投稿

引き続き、番外編で日本への里帰り中に訪れたまにあっく観光地の紹介である。前回は高知県の室戸ユネスコ世界ジオパークを紹介した(記事はこちら)が、今回は東京都台東区にある世界のカバン博物館についてレポートしよう。

この博物館は鞄メーカー「エース株式会社」本社ビル7階にある。都営浅草線浅草駅からすぐ。世界中から集めた珍しい鞄が展示されているという。嬉しいことに入館料は無料。そう来たら、行かなきゃ損損!

博物館入口を入ってすぐに目につくのは、円形のフロアパーティションの壁面を使ったカバンの色見本ディスプレー。写真に写っていないけれど、この曲線に沿うようにして左側の壁に「カバンの歴史」を示す展示がある。人類の生活においてカバンというものがどのように生まれ、発展していったかがわかる面白い展示だった。

展示によると、人類が最初にカバンを使ったのは紀元前3000年以上前にも遡る。最初のカバンは動物の皮や植物で作った袋だった。移動生活をしていた人々はそうした袋に食べ物や武器などを入れて運んだ。古代エジプト時代に川を利用して荷物を運搬する技術が発達し、木の幹をくり抜いて作った「トランク」が登場する。カバンには次第に装飾が施されるようになり、時代の推移の中でカバンは富と権威の象徴となって行く。世界の様々な地域で身近な素材や生活習慣に応じたそれぞれのカバンが発達したが、交易が盛んになると互いに影響を与え合い、異民族の要素も取り入れながらカバン文化が発展して行く。日本では平面布で物を包む文化が主に発達し、風呂敷や巾着袋を生み出した。鎖国をしたことで独特のカバン文化が発展し、江戸時代は袋物黄金時代と呼ばれるほど様々な名作を生み出したそうだ。近代になると産業革命によってカバンづくりが工業化し、様々な素材を利用したカバンが売られるようになる。また、交通機関の発達で旅が大衆化すると、ポーターが運んでいたそれまでのトランクも旅行者が自分の手で持ち運びやすいものへと変化していった。ハンドバックも列車の旅の際の手荷物入れとして登場し、次第に日常生活でも使われるようになったそうだ。人類の歴史においてカバンは生活文化の発展と共に発達し、生活が多様化した現在では用途や場面に応じた様々なカバンが使われている。

と、ざっくりとまとめてしまったが、展示では詳細な説明がなされていて読み応えがあった。

「カバンのひみつ」コーナーではカバンづくりの動画やパーツの名称を示すパネルなどがある。日頃、あまり何も考えずに使っているカバンだけど、よく考えられ技術を駆使して作られているのだなあ。

その先はいよいよこの博物館が誇る世界のカバンコレクションのコーナーだ。エース株式会社の創業者である新川柳作氏が収集した世界の珍しいカバン約550点の中からその都度セレクトし、展示しているという。

面白いカバン、希少なカバンのオンパレードで、またカバンを通じて世界のいろいろな民族の生活文化にも触れることができ、楽しい。どれも魅力的で全部紹介したいくらいなので興味のある方は是非、見に行ってみてください。以下は私が特に気に入ったもの。

イタリアのワインボトル入れバッグ

スイスの学童用バッグ

スウェーデンのベリー摘み用の籠

トルコの穀物袋

オセアニアの籠バック

ベトナムのプラ紐バック

セネガルの空き缶で作られたアタッシュケース

ネパールのショルダーバックとウズベキスタンのリュックサック

米国製30年代のワードロープトランク

日本の図嚢

戦時中の日本で作られていた鮭皮のバック

車掌さんのカバン。懐かしい!

この他にも著名人が寄贈したカバンのコーナーや特別企画展もあり、充実している。ウェブサイトによると、エース創業者の新川氏は1958年にドイツのオッフェンバッハにある皮革博物館を訪れ、「皮革製品が無数に展示されているけれどカバンが少ない」と物足りなく感じ、このカバンの博物館を創られたそうだ。(と思ってオッフェンバッハの皮革博物館のウェブサイトを見たら、博物館100周年記念でなんと現在「カバン展」をやっているではないか!行かなくちゃ)

これからカバンを見る目がちょっと変わりそう。

 

 

年末からしばらく更新していなかった当ブログ、1月もすでに後半に差しかかってしまったが、今年もドイツのまにあっくな観光スポットをどんどん発掘して行くつもり。年末年始は日本へ里帰りしていた。日本でもまにあっく観光を楽しんで来たので、今回から数回、番外編として日本の面白い場所をいくつか紹介することにしよう。

その一つ目は高知県室戸半島の「室戸ユネスコ世界ジオパーク」。私の故郷は北海道だけれど、今回は仕事の関係で弟一家が住んでいる高知も訪れた。弟夫婦にあちこちドライブに連れて行ってもらい、北海道やこれまでに住んだことのある関東地方とは異なる自然環境を楽しんだ。最近、ジオパークが気になっているので、高知県の端っこに位置する室戸ユネスコ世界ジオパークにも行って来た。


まずは高知市から南東へ約80kmのところにある「室戸世界ジオパークセンター」で室戸半島の成り立ちについてざっくりと予習。

このビジターセンターでは室戸半島の地形及び自然環境やそこに住む人々の暮らしについて展示されている。

室戸半島の地形モデル。全体が上下に襞を寄せたように隆起している。室戸半島のこの地形はプレートの運動によって「付加体」というものが繰り返し形成されることでできたそうだ。室戸半島は海洋プレート(フィリピン海プレート)が大陸プレート(ユーラシアプレート)の下に沈み込む海溝(南海トラフ)の北側に位置している。海洋プレートが沈み込む際、その上に堆積した砂や泥などが上方に押し出されて陸地にくっつく。すでにある地層の下部に新しい地層が潜り込むように付加されるのだが、それが繰り返されることで陸地がぐいぐい押されて持ち上がり、段丘となる。室戸半島だけでなく四国全体が南から北に向かって押し上げられてできた地形で、海溝に近い南の地層が最も新しく、北の地層ほど古いそうだ。

海プレートが大陸プレートにぶつかって押し続けるため、室戸半島の大地は平均約2m/千年のスピードで隆起しているそうだ。ジオパークセンターでは南国市にある高知コアセンターの研究や地震・津波観測監視システムDONET 2についても展示している。情報を一般向けにわかりやすく提示している良い情報センターだと思う。

さて、それではジオパークを実際に見てみよう。いくつかある室戸ユネスコ世界ジオパークの見どころのうち、室戸岬の灌頂ケ浜を歩いてみた。

奇妙な黒と灰白色のシマ模様の岩があちこちに横たわっている。このようなシマシマはタービダイト層と呼ぶそうだ。泥が海水中で堆積して固まった黒色の泥岩と灰白色の砂岩が交互に重なってできている。泥が堆積している場所に土砂を多く含んだ混濁流によって砂が運ばれて来て堆積する。それが定期的に繰り返されてシマ模様になるらしい。

泥岩と砂岩は水平に重なるのだけれど、それが激しい地殻変動によって破断したり湾曲してぐにゃぐにゃに折れ曲がる。このような構造を「スランプ構造」と呼ぶんだって。

見て、このスケールを!

サンゴがたくさん。でも、ジオパークに指定されている場所なので拾ってはダメね。

日本の自然はダイナミックだね。

アコウの木(別名、タコノキ)。本当にタコのよう。このすごい根っこは台風の被害を抑えてくれるらしい。アコウの木にはイチジクのような実がなるそうだ。

この後、生痕化石が観察できるという羽根岬へも行ったけれど、残念ながら化石を見つけることはできなかった。またの機会にじっくり探してみたい。

日本国内にはジオパークに認定されている場所が現在、44箇所ある。そのうち9箇所がユネスコ世界ジオパークで室戸ジオパークはその一つだ。これから少しづつ日本のジオパークを回れるといいなあ。