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コスタリカ滞在中、多くの野鳥を見た。その中で、最もよく目にし、かつ存在感の大きい野鳥はコンドルだったのではないか。コスタリカの至る場所で、コンドルの群れが滑空していた。

子どもの頃から「コンドル」と聞くと、羽を大きく広げて広い空を優雅に飛ぶ姿が目に浮かび、なんとなく憧れがあった。しかし、パナマやコスタリカで実際のコンドルを目にするようになって、すっかり印象が変わってしまった。そう、コンドルは「ハゲタカ」と総称される、腐肉を食べる野鳥の仲間なのだ。生き物の死骸に群がり、肉を食いちぎる様はグロテスクで優雅なイメージとは真逆である。でも、頻繁に姿を見かけるだけに、気になる野鳥である。

手持ちのフィールドガイドによると、コスタリカには3種のコンドルがいる。その中で最も多く目にするのは、クロコンドル(Coragyps atratus )だ。

クロコンドル (Coragyps atratus

コンドルの頭が禿げている、つまり羽毛がないのは、死骸に頭を突っ込むようにして食べるため、頭部が不衛生になるかららしい。

動物の死骸に群がるクロコンドルたち

クロコンドルは視覚に優れ、大きな群れで死肉を探して滑空する。道路脇で車に轢かれた動物などの死骸に群がっている場面によく遭遇した。あまりいい気持ちのする光景ではないけれど、ロードキルをすばやく片付けてくれるお掃除屋さんだと思えば、ありがたい存在にも思える。ただし、彼らは死肉を食べるだけでなく、産卵中のウミガメなど、無防備な生き物を襲うこともある。

クロコンドルほどではないが、ヒメコンドル(Cathartes aura)もコスタリカ各地で頻繁に見かけた。

ヒメコンドル (Cathartes aura

ヒメコンドルはクロコンドルのように大きな群れで行動することは少ない。視覚だけでなく嗅覚にも優れており、その両方を駆使して死肉を探す。

羽を広げたヒメコンドル

顔と脚が赤いこと、広げた羽の下半分が白いことで、上空を飛んでいてもクロコンドルと簡単に区別がつく。(クロコンドルは羽の先だけが白く、全体は黒い)

そして、コスタリカに生息するコンドルの仲間のうち、最も大きいのはトキイロコンドル (Sarcoramphus papa)だ。羽を広げると2メートルにも及ぶ。羽全体の色は白、広げた羽の下部のみ黒い(若鳥は全体が黒)。「トキイロコンドル」という和名は頭部がカラフルだからつけられたのだろう。

トキイロコンドルは単独で行動することが多い。クロコンドルやヒメコンドルと違って、目はあまりよくなく、嗅覚で獲物を探す。深い森など視界の開けていない場所では強い嗅覚は有利だ。そのため、都市に近い場所で目にすることは稀らしい。私はオサ半島で上の写真を撮ることができた。

コンドルはコミュニケーション能力に長け、死肉発見情報はコンドル達の間で瞬く間に共有されるらしい。Jack Ewing著 “Monkeys are made of Chocolate – Exotic and Unseen Costa Rica”には著者が経験したこんなエピソードが書かれている。1972年、著者はニカラグアとの国境に近いコスタリカ北東部のグアナカステ州に頻繁に滞在していた。コスタリカの他の地域同様、グアナカステ州でも至るところでコンドルの姿を見た。しかし、その年の12月にニカラグアの首都マナグアで大地震が起き、1万4000人もの人が亡くなった。新聞は人々の遺体に大量のコンドルが群がっていると伝えていた。そして、大地震の発生から2週間ほどの間、著者はグアナカステ州からコンドルの姿がすっかり消えていることに気づいたそうである。

 

死骸を食べる野鳥はコンドル以外にもいる。たとえば、カンムリカラカラというハヤブサ科の野鳥。

カンムリカラカラ(Polyborus plancus

オレンジ色のクチバシに真っ白な喉、黄色い足。ポップな美しい見た目をしていて、死肉をあさるようには思えない。カンムリカラカラという和名も面白い響きで親しみが湧く。でも、彼らが死骸を食べる現場を目撃した。

道路に転がったネズミか何かの死骸を食べているところ。

道路に転がっている小動物の死骸を見つけて、一羽のカンムリカラカラがやって来た。死骸をつついていると、仲間らしい別の1羽が向こうから歩いて来て、仲良く死骸を食べ始めたのだった。カンムリカラカラは生きた小動物を捕らえて食べることもあるが、狩りはあまり得意でないそうで、落ちているものがあればラッキーという感じなのだろうか。カンムリカラカラは現地ではquebrantahuesosと呼ばれている。直訳すると「骨を折る者」。動物の死骸を掴んで空に飛び上がり、硬い地面に落として骨を砕いて食べる習性があるのだそう。

キバラカラカラ (Daptrius chimachima)

こちらは同じハヤブサ科のキバラカラカラ(Daptrius chimachima)。これもいかにも上品な姿の野鳥だが、カンムリカラカラ同様に死肉を主食としている。

 

この記事の参考文献:

Fiona A. Reid, Twan Leenders, Jim Ook & Robert Dean “The Wildlife of Costa Rica – A Field Guide”

jack Ewing “Monkeys are made of Chocolate – Exotic & Unseen Costa Rica”

楽しくもハードだったオサ半島滞在が終わり、約3週間のコスタリカ旅行も終盤に近づいた。ドイツの自宅に戻る前に、あと2つ、行っておきたいエリアがあった。その一つはロス・ケツァーレス国立公園 ( Parque Nacional Los Quetzales )。この国立公園は広さ50km2と小規模ながら、標高は低いところで1,240m、最も高いところは3,190mとかなりの幅がある。標高に応じて異なる種の野鳥が生息するバードウォッチャーのパラダイスだ。コスタリカでバードウォッチングというとモンテヴェルデ熱帯霧林自然保護区がメジャーだけれど、今回の旅では飛行機の遅延のせいで予定していたモンテヴェルデでの3日間の予定がまるごとなくなってしまっていたので、ロス・ケツァーレス国立公園に期待をかけていた。世界一美しい野鳥として名高いケツァールの名前を冠しているから、もしかしてケツァールを見るチャンスがあるかもしれない。

オサ半島からは国道2号(Inter American Highway)に出て、首都サン・ホセ方面に向かってひたすら進むだけ。舗装された道路だから安心である。パルマー・ノルテ(Palmar Norte)で右折し、川沿いをしばらく走ると、そこからはグングンと標高が上がっていく。高温多湿のオサ半島を出発したときには半袖にサンダル履きだったが、進むにすれて気温が下がっていき、肌寒さを感じ始めた。あたりの景色もどんどん変化していく。

ラ・タルデでお世話になったネイチャーガイドのジョセフさんに「ロス・ケツァーレス方面へ行くならぜひ、寄って」と勧めてもらった場所がある。それはラ・アスンシオン山(Cerro La Asuncion)という山で、タパンティ国立公園(Parque Nacional Tapanti)内にある。標高3,335mと、とても高い山だが、頂上が国道2号の道路脇にあり、100mも登らずにてっぺんに上がれてしまうという。天気が良ければ、頂上からは太平洋とカリブ海を同時に両方見ることができるらしい。

ラ・アスンシオン山の頂上付近

頂上への登山口が見つかったので、登ることにした。登山道はかなり急だけれど、たいした距離ではないから楽勝だろう。そう思って登り始めたのだが、海抜ゼロに近いオサ半島から急に3000メートルを超える高山に来たからだろうか。少し登っただけで心臓がバクバクした。わー、これはちょっと危険。

頂上

頂上からの眺め

雲があって残念ながら海は見えないけれど、向かって左がカリブ海側、右が太平洋側。コスタリカが日本同様、国土の真ん中に山脈が走る細長い国だということがわかる。

 

ラ・アスンシオン山からさらに国道2号を北上すると、まもなくロス・ケツァーレス国立公園の入り口がある。

ロス・ケツァーレス国立公園入り口

この国立公園は訪問者が少ないので、事前にチケットを購入しなくても余裕で入れる。

トレイルは部分的に閉鎖中で、歩ける距離はそう長くないが、オサ半島など低地のトレイルとは植生がまったく異なっていて新鮮だ。

見晴らし台からのロス・ケツァーレス国立公園の眺め

あっという間に歩き終わったので、ひとまず宿へ行くことにした。ホテルやコテージは深く切り込む谷の道路に沿って建っている。

幸い、道路は舗装はされているもののかなり急な斜面を降り、予約していたコテージに到着した。部屋は広いが、標高が高い上に谷だから、日当たりが悪くてけっこう寒い。それなのにコテージの床はタイル張りで冷え冷えとしている。もしやと思い、シャワーを確認してみたら、案の定、熱いお湯は出ない。一気にテンションが下がった。オサ半島で四六時中汗だくになっていたのも辛かったが、今度は寒すぎなのである。過酷すぎないか、今回の旅?

部屋で震えていてもしょうがないので、洋服を何枚も着込んで、コテージの向かいにあるレストラン、Miriam´s Quezalesへお茶を飲みに行くことにしよう。

レストランの奥には谷に面したテラスがあった。テラスに一歩出た瞬間、私は目を見張った。テラスの向こうのバードフィーダーに、たくさんの野鳥が集まっていたのだ!すごい!!沈んでいた気分が一気にぱあっと晴れた。そこにいたのは、

ドングリキツツキ (Melanerpes formicivorus

クロキモモシトド (Atlapetes tibialis)

ニシフウキンチョウ(Piranga ludoviciana

アカエリシトド (Zonotrichia capensis )

アオボウシミドリフウキンチョウ (Chlorophonia callophrys)のオス

Long-tailed silky flycatcher (Ptiliogonys caudatus)

マミジロアメリカムシクイ (Leiothlypis peregrina)

メジロクロウタドリ (Turdus nigrescens)

バフムジツグミ (Turdus grayi) 地味だけど、コスタリカの国鳥

ギンノドフウキンチョウ (Tangara icterocephala)

ハチドリもいろいろいたけど、種は識別できず。

すごいすごい!やっぱりロス・ケツァーレスへ来てよかった!これまで訪れた場所ではまったく目にして来なかったいろんな野鳥がいる。それも1箇所でこれだけ多くの種が見られるとは。

ところで、ケツァールも見られるのだろうか?レストランの女主人に聞いたところ、ケツァールがよく見られる場所を教えてくれた。谷をさらに20分ほど下ったところらしい。それらしき場所へ行ってみたが、よくわからないので、近くのお店で「ケツァールが見られる場所を探しているんですが」と尋ねてみた。

すると、「ケツァールなら、うちの主人がガイドツアーをやっています。明日の朝もやりますよ」とのこと。「ツアー?どこへ行くんですか?」との私の質問に女性は店の後ろの急な斜面を指さした。

「そこを登るんですか?」「はい」

ダメだ、急斜面過ぎる。ラ・アスンシオン山に登ったときの心臓のバクバクを思い出したのだ。コテージからこの谷をここまで車で下って来るだけでもかなりの標高差である。そしてここから歩いて山を登るとなると、降りたり登ったりで体にかなり負担がかかってしまいそうだ。おまけに、ツアーは早朝なので、水シャワーしかないあの寒いコテージで相当早くに起きなければならない。うーん、、、ちょっと無理。諦めよう。

そんなわけで、幻の鳥、ケツァールは見れずじまいだったが、それでもたくさんの美しい野鳥が見られて満足である。ケツァールは、またいつか機会があるといいな。

 

 

コスタリカで最もリモートな場所、オサ半島。大部分が森林に覆われたオサ半島に町らしい町はほとんどない。旅行者のためのインフラといえば、コルコバード国立公園の周辺に点在する人里離れたロッジくらいである。2015年に初めてオサ半島を訪れた際には、半島南部のカラテ(Carate)という場所に滞在したが、今回はコルコバードのロス・パトス(Los Patos)セクターに隣接するラ・タルデ(La Tarde)にあるエコロッジに滞在することにした。ロッジの名は、エコトゥリスティカ・ラ・タルデ(Ecoturistica La Tarde)、通称ELT。2022年12月に夫と息子がコルコバード国立公園を徒歩で横断した際に拠点として利用したエコロッジで、夫が周辺の環境をとても気に入った。また、その際に案内してくれたネイチャーガイドのルイスさんがベテランの素晴らしいガイドで、本当にたくさんの野生動物やその痕跡を見せてくれたので、ぜひ私を連れて行って、またルイスさんに案内をお願いしたいと、それ以来言い続けていたのである。私もとても楽しみにしていた。

しかし、四輪駆動ではなく前輪駆動の車を借りたというミスのために悪路に悩まされており、オサ半島に近づくに連れ、私は不安を募らせていた。コスタリカ中心部ですら、メジャーな観光地をちょっと離れると途端に道が悪くなるのに、オサ半島のような極地で果たして私たちの車は走れるのだろうか。

ELTはかなりの奥地にある。国道245号をゴルフォ・ドルセ湾沿いに南下し、ラ・パルマ(La Palma)という集落からは山道を登る。こちらの記事に書いたように、二日前に山道をやっとの思いで乗り越えた(運転したのは夫なので私はただ横に座っていただけではあるが)ところだったので、またあの状態になるのかと憂鬱だった。

夫は「去年も通った道だから大丈夫だ」と言う。アップダウンは多いが、道路の状態はそれほど悪くないのだと。しかし、実際にはまったく違い、山道は凄まじいほど石ころだらけだった。「おかしい。こんなはずでは」と呟きながら夫も真剣な顔になる。「前回来たときはこうじゃなかったのに。たった一度の雨季でこんなにも道路状況が変わるとは」。移動は困難を極めたが、「もう無理」と途中で諦めるわけにもいかない。あたりに民家はまったくなく、携帯の電波も届かないので、助けを呼ぶことはできないからだ。しかし、泣き言を言って真剣勝負の夫にストレスをかけるわけにもいかないので、私はひたすらおとなしくしていた。

恐ろしく長く感じた夫の格闘の末、ついに私たちはエコロッジに到着。オーナーのエドアルドさんが笑顔で迎えてくれ、本当にほっとした。(ラ・タルデへ行く人は、絶対に四輪駆動の車で行くか、事前にロッジに送迎を頼んでおきましょう

エコトゥリスティカ・ラ・タルデの入り口

夫が私を連れて行きたいと言っていたELTは、よく手入れのされた敷地内に小さなキャビンがいくつかとドミトリーが1つあるだけのアットホームなエコロッジで、私は一目で気に入った。「キャビンはすごくシンプルだよ。それだけは覚悟しておいて」と言われたようにキャビンはとても簡素な作りだが、パナマでこの宿に滞在して以来、私は自然を直に感じられる宿のファンになっているので、がっかりするどころか逆にワクワクした。

キャビンの内部。空調設備はないが、壁は下の部分のみなので、風通しが良い。

 

トイレと洗面所はキャビンの外側にあり、キャビンとカーテンで仕切られている。一応、ブリキ屋根の下なので、雨が降っても濡れることはない。

 

シャワーは完全に外でお湯は出ない。

きちんと清掃されていて、不潔感はまったくないけれど、アウトドアが苦手な人にはキツいかもしれない。水しか出ないシャワーというのは熱帯の国ではありがち。私は若い頃、東南アジアの安宿を渡り歩いていたことがあるから、水シャワーは体験済みで、これも難なくクリア。(とは言っても、お湯が出るならその方がいい)

ウッドテラス

キャビンのウッドテラスからの眺めはコルコバード国立公園へと続く広大な熱帯雨林である。地元の木材で作ったどっしりした椅子に座って森を眺める時間の素晴らしさといったら!昼間は目の前を蝶や野鳥が飛び交い、夕方になるとセミが大音量で鳴き出す。日が落ちると蛍が小さな光を放つ。そして、朝はホエザルの吠え声で目が覚める。これだからコスタリカはやめられない。

 

2月のコスタリカは乾期だが、ときどき雨が降った。熱帯雨林に降る雨もまた魅力がある。

霧の立ち込める森

ロッジの周辺にはいくつものトレイルがあり、地元のネイチャーガイドさんがその人の興味に応じたツアーを組んでくれる。トレイルについては次の記事に書くが、このロッジの敷地で過ごすだけでもとても楽しい。

私が特に気に入ったのは、入り口近くにある大きなマンゴーの木だ。

この木にはブランコとハンモックが取り付けてある。ハンモックに横になってゆらゆらと揺れながら上を見上げると、オオハシの大きな鳴き声が聞こえてくる。

オオハシの姿を探すと、いた!

クリハシオオハシ (Ramphastos swainsonii)

他にもたくさんの野鳥の姿を見ることができた。以下はその一部。

オリーブタイランチョウ (Tyrannus melancholicus)

Streak-headed Woodcreeper (Lepidocolaptes souleyetii)?

ホオグロミヤビゲラ(Melanerpes pucherani)?

オオハシノスリ(Rupornis magnirostris)

残念ながら写真は撮り損ねたけれど、とても印象に残った鳥がいる。その姿を目にしたときには、一瞬、頭が混乱した。それはあり得ないほど巨大なツバメだった。一体、あれは何?

フィールドガイドで調べると、ツバメトビ(Elanoides forficatus)というタカの仲間だった。本当にびっくりした。忘れないようにWikipediaのページを貼っておこう。

ツバメトビ

 

コスタリカ北部の2つの国立公園、アレナル火山国立公園テノリオ国立公園のトレイルを楽しんだ後、私たちは南へと向かった。目的地はオサ半島だが、一気に移動するのはキツいので、中間地点のケポス(Quepos)に3泊することにした。ケポスは太平洋に面した国立公園、マニュエル・アントニオ国立公園(Parque Nacional Manuel Antonio National) に隣接した町で、コスタリカの一大観光地である。なんとなく予想はしていたが、実際に行ってみるとオーバーツーリズム気味でうるさく、好みの場所ではなかった。大人気のマニュエル・アントニオ国立公園のチケットも到着の翌日とその次の日の分はすでに売り切れており、滞在3日目のチケットをかろうじて抑えることができた。

さて、それまでの二日間は何をしよう?

すぐに思い浮かんだのは、ケポスから国道34号を40kmほどさらに南下した、ドミニカル(Dominical)にある野生動物保護区、ハシエンダ・バル (Hacienda Baru)だった。

いつも旅行を計画する際には、ガイドブックやネットで情報を集めるだけでなく、その国に関する書籍を探して読むことにしている。今回、下調べとして読んだ本のうちの一冊はコスタリカの自然に関するエッセイ集 “Monkeys Are Made of Chocolate – Exotic and Unseen Costa Rica“。米国人の著者、Jack Ewing氏は1970年代の終わりにコスタリカに土地を購入し、以来、自然再生及び野生動物の保護活動を続けている。とても興味深く読んだので、Ewing氏がハシエンダ・バルと名付けたその保護区に行ってみたいと思った。

 

ハシエンダ・バル入り口

ハシエンダ・バルは自然観察ツアーを提供する宿泊施設も兼ねていて、敷地にはこじんまりとした居心地の良さそうなコテージが並んでいる。この自然保護区について知ったときにはすでにケポスの宿を予約してしまっていたので、ここに泊まるのは断念したのだった。もっと早くに知ってここに滞在できたらよかったのにと少々後悔。

 

太平洋と国道34号に挟まれた、広さおよそのハシエンダ・バルの敷地はかつては牛牧場で、およそ150ヘクタールに渡って森林が破壊されていた。

1972年に撮影された航空写真。左下は太平洋。画像は敷地内の説明用立て看板の写真を撮影したもの。

 

個人のイニシアチブから始まった自然再生の試みだったが、Ewing氏らの継続的な活動の結果、敷地は多くの野生動物の生息地として蘇り、1995年、ハシエンダ・バルは国の野生動物保護区に認定されている。

自然再生が進んだ現在の様子。

 

敷地内にはいくつかのトレイルがあり、料金を払えば、宿泊者以外のビジターも歩くことができる。私たちも歩いてみることにした。

野生動物を観察したいなら、早朝か夕方が良い。昼間の暑い時間帯は動物たちは茂みなどの奥に隠れて休んでいるからだ。このときはちょうど昼間で、あまり動物は見られないだろうなあと期待していなかったが、意外に多くの生き物に遭遇した。

 

シロボシクロアリモズ (Thamnophilus bridgesi) これはメスかな?

 

鬱蒼とした茂みに挟まれた小径を歩いていくと、前方数十メートルの地面に何やら茶色い大きな物体が横たわっている、、、、と思ってよく見たら、それは3羽のオオホウカンチョウ (Crax rubra )のメスだった。

もう少しよく見ようともう一歩足を進めたら、そのうちの1羽が飛び上がり、横の茂みに入った。茂みの中から心配そうな声を上げ、仲間の2羽に呼びかけている。しまった、怖がらせてしまった。ごめんなさい。

オオホウカンチョウ(大鳳冠鳥)はコスタリカでは特に珍しい鳥ではないが、体長90cmにも及ぶその大きさと見事な頭の冠羽が特徴的で、目にするたびに目を見張ってしまう。

ちなみに、これは別の場所で撮った写真だが、オスは体全体が真っ黒で、嘴の上に黄色い大きなコブがある。

日頃、ドイツでバードウォッチングをする際、コーネル大学が開発した野鳥識別アプリ、Merlin Bird IDが大いに役に立った。グローバル対応のこのアプリは地域ごとのパッケージがあるので、現地に着いたら該当するパッケージを追加で無料ダウンロードすればすぐに使えて便利だ。コスタリカのネイチャーガイドさんたちも皆、使っているようだ。紙のフィールドガイドなら、やはりコーネル大学出版から発行されているシリーズのRichard Gariguess “The Birds of Costa Rica: A Field Guide” が良い。

 

胴の赤さが鮮やかなコシアカフウキンチョウ(Ramphocelus passerinii)のオス

こちらはメス。メスはコスタリカの東部と西部でカラーバリエションが異なる。このように胸元のオレンジ色が濃いのは西部(太平洋側)で見られる。

ナツフウキンチョウ (Piranga rubra)のオス。

ナツフウキンチョウ (Piranga rubra)のメス。

イグアナもいた。イグアナはフィールドガイドを見ても、種がよくわからない。(わかる方がいらしたら、是非是非教えてください)

 

哺乳類はクビワペッカリー( Tayassu tajacui) とマダラアグーチ(Dasyprocta punctata)に遭遇!

ペッカリーにはクチジロペッカリー (Tayassu pecari)というのもいるが、これはクビワペッカリーの方、なぜなら、

ほらっ!首の周りに白い毛がリング状に生えている。

巨大なネズミのような、あるいはリスのような、なんとも不思議な見た目のアグーチ。群れることなく単独で行動するが、昼行性の動物だから遭遇するチャンスはまあまあある。主に果物や植物の種を食べ、森に種を散布する、生態系において重要な役割を持つキーストーン種だ。

ざっくり2時間ほどのトレイルだったが、いろいろな生き物が見られてとてもよかった。エントランスに戻ってカフェエリアで飲んだ、冷えたスムージーもとてもおいしかった。次回はぜひハシエンダ・バルに宿泊して、ガイドツアーに参加したい。

 

 

 

ドイツの野鳥シリーズ、第一回はキツツキだった。今回はツルについて。

ドイツで観察できる野生のツルはヨーロッパクロヅル(Grus grus grus)のみだが、メクレンブルク=フォアポンメルン州やブランデンブルク州には多く飛来し、一部は繁殖もする。私の住むブランデンブルク州では結構、至るところでツルの姿を見ることができ、身近なのが嬉しい。秋になると、我が家の庭の上をもツルの群れが鳴きながら通り過ぎていく。田舎暮らしで良かったなと感じる瞬間だ。

ベルリン・ブランデンブルク探検隊の方でスライド動画を作ったので、このブログで記事としてまとめる代わりにリンクを貼っておく。

 

 

 

 

ドイツ国内最大の野鳥園、ヴァルスローデ世界バードパーク(ヴェルトフォーゲルパーク・ヴァルスローデ Weltvogelpark Walsrode)へ行って来た。ニーダーザクセン州ヴァルスローデにあるこの野鳥園には650種、個体数でおよそ4000個体の野鳥が飼育されている。それほど多くの野鳥が見られる野鳥園は世界でも類を見ないという。ヨーロッパには生息しない珍しい野鳥もたくさん見られるに違いない。大いに期待して出かけた。

野鳥園があるのは小さな町ヴァルスローデ(Walsrode)のさらに郊外で、アクセスが良いとは言えない。最寄りの大きな町はハンブルク、ブレーメン、ハノーファー。その3都市の中間に位置し、それぞれの町からは車で片道1時間ほどだ。

駐車場から橋を渡って公園内に入る。

注意したいのは、当日窓口でチケットを買うのと事前にオンラインで買うのとでは入園料がかなり違うこと。オンラインチケットの方がかなり割安なので、事前に購入すべし。

公園の広さは24ヘクタール。大人気のライプツィヒ動物園とほぼ同じくらいの広さだが、野鳥だけで24ヘクタールというのはすごい。園内は順路に沿って4kmほど歩くと一巡できるように設計されている。

公園内にはコウノトリ(シュバシコウ)の巣がいくつもあり、たくさんのコウノトリがカタカタと嘴を鳴らしたり、頭上を常に飛び回っている。シュバシコウはドイツの北東部ではありふれた野鳥で、特別に飼育されているというよりも公園内で生活していると言う方が正確だろう。コウノトリやカモのようなローカルな鳥とアフリカや中南米、東南アジアなどのエキゾチックな鳥が同じ空間に共存しているのが楽しい。

そこには実にいろいろな種がいた。熱帯の美しい小鳥がたくさん見られるのも素晴らしいが、見応えのある大型の鳥も豊富で満足度が高い。印象的だったのはサイチョウ科の鳥で、様々な種類がいた。サイチョウはクチバシの上にもう一つのクチバシのようなコブがついた鳥で、コブがまるでサイのツノのようだからサイチョウと呼ばれる。いかにも邪魔そうだけれど、コブの中身はスカスカで軽いらしい。

メスは子育て中だそうで、邪魔者が来ないようにオスがしっかり見張りをしていた。

その大きさだけでもかなり威圧感があるが、鳴き声もまたすごい。隣のスペースから犬の吠え声が聞こえて来たので不思議に思ったら、アカコブサイチョウの鳴き声だった。

 

そして、今までありふれた鳥だと感じていたハトにも派手な種がいることがわかった。

カンムリバト

ミノバト

園内にはシュバシコウだけでなく、他のコウノトリもいる。たとえば、、、

シロエリコウ

ズグロハゲコウ

アフリカハゲコウ。実に大きい。

 

鮮やかな鳥は、見ていてやっぱり楽しい。

目が覚めるような朱色をしたショウジョウトキ

羽繕いをする姿が優雅なベニヘラサギ

 

私の好きなツルもいろいろいる。

草むらにひっそり佇むヒナを連れたソデグロヅル

 

気品のあるホオジロカンムリヅル

 

しかし、なんといっても圧巻なのはハシビロコウだ。

 

猛禽類コーナーも見応えがある。

ハクトウワシ

コンドル

中南米に生息する猛禽類最強とされるオウギワシ。餌付けを見学した。

フクロウコーナー。

ウラルフクロウ

シロフクロウと子どもたち

ここに挙げたのはもちろんごくごく一部。なにしろ650種もいるのだから、一つ一つの種をじっくり見ていたらいくら時間があっても足りない。園内はよく手入れされていて魅力的だった。生息に適した環境がそれぞれ異なるあれだけの数の野鳥を飼育・維持するには相当な知識とスキルを持ったスタッフが必要なはずだが、唯一無二の野鳥園であるわりには一般認知度がそこまで高くなさそうなのがとてももったいなく感じた。今はハイシーズンなのでそれなりに賑わっていたけれど、冬場はそれほど人が来ないかもしれない。貴重な施設なので、採算が取れずに閉園してしまうようなことにはならないで欲しい、

個人的にちょっと残念だったのは、説明パネル等が少なめで、野鳥関連の書籍も売っていなかったこと。園内には子どもの遊び場がいくつもあって、ショップには楽しいグッズがたくさん売られているので、家族連れで楽しめる施設だと思うけれど、大人の学びのための資料ももう少し欲しかった。

それはともかく、この野鳥園でしか見られない鳥が多いので、行った甲斐があった。家から日帰り圏内にこのような施設があって、本当にラッキーだな。

 

 

前回の記事の続き。

せっかくはるばる自然保護区ベルトリングハルダー・コークまでやって来たからには、できるだけくまなく保護区を見て回りたい。自転車を車に積んで来たので、保護区内をサイクリングすることにした。

地図に入れた紫のラインが今回のサイクリングルート。ホテルArlauer Schleuseを出発し、北回りでだいたい25kmくらいかな。カオジロガンの群れのいる見晴らし台Aussichtturm Kranzを通り過ぎ(カオジロガンの群れについては前記事の通り)、1kmくらい進んだところで左に曲がり、Lüttmoordammという舗装された道を海に向かって真っ直ぐ走る。

この写真は翌日に撮ったので曇っているが、サイクリングをした日は快晴で気持ちがよかった。

真っ平らなので、野鳥に興味がなければ単調な景色に感じるかもしれない。しかし、至るところにいる野鳥を眺めながら、自転車を走らせるのは最高なのである。三角形をした保護区の北西側に広がる湿った草地や淡水池、塩沼にはたくさんのシギがいた。

エリマキシギ (Kampläufer)

オスのエリマキシギ。繁殖期のオスの体の模様にはいろいろなバリエーションがある。首の後ろの羽を襟巻きのように広げて求愛行動をおこなう。残念ながら、広げている姿は見られなかった。

オグロシギ (Uferschnepfe)。草地の地面に巣を作る。

タゲリ(Kiebitz)の姿もあちこちで見られた。

周囲の色と一体化していて、よく見ないとわからないものも。

ミヤコドリ(Austernfischer)。

ソリハシセイタカシギ (Säbelschnäbler)

ここにもたくさんのカオジロガンが。

こちらはコクガンの一種であるネズミガン(Ringelgans)。

ツクシガモ(Brandgans)

巣で抱卵中のガン。

ハイイロガンのヒナはすでにたくさん生まれていて、家族連れで歩いているのをそこらじゅうで見た。

保護区内ではウサギもたくさん駆け回っている。

リュットモーアダムを先端まで行くと、保護区のビジターセンターがあり、ベルトリングハルダー・コークの生態系やその保護についての展示が見られる。

ビジターセンターを見た後は、すぐ前の堤防に上がってみた。

堤防からは海へ線路が延びている。

干潮時にしか利用できないこの線路はHalligと呼ばれるワッデン海特有の小さな島へと続いている。高潮時の海面からわずか1メートルほどの高さしかないHalligが、ワッデン海には10つある。

ハリク、ノルトシュトランディッシュモーア(Nordstrandischmoor)。この小さな島はかつて、シュトラント島というもっと大きな島の一部だった。1634年に起きた高潮によってシュトラント島は海に沈み、ノルトシュトランディッシュモーアはかろうじて残ったその断片なのだ。盛土がされた場所にいくつかの建物が見える。わずかながら人が住んでいて、学校もある。ドイツで最も生徒の少ない学校だそう。

さて、サイクリングを続けよう。

堤防を南に向かって走ると、左手には塩沼に縁取られた塩湖が広がっている。その南側は立ち入り禁止の野生ゾーンだが、その縁を徒歩または自転車で通ることができる。出発地点に戻る途中にはさまざまな景色があり、いろいろな野鳥がいた。

ヨーロッパチュウヒ (Rohrweihe)

 

ヨシキリ(Schilffrohrsänger)

ツメナガセキレイ (Schafstelze)

タゲリ(Kiebitz)とツルシギ(Dunkelwasserläufer)

姿を見たけれど写真撮れなかった野鳥や声を聞いただけの野鳥もたくさんいて、正味1日半の短い滞在だったけれど、大満足。次回はぜひ、ハリクのいくつかを訪れたい。

 

 

 

 

野鳥を見に、ワッデン海国立公園へ行って来た。ワッデン海はオランダからデンマークまで続く世界最大の干潟を持つ沿岸地域で、その特殊環境はユネスコ世界遺産に登録されている。そのうち、ドイツの沿岸にあたる部分はニーダーザクセン・ワッデン海国立公園、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン・ワッデン海国立公園、ハンブルク・ワッデン海国立公園という3つの国立公園から構成されている。ワッデン海へ行くのはこれが2度目。こちらの記事に書いたように、前回はニーダーザクセン・ワッデン海国立公園を訪れた。夏の終わりで渡鳥のシーズンにはまだ早かったにもかかわらず、たくさんの野鳥を見ることができて大感激し、次に来るときには野鳥の種類が特に多くなる春にしようと決めていた。

今回目指したのは、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン・ワッデン海国立公園のベルトリンクハルダー・コーク(Beltringharder Koog)。港町フーズム(Husum)から北西におよそ15kmのところに位置している。ベルトリンクハルダー・コークに限らず、ワッデン海沿岸には地名にコーク(Koog)とつく場所が多くある。聞く慣れない言葉だが、潮の満ち引きの影響で時間帯によって冠水したり陸地になったりする地形、つまり塩性湿地という意味だと知った。

ベルトリンクハルダー・コークは堤防によって海と隔てられた自然保護区で、塩湖や淡水池、塩沼、湿った草地など異なるゾーンから成る。その環境の多様性ゆえに、さまざまな野鳥がここに集まるのである。

現地で入手したパンフレットの地図。環境ゾーンが色分けされている。

今回の2泊3日の旅行ではバードウォッチングに集中したかったので、ベルトリンクハルダー・コーク唯一のホテル、Hotel Arlau-Schleuseに泊まった。抜群のロケーションで、部屋も快適。

 

ホテルのすぐ前の堤防に上がると湿地が広がっている。

ホテルから堤防に沿って北にわずか数分歩くと、Aussichtsturm Kranzと呼ばれる見晴らし台が立っている。到着した日、見晴らし台に登り、辺りを見渡して驚いた。なんとそこにはおびただしい数のカオジロガンがいたのだ。

一体何羽いるんだろう?

カオジロガンたちは堤防を挟んで海側の湿地と畑を行ったり来たりしているようだった。

 

頭の上を黒いベールが風に乗って通り過ぎていくかのようで、圧倒される。

Zugvögel im Wattenmeer – Faszination und Verwantwortung“(タイトルを訳すと、「ワッデン海の渡鳥 〜 その魅力と私たちの責任」となる)という資料によると、カオジロガンは真冬の間は沿岸よりもやや内陸で過ごし、ワッデン海の塩沼には植物が豊富になる3月の終わりにやって来る。そこでお腹いっぱい食べてエネルギーを蓄え、4月の終わりから5月にかけて旅立ち、ノンストップで繁殖地である北極圏のカニン半島へ移動する。ちょうどシーズンなので今回見られるかもしれないとは思っていたが、ここまで大きな群れとは想像していなかった。これを見られただけで、来た甲斐があった。

お腹が丸々しているのはたっぷり食べている証拠

カオジロガンはドイツ語ではWeißwangengans(直訳すると「白い頬のガン」)またはNonnengans(「修道女ガン」)と呼ばれる。修道女と言われると、確かにそんな風に見えなくもない。

野鳥天国ベルトリングハルダー・コークで見られるのはもちろんカオジロガンだけではなく、今回のわずか1日半の滞在中にいろいろな野鳥を見ることができた。それについては次の記事に記録しよう。

 

(おまけ)ホテルの朝食。ドイツの朝食は一般的にはパンとハム、チーズだけれど、海辺ではお魚もあるのが嬉しい。

 

 

野鳥の繁殖シーズンが今年もやって来た!2020年の春、庭のナラの木に初めてカメラ付きの巣箱を設置してから、2020年2021年2022年と3年連続でシジュウカラの子育ての様子を観察することができた。ヒナたちが無事に巣立つこともあれば、いろいろなハプニングで悲しい結果になることもあり、毎年ハラハラである。今年は3月にエジプト旅行に出かけていたので清掃した巣箱を木に戻すのが少し遅くなってしまい、3月31日にようやく設置。すると、すぐさまにアオガラが巣材を運び入れ始めた。他の年も、最初に巣箱に入るのはいつもアオガラだった。しかし、ほんのわずかのコケを運び入れた後、そのまま放置し、いつ本格的に営巣を始めるんだろうと思っているうちにシジュウカラがやって来て巣箱を占領するというのがいつものパターン。だから、今年もそうなるのでは?

 

と思ったら、今年は最初から本気モードで、わずか半日で基盤がおおかたできてしまった。手慣れたものである。ここまで進めたのなら、もう中断はしないだろう。今年は初めてアオガラの子育てが観察できそうだ。

 

メスの作業中、パートナーのオスと思われるアオガラも頻繁に巣箱を訪れている。でも、ちょっと不思議なのである。オスが来るとメス(アオガラのアオちゃんと名付けた)は食べ物をねだって口を開けるが、オスは食べ物を見せるだけで食べさせないのだ。見せるだけ見せて巣箱の出口に戻る。それを数回繰り返す。これはどういうことなんだろう?まるで、食べ物で釣ってアオちゃんを巣箱の外におびきだそうとしているかのよう。このような場面がなぜか数日間に渡って繰り返し見られた。

 

営巣開始から11日目にカメラの映像を見ていると、大変なことが起こった。アオちゃんが巣にいるところにまたオスがやって来た、と思いきや、2羽の間で激しいバトルになったのだ。ということは、やって来たアオガラはパートナーのオスではなく、別のメス???アオちゃんは床にねじ伏せられ、大ピンチ!

実は去年のシジュウカラの営巣では、メスが巣を留守にしている間にクロジョウビタキが巣に侵入し、戻って来たシジュウカラのメスが怒って激しく攻撃した結果、侵入者のクロジョウビタキが命を落とすという事件があったのだ(そのときの記録はこちら)。そんなことがあったものだから、また死闘を目撃することになるのではと焦ったが、格闘の末、1羽が巣箱から出て行き、決着がついたようだ。勝者がどちらなのか、映像からははっきり判断できないが、巣に残ったのはアオちゃんの方であると信じたい。でも、もしかしたら乗っ取りかもしれない。すごく気になる、、、。

 

その翌日、巣に残ったメスは卵を一つ産んだ。口移しで食べ物をくれそうでくれないオスといい、前日のバトルといい、いろいろ謎が残るのだが、めでたく卵が産み落とされたことだし、便宜上、卵を産んだこのメスがアオちゃんだという前提で記録を進めたい。

 

卵の数は毎日1つづつ増えていき、10日後に10つになった。すごいすごい。

 

そして、いよいよ抱卵モードに!ヒナが孵るのが楽しみである。どうか途中でハプニングがありませんように。

 

(続く)

去年の8月、我が家のサンルームの窓ガラスに1羽の猛禽類が激突し、死んでしまった。

ガラスに野鳥がぶつかるのは残念ながら珍しくなく、少しでも事故を減らそうと窓ガラスにステッカーを貼ったり、ツタのカーテンを垂らしたりしているのだけれど、それでも時々、ぶつかってしまう。ぶつかった鳥は脳震盪を起こしてしばらくぼうっとした後、元気になって飛び去ることがほとんどだが、この猛禽類は可哀想なことに首の骨を折り、即死だった。とてもショックだったけれど、猛禽類を間近でじっくり見ることは滅多にない。せっかくの機会だから観察してみよう。ゴム手袋をはめて、羽を広げてみた。

 

 

体長およそ30cm、翼を広げると、その幅は47cmほど。羽の色、模様を含めて判断するに、ハイタカの若鳥らしい。美しい個体だ。それにしても、鳥にはこんなにたくさんの羽が生えていたんだ。瞼は上から下ではなく、下から上に閉じるんだね。クチバシも爪も触れるのは初めてだ。へー、なるほどなるほど、こうなっているのね、とひとしきり観察した。

さて、この死骸、どうしよう?

そのままゴミとして捨てるに忍びず、どうしたものか。アニマルトラッキングの仲間に野鳥の羽標本を作っているKさんがいるのを思い出して、連絡してみた。「うちの庭でハイタカが死んでしまったんだけど、死骸いる?」「喜んで!」。しかし、今は標本を作る時間がないので、冷凍保存しておいてくれないか、というと。そこで、彼女に時間ができたら標本作りに参加させてもらおうと思いついたのだった。

先日、ようやくその機会がやって来たので、冷凍ハイタカを持ってKさんの家へ。ハイタカを二人で半分こし、私は右半分の羽標本を作ることになった。

初めての体験にドキドキ。やってみたいと言ったものの、翼部分を切り取ったり、最初の1本の羽を抜くのには少々、勇気がいる。「普段から鶏の手羽先などを調理しているんだから、羽がついているかいないかだけの違いだ」と自分に言い聞かせながら、恐る恐る手を動かす。

 

羽を部位ごとに注意深く台紙に貼るKさん。

手順はわりにシンプルで、標本にする羽を1本1本抜き、部位ごとに並べて接着剤で台紙に貼っていくだけ。でも、鳥の体の構造を全然わかっていなかったので、部位を確認しながら羽を並べていくのは難しかった。

 

Brown, Ferguson, Laurence, Lees著 “Federn, Spuren & Zeichen”より

風切羽(ドイツ語でSchwungfeder)には、初列(Handschwingen)、次列(Armschwingen)、三列(Schirmfeder)の3種類がある。風切羽は大きく形も特徴的なのでまだわかりやすい。しかし、雨覆羽は細かい区分があって、それが何列も重なっている。形も似かよっているので、どこからどこまでが何の羽なのか、さっぱりわからない。Kさんを見様見真似でやったけど、翼の部分だけで6時間くらいかかってしまった。

羽を貼った台紙は無視がつかないよう、密封できるビニール袋に入れて保管する。分類や並べる順番が間違っているかもしれない。

 

ご飯も食べずに作業し、半日以上かけて初めての羽標本作りが終了。とても興味深い体験だった。

作業の際には図書館から借りた野鳥の羽の本の他、Featherbaseという羽標本のオンライン辞典を参考にした。Featherbaseはみんなで作るデータベースで、学者だけでなく世界中の羽コレクターが作った羽標本が登録されている。これがすごい。World Feather Atlasを作ることを目標にしており、集まった標本は学術研究にも活用されるそうだ。図鑑.jpというサイトにFeatherbaseに関する日本語の記事があったので貼っておこう。

番外編 世界の羽事情

Featherbaseには日本支部もある。

日本支部による説明記事

 

羽についてほとんどわからないままの作業だったけれど、家に帰ってから作った標本をFeatherbaseのハイタカのページや、その他のサイトの野鳥の体の構造図とじっくり見比べているうちに、「あー、なるほど。こうなってるんだ」と少しづつ鳥の羽の構造が見えて来て面白い。こんな世界があったとは!また新しい領域に足を踏み入れてしまった。バードウォッチングは、鳥そのものを見るだけではなく、鳥の巣も落ちている羽も面白い。無限に楽しめる世界だと再認識。

ところで、忘れずに書いておかなければいけない。ドイツでは、すべての野鳥は保護の対象にあり、羽を含む野鳥の体の一部を拾ったり、所有したり、売買することは連邦自然保護法により禁止されている。これは密猟を防ぐためで、学術研究を目的とする場合のみ、特例として許可される。

なので、今回の羽標本作りは推奨される行為ではない、ということになる。道端に綺麗な羽が落ちていたら子どもが拾ったり、工作に使ったりするのは自然なことに思えるし、一般人も参加できる羽標本データベースプロジェクトが存在するのに矛盾している気がする。自然の中にある羽は持ち去ってはいけないらしいが、では、自分の家の庭で死んだ鳥の場合は?羽を標本にして野鳥について学ぶのは、そのまま生ゴミとして処分するよりも悪いことなのか?難しい問題である。

ということで、羽の扱いには要注意です。

 

 

 

散歩中に野鳥の巣を見つけたら、写真を撮ることにしている。

これが結構、楽しいのだ。繁殖の時期だと、野鳥の営巣作業や抱卵中の様子を観察できることがある。それ以外の時期でも、ヒナが巣立って空になった後の巣を眺めて、これは何の鳥の巣だろう?と調べるのが面白い。

これまでに目にした鳥の巣をまとめてみよう。

 

ドイツ北東部で最も目にしやすいのは、シュバシコウ(Weißstorch)の巣だ。繁殖のために南から渡って来たシュバシコウが、あちこちの村や小さな町の高いところに作られた巣に座っている姿は春の風物詩だ。シュバシコウは保護されているので、繁殖を助けるためにあちこちに写真のような巣台が設置されており、その上に巣が乗っている。巣作りはオスメスの協力作業で、細い枝を円形に編み、その中にクッションとなるコケ、草、羽などを敷く。シュバシコウは一夫一婦制で基本的に毎年同じ相手とつがいになり、同じ巣を修理しながら使い続けるので、だんだん巣が大きくなる。熟年夫婦の巣になると、直径2メートル近くになることもあるらしい!

 

これは数年前にうちの庭のナラの木にモリバト(Ringeltaube)が作った巣。枝を無造作に重ねただけのわりに雑な造りに見える。しかも、こんな写真が撮れるくらい目立つところに作って、カラスや猛禽類に狙われないのかなあと心配になった。数日間は夫婦仲良く巣に座っているのが見えたが、やっぱり塩梅がよくなかったのか、その後、この巣は放棄されてしまった。

 

庭の巣箱内にシジュウカラが作った巣。シジュウカラの巣作りはメスの仕事。巣箱内に取り付けた野生カメラで営巣の様子をずっと観察していたのだが、狭い巣箱の中で器用に小枝を丸く編んで土台を作り、そこにコケや動物の毛を置いてふかふかした座り心地の良さそうな巣を作っていた。

無事に巣立って餌台に餌を食べに来たシジュウカラのヒナたち。

 

アオガラは樹洞に巣を作る。中の巣は見れないけれど、シジュウカラと似たような巣なのかな?

 

あるとき、散歩で通りかかった池の淵のヨシの間でカンムリカイツブリが営巣をしていた。カンムリカイツブリの巣は同時に交尾の舞台でもあるそうだ。オスメスが一緒にヨシや植物の根っこ、枯葉などで巣を作り、その上で交尾する。なんとなく面白い。

 

これまでに見つけて一番嬉しかったのは、ツリスガラ(Beutelmeise)の巣。ツリスガラは湿地や林の中の木の枝に、蜘蛛の糸や綿、植物の繊維などを使ってフェルト製のバッグのような吊り巣を作るのだ。巣を作るのはオスで、メスはオファーされた巣のうち気に入ったものを選んでその中に産卵する。手の込んだ巣は作るのに30日くらいかかるが、いざメスが選んでくれたら、オスはもうそのメスに用はなく、さっさと移動してまた別の巣を作り、別のメスにオファーするらしい。メスはワンオペで育児をしつつ、巣のメンテも自分でしなければならない。この巣の写真を撮ったとき、メスが忙しそうに巣を出たり入ったりしていた。動きが早くて、ツリスガラ自体の写真は残念ながら撮れなかった。

 

森の中で見かけた木の股につくられたクロウタドリ(Amsel)の巣。枝を編んだ丸いカゴのような巣に緑がかった卵が4つ並んでいる。クロウタドリは木の上だけでなく、地面、生垣の中などいろいろな場所に巣を作る。もともとは森の鳥だったクロウタドリは今では都市部でもすっかりおなじみの野鳥になり、民家のベランダや花壇などに巣を作ることも多い。巣材にはセロファンなど人工物が使われることもある。外側は泥で塗り固める。クロウタドリは主に地面でヒナのための餌を探すので、巣は比較的低い場所にある。

地面で虫を捕まえるクロウタドリのメス

 

お隣の家では、毎年、ガレージにクロジョウビタキ(Hausrotschwanz)が巣を作る。頻繁に人が通る場所なのに落ち着かなくないのかな?と不思議に思うけれど、クロジョウビタキは風雨が凌げさえすれば、他のことはあまり気にしないらしい。

 

これは、ある駅の構内にできたツバメ(Rauchschwalbe)の巣。泥を固めてできた巣だ。

こちらは建物の軒下にできたニシイワツバメ(Mehlschwalbe)の巣。これもほぼ泥でできていて、上のツバメの巣と似ているが、違うのはツバメが通常、建物の中に巣を作るのに対し、ニシイワツバメは建物の軒下などに作ること。つまり、ツバメはインドア派でニシイワツバメは半アウトドア派?

ツバメの仲間にはショウドウツバメ(Uferschwalbe)というのもいて、砂質の崖に穴を掘って巣を作る。バルト海沿岸の崖でたくさんのショウドウツバメが巣穴を出入りしているのを見た。なかなか壮観だった。

 

キツツキはその名の通り、木をつついて穴を開けて巣を作る。

 

カササギ(Elster)は木のかなり高いところに枝を使って球状の巣を作る。

 

カササギ

 

ある日のドライブ中、国道沿いの原っぱにクロヅル(Kranich)の巣を発見したときには驚いた。遠目だけれど、よく見ると卵があるのが見える。道路からは距離があり、周囲を水に囲まれてはいるものの、人や動物が簡単に近づけるようなところに巣を作って大丈夫なんだろうか?

 

最後は番外編でパナマで見た鳥の巣。

オオツリスドリ(Montezuma Oropendola)は草木の繊維を編んで細長い大きな釣り巣を作るのだ。

巣作り中のオオツリスドリ。

 

これは博物館に展示されていたオオツリスドリの巣。すごいなあ。

 

種によって簡素だったり、ものすごく手が混んでいたり、千差万別な野鳥の巣。野鳥は種類が多いだけに、巣の鑑賞の楽しみは尽きることがないだろう。

 

 

バードウォッチングを初めて3年ちょっとが経過した。最初のうちはとにかく目についた野鳥の写真を撮っては種名を調べることに熱中していた。それから季節が何度か巡り、身近にいる種がだいたい把握できたら、今度はそれぞれの種について知りたくなった。庭にやって来る野鳥の種類も増えて、いろんな種に親しみを覚えるようになって来た。

バードウォッチャーとしてまだ日が浅いけど、それぞれの種についてこれまでに観察したことと本で読んだり詳しい人に聞いたことをまとめていこう。第一弾は「キツツキ」について。

キツツキとは名前の通り、木をつつく習性のある鳥を指す。でも、キツツキというのはキツツキ科に含まれる鳥のことで、「キツツキ」という種名の鳥がいるわけではない。日本語ではキツツキの仲間には「〜ゲラ」という種名が付けられている。ドイツ語ではキツツキの仲間は「ナニナニSpecht」と呼ばれる。

 

ドイツに生息するキツツキ科の鳥は以下の10種。

  • アカゲラ  (Buntspecht, Dendrocopos major)
  • ヒメアカゲラ (Mittelspecht,  Dendrocopos medius)
  • コアカゲラ (Kleinspecht, [Dryobates minor)
  • ヨーロッパアオゲラ (Grünspecht, Picus viridis)
  • クマゲラ (Schwarzspecht, Dryocopus martius)
  • オオアカゲラ (Weißrückenspecht, Dendrocopos leucotos)
  • ミユビゲラ (Dreizehenspecht, Picoides tridactylus)
  • ヤマゲラ (Grauspecht, Picus canus)
  • シリアンウッドペッカー? (Blutspecht, Dendrocopos syriacus)
  • アリスイ (Wendelhals, Jynx torquilla)

これまでに見ることができたのは、アカゲラ、コアカゲラ、ヨーロッパアオゲラ、クマゲラの4種である。この4種についてわかったことをまとめよう。

まず、ドイツで個体数が最も多いアカゲラについて。

アカゲラはその名の通り、お腹の下の方が赤い。下腹部が赤いのはオスメス共通だけれど、オスは後頭部も赤い。メスの頭は真っ黒である。この写真はうちの庭によく来るアカゲラで、見ての通り頭の後ろに赤い部分があるのでオスだとわかる。

アカゲラは環境適応力が高いため他のキツツキよりも生息範囲が広く、そこらじゅうにいると言っても言い過ぎではない。ドイツ人がSpechtと言われて真っ先に頭に思い浮かべるのはアカゲラだろう。ドイツでは散歩がポピュラーなアクティビティで、みんなよく散歩に行く。森の中を歩くと、アカゲラのドラミングの音がよく聞こえてくる。ドラララン、ドララランという明るく小刻みの音が特徴だ。

キツツキのオスは他の多くの鳥とは異なり、美しいさえずりではなく木をつつく音でメスにアピールする。ヴォーカリストというよりもドラマーだ。メロディよりもリズム感で勝負、というとなんとなくカッコいいけど、せっかく演奏してもメスに注目(注耳?)してもらえなければしょうがない。だから、乾燥した、よく響く木を選んでつつくのだ。キツツキの求愛期間は長い。これを書いている現在は2月の初めだが、近所の森にはすでにアカゲラのドラミングの音が響き渡っている。なかなかパートナーを見つけられないオスは延々とドラミングを続けることになる。喉が枯れるほど歌うのとクチバシを木に叩きつけまくるのとでは、どっちがより疲れるだろうかなどと無意味なことをつい、考えてしまう。また、アカゲラのドラミングはパートナー探しだけでなく、ナワバリを主張するためでもある。

うまくパートナーのメスが見つかったら、今度は子育ての準備開始である。ここでも木をつついて開けて巣穴を作る。アカゲラの場合、巣穴の使い回しはあまりせず、ほぼ毎年、新しい巣穴を作るそうだ。2週間ほどかけて完成した巣穴にはコケなどのクッション材を置いたりはせず、メスは木屑の上に白くて光沢のある卵を4つから7つほど産む。抱卵はオスメスが交代でおこなうが、夜間はパパの担当だそうだ。卵は10日ほどで孵化し、それからヒナが巣立つまでの3週間ほどの間、親鳥はせっせと巣に餌を運ぶ。

 

巣立ちが近づくと、幼鳥は餌をもらうときに巣穴から顔を出すようになる。これがなんともかわいくてたまらない。バルト海沿岸の森で親に餌をもらうアカゲラの幼鳥を見かけたときには感激して、ずっと愛でていたかった。でも、幼鳥にとって、不用意に巣から顔を出すのはキケンだ。捕食者があたりに潜んでいるかもしれない。だから、親が戻って来るまで幼鳥は巣穴の中で待っている。戻って来た親鳥は近くの木から「餌持って来たよー」と鳴き声で知らせ、それを合図に顔を出した幼鳥は素早く餌を受け取って、またサッと穴の中に戻る。巣立ち間近な幼鳥はそれを頻繁に繰り返していた。

この親鳥も頭の後ろが赤いから、パパだろう。幼鳥は性別に関係なく頭のてっぺんが赤い。巣立った後も、しばらくの間は親に餌を食べさせてもらったり、餌の見つけ方を教えてもらったりする。去年の春、うちの庭の餌場には親鳥が子連れでやって来た。「ここのファットボールは安心して食べていいからね」と親に言われたのだろうか。そのうち子どもは単独でも食べに来るようになった。しかし、餌場の管理人(つまり、私たち)が無害でも、油断は禁物だ。周辺の森にはオオタカ(Habicht)やハイタカ(Sperber)など、キツツキを捕食する猛禽類がいる。まだ世の中に慣れていない幼鳥は特に狙われやすい。キツツキは警戒心が強いのか、頻繁に上方を確認する習性がある。餌場で餌を食べるときにも約1秒ごとに顔を上げてキョロキョロとあたりを確認しているのを、いつもキツツキらしい仕草だなあと思いながら観察している。

 

気をつけていてもやられるときはやられる。これは近所の森で見た惨事の跡。羽の大きさから見て、捕食されたのは大人のアカゲラのようだ。

ところで、森の中を歩いていると、ときどき、木の股や裂け目に松ぼっくりが挟まっていることがある。

これはドイツ語ではSpechtschmiede(「キツツキの鍛冶場」、の意味)と呼ばれるものだ。アカゲラは松ぼっくりをこのように固定してから、鱗片の裏側にある種子を取り出して食べるのだ。鍛冶場の下の地面には種子を取り出した後の松ぼっくりがたくさん落ちている。

こういうのを目にするたびに、生き物の行動って面白いなあとつくづく思う。

さて、身近なアカゲラの観察も楽しいが、それ以外のキツツキを見る機会はぐっと減るので、見つけるととても嬉しくなる。私が特に好きなのはクマゲラ。ドイツに生息するキツツキのうちで最も大きく、体長50cmほどもある。

光沢のある黒い体に赤い帽子がお洒落。ちなみに、赤い部分が頭全体を覆っているのはオスで、メスは後頭部に小さな赤い部分があるだけだ。

クマゲラは、自然破壊や捕獲によって19世紀半ばにはドイツ北部からほぼ消滅していた。保護の甲斐あって最近はそれほど珍しくなくなっている。クマゲラはオオアリ(Rossameisen)やキクイムシ(Borkenkäfer)の幼虫を好み、巣はブナの木に作ることが多い。クマゲラの作る巣穴は他のキツツキのものよりもずっと大きく、楕円形をしていることも多い。ドラミングの音はアカゲラのそれよりも低く、ドラミングの長さも長い。クマゲラは喉が大きく、ヒナに与える餌を親鳥が喉に溜めておいて、吐き戻して与えることができるので、広範囲に餌を集めることができるそうだ。

これは多分、クマゲラが穴を開けた木

キツツキの作る樹洞は当のキツツキだけでなく、他のいろいろな生き物が利用する。クマゲラの穴は大きいので、 主にヒメモリバト(Hohltaube) やキンメフクロウ(Raufußkauz)、ホオジロガモ(Schellente)がよく使うらしい。意外なことにゴジュウカラも利用者だという。あんなに小さいゴジュウカラには入り口が大き過ぎて捕食者が入り放題になりキケンでは?と思ったら、ゴジュウカラは穴の入り口に泥を塗って固め、ジャストサイズにするらしい。ゴジュウカラを意味するドイツ語”Kleiber”は「貼る」という意味の動詞”kleben”が語源だと知った。

こちらはヨーロッパアオゲラのメス。オスは目の下が赤いので、写真を撮れば見分けることができるけれど、遠目に見分けるのはまず無理だろう。アリが主食のアオゲラは伝統的な果樹など開けた場所を好む。キツツキだけど地面にいることが多いのだ。長くてベタベタした舌でアリを捕まえて食べ、ヒナに与える餌もほぼアリのみ。ドラミングはもっぱらパートナーとのコミュニケーションの目的のみで、ナワバリの主張のためにはしない。アオゲラはドラミングをあまりしない代わりによく鳴く。目立たない体の色をしているけれど、キョキョキョキョという特徴的な鳴き声なので、姿が見えなくても声でああ、近くにいるなとわかるようになった。アオゲラは巣穴を作ることに関してはあまり熱心ではなく、同じ穴を何年も使うそうだ。

 

そしてもう1種。雪の降る日に森の中で一度だけ目にした小さなキツツキはコアカゲラだった。体重はわずか2ogほど。キツツキというよりも小鳥という感じ。葉や枝についた虫を食べる。

 

ドイツに生息するキツツキはすべての種が保護の対象だ。森にキツツキがたくさんいれば、リス、マツテン、ヤマネ、コウモリなど哺乳類からハチやアリなどの昆虫まで、キツツキが枯れ木に開けた穴を利用する生き物の密度が高くなり、またそれらの捕食者も増える。キツツキは森の生物多様性に不可欠な存在なのだ。

これから春にかけて野鳥の活動が活発になる。今年もキツツキの親子を見ることができるだろうか。まだ目にしたことのない光景が観察できたらいいな。

 

参考文献:

Volker Zahner, Robert Wimmer (2021) “Spechte & Co. Sympathische Hüter heimischer Wälder”

 

2019年の秋に庭でバードウォッチングを始めて、約2年半が経過した。最初は庭のテラスに餌台を設置してひまわりの種やピーナツなどを置き、家の中から窓越しに餌台を訪れる野鳥を眺めて楽しむことから始めたが、ただそれだけのことでも生活の楽しみが激増した。

過去記事: ドイツのネイチャーツーリズム 2 自宅の周りでバードウォッチング

さらに餌台に野生カメラを取り付けたら、それまで窓越しに観察していた以上にたくさんの種がやって来ることがわかり、ますます楽しくなった。

過去記事: 野鳥カメラで餌台に訪れる野鳥を観察する

これまでの2年半に自宅の庭で確認できた野鳥は37種。まさかこんなにいろいろな野鳥が来るとは想像もしていなかった。ちょっとした思いつきで始めたバードウォッチングだったのに!

野鳥たちは餌を食べに来るだけでなく、庭で子育てもする。一昨年はシジュウカラ、昨年はシジュウカラに加えクロウタドリの営巣と子育ての様子をカメラを通して観察することができた。今年は同じ巣箱でシジュウカラが営巣を始めたものの、こちらの記事に書いたような事情で中断してしまったのが残念である。

しかし、今年は今年でとても面白い展開になった。というのは、去年までは餌台は冬の間だけ設置し春には片付けていたのを、今年は出したままにしておいたのだ。そうしたら素晴らしいことが起こった。冬の間は個別に餌を食べに来ていた野鳥たちが、それぞれパートナーを連れてやって来た。餌台に入れる小鳥たちだけでなく、モリバト、カササギ、カケスなどの大きな鳥もみんなカップルで現れ、小鳥たちが芝生に落とした餌をついばんでいた。そして、しばらくすると庭やその周囲でそれぞれのカップルが巣作りを始め、やがて生まれたヒナ達に食べさせる餌をせっせと取りに来る姿が見られるようになった。クチバシに詰め込めるだけの餌を詰め込んで巣へ戻っていく親鳥たち。がんばってるなあ。

幼虫をくわえたウソのオス

それから数週間が経過し、ヒナ達が続々と巣立ち始めた。

巣立ったばかりのアオガラの兄弟

カササギに巣を狙われ、父鳥の必死の防衛の末、無事に巣立ったクロジョウビタキのヒナ

オークの木の巣から生まれたゴジュウカラのヒナ

 

巣立ったばかりのヒナを連れて、いろんな種の親鳥達が餌場に集まり、口移しでせっせと子どもに食べさせる。なんとも微笑ましい光景にほのぼの。

親からエサをもらうアオガラの子ども

しばらくの間はそれぞれ親に食べさせてもらっていたが、だんだん大きくなって飛ぶのも上手になると、子ども達だけで餌場にやって来るように。

イエスズメの子どもたち

 

シメの子ども

 

シジュウカラの子ども

 

カケスの子どもはギリギリ餌台に入れる大きさ

 

兄弟でやって来たアカゲラの子ども

最も数が多いのがイエスズメの子どもたちで、10羽以上いる。アオガラとシジュウカラはそれぞれ5羽ほど、アカゲラも2羽生まれた。そんなわけで今年の春は大繁殖と言っていいレベルで野鳥の子どもたちが庭を飛び回っている。

今後はどうなっていくのかな。

 

 

 

まだ9月の声を聞いていないのにすでに秋になったようなドイツである。今年の夏はなんだか短かったなあ。

私が住むブランデンブルクでは春から初夏にかけてコウノトリが多く繁殖する。ブランデンブルクで繁殖行為を終えたコウノトリたちは8月にはアフリカに向けて移動する。彼らが飛び立つ前に、コウノトリの村、リューシュテットへ行って来た。ブランデンブルクの外れにあるこの小さな村はドイツ最大のコウノトリの繁殖地でコウノトリの保護に力を入れている。アクセスが大変なのだが、ラジオで偶然、なぜこの村に多くのコウノトリが集まるのかについて聞いて、是非とも行ってみたくなったのだ。

すでに7月だったのでピークシーズンは過ぎていたが、それでも多くのコウノトリを見ることができた。コウノトリは大きな鳥だけあって、たくさんの個体が集まっている様子はなかなか壮観だった。野鳥観察は本当に楽しいなあ。

YouTubeチャンネル「ベルリン・ブランデンブルク探検隊」にスライド動画を公開したので、ご興味があったらぜひ見てください。

前回、前々回の記事でシジュウカラの育児観察についてまとめたが、今年は同時にクロウタドリの営巣も観察するチャンスに恵まれた。

以前から我が家の庭にはクロウタドリが3ペアほど出入りしていて、そのうちの1ペアが生垣の中に巣を作ることがよくあった。でも、その生垣は奥行きが2メートル以上あり、去年までは観察用カメラも持っていなかったので、巣の中を見たことはなかった。今年はその生垣を撤去したので、うちの庭にはもう巣を作らないだろうなあと思っていた。でも、垣根を取り除いた場所に花などを植える作業をしているとクロウタドリが飛んで来て、すぐそばの地面で忙しそうに虫を集めている。お隣か裏の家の庭に巣を作ったのだろうなあ。

 

ところが、5月の終わりに庭の反対側の地面にクロウタドリの卵が落ちているのを発見した。

 

こちら側にも小さい生垣がある。もしや、と思って葉をかき分けて中を覗くと、クロウタドリの巣があった。

巣には卵が1つ。そのそばの枝には割れた別の卵の殻が引っかかっている。どうやら、カラスか何かに巣を荒らされたらしい。この巣はこのまま放棄されるのだろうか。せっかく巣作りしたのに、残念だなあ。しかし、この後、休暇に出かけたりして、そのままこの巣のことはすっかり忘れていた。

旅行から帰って来て庭を見回っていると、生垣のあたりが何やら騒がしい。クロウタドリが生垣に出たり入ったりしている。あれ?ひょっとして?

覗いてみると、メスが巣に座っているではないか。そして右側にはヒナらしきものの姿が!母鳥は残った1個の卵をちゃんと温め、ヒナが生まれていたのだ。気づいた私と夫はワーワー大騒ぎ。夫が大急ぎで観察用カメラを生垣の中に取り付けた。

 

やった!これでクロウタドリの巣も観察できる。シジュウカラの観察カメラは巣箱の天井につけたから真上からの映像しか見れないが、こちらは横にカメラを設置したのでまた違うアングルから観察できるのもグッド!でも、あれれ?ヒナは2羽いるぞ。巣を荒らされた後もさらに卵を産んでいたのか。

と思ったら、4羽いた!いつの間にこんなに卵を産んでいたんだろう。

気づいたのが遅かったので、ヒナはすでにある程度大きくなっていて、最初から観察できなかったのがちょっと残念だが、みんな元気いっぱいで見ていて楽しい。それもそのはず、親鳥がすごくがんばって育てているのだ。

餌としてヒナに与える虫を集めるお母さん

 

お母さんだけじゃないよ、お父さんも超働き者。夫婦で力を合わせて4つ子育児に奮闘している。私たちがテラスに座っていると、お父さん鳥が頭上をビュンビュン飛んでせっせと餌を巣に運んでいく。そして、このお父さんはなかなか慎重で、巣に直接は飛び込まず、まず近くの別の場所に留まってあたりを見回し、誰も見ていないのを確認してからサッと生垣の中に消える。そして、子どもたちもお利口さんなのだ。母鳥も巣から離れて餌探しをすることがあったが、親がいない間は子どもたちは巣の中に頭を引っ込めて静かにじーっとしている。ふと、「オオカミと7匹の子ヤギ」の話を思い出した。悪い奴がやって来て、食べられてしまったら大変だからね。

 

ぐんぐん成長して、数日後にはこんなに大きくなった!

 

そして7月7日。私は朝から胸騒ぎがしていた。今日あたり、彼らは巣立つのではないかという気がしたのだ。なのに、その日に限ってキャンセルできない予定が入っている。出先でカメラアプリを頻繁に覗き込む余裕もなさそうだ。私が家にいない間にすべてが終わってしまうかもしれないと巣を気にしつつ、家を出た。

数時間後、夫からメッセージが入った。

「オレのビーサンの中にヒナがいる!」

「はあ?」

あああ〜!やっぱり、出ちゃった。でも、なぜ、サンダルの中に着地!?夫はこれをどうしたものかと迷ったが、そのままにしておいたら親鳥が迎えに来て一緒にいなくなったとのことである。

私は慌てて家に帰ったが、時すでに遅し。巣はもぬけの殻であった。

自動録画された映像を巻き戻して巣立ちの瞬間が映っていないかを見たところ、最後の1羽はなかなか飛び立てなかったようで、巣の縁に上がっては中に降り、また縁に上がっては降りをしばらく繰り返した後、ついに飛び出した。

 

生垣の中だから、華麗に飛び立つというより、近くの枝や葉っぱに乗りながら出ていくという感じだね。

 

こんなわけで、シジュウカラのヒナもクロウタドリのヒナも無事に巣立ち、めでたしめでたし。そして私はまた空の巣症候群に陥るのであった。

 

 

前回の続き。

いよいよ始まった、シジュウカラの子育て。

2つ目の卵はいつ孵るかなと思って見ていたが、何が良くなかったのかヒナは生まれなかった。つまり、モコちゃんの赤ちゃんは一人っ子である。去年はたくさんのヒナが成長する様子が見られたので、今回は1羽だけというのはちょっと寂しい気がした。でも、しばらく見ていたら、これはこれで観察のしがいがあることがわかった。ヒナ同士が重なり合うことがないので、その分、体の成長をよく見ることができるのだ。

最初のうちは皮膚が透けていて、体の内部まではっきり見える。非常に興味深い。でも、見ようによってはちょっとコワイ画像かもしれないので、ここにクローズアップを載せるのはやめておこう。

 

生後8日。頭が黒くなり、羽が生えてシジュウカラらしくなった。一人っ子なので、パパとママがせっせと運んで来る餌を独り占めできる。だから、グングン大きくなった。

生後9日。お座りができるように。

生後10日。ママに抱っこしてもらっていたら、パパが餌を運んで来る。大事に育てられているなあ〜。見ていると、ほのぼのしてしまう。

 

生後11日。羽ばたきの練習が始まった!いよいよ巣立ちか!?

と思ったけれど、ここからがなかなか大変だった。この子(ピヨちゃんとしよう)は発育状態はとても良いのだが、どうも甘えっ子のようなのだ。母鳥のモコちゃんは「そろそろ巣立てそう」と判断したのか、この翌日から、餌を持たずに巣箱に戻って来て、ピヨちゃんを外に誘い出すような仕草をするようになった。が、ピヨちゃんはなかなか出ようとしないのである。

生後14日目。巣箱に戻って来たモコちゃんに「ママ、ごはんちょうだい、ちょうだい!」とねだるピヨちゃん。モコちゃんは「ダメダメ」というように首を振り、我が子の前に回李、手本を見せるように飛んでみせる。しかし、ピヨちゃんは怖がって出ようとしない。モコちゃん、今度は餌を見せながら「ママと一緒に外に出られたら、これをあげるからね」とでも言うかのように説得を試みる。しかし、それもうまくいかない。延々とそれを繰り返していたら、夜になってしまった。どうやら巣立ちは翌日に持ち越しのようである。

生後15日目。ピヨちゃん、ようやく出ようという気になったのか、ときどき飛び上がってはみるのだが、やっぱり怖いようだ。兄弟がいれば、先に飛び立つ兄弟の勢いにつられて出やすいのかもしれないが、なんせ一人っ子。モコちゃんは延々と根気よく飛ぶのを促している。イヤだイヤだ、こわいもん、とグズるピヨちゃん。いやはや、子どもを巣立たせるのも大仕事だね。私もこの日は今か今かと、10分おきにカメラを覗き込んで、手に汗握っていた。

 

そして、今日もまた出ないで終わりかなあと思いかけた夕方の5時過ぎ、ついにピヨちゃんは勇気を振り絞って巣箱を出たのだった。

 

巣箱から出る瞬間を外から見ようと思っていたのだけれど、ちょうどこのとき取り込んでいてすぐには庭に出られず、気づいたらもう巣箱にピヨちゃんの姿はなかった。慌てて自動録画されていた動画を確認する。動画に残った音からして、ピヨちゃんはスムーズに飛び立ったというより、出口でジタバタしているうちに偶然飛び出せたという感じだったのではと推測する。庭に出て、それらしきヒナがいないか探してみたが、見当たらなかった。残念!でも、パパとママに守られてオークの木のどこかにいるはず。成鳥と区別がつかなくなる前に姿が見られるといいなあ。

 

というわけで、今年は1羽だけだったけれど、巣箱からシジュウカラが無事に巣立った。大家の私と夫にとっては嬉しい限りである。

 

去年、初めて庭に野鳥のための巣箱を設置し、内部にカメラを取り付けた。設置後数時間でシジュウカラが営巣を始めたので、巣作りから抱卵の様子、そしてヒナ達が巣立つまでを観察した。カメラを設置したのも野鳥の育児を観察するのもまったく初めての経験で、ワクワク、ハラハラな数週間を送った。

その一部始終をこのブログに「シジュウカラの育児観察記録」(その1からその10まであります)および「帰って来たシーちゃん、シジュウカラ2度目の営巣」(その1からその3まであります)としてまとめたところ、多くの方が読んで下さったようだ。

それにしても、野鳥の育児観察がこんなに面白いなんて!巣箱は数ユーロで市販されているので気軽に設置できる。カメラも一度用意すれば壊れるまでは使えるから、これからは毎年観察が楽しめる。よし、2021年もいくぞー!とやる気満々でシーズンの到来を待った。今年は巣箱を2つに増やし、古い方を旧館、新しい方を新館とした。それぞれの内部にカメラを取り付けて2月から観察を開始。今年はリアルタイムではブログに記録せず、一連のプロセスが終了してから手元に残った画像と映像記録、メモをもとにまとめることにしたのでリアルタイム観察の躍動感は伝わらないかもしれないけれど、以下、まとめである。

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結果から言うと、今年も去年同様、シジュウカラの営巣からヒナの巣立ちまでを観察することになったが、今年は去年とはだいぶ様子が違っていた。まず、なかなか本格的な営巣が始まらなかった。2月の終わりにかなり暖かい日があって、新館の方でも旧館の方でもアオガラとシジュウカラが代わりばんこに巣箱に入って中を偵察してはいた。気の早いアオガラが新館に巣材を持ち込み始めたが、数日後に冬に逆戻りしたような低気温になり、アオガラはあっさり断念。4月に入って今度は旧館でシジュウカラが営巣を始め、結構いいところまで進んだ。しかし、5月に再び寒い日が続いてこちらも中断。ニュースによると、今年の5月は30年来の寒い春だったそうだ。日が長くなって来ても昆虫の姿もほとんど見られない。これではヒナが生まれても与える餌もないだろう。私も毎日巣箱カメラを覗き込んでは何も起こらずガッカリする毎日。

しかし、ようやく気温が安定して来た5月29日、旧館でようやくシジュウカラが中断していた巣作りを再開!

営巣再開から3日目の様子

今度こそ、子育て本格開始か!?

やっぱり暖かくなるタイミングを待っていたのだろう。すごいスピードで巣が整えられ、6月3日、卵が一つ産み落とされた。

 

去年、この巣箱で営巣したシジュウカラのシーちゃんとは別のメスのようだ。うなじの白いあたりがしーちゃんとは違う感じで、巣の作り方もかなり違う。季節がズレているから手近にある巣材の種類が違うからかもしれないけれど、なんだか随分とモコモコした巣を作るなあと思って、このメスは「モコちゃん」と命名。

シーちゃんは毎朝1つづつ卵を産んだけれど、モコちゃんはそうではなく、1つ目の卵を産んでから6日目にもう一つ産んだ。そして、それきりもう卵を産まなかった。シジュウカラにしては少ない。今年の春は気候が安定しなかったことと関係があるのか、別の理由なのかはわからないが、モコちゃんは多産ではないのだった。

ここからモコちゃんは抱卵モードに入ったが、6月に入ると今度はいきなり猛暑となり、30度越えの日が続いた。巣箱の中は一体、何度あるんだろう?卵が煮えてしまうのでは?と心配になる。モコちゃんもそれを心配してか、それとも自分が暑くてとても座っていられないのか、立ち上がって上を仰ぎ見て口を開けていることが多かった。大家の私としては、エアコンつけてなくてすみませんと謝りたくなる気分である。

そして、最初の卵が産み落とされて20日が経過、卵の1つが孵った!かわいい〜!生まれたての我が子を愛おしそうに見つめるモコちゃん。モコちゃんのダンナもせっせと餌を運んで来て、夫婦力を合わせての子育てが始まった。

 

長くなったので、続きはその2に。

 

 

ドイツには「ドイツニュースダイジェスト」という在住日本人のための日本語フリーペーパーがあり、私もドイツに住むようになって以来、愛読して来ましたが、なんと最新号(Nr.1144 23 April 2021)ではバードウォッチングの特集が組まれています。

タイトルはずばり、「ドイツで始めるバードウォッチング」。

ドイツには古くから野鳥保護の伝統があり、野鳥愛好家人口が多いです。そのためバードウォッチングの情報が豊富に蓄積され、インフラも整っています。都市部にも緑が多く、どこに住んでも森が身近にあります。だから、バードウォッチングを始めるのに最適な環境なんですね。

今年は気温が低く、なかなか本格的に春になりませんが、朝は賑やかな野鳥のさえずりで目が覚めるようになりましたね。これからの季節は野鳥が一斉に巣作りをし、雛を育てます。バードウォッチングは年間を通じて楽しめますが、やっぱり春が一番!

3ページに渡る特集記事はドイツにおけるバードウォッチングの歴史、これからバードウォッチングを始めようと思う人のためのヒントやドイツで身近に見られる野鳥情報までを含む充実した、楽しいものになっていて、バードウォッチングに興味はあるけれど、どうやって始めたらいいのか、、、と思っている方にとって、とてもわかりやすいと思います。

バードウォッチングを始めてまだ日が浅い私ですが、微力ながら誌面作成のお手伝いをさせて頂きました。その際の打ち合わせで新たに知ったことも多く、ますますバードウォッチング熱が高まっている私です。

 

ドイツニュースダイジェストは日本関連のお店などに置いてありますが、オンライン版もこちらから読むことができます。

野鳥に興味がある方は是非、ご覧になってみてください。お家の周りの散歩がぐっと楽しくなりますよ!

 

以下の記事にドイツでバードウォッチングを楽しむ際のお役立ちサイトをリストアップしていますので、よろしければ合わせてご利用ください。

ドイツで野鳥観察を楽しむための情報リンク集

また、見つけた野鳥のドイツ語名はわかったけれど、日本語ではなんというの?うまく調べられないという方は、私が作成した野鳥名検索アプリ(無料でオンライン公開中です)を使ってみてください。

ウェブアプリ「ドイツの身近な野鳥 多言語辞書」を公開しました

 

これからも野鳥情報、どんどん更新していきますね。

 

 

 

去年の春、庭のオークの木に鳥の巣箱を設置し、その内部にカメラを取り付けた。巣箱を設置したらすぐにシジュウカラが中に入り、営巣を始めた。取り付けた巣箱カメラが大活躍し、スマホやその他のデバイスを通してシジュウカラの巣作りや子育てをリアルタイムで観察することができ、とても楽しかった。その一部始終は「シジュウカラの育児観察記録」として当ブログで公開している。

そこで、この冬はテラスに置いた餌台の内部にカメラを設置してみた。そうしたら、これがまたまた面白い。家の中から窓越しに餌台を眺めているだけではわからないことがカメラを通すと見えて来るのだ。餌台にはいろんな野鳥が餌を食べにやって来る。カメラを通してその様子を眺めていると、まるでレストランオーナーになった気分だ。心の中で「いらっしゃいませー!」と叫びつつ観察していたら、種によって少しづつ行動が違うことに気づいた。

 

最もよく来るのはシジュウカラとアオガラ。どちらも群れで入れ替わり立ち替わり餌台に来る。シジュウカラの方がアオガラよりもやや大きく、群れの個体数も多いけれど、異なる種と鉢合わせしてもお互いまったく気にしていない様子。酒場の顔馴染みの常連客という感じで和気藹々と(?)餌をついばんでいる。餌台にやって来る時間帯もほぼ同じだ。ただ、彼らは長居はしない。ひまわりの種をクチバシでさっと掴むと、すぐにサッと餌台を出てそばの桃ノ木の枝に止まり、種を枝に叩きつけて割って中身を食べる。食べ終わるとまたサッと餌台に飛び入り、また次の種をくわえて出て行く。その繰り返しだ。一回の滞留時間はほんの1秒くらいで、出たり入ったりを延々と繰り返している。だったらお腹がいっぱいになるまでずっと餌台にいればいいんじゃないかな。飛ぶエネルギーがもったいないと思うんだけど。でも、彼らはそういう習性ではないらしい。

 

ハシブトガラは単独で来ることが多い。この子はシジュウカラやアオガラと比べ、もうちょっとのんびりしているような気がする。

アオガラやシジュウカラ達と餌台で一緒になることも多いが、オープンな性格とみえて、けっこう溶け込んでいる。

 

ヨーロッパコマドリは別の時間帯にいつも単独でやって来る。ヒマワリの種は食べず、もっと小さい穀物をエサの山の中から探すのだが、シジュウカラやアオガラのように餌をテイクアウトするのではなく、店内でお召し上がりになる。ある程度満腹するまで餌台を離れないので、一度来ると2分くらいはとどまっている。

 

カンムリガラは滅多に訪れないので、たまに見ると嬉しい。

頭が可愛いなー

 

ゴジュウカラもおひとりさま行動が好きらしい。そして、かなり警戒心が強いのか、餌台の中央まで入って来ることは稀である。窓の縁に止まって、頭だけを伸ばして種を取るが、常に外を気にしてしょっちゅう振り返るのだ。

 

うちの庭にはイエスズメがたくさんいる。できれば彼らには餌台に近づいて欲しくなかった。数が多くていつも群れで行動するし、体も他の小鳥より大きい。しかも図太そうなイメージがあって、イエスズメが来ると他の客が来なくなるのではという懸念があった(鳥種差別、ごめんね)。イエスズメ達はしばらくの間、庭の隅のライラックの木から遠巻きに餌台を眺めていた。イエスズメだけ邪険にするのは悪いので、彼ら専用の餌台をライラックのそばに設けようかなと思っていたら、そうする前にとうとうみんなの餌台に入って来てしまった。でも、杞憂だったのか、他の鳥達が嫌がる様子はなく、今のところは平和である。よかった。

 

笑ったのはクロウタドリ。クロウタドリはサイズクラスが全然違う。そもそも餌台などには入らず地面の虫などを食べるのだと思っていたが、他の鳥達が餌台を盛んに利用しているのを見て自分も入りたくなったのだろうか。大きな図体で無理やり入って来た。でも、小さな鳥達と違い、窓からスッとスマートに飛び込むことは難しい。へたをすると壁に激突しかねない。窓の外でハチドリのように必死に羽をバタバタさせたがうまく入れず、諦めて地面に降りる姿も目撃した。

 

残念なのは、去年来たシマエナガが今年は一度も姿を現さなかったこと。つぶらな瞳の可愛い姿を見せて欲しかったなあ。

これは去年の写真

 

でも、その代わりに去年は見かけなかったマヒワがやって来た。

 

「〇〇鳥は云々」と、知ったようにいろいろ書いたが、ここに書いたことはあくまでも一冬の間に我が家にやって来た特定の鳥を観察して感じたことにすぎない。たまたま、うちに来た個体がそうだっただけかもしれないのだから、種の一般的な習性だと考えるわけにはいかないよね。でも、観察って面白いなあ。カメラには映像自動保存機能が付いているので、長期的に観察すれば何かがわかって来るかもしれない。野鳥カメラにこんなに楽しませてもらえるとは想像していなかった。最近まで野鳥には関心も知識も全然なかった夫も、「こんなに面白いとはね。なんでもっと早くやらなかったんだろう」と言っているくらいなのだ。

さて、そろそろまた鳥達の繁殖の季節だ。巣箱へのカメラ設置は完了した。また小鳥の子育てが見られるかな?

 

 

パンデミックでロックダウンが続くドイツ。遠出できないし、できることも限られているので、相変わらず庭や家の周辺での野鳥観察をする毎日である。見分けられる種が増えるにつれ、ますます楽しくなって来る。

先日、こちらの記事でドイツでよく見られる野鳥の名前の日独英学名対照表をシェアしたけれど、表形式だとデータが増えるとスクロールして知りたい鳥の欄を見つけるのが大変になるから、あまり実用的ではないかなあと思っていたところ、年末年始に帰省した息子がPythonというプログラミング言語の基礎を手解きしてくれた。特に目的もなく暇潰しに教わったのだが、せっかくだから何かに使えないかなと考えて、せっかく野鳥の名前の対照表を作ったのだから、それを使って簡単な検索プログラムができないかな?と思いついた。

息子に怒られつつ作ったプログラムをようやく公開することができた。

ドイツの身近な野鳥 多言語辞書

(↑ クリックすると、アプリが開きます)

 

初めてプログラミングで作ったプログラムなのでとてもシンプルで、野鳥名を日本語、英語、ドイツ語及び学名で検索するだけのもの。こんなふうに使えます。

 

 

たとえば、私は昨日、野原で猛禽類を見つけて写真を撮り、NABUの鳥識別アプリNABU Vogelweltで調べて「Turmfalke」という種らしいということがわかったので、検索窓にTurmfalkeと入力。そして「調べる」ボタンを押すと、

このようにそれぞれの言語での名前と学名が表示される。ただこれだけなんだけど、ドイツで野鳥を見かけてドイツ語での種名がわかっても、日本語で何と呼ぶのか調べるのは結構面倒だったりするので、作ってみました。逆に和名はわかっているけどドイツ語でなんと呼ぶかわからないときにも使える。今のところ登録してある種は200種で、ドイツ全国でよく見られる種はほぼカバーしているつもり。

ただ、この辞書、使い方にちょっと注意点があって、私がエクセルに登録した表記法そのものじゃないとヒットしないのである。日本語の鳥名は必ずカタカナで、ドイツ語と英語の名前は最初の文字を大文字で入力する必要があります。

この辞書はPythonでコードを書いて作ったデスクトップアプリ(私のPC上でしか使えないプログラム)をStreamlit sharingというサービスを使ってウェブアプリ化して公開している。デスクトップアプリでは、野鳥団体NABUのサイトのそれぞれの鳥に対応するページに飛んで画像を見ることができるようにしたのだけれど、それをウェブアプリ上ではうまく反映させられなかった。なので、とりあえず画像検索機能なしで公開することにした。

今後やりたいことは、

  1. それぞれの野鳥の画像も検索できるようにする。
  2. 現在はドイツ国内で見られる野鳥に限定しているが、範囲をヨーロッパ全体に拡大して、スペイン語やフランス語など他の言語でも検索できるようにする。
  3. 野鳥だけでなく、野草とか昆虫とかいろんなカテゴリーの多言語辞書を作る。(息子には「魚や野菜の辞書を作ってよ」と言われた)

 

少しづつ、使えるものを作れるようになればいいなと思っている。気長にやろう。