によって、呼び名が異なる。かんらん石の割合が最も多い(9割以上)のがダナイト、かんらん石を6割以上含み、斜方輝石と単斜輝石の両方を含むのがレルゾライト、かんらん石を6割以上含み、斜方輝石が多いのがハルツバージャイト、レルゾライトのうち、斜長石を多く含むものは斜長石レゾルライトと呼ばれる。

なぜそのような違いが生まれるのだろうか。かんらん岩を構成する鉱物はそれぞれ融点が違い、溶けてマグマになる際には溶けやすいものから順番に溶け出す。すると、残った方のかんらん岩の鉱物の種類や割合が変わる。展示ではかんらん岩をオレンジに例えて、斜長石レルゾライトはオレンジジュースを絞る前の状態のかんらん岩、オレンジをちょっと絞るとレルゾライトになり、もっと絞るとハルツバージャイトになると説明していてわかりやすかった。ところで、「ハルツバージャイト」という岩石の名前はなんだか覚えにくいなあと最初思ったのだけれど、英語表記のHarzburgiteという文字を読んで、ハッとした。Harzburgというのはドイツのハルツ山地にある地名、ハルツブルクではないのか?ということは、ハルツバージャイトというのは「ハルツブルクの岩」という意味になる。ハルツバージャイトはドイツ語の岩石名ハルツブルギットの英語読みなのだった。

さて、ビジターセンターでざっくりとかんらん岩について知った後は、実際にフィールドでかんらん岩を見てみよう。向かうは「幌満峡エリア」の幌満川峡谷にある旧オリビン採石場下の河原だ。

旧オリビン採石場

オリビン(olivine)というのは英語でかんらん石のこと。地表はほんのり薄い緑色をしている。

旧オリビン採石場の下の河原

石を観察しに河原へ降りた。ごろごろした石の多くは黄褐色をしている。

が、割れているものを見ると、中は緑。

いろんなのを1箇所に集めてみた。いろいろあって面白い。

熱心に石を観察する私たちを、崖の上からシカたちがジーッと見ていた。

 

後編に続く。

 

この記事の参考文献:

北海道新聞社 『ユネスコ認定 アポイ岳ジオパークガイドブック

藤岡換太郎 『三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち

アポイ岳ジオパークビジターセンターの展示

前回の記事の続き。前回、北ドイツの至るところで目にする石の多くは、最終氷期に氷に押されてスカンジナビアからやって来たもので、総称してゲシーベ(Geschiebe、「押されて移動したもの」の意)と呼ばれることについて書いた。そしてそのゲシーベには実にいろいろな種類があり、建材や石畳の敷石などによく使われ、北ドイツの町をカラフルにしている。今回はゲシーベの種類についてわかったことをまとめようと思う。

私と夫はよく家の近所の森を散歩するのだが、散歩のついでに綺麗だなと思う石や見た目の面白い石をよく拾って来る。夫は漬物石サイズの石、私は小石やジャガイモ程度のものをよく集める。

森の中で面白い石を探しているところ

拾った石は、特に気に入っているものは家の中に飾り、サイズがちょうど良いものは庭の花壇の区切りに使ったりする。あとは他に使い道が思いつかないので、庭に適当に並べてある。

どうすんのこれ?と思わないでもないけど、、、

しかし実は、これらの石がどういう種類の石なのか、今まで全然わかっていなかった。ちょっと調べてみようという気になったのは、先日、給水塔の写真を撮りに訪れたベルリン近郊の町、Fürstenbergの博物館でゲシーベに関する展示を見たためだ。Museum Fürstenwaldeはいわゆる郷土博物館なのだが、地下にゲシーベ展示室があり、充実したゲシーベコレクションが見られるのだ。

ゲシーベ標本の棚

どうしてかわからないけど、私、こういう標本棚にすごく惹かれるのだよね。いつまで見てても飽きないというか、すごくリッチな気分になれるというか。この日も「わ〜。ゲシーベっていろんな種類があるなあ〜」と喜んで眺めていたのだが、見ているうちに「うちの庭にあるゲシーベたちはこれらのうちのどれとどれなんだろうな?」と知りたくなった。

 

そこで、一般向けにわかりやすく書かれた北ドイツの石の本を読んでみた。左の本は北ドイツのゲシーベ全般について説明したもの。右のはバルト海の海岸の石の本。バルト海の海岸はコロコロしたカラフルな石でぎっしりだが、それらも基本的にブランデンブルク州で見られるのと同じゲシーベである。海岸では波に打ち砕かれて小さく丸くなっている。

 

 

バルト海で拾って来た小石もたくさんあるので、それらを含めた手持ちのゲシーベと本に載っている写真を見比べながら読んだ。えーっと、では、わかったことを簡単にまとめていこう。

まず、むかーし学校の地学で習ったことのおさらいから。岩石の種類には大きく次の3つがあったよね。

1 火成岩  マグマから固まってできた岩石

2 堆積岩  降りつもったものが固まってできた岩石

3 変成岩  既にある岩石に熱や圧力が加わって変化してできた岩石

 

 

1のグループの火成岩は、さらに深成岩、火山岩、半深成岩というサブグループに分けられる。それらの詳しいことは置いておいて、ゲシーベの中で最も多い岩石は花崗岩だ。花崗岩はどんな石かというと、日本ではよくお墓の石に使われるまだら模様の硬い石。御影石と呼ばれているよね。

 

日本の墓石はグレーっぽいのが多いけど、花崗岩にはいろんな色のものがある。花崗岩に含まれる主要な鉱物は石英と長石だが、その隙間に混じった他の有色鉱物によっていろんな色を帯びる。

 

断面。ピンクっぽくて綺麗。

 

ゲシーベに関するkristallin.deというサイトの画像ギャラリーに似たものがないか、探してみた。

 

うーーーん、似たようなのがいくつもあって特定するのが難しい。Karlshamn-Granitという花崗岩が一番近いように見える。もし、推測が当たっているとすれば、スエーデン南部のブレーキンゲ県にあるカールスハムンという町から転がって来たということになる。カールスハムン花崗岩は比較的若い石のようだ。とはいっても14億年前くらい前に生成されたって、気が遠くなるほど昔だね。カールスハムン、どんな町なんだろう?うちにあるこのピンクがかった石の兄弟石があちこちにあるのだろうか。行ってみたくなるじゃないか、カールスハムン。(うちの子はカールスハムン花崗岩じゃないかもしれないけど)

花崗岩は硬くて風化しにくいので、大きな塊のままドイツまで移動して来ることがが多かった。だから、迷子石(詳しくは前回の記事を参照)には花崗岩が多いんだって。

 

次のグループは斑岩。花崗岩と同じ1の火成岩の仲間だが、サブグループは火山岩。地表付近で急激に冷えて固まったのでヒビがあって割れやすく、迷子石として見つかることは稀。つまり、小さいものが多い。

 

おおっ!これは特定できた。特徴的だからたぶん間違いない。発表致します。この子はGrönklitt-Porphyr(グランクリ斑岩)。スエーデン中部のダーラナ県の出身です。ところで、化石には示準化石といって、それが含まれる地層が堆積した地質年代がわかる化石があるが、ゲシーベにも示準ゲシーベがあるらしい。このグランクリ斑岩は示準ゲシーベの1つ。つまり、斑岩系のゲシーベの中ではよく見つかるものみたい。

 

 

さて、次は2のグループ、堆積岩を見ていこう。

砂岩

砂岩は主に石英の砂つぶが固まってできたもの。砂岩にもいろいろあるみたいでなかなか難しいけど、こういう縞模様ができているものは見分けやすいな。

 

 

フリント

フリント(燧石)も堆積岩の仲間。割ると断面はツルツルとして光沢があり、へりはナイフのように鋭利だ。この特徴から石器時代には矢じりや小刀など道具に加工して使われていた。「火打ち石」の名でも知られている。ドイツ語では一般的にはFeuersteinという。「Feuer(火)Steinn(石)」って、もろそのまま。ドイツ各地の考古学博物館ではフリントの石器が必ず見られる。

 

バルト海のリューゲン島には広大なフリントフィールドがある。地面がフリントで埋め尽くされている。この光景を初めて見たときには一体これは何だろうとびっくりして、石の上に座り込んで1時間以上、石を見ていた。

こんなにぎっしりではないが、ブランデンブルク州でもフリントがあちこちで見られる。バルト海の底で形成されたものがゲシーベとなって南へと押されて移動して来たから。フリントはブランデンブルク州をはるかに超えてザクセン州のドレスデンの南まで移動していた。フリントの見つかる限界線Feuersteinlinie(フリントライン)は40万年前に始まり32万年前に終わったエルスター氷期の末端部(エンドモレーン)とほぼ一致しているので、地面の中にフリントが見つかれば、その場所はエルスター氷期に氷に覆われていたということになる。フリントについて書き始めると長くなりそうなので、また別の機会に。フリントについては過去記事に詳しくまとめた。

そして最後は3のグループ、変成岩のゲシーべ。

 

よく見られる変成岩のゲシーベは片麻岩(Gneis) 。

以上、北ドイツで見られるゲシーベの種類をざっくりとまとめてみた。ゲシーベにはこの他、化石を含んだ岩石や琥珀などもある。ドイツの化石についてはたくさん記事を書いているので、ご興味のある方はカテゴリー「古生物」からどうぞ。琥珀についてはよかったら過去記事を見てね。

さて、北ドイツでの石拾いが楽しいということは伝わっただろうか。先日、知人とお喋りしていたら、彼女が「なんでも突き詰めると地理と歴史に行き着くよね」と言った。名言だと思った。そう、この世に存在するものはすべて、空間と時間という2つの軸のどこかに位置している。うちの近所に転がっているゲシーベは遠い遠い昔、スカンジナビアのどこかで形成され、長い長い旅の末にここ、ブランデンブルクにたどり着いた。私もスカンジナビアよりもずーっと遠い日本からたどり着き、ここで生活している。ゲシーベと私はどちらもドイツ生まれではない、よそ者。なんだか奇遇だね。

ゲシーベについてもっと詳しくわかったら、「発展編」を書こう。

 

鉱石観光の第三弾。(第一弾第二弾もよろしければどうぞ)

イーダー・オーバーシュタインに来たからには「ドイツ貴石博物館(Deutsches Edelsteinmuseum)」は外せない観光スポットだ。イーダー・オーバーシュタインのオーバーシュタイン側には「ドイツ鉱石博物館(Deutsches Mineralienmuseum) 」もあり、どちらを先に見るか迷ったが、イーダー側にある貴石博物館を先に見ることにした。

この立派なヴィラがドイツ宝石博物館の建物

3階建ての建物内部にはおよそ1万点の展示物が展示されている。イーダー・オーバーシュタイン周辺で採れた貴石はもちろんのこと、世界中の希少な貴石や貴石を加工した美術品を見ることができる。

入り口を入ってすぐの展示室に展示されているのはこの地方で採れた石英やメノウ。イーダー・オーバーシュタインがドイツの宝石産業の中心地となったのはメノウが豊富に採れるからだ。イーダー・オーバーシュタインにおけるメノウの埋蔵に関する最古の記録は1375年に遡る。

展示室の中央には研磨工場のモデルが置かれている。イーダー・オーバーシュタイン周辺では貴石やダイヤモンドの研磨業がドイツ国内では他に類を見ない発展を遂げ、1924年にはなんと2400 もの研磨業者が存在したという。

私はどちらかというとアクセサリー用にカットされ磨かれた石よりも原石の結晶構造を眺めるのが好きで、また、単色の石よりもメノウやジャスパーのように様々な模様を作り出す石が好み。メノウの断面の模様は抽象画のようで、いろいろな色の組み合わせや模様のものがあって魅力的である。山田英春氏の「奇妙で美しい石の世界」を読んでとても興味を持つようになった。だから、イーダー・オーバーシュタインでメノウを見るのをとても楽しみにしていた。

見事なメノウの数々

写真の陳列棚の上に一つの石スライスしたものが一列に並べられているが、一枚ごとに模様が少しづつ変化して行くのが面白い。

クローバーの葉のような模様のメノウ(ピンボケ失礼)

これはフィレンツェ産のパエジナストーン

ついメノウばっかり撮ってしまうが、その他の様々な宝石や人工石、鉱石を加工した美術品も数多く展示されている。

今まで意識したことがなかったトルマリンもステンドグラスのような模様が良いなと思った。

どうも私は同じ博物館でも美術館系だと言葉でうまく説明できない。美しいものがたくさんだからとにかく見に行ってとしか、、、。

次回はドイツ鉱石博物館を紹介します。

 

前回の記事ではフンスリュック山地での化石探しエクスカーション、Steinerne Schätze Hunsrücks – Geführte Mineralien- und Fossiliensucheについてレポートした。今回はその同じ週末エクスカーションの二日目、鉱石探しについて書く。二日目はグッと参加者が減って、ガイドのヴァルターさんの他は3人だけだった。

そもそもイーダー・オーバーシュタインに来たのは鉱石を見るためだ。フンスリュック山地、特にイーダー・オーバーシュタイン周辺は昔から貴石、特にアメジストや瑪瑙がよく採れ、貴石の研磨・加工技術が発達した地域である。19世紀以降は産出量が減り、宝石産業は一時衰退したが、新天地を求めて多くの労働者が移住したブラジルで運よくも鉱脈を掘り当て、上質な貴石とともに帰還する。すでに研磨技術や加工ノウハウが蓄積されていたため、イーダー・オーバーシュタインはドイツの宝石産業の中心地となった。どちらかというとあまり目立たない町だが、現在もドイツの誇るhidden champions(隠れたチャンピオン)の一つとして世界的に重要な宝石貿易の拠点である。

さて、エクスカーションであるが、二日目の集合場所はイーダー・オーバーシュタインから北東12kmほどのところにある観光銅鉱山、Historisches Besucherbergwerk Fischbachだった。まずは500年以上前から1792年にフランス革命軍に占領されるまで銅の採掘が行われていたこの銅山を見学する。

ヘルメットを被って坑道の中へ

去年の秋にシュヴェービッシェ・アルプ地方で洞窟三昧の1週間を過ごしたので、洞窟にはすっかり入り慣れてしまっているが(例えばこれなど、ものすごいので見てね)、ここもかなりの規模で見応えがあった。

鉱夫の守護聖人、聖バルバラ

これは自然に形成された洞窟ではなく、鉱夫がハンマーで岩を叩いて広げていったものだが、これだけ掘るのに一体どれだけの労力が費やされたのだろうか。

今日もエクスカーションのガイド、ヴァルターさんに案内してもらった

内部の各所には鉱夫人形が置かれ、当時の作業の様子が伺える

ヴァルターさんは地質学的な説明だけでなく、社会文化史にも触れた説明をしてくださって面白かった。下の動画のように古い砕石機の実演などもあるので、子どもにも面白いと思う。今回の記事のテーマは鉱石探しなので、銅鉱山の詳しい説明は省略して次に行こう。

鉱山を見学した後は、山の裏手に回っていよいよ鉱石探しだ、

普通の山にしか見えないが、、、

地面を見るとカラフルな石がたくさんある。緑色はマラカイト(孔雀石)の色だそう。ヴァルターさんに「ここではMandelsteineを探しましょう」と言われた。Mandelsteineとは直訳すると「アーモンドの石」である。アーモンドの石とは何だろうか?

説明によると、この一帯はかつて火山活動によって溶岩が流れた地域で、火成岩内部で気泡が固まってできた空洞(晶洞、ジオード)が結晶で満たされたものをMandelと呼ぶそうだ。つまり、Mandelを割ると中に結晶を見ることができる。この地域で多く産出される瑪瑙もMandelの一種で、結晶が層状になり美しい縞模様を作る。(瑪瑙の話は改めて別記事で)

Mandelsteineを探しているところ。ヴァルターさんは「大きければ大きいほど良い」と言うが、大きなMandelはなかなか見つからなかった。

石英の結晶が詰まったMandel。

ピンボケの下の石には層状の模様があるが、なんだかよくわからない。化石探しも鉱石探しもまだ初心者なので、初めての採掘場所に行くと何をどう探していいのかわからないまましばらくうろうろしてしまう。残念ながらここで見つけられたのはこのくらいだった。

お昼ご飯を食べた後は、イーダー・オーバーシュタインから20kmほど北西のMorbachにある石英採石場へ移動。

今度はここで水晶を採るそうだ。許可なしで立ち入るのは禁止だけれど、専門家の同行するエクスカーションなのでこの日は特別だ。

作業したのは道路が通っている3段目

地層の湾曲やずれもすごくて、見るだけでもけっこう面白い

石英の結晶は岩の裂け目に形成されている。こうした裂け目のあたりをハンマーでガンガン叩き割り、透明な水晶を取り出すのだ。

しかし、、、はっきり言って危ないわ、これ。上から石が落ちて来る可能性があるし、足場もすぐにガラガラと崩れて滑り落ちそうになる。そもそも非力の私にはハンマーで岩を割るということからして難しい。ましてや急斜面では到底無理。鉱石探しワークショップがこんなサバイバル的なものだとは聞いていないぞ!仕方ないので力仕事は男性たちに任せ、私は水晶の埋まっていそうな場所を探すのを担当した。

でも、意外と地面にころんと転がってたりもする。ヴァルターさんは特別に繊細で美しい結晶を見つけ、「奥さんにプレゼントしよう」とつぶやいていた。なんか、いいなあ。お店で買ったものより嬉しいかもね。

私たちの収穫はこんな感じ

これが一番気に入った。

まあ、たかだか水晶の小さなかけらのためにわざわざ体を張って、、、と思わないでもない。でも、一生に一度くらいはこういうの体験してもいいんじゃない?面白かったよ。

ドローン動画を撮影したので、おまけに貼っておこう。

見どころがたくさんな火山アイフェル・ジオパーク。次に足を運んだのは、天然炭酸水「ゲロルシュタイナー」の採水地があることで有名なゲロルシュタインだ。火山活動が今尚活発なアイフェル地方には炭酸を多く含む水の湧き出る泉がたくさんある。「ゲロルシュタイナー」はドイツ国内で最も流通しているミネラルウォーターブランドなので、ドイツに住む人で知らない人はいないだろう。世界への輸出量でもナンバーワンらしい。(余談になるが、私たちが滞在していたシャルケンメーレン村から数キロのところにあるダウンで生産されているミネラルウオーター、「ダウナー」もとても美味しかった。)

でも、私たちがゲロルシュタインへ行った目的は水を飲むためというわけではなく、自然史博物館(Naturkundemuseum Gerolstein)を訪れるためだった。

ゲロルシュタイン自然史博物館

この博物館は4フロアから成り、1階が鉱物、2階が化石、3階が考古学、4階が蝶のコレクションという構成である。

特に鉱物の展示が充実している。

そしてここでもガラス化した砂岩をいくつも見た(詳しくはこちら)。やっぱりどう見ても陶器に見えるなあ。

瑪瑙もたくさん見られて嬉しい。ドイツの瑪瑙の名産地として真っ先に頭に浮かぶのはイーダー・オーバーシュタインだが、アイフェルのアーレンラート(Arenrath)という地域では「アイフェル瑪瑙」と呼ばれる瑪瑙が採れるらしい。

では、次は化石コーナーを見てみよう。

アイフェル地方はかつては不毛な地とみなされ、「プロイセンのシベリア」と呼ばれていた。しかし、アイフェルを訪れたドイツの偉大なる博物学者、アレクサンダー・フォン・フンボルトはここに大量の化石を発見した。見つけた化石を持ち帰るために周辺の農家の女性たちから靴下を買取理、中に化石を詰めて運んだという逸話があるらしい。アイフェルで見られる化石には腕足類、貝、サンゴなどが多い。

中期デヴォン紀のハパリデウム目ハパリデウム科メソフィルム属のmaimum maximumというサンゴ。結構な大きさ。

ダクティリオセラスというアンモナイト。芸術作品みたい。

ブローチ屋?という感じである。

これは何!? Storomatoporoideaと書いてある。家に帰ってから調べたら、日本語では層孔虫類と出て来た。日本大百科全集の説明によると、

石灰質の共有骨をもつ化石動物で、ストロマトポラないしストロマトポロイドともよぶ。その群体の外形は円錐(えんすい)状、半球状、樹枝状、塊状、皮殻状をなし、大きなものは数メートルに達するものがあった。共有骨は垂直な柱状のピラーpillar(支柱)と水平なラミナlamina(葉理)の2要素よりなり、これらの配列、密度、厚さなどにより属種が区別される。また共有骨の表面および内部には、層孔虫特有の星形放射状の星状溝の現れることがある。
層孔虫の所属についてはいままで多くの説があり、そのなかでヒドロ虫類起源説が一般的であった。ところが、海綿動物の硬骨海綿のあるものの溝系(こうけい)(流水系。体内に海水を流通させて摂食や消化などを行う海綿特有の組織系)の出口が、層孔虫特有の星形の溝によく似ているという発見があり、海綿起源説が有力になった。古生代前期から中生代後期まで生存したが、古生代シルル紀からデボン紀にかけてと中生代のジュラ紀に繁栄のピークがあり、標準化石となっているものも多い。わが国でもこの両時期の礁性堆積(たいせき)物中に多数発見されている。
古生代のものにはクラスロディクチオン、アクチノストロマなど、中生代のものにはパラストマトポラ(もとはストロマトポラStromatoporaとされたが、この属名は現在は古生代のもののみに使われる)、ミレポリジウムその他が知られている。[藤山家徳]

だそうだけれど、うーん、よくわからない。今後の課題にしよう。

これまたすごい。いろんな種類の化石がびっしり。

これも、一体どれだけ?というほど化石が埋まった石。

アイフェル地方はデヴォン紀の化石が豊富な地方であるということがよくわかった。ところで、展示を見ていた夫が「うちにもデヴォン紀の化石があったかもしれない」と言い出した。夫も夫の父もいろんなところからいろんなものを拾ったり貰ったりして来て溜め込んでいる人で、家には出所を忘れてしまったよくわからないものがたくさんあるのだが、その多くは古いもので化石もいくつかある。そのうちの一つがアイフェルのあちこちの博物館で見るデヴォン紀の貝の化石に似ていると言うのだ。

家に帰ってから、うちにある出どころ不明の化石を眺めてみた。言われてみればデヴォンっぽい?この問いは今後他の博物館を見ていくうちにはっきりするかもしれない。

この日は頭が地学モードで、3階の考古学、4階の蝶はさらっと見ただけなのでここでは紹介しない。

館内を一通り見て1階に戻り、受け付けに座っていた男性に「化石に興味があるんですが、化石探しのワークショップはありませんか」と聞いてみた。男性は今年就任したばかりのこの博物館の館長だった。残念ながら化石探しのワークショップはないとのことだったが、「私は古生物学者です。歴代の館長は皆、鉱物学者で、古生物を専門とする者が館長になるのは私が初めてなんですよ。今後、古生物学部門をさらに充実させて行きたいと思っています」と言いながら、アイフェルの化石について少し説明してくださった。ゲロルシュタインからそう遠くない場所に化石がたくさん見つかる場所があるとのこと。主にサンゴの化石で、脳サンゴも見つかるという。

「それはどこですか?」と身を乗り出して尋ねたら、場所を教えてくださった。

「早速行こうぜ!」

私たちは慌てて車に飛び乗った。しかし、場所を教えてくれたとはいっても「〇〇村と△△村の間くらいのところ」という大雑把な情報で、正確な地点がわかったわけではないが、とりあえず〇〇村と△△村の間へ行ってみた。畑の広がる、ごく普通の田舎の風景が広がっていた。しかし、夫が「ここ!ここにあるかもしれない!」とトラクターで耕された畑を指差すので車から降りて地面を見ると、

いきなり!サンゴ!

二人で目を見合わせてしまった。そして驚くことに、地面にはゴロゴロと芋のように大量の化石が転がっているのだ。なるほど、アレクサンダー・フォン・フンボルトが靴下を買い占めたわけだ。すごかったなー。

拾って来た化石

 

こんなわけで、アイフェル旅行によってますます楽しくなって来た鉱物&化石探し。ドイツ地学は本当に面白い。

火山アイフェルに関するレポートは次回で最終回です。

旅先の自然史博物館でその地方の自然について知るのは面白い。ダウンの火山博物館では「天然の焼き物」とも呼べそうな表面がガラス化した不思議な石が印象に残った。化石コーナーではデヴォン紀の化石をたくさん見た。(詳しくはこちら

でも、ただ見るだけではちょっと物足りない。最近、フィールドに出て自分で鉱物や化石を探す愉しさに目覚めてしまった私と夫である。これまでに南ドイツのゾルンホーフェンリューゲン島での体験が楽しかったので、アイフェルでも似たようなことができないだろうかと考えた。ダウン市のツーリストインフォメーションで「地質学的なガイドツアーやワークショップはありませんか」と聞いたところ、偶然にも翌日にプルファー・マールの側のキャンプ場で地質学者による「アイフェルの石の見分け方」というワークショップをやるというので申し込んだ。

ワークショップでは引退した地元の地質学者がアイフェルの地質や火山の仕組み、アイフェルで見られる岩石や鉱物について実物を見せながら説明してくれるというも。

参加者は私たちを入れて十名ちょっと。中学生くらいの子どもを連れた家族連れもいた。その日は平日の午前中だったけど、すごくマイナーな内容の有料ワークショップ(一人8ユーロ)でも成立してしまうんだよね〜。しかも、参加者は真剣に説明を聞く。地学博士はなんと90分もかけてたっぷりと説明してくれた。

見せてもらった石のうち、一番いいなと思ったのはドイツ語でOlivinbombeと呼ばれるこんな石。マグマが異質の岩石を取り込んだ捕獲岩(ゼノリス)の一種で、地下深くのカンラン石(ペリドット)を捕獲したため、こんな綺麗な緑色をしている。以下の2枚の写真はこの後改めてレポートするゲロルシュタインの博物館で見たものだが、アイフェル地方ではいろいろな捕獲岩が見つかるらしい。

 

ワークショップの最後にはみんなで溶岩の塊を割って中を見た。プルファー・マールの周辺には火山の噴火で噴出されたジャガイモのような形の溶岩の塊がたくさん落ちている。割ると内部に鉱物の結晶が見られるものがあるという。

「さっき、裏の畑でいくつか塊を拾って来ましたよ。さあ、割ってみましょう」

残念ながら、私が割った石の中には結晶は見られず、均一なグレーだった。わ〜ん、悔しい!

「残念でしたね。でも、裏の畑にたくさん落ちてるから、拾って割ってみるといいですよ」と先生。そう言われたら、拾うよねー。ということで、ワークショップの後は石を拾いにGo!

え、こんなところに溶岩の塊なんて見つかるの?

これか〜〜。ジャガイモのような丸っこいのを拾うといいらしい。

早速見つけて割っているところ。

ふと反対側を見ると、耕されてて石がゴロゴロ落ちていた!

収穫。中にキラキラした結晶があるのが見えるだろうか。

でも、私が本当に見つけたかったのはこれじゃなくて、ペリドットが入っているもの。博士によると、ペリドット入りはここにはなくドイデスフェルトという別の場所へ行かなければ見つけられないらしい。そこで私たちはペリドットを求めてドイデスフェルトへ移動した。

ここ!この地層の中にペリドットがあるはずなのだ。

あった!

こんな大きいのも!

アイフェルのOlivinbombeを収穫!

ああ、楽しかった。火山アイフェル・ジオパークのレポートはまだ続く。

 

火山アイフェル・ジオパークでの休暇レポートの続き。(これまでのレポートは、その1 「アイフェルの目」と呼ばれる美しいマール湖郡、その2 マール湖跡からも化石がザクザク。Manderscheidのマール博物館、そして番外編 35年かけて集めた素晴らしい石のコレクション。Manderscheidのプライベート鉱物博物館、Die Steinkiste をどうぞ)

今回紹介するのは宿泊していたシャルケンメーレン村から数kmのダウン(Daun)市にあるアイフェル火山博物館(Eifel Vulkanmuseum)。

アイフェル火山博物館では世界の火山及びアイフェルの火山活動に関する展示が見られる。

展示室

火山は主にプレートとプレートの境い目にできるが、アイフェル火山地方はプレートの境界線上には位置していない。アイフェルの火山はいわゆる「ホットスポット火山」だ。プレートの下の「ホットスポット」と呼ばれる場所ではマントルが周辺よりも高温になっていて、マントルプルームと呼ばれる大規模な上昇流が発生している。つまり、アイフェルの地面の下にはグツグツとマグマが煮えたぎっているのだ。そして、アイフェル地方の地殻には亀裂が多い。約3億2000年前に起こった造山運動によってあちこちにヒビが入っている。そのをヒビを通ってマグマが上昇してくるのだそう。

マールの成り立ちを示すモデル

こちらの記事に書いたように、アイフェル地方には多数のマール湖がある。陸地化したものも入れると75にも及ぶという。これほどマール湖が集中して形成されている地域は世界でも類を見ないらしい。でも、アイフェルの火山=マールなのかというと実はそうではなく、アイフェルの火山地形のうちマールは3割ほどで、残る7割はスコリア丘と呼ばれる円錐状の丘だ。火山アイフェルでは山の上のところどころにポコンポコンと帽子をふせたように火山が盛り上がっている。アイフェルの火山活動が始まったのは第三紀で、その後休止期間を経、約80万年前から再び活発化した。火山アイフェル・ジオパークはアイフェル地方西部に位置するが、アイフェル西部では100万年間に少なくとも275回、火山が噴火したとされる。直近の噴火は最も新しいマールであるウルメナー・マールが形成された約1万1000年ほど前。ということは、仮に噴火が定期的に起こるとすれば、もうとっくに噴火していてもおかしくない?そう考えるとちょっと不安になって来る。もちろん、火山学者らが常に活動をモニタリングしていて、現在のところ活動が活発化する兆候は見られないとのことで安心した。

さて、この博物館にはアイフェル地方の様々な岩石が展示されている。

陳列棚の石を眺めていたら、面白いものを見つけた。

表面がツルツルで濡れたような光沢を放っている。これは一体?

こちらはややマットな質感ながらも表面は滑らか。

まるで釉薬をかけて焼いた陶器のようで、びっくりしてまじまじと眺めてしまった(というのも、最近、趣味で陶芸を始めたので、、、、)。これらはガラス化した砂岩で、マグマの熱で表面が溶けてこのようにツルツルになるらしい。後日、日本に住む二人の地学研究者に画像を見せたら、こういうのは初めて見たと言っていた。他の地方では滅多にお目にかかれないもののようだ。面白いなあ。

化石コーナー。こちらに書いたように、デヴォン紀に浅い海だったアイフェル地方は化石の多産地域でもある。この地方では主にどんな化石が出て来るのだろうか。展示されている標本はサンゴが多かった。

サンゴの化石も種類がものすごく多くて、まだ何が何だかさっぱり把握できないのだけれど、ここでサンゴ化石のサンプルをいくつか見たことがこの後大いに役に立つことになる。その話は次回に。

前回の記事ではアイフェル地方南部のマンダーシャイトにあるマール博物館について書いた。マール博物館を見終わって外に出ようとしたとき、出入り口に小さいポスターが貼られているのに気づいた。

Geologischemuseum Die Steinkiste (地学博物館 石の箱)

と書いてあり、綺麗な鉱物の写真が載っていた。気になる!

マンダーシャイトの旧市街にある博物館だということがわかった。入場無料とある。しかし、ポスターに印刷されている開館時間を見ると、その日はあいにく休館日。うわー、残念。せめて外から中を覗くだけでも、、、と思い、歩いて行ってみた。その博物館はマルクト広場(住所はMarkt 1)にあった。

あった。しかも開いている!!

こじんまりとした博物館である。中に足を踏み入れる前に、まずはウィンドーに飾っている石に目をやった。

綺麗な瑪瑙!石コレクター、山田英春氏の著書「奇妙で美しい石の世界」を読んで以来、私は瑪瑙の美しさに取り憑かれてしまっている。瑪瑙を中心とした石英質の石の断面の模様に関する本で、鉱物学の本というよりは美学の観点から書かれたエッセイなのだが、紹介されている石が本当に素晴らしく、読み物としてもとても面白い。この本に載っている瑪瑙の断面写真を眺めるだけでうっとりとするが、マンダーシャイトのこの小さな博物館のウィンドーでこうしてお目にかかれるとは!

これも素敵〜。

正式な開館時間外のはずなので中に入っていいものかどうか戸惑っていたら、入り口付近に座っていた男性から「中を見たいのですか?どうぞお入りなさい」と声をかけられた。この博物館のオーナー、Hans Stölben氏だ。

「ここにある石は私が35年かけて集めたものですよ。ゆっくり見て行って。質問があれば遠慮なくどうぞ」

2部屋に分かれたフロアには80代半ばと思われるStölben氏が世界のあらゆる産地から収集した鉱物標本が展示されていた。

わあ〜〜。

展示されている標本は全部で約1500個。どれもじっくり味わいたいものばかり。

瑪瑙のディスプレイの一部。他にもたくさんの瑪瑙が産地ごとに展示されていた。

これが見られただけでも幸せなのに、「奇妙で美しい石の世界」に出て来て見てみたいと思っていた種類の石、ほとんどを見ることができた。

たとえばセプタリア(亀甲石)とか。巨大!

Stölben氏の奥様は芸術家だそうで、奥のフロアにはまるで絵画のような自然の造形美のギャラリーが設けられている。

こ、これは!フィレンツェ近郊で採れるという風景の石、パエジナ・ストーンでは!?

こんな見事なデンドライトがあるんだねー。

デンドライトといえば、私もゾルンホーフェンでこんなのを見つけたんだった。比べ物にならないけどね。(ゾルンホーフェンのレポートはこちら

 

珍しく美しい石を見ながら心の中でキャーキャー言っていると、Stölben氏が「石に興味があるようだね」と言って、標本棚のガラス戸を開け、中からいろいろな石を取り出して見せてくださった。Stölben氏が特に気に入っているものについて、一つ一つ説明して頂いた。それがとても興味深く、感激した。

角度を変えると不思議な模様が浮かび上がる「虹色の黒曜石(レインボー・オブシディアン)」。

これは恐竜の糞が化石化したものだそう。

他にもいろんな石について説明を聞くことができた。この鉱物博物館、公式なウェブサイトはないので、事前のネットサーチでは引っかからなかった。思いがけず素晴らしい博物館を発見して嬉しい限りである。マンダーシャイトへ行かれる方は、マール博物館とこの鉱物博物館、Die Steinkisteを是非セットでお楽しみください。

 

 

 

日本にしばらく里帰りしていたので、まにあっく観光旅行に出かけるのは久しぶり。今回はなぜか、鉱物をじっくりと眺めたい気分だった。ドイツには多くの鉱物博物館があるが、家からさほど遠くない場所で規模の大きいものはないかと検索したところ、ザクセン州フライベルクのTerra Mineraliaがヒットした。

 

フライベルクはドイツとチェコの国境地帯であるエルツ山地(Erzgebirge)北部に位置する。エルツとは「鉱石」を意味し、一帯は鉱物資源の非常に豊かな地方である。フライベルクは12世紀に銀鉱山が発見されて以来、鉱業で栄えた町だ。現在も、かつての鉱山学校を母体とするフライベルク工科大学(TU Bergakademie Freiberg)があり、鉱山学をはじめ資源開発やエネルギー技術に至るまでの広範囲に渡る地質学教育・研究の中心地だという。ということは、terra mineraliaはかなり見ごたえのある鉱物博物館だと思ってもよいのではないだろうか。鉱物を見にフライベルクへ行く行くと興奮していたら、夫が「オレも行く!」と言うので、私達は大きな期待とともにフライベルクへと向かった。

 

 

Terra Mineraliaは、シュロス・フロイデンシュタイン(Schloss Freudenstein)というお城の中にある。

その日はどんよりと暗い日だったが、博物館をじっくり拝観するにはむしろうってつけの天気である。(ドイツは雨や曇りの日が多いからこそミュージアムが充実しているのではないか、などと思ってしまう)

 

内部はフロア5階分あり、一番上のフロア展示を見ながら降りて行くようにデザインされている。世界中から集めた鉱石標本は地域ごとに展示されている。非常に美的な空間だ。

暗い室内に輝く鉱物のショーケースがずらりと並んでいる。標本を見る前からもうドキドキして来た。

 

陳列されている標本はどれもうっとりするほど見事なものばかり。例えば、、、、。(相変わらず写真が上手でないけれど、どうかご勘弁を)

 

標本数は3500点。写真を撮り出すとキリがない。

 

顕微鏡を覗くのはとても楽しい。

 

また、初めて見るものに、「光る鉱物の部屋」というものがあった。暗室になっていて、中に入るとショーケースに色々な鉱物が並べられている。

一見、それほどどうということのない石のようだが、、、。

 

わっ、光った!

 

色が変わった!!

 

これらは蛍光鉱物と呼ばれるもので、紫外線を当てると発光するのだそうだ。同じ紫外線でも、UV-A(波長 315–380 nm)とUV-C (波長 200–280 nm)、そしてその両方を同時に当てた時とで色が異なって見える。大変魅力的で、結構長いこと眺めていた。

 

ギャラリーは延々と続いて行く。

こんなにも多様な美を生み出すとは、自然とはなんと不思議なのだろう。ここまで見るだけでもその膨大な数と種類に圧倒されていたのだが、さらに続きがあった。なんと1階の「秘宝の間」には驚くほど巨大な標本がいくつも陳列してあったのだ。

 

 

 

今までにあちこちで鉱物コレクションを見たが、自分が見た中ではここのは間違いなく3本の指に入る。標本数ではもっと多いところもあったと記憶しているが、Terra Mineraliaは展示の仕方が非常に魅力的だ。大満足でミュージアムを出た。

 

しかし、これで全てではないのがフライベルクの凄いところ。Terra Mineraliaのすぐ隣には別の鉱物博物館、Krügerhausがある。こちらではドイツ国内で採れた標本が見られる。

世界中から集めた鉱物を見た後だからそれほど感動しないかもしれないと思ったが、コンビチケットで拝観できるので入ってみる。

 

いやー、ここも決して侮れない。いきなり美しい鉱物断面ギャラリーから始まる。断面の模様は様々で、まるでアート作品のようだ。

 

こちらのミュージアムでも標本は地域ごとに展示されている。

 

そしてこれは何!?

 

壁一面にずらりと並んでいるのは結晶モデルだった。

19世紀に製作されたモデルである。すごいね!

 

最後に結晶のアップ写真をいくつか。

 

言葉で形容するのは無理。二つの博物館を見て、とにかく大興奮・大満足である。

 

ところが、まだあるんです、フライベルクには。この他にもさらにフライベルク工科大で鉱物や化石などのコレクションが閲覧できるというのだから、もう気が遠くなりそうだ。さらには数時間に及ぶ銀鉱山見学ツアーなどもあり、とにかく盛りだくさんである。到底一日では足りない。今回は日帰りだったので上記の二つのミュージアムだけで終わってしまったが、是非ともまたフライベルクを訪れて今回断念したものを体験するつもりだ。

 

地学や鉱物学ファンにはもちろんのこと、綺麗なものを見るのが好きな人にはとても楽しい場所だと思う。Terra Mineraliaは子どもも楽しめる工夫がしてあるので家族連れにも良い。また、大聖堂や古い劇場、教会など他の見どころもあり、チェコに近いのでボヘミア料理レストランなどもある。いつもとちょっと違うドイツ観光がしたいと思うときに良いのではないかな。