2020年から始めた庭の巣箱カメラを通した野鳥の営巣観察、早いもので今年で5年目!

思えばこれまでにいろいろなことがあった。最初の年、2020年の春にはオークの木に取り付けたばかりの巣箱でシジュウカラが営巣をし、9つの卵を産んだ。そのうち1つは孵らなかったものの、8羽のヒナが無事に巣立ち、その一部始終を巣箱の中に取り付けたカメラを通して観察することができた。巣箱からヒナたちが順番に飛び立つ瞬間も見ることができ、とても感動的だった。

その後、同じ巣箱で2回目の営巣が始まったが、母鳥が巣を離れている間に生まれたヒナたちが巣材を喉に詰まらせて次々に窒息、全滅するという痛ましい結果に。その様子をカメラを通して目にすることになり、どうにかしてあげたいのに何もできず、辛かった。

翌年の2021年はシジュウカラが卵を2つ産み、そのうちの1つが孵った。たった1羽のヒナを夫婦で過保護に育てる様子がなんとも可笑しかった。また、庭の垣根でクロウタドリも営巣し、無事にヒナたちが巣立った。

2022年春。シジュウカラが巣箱で営巣していたが、母鳥の不在中にクロジョウビタキが巣箱に侵入し、戻って来た母鳥とバトルに。母鳥はクロジョウビタキには勝ったけれど、なぜかそのまま巣を放棄してしまった。かなりがっかりだったけれど、庭の周辺でいろんな野鳥が繁殖し、親鳥たちがヒナを連れて我が家の餌場に集まってとても賑やかな春となった。

2023年は巣箱で初めてアオガラが営巣し、10個の卵を産んだ。しかし、ヒナ達が孵って喜んだのもつかの間、夜中にアライグマが庭に現れ、巣箱の中に手を突っ込んで母親を捕らえて食べてしまった。母親を失ったヒナ達の運命は言わずもがなである。

こんな風に野鳥の子育ては常に危険と隣り合わせで、毎年ハラハラして見守っている。

さて、今年の状況はというと、これまでとは少し違っている。去年までは営巣期間以外には巣箱は使われていなかったが、今年の冬は現在3つあるすべての巣箱がシジュウカラに寝ぐらとして使われていた。なぜ今年に限ってそうなったのだろう?巣箱が冬の寝ぐらとして便利だと思いついたシジュウカラがうちの庭にたまたま何羽もいた?それは偶然がすぎる気がする。1羽が巣箱を寝ぐらとして使い始めたのを見て他の個体がそれを真似したのだろうか。あるいは同じ餌場に集まる仲間同士、「巣箱で寝ればあったかくていいんじゃない?」というコミュニケーションがあったのか。わからないが、とにかく冬の間ずっと巣箱が使われていたので、もしかしたら春になったらそのまま営巣が始まるのではと期待していた。

そして、4月2日の状況はこんな具合である。

ハウス1 (去年まで旧館と呼んでいた巣箱)

シジュウカラが営巣。この子は本日(4/2)営巣を開始。それまでもちょくちょく昼間に巣箱に入ってはいたが、のんびりさんなのか、「ここで巣を作ろっかなー、どうしよっかな〜」と考えてでもいるかのように頭を傾げたりキョロキョロするばかりでいっこうに作業を始めなかったのだ。ようやく心が決まったのか、今朝から慌ただしく巣材を運んでいる。

今日1日でここまでできた。やる気になれば早いらしい。

 

ハウス2(去年までは新館と呼んでいた巣箱)

この巣箱ではアオガラが営巣中。実はこの巣箱では3/22日にシジュウカラが営巣を始め、突貫工事でたった1日で7割方完成していたのだが、なぜかその後放置されていた。夜になっても寝に戻って来ることがなかったので、この巣箱のシジュウカラの身に何かがあったのかもしれない。3/29の昼間、庭仕事をしていた夫が、「アオガラのオスがメスをハウス2に案内していたよ」と言う。すでに土台のできた巣があるので、いってみれば「家具付き物件」と言うことになる。メスも「タイパがいいわ!」と気に入ったのか、翌日から営巣を始めて、夜も寝泊まりしている。

なぜか画像が白黒だけど、現在の巣の様子。

 

ハウス3 

こちらのシジュウカラはコツコツ型で3/11に作業を開始し、毎日少しづつ進めていっている。パートナーのオスも巣作りに積極的に参加し、せっせと巣材を運んで来たりと仲がよい。

3つの巣箱の中で作業が一番進んでいる。

 

さて、今年はどうなるか。何が起こってもおかしくない野鳥の子育てなので心配だけど、3つの巣箱で同時進行の繁殖活動を観察できるのは初めてなので観察で忙しくなりそう。みんながんばって。成功を祈ってるよ。

野鳥の繁殖シーズンが今年もやって来た!2020年の春、庭のナラの木に初めてカメラ付きの巣箱を設置してから、2020年2021年2022年と3年連続でシジュウカラの子育ての様子を観察することができた。ヒナたちが無事に巣立つこともあれば、いろいろなハプニングで悲しい結果になることもあり、毎年ハラハラである。今年は3月にエジプト旅行に出かけていたので清掃した巣箱を木に戻すのが少し遅くなってしまい、3月31日にようやく設置。すると、すぐさまにアオガラが巣材を運び入れ始めた。他の年も、最初に巣箱に入るのはいつもアオガラだった。しかし、ほんのわずかのコケを運び入れた後、そのまま放置し、いつ本格的に営巣を始めるんだろうと思っているうちにシジュウカラがやって来て巣箱を占領するというのがいつものパターン。だから、今年もそうなるのでは?

 

と思ったら、今年は最初から本気モードで、わずか半日で基盤がおおかたできてしまった。手慣れたものである。ここまで進めたのなら、もう中断はしないだろう。今年は初めてアオガラの子育てが観察できそうだ。

 

メスの作業中、パートナーのオスと思われるアオガラも頻繁に巣箱を訪れている。でも、ちょっと不思議なのである。オスが来るとメス(アオガラのアオちゃんと名付けた)は食べ物をねだって口を開けるが、オスは食べ物を見せるだけで食べさせないのだ。見せるだけ見せて巣箱の出口に戻る。それを数回繰り返す。これはどういうことなんだろう?まるで、食べ物で釣ってアオちゃんを巣箱の外におびきだそうとしているかのよう。このような場面がなぜか数日間に渡って繰り返し見られた。

 

営巣開始から11日目にカメラの映像を見ていると、大変なことが起こった。アオちゃんが巣にいるところにまたオスがやって来た、と思いきや、2羽の間で激しいバトルになったのだ。ということは、やって来たアオガラはパートナーのオスではなく、別のメス???アオちゃんは床にねじ伏せられ、大ピンチ!

実は去年のシジュウカラの営巣では、メスが巣を留守にしている間にクロジョウビタキが巣に侵入し、戻って来たシジュウカラのメスが怒って激しく攻撃した結果、侵入者のクロジョウビタキが命を落とすという事件があったのだ(そのときの記録はこちら)。そんなことがあったものだから、また死闘を目撃することになるのではと焦ったが、格闘の末、1羽が巣箱から出て行き、決着がついたようだ。勝者がどちらなのか、映像からははっきり判断できないが、巣に残ったのはアオちゃんの方であると信じたい。でも、もしかしたら乗っ取りかもしれない。すごく気になる、、、。

 

その翌日、巣に残ったメスは卵を一つ産んだ。口移しで食べ物をくれそうでくれないオスといい、前日のバトルといい、いろいろ謎が残るのだが、めでたく卵が産み落とされたことだし、便宜上、卵を産んだこのメスがアオちゃんだという前提で記録を進めたい。

 

卵の数は毎日1つづつ増えていき、10日後に10つになった。すごいすごい。

 

そして、いよいよ抱卵モードに!ヒナが孵るのが楽しみである。どうか途中でハプニングがありませんように。

 

(続く)

前回の続き。

いよいよ始まった、シジュウカラの子育て。

2つ目の卵はいつ孵るかなと思って見ていたが、何が良くなかったのかヒナは生まれなかった。つまり、モコちゃんの赤ちゃんは一人っ子である。去年はたくさんのヒナが成長する様子が見られたので、今回は1羽だけというのはちょっと寂しい気がした。でも、しばらく見ていたら、これはこれで観察のしがいがあることがわかった。ヒナ同士が重なり合うことがないので、その分、体の成長をよく見ることができるのだ。

最初のうちは皮膚が透けていて、体の内部まではっきり見える。非常に興味深い。でも、見ようによってはちょっとコワイ画像かもしれないので、ここにクローズアップを載せるのはやめておこう。

 

生後8日。頭が黒くなり、羽が生えてシジュウカラらしくなった。一人っ子なので、パパとママがせっせと運んで来る餌を独り占めできる。だから、グングン大きくなった。

生後9日。お座りができるように。

生後10日。ママに抱っこしてもらっていたら、パパが餌を運んで来る。大事に育てられているなあ〜。見ていると、ほのぼのしてしまう。

 

生後11日。羽ばたきの練習が始まった!いよいよ巣立ちか!?

と思ったけれど、ここからがなかなか大変だった。この子(ピヨちゃんとしよう)は発育状態はとても良いのだが、どうも甘えっ子のようなのだ。母鳥のモコちゃんは「そろそろ巣立てそう」と判断したのか、この翌日から、餌を持たずに巣箱に戻って来て、ピヨちゃんを外に誘い出すような仕草をするようになった。が、ピヨちゃんはなかなか出ようとしないのである。

生後14日目。巣箱に戻って来たモコちゃんに「ママ、ごはんちょうだい、ちょうだい!」とねだるピヨちゃん。モコちゃんは「ダメダメ」というように首を振り、我が子の前に回李、手本を見せるように飛んでみせる。しかし、ピヨちゃんは怖がって出ようとしない。モコちゃん、今度は餌を見せながら「ママと一緒に外に出られたら、これをあげるからね」とでも言うかのように説得を試みる。しかし、それもうまくいかない。延々とそれを繰り返していたら、夜になってしまった。どうやら巣立ちは翌日に持ち越しのようである。

生後15日目。ピヨちゃん、ようやく出ようという気になったのか、ときどき飛び上がってはみるのだが、やっぱり怖いようだ。兄弟がいれば、先に飛び立つ兄弟の勢いにつられて出やすいのかもしれないが、なんせ一人っ子。モコちゃんは延々と根気よく飛ぶのを促している。イヤだイヤだ、こわいもん、とグズるピヨちゃん。いやはや、子どもを巣立たせるのも大仕事だね。私もこの日は今か今かと、10分おきにカメラを覗き込んで、手に汗握っていた。

 

そして、今日もまた出ないで終わりかなあと思いかけた夕方の5時過ぎ、ついにピヨちゃんは勇気を振り絞って巣箱を出たのだった。

 

巣箱から出る瞬間を外から見ようと思っていたのだけれど、ちょうどこのとき取り込んでいてすぐには庭に出られず、気づいたらもう巣箱にピヨちゃんの姿はなかった。慌てて自動録画されていた動画を確認する。動画に残った音からして、ピヨちゃんはスムーズに飛び立ったというより、出口でジタバタしているうちに偶然飛び出せたという感じだったのではと推測する。庭に出て、それらしきヒナがいないか探してみたが、見当たらなかった。残念!でも、パパとママに守られてオークの木のどこかにいるはず。成鳥と区別がつかなくなる前に姿が見られるといいなあ。

 

というわけで、今年は1羽だけだったけれど、巣箱からシジュウカラが無事に巣立った。大家の私と夫にとっては嬉しい限りである。

 

去年、初めて庭に野鳥のための巣箱を設置し、内部にカメラを取り付けた。設置後数時間でシジュウカラが営巣を始めたので、巣作りから抱卵の様子、そしてヒナ達が巣立つまでを観察した。カメラを設置したのも野鳥の育児を観察するのもまったく初めての経験で、ワクワク、ハラハラな数週間を送った。

その一部始終をこのブログに「シジュウカラの育児観察記録」(その1からその10まであります)および「帰って来たシーちゃん、シジュウカラ2度目の営巣」(その1からその3まであります)としてまとめたところ、多くの方が読んで下さったようだ。

それにしても、野鳥の育児観察がこんなに面白いなんて!巣箱は数ユーロで市販されているので気軽に設置できる。カメラも一度用意すれば壊れるまでは使えるから、これからは毎年観察が楽しめる。よし、2021年もいくぞー!とやる気満々でシーズンの到来を待った。今年は巣箱を2つに増やし、古い方を旧館、新しい方を新館とした。それぞれの内部にカメラを取り付けて2月から観察を開始。今年はリアルタイムではブログに記録せず、一連のプロセスが終了してから手元に残った画像と映像記録、メモをもとにまとめることにしたのでリアルタイム観察の躍動感は伝わらないかもしれないけれど、以下、まとめである。

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結果から言うと、今年も去年同様、シジュウカラの営巣からヒナの巣立ちまでを観察することになったが、今年は去年とはだいぶ様子が違っていた。まず、なかなか本格的な営巣が始まらなかった。2月の終わりにかなり暖かい日があって、新館の方でも旧館の方でもアオガラとシジュウカラが代わりばんこに巣箱に入って中を偵察してはいた。気の早いアオガラが新館に巣材を持ち込み始めたが、数日後に冬に逆戻りしたような低気温になり、アオガラはあっさり断念。4月に入って今度は旧館でシジュウカラが営巣を始め、結構いいところまで進んだ。しかし、5月に再び寒い日が続いてこちらも中断。ニュースによると、今年の5月は30年来の寒い春だったそうだ。日が長くなって来ても昆虫の姿もほとんど見られない。これではヒナが生まれても与える餌もないだろう。私も毎日巣箱カメラを覗き込んでは何も起こらずガッカリする毎日。

しかし、ようやく気温が安定して来た5月29日、旧館でようやくシジュウカラが中断していた巣作りを再開!

営巣再開から3日目の様子

今度こそ、子育て本格開始か!?

やっぱり暖かくなるタイミングを待っていたのだろう。すごいスピードで巣が整えられ、6月3日、卵が一つ産み落とされた。

 

去年、この巣箱で営巣したシジュウカラのシーちゃんとは別のメスのようだ。うなじの白いあたりがしーちゃんとは違う感じで、巣の作り方もかなり違う。季節がズレているから手近にある巣材の種類が違うからかもしれないけれど、なんだか随分とモコモコした巣を作るなあと思って、このメスは「モコちゃん」と命名。

シーちゃんは毎朝1つづつ卵を産んだけれど、モコちゃんはそうではなく、1つ目の卵を産んでから6日目にもう一つ産んだ。そして、それきりもう卵を産まなかった。シジュウカラにしては少ない。今年の春は気候が安定しなかったことと関係があるのか、別の理由なのかはわからないが、モコちゃんは多産ではないのだった。

ここからモコちゃんは抱卵モードに入ったが、6月に入ると今度はいきなり猛暑となり、30度越えの日が続いた。巣箱の中は一体、何度あるんだろう?卵が煮えてしまうのでは?と心配になる。モコちゃんもそれを心配してか、それとも自分が暑くてとても座っていられないのか、立ち上がって上を仰ぎ見て口を開けていることが多かった。大家の私としては、エアコンつけてなくてすみませんと謝りたくなる気分である。

そして、最初の卵が産み落とされて20日が経過、卵の1つが孵った!かわいい〜!生まれたての我が子を愛おしそうに見つめるモコちゃん。モコちゃんのダンナもせっせと餌を運んで来て、夫婦力を合わせての子育てが始まった。

 

長くなったので、続きはその2に。

 

 

前回の続き。今年2度目の営巣では、産み落とされた7つの卵のうち1つは孵らないままだったものの、孵った6羽のヒナたちは成長が早く、6月19日までは全てが順調に進んでいた。気温が高いからだろうか、ヒナたちはお母さんのお腹の下でじっとせずに常に巣から頭を出していた。

生まれたての6羽の赤ちゃんを見守るシーちゃん
二日後にはこんなに大きくなっていた

ぐんぐん成長する様子を見て、きっと6羽みな無事に巣立てることだろうと思っていた。

異変に気付いたのは6月20日の朝。巣箱を除くと、ヒナの数が足りない。6羽いるはずなのに、5羽しかいない。巣の端に隠れているのかもしれないと思ったが、目を凝らしてもそれらしき姿は見られない。どういうことなんだろう?

この週末は予定があったので、巣箱が気になりながらも家を出た。予定がびっしりでスマホの巣箱アプリを開けてみる暇がほとんどなかったが、数時間ごとにちらっと確認すると、そのたびにヒナの数が減っているように見える。おかしい、、、、。何かまずいことが起きているようだ。心配な気持ちで昼間を過ごし、夜、用が済んでやっとまともに巣箱を見れるようになったときにはシーちゃんはすでに寝ていたので、その下でヒナたちがどうなっているのかを確認できなかった。

6月21日。朝起きてすぐに巣箱を見る。シーちゃんは巣箱に座っているが、ヒナは見えない。この日も終日用があって、早々に家を出なければならなかった。

午後、携帯にメッセージが入った。娘からだ。

「ヒナたち、どうしちゃったの?まさか、もう飛んでいったなんて、ありえないよね?」

まさか、と思いながらアプリを開ける。

孵らなかった1つの卵を残し、ヒナたちがすっかり消えている、、、、。

ぐんぐん成長していたとはいえ、まだ生後1週間にもならない。もちろん、羽も出来上がっていない。何者かが巣箱に侵入してヒナたちを盗んでいったのだろうか?しかし、巣穴の直径は32mmしかなく、それよりも体の大きな鳥は入れないはず。ネズミか何かが入った?仮にそうだとしても、6羽もいたヒナをシーちゃんに気付かれずに次々に運び出すのは無理だろう。

だとすると、ヒナたちは何らかの理由で巣箱の中で死に、死骸は運び出されたということになる。今年、ドイツではウイルス感染で青がらが大量に死んでいるとニュースになっていた。それと同じウイルス、または別のウイルスかバクテリアにやられたのだろうか?

いずれにしても、巣が空になっている以上、ヒナたちは全滅したと考えるほかはない、、、、、。

あまりのことに呆然となった。

その日の夜、すべての用事を済ませて帰宅してから、巣箱カメラのSDカードに保存されている自動録画を巻き戻して原因を解明することにした。ヒナたちが元気だった19日から時系列で動画を一つ一つ再生していく。その結果わかったのは、とてもショックな事実だった。

ヒナたちは、シーちゃんが餌を探しに巣箱を離れている間、巣から伸び上がるようにしながら口を大きく開けていた。巣の縁には白いフワフワとした綿のような巣材があり、ヒナたちの口は頻繁にフワフワに引っかかっていた。ときどきフワフワした巣材が口の中に入り、ヒナたちが苦しそうにもがいている様子が映っている。餌を持って戻って来たシーちゃんが口から異物を取り除いてやっている姿も見られたが、またすぐに引っかかってしまう。そして、ヒナたちは短時間の間に巣材によって次々と窒息して死んでいたことがわかった。死んでしまったヒナをシーちゃんは一羽一羽、巣の外へ運び出していた。

悲し過ぎる結末だった。ヒナたちはあんなに元気だったのに。1度目の営巣でも巣立てなかった子たちがいたが、それでも6羽が無事に巣立ったので、きっと今回もうまくいくだろうと思っていたのだけれど。

それにしても、ヒナたちが喉を詰まらせた巣材は何なのだろう?さらに悲しいことには、すべてのヒナが死んでしまった後、シーちゃんは孵らないままの最後の卵に望みをかけて一生懸命温めている。ほとんど巣箱の外に出ることなく、3日間もの間、おそらくもう孵らないであろう卵の上に座り続けていた。

ついに諦めたのか、巣から出たまま戻って来ないので、その隙に巣箱を開けて巣材を調べてみた。

フワフワした巣材は羊毛のようだ。引っ張ってみると、かなりコシがあり、簡単には引きちぎれない。なるほどこれに小さな口が引っかかったら外れないはずだ。前回の営巣ではクッションになる動物性の素材はそれほど多く使われていなかったし、猫の毛などのほぐれやすいものが主だった。

前回の巣

近所には羊は飼われていないので、どこから羊毛を集めて来たのかはわからない。良い素材だと思って使ったのだろうに、こんな結果になって本当にかわいそう、、、。また巣作りにチャレンジするだろうか。もうその素材はやめておいたほうがいいよ、と伝えられないのが残念だ。

こんなわけで、楽しみにしていた2度目の巣立ちシーンは見ることができなくなったが、自然界は厳しく、生きられるということは当たり前ではなく奇跡的なことなのだと思い知らされた。

庭のナラの木の梢からは、シーちゃんが春に育て上げた若鳥たちの声が聞こえてくる。彼らがとても貴重な存在に思える。

今の気持ちを忘れずにいよう。

5月27日に始まった、シジュウカラの今年2度目の営巣。その後の状況をまとめておこう。前回の記事はこちら

1度目よりも営巣に慣れたのか、サッサと手際よく巣を作り、6月5日に7個の卵を産み終わったシーちゃん。今回は気温も高くなっているから卵が孵るまでの日数も少な目なのかなと思っていたが、前回とほぼ同様、11日かかって6月16日に最初のヒナ3羽が孵った。

その翌日に1羽、3日目にさらに1羽。前回の子達と比べて、すごく元気がいい印象だ。小さな体が激しく動いている。

右の子、まるで駄々っ子のようで可笑しい

ところで、この動画で背後にコンコンと気を叩くような音がしているのが聞こえるだろうか。庭ではときどきアカゲラの姿を見ることがある。きっと、同じ木にアカゲラが止まって木をつついているのだろうと思い、カメラを手に外に出た。音がしているあたりを探すと、なにやらいる。けっこう、大きい。

えっ、、、、、?

あれは、、、、。

クマゲラ!?

この辺りで目にするキツツキというと、大抵はアカゲラ(Buntspecht)である。自然保護団体NABUのサイトによると、ドイツにアカゲラは68万〜90万ペア生息するとされている。だから、うちの庭にいてもそう不思議はないけれど、木の高いところにいるからなかなか写真が撮れない。ちょうどこの日の前の日についに撮影に成功したばかりだったのだ。

アカゲラ

これだけでも、バンザーイ!という気分だったのに、今度はクマゲラ(Schwarzspecht)だとぉ?クマゲラは日本では天然記念物、環境省レッドリストに絶滅危惧II類として記載されているというではないか。そんな希少な鳥がうちの庭にいるって、なんか話が出来すぎていやしないか?驚きと興奮でその場で固まってしまった。

調べてみたところ、クマゲラはドイツではそこまで珍しいわけではないらしい。でも、アカゲラよりはずっと個体数が少なく、個体数は3万1000〜4万9000ペアほど(情報ソースはこちら)。だから、見ることができたのはやっぱりすごくラッキーだ。考えてみれば、我が家は森の縁に位置しているので、鳥たちにとって庭は森の一部のようなものだ。いろんな鳥が来てもおかしくないのだなと、自分の住んでいる環境をあらためて認識した。

今の家にはもう14年も住んでいるのに、身近で起こっているこんな素敵なことをほとんど知らないまま生活して来たのかと思うと、なんだか軽くショックでもある。興味を持たないということは、楽しみを得るチャンスを逃すということでもあり、もったいないよねえ。バードウォッチング、始めてよかったよかった。

さて、シーちゃんと子どもたちに話を戻そう。

生後4日目。白黒なのは、早朝だからカメラがまだナイトモードなのだ。ヒナたちの巣からはみ出しぶりがすごいね。シーちゃんも子供たちを覆おうともしていない。前回の営巣時はまだ涼しい日が多かったけど、今は随分気温も上がっているから、ヒナたちは裸ん坊でも寒くないのかもしれない。

今年初めて庭のナラの木に赤外線カメラを取り付けた鳥の巣箱を設置したところ、シジュウカラのメスが巣作りをした。シーちゃんと名付けたその雌鶏が育児をする様子をカメラの映像を通してハラハラドキドキと見守り、「シジュウカラの育児観察記録」としてこのブログに連載したが、5月23日、寒空の中、ヒナたちは無事に巣立った。それを見届け、私のシジュウカラの観察は(一旦)幕を閉じたのだった。

コロナウイルスによる外出制限下、6週間にわたって毎日なんどもなんども巣箱を覗いていたので、いつの間にかシジュウカラのシーちゃんとそのダンナ、子どもたちは私にとってすっかり大きな存在になっていたようだ。ああ、とうとう行ってしまったか。嬉しいけど、寂しい、、、。空の巣を覗いてはしんみりする私。いつの日かまた戻って来ることもあろうかと、掃除した巣箱をふたたびナラの木に設置した。

4日後。

「もういないとわかってはいるけど、つい巣箱を覗きたくなるんだよね」と苦笑しつつ、アプリを開いた。すると、どうでしょう!

“Hallo. Ich bin wieder da!” (帰って来たよ〜ん)。なんと、シーちゃんがカメラに向かって微笑んでいるではないか!

え、え、え!?もう戻って来た?しかも、なんですか、周りにあるその素材は?もしかして、また巣作りするの?

慌てて調べたら、シジュウカラは1年に2度、3度と営巣をするのが珍しくないらしい。いや、でも、子ども達もまだまだ手がかかろうに、たった3日の育休でもう次の子を産む準備って、すごくない?シーちゃん、体力ありすぎである。

ということで、どうやらふたたび営巣を観察させて頂けるようだ。びっくりするやら嬉しいやらで笑いが止まらない。

一度営巣から巣立ちまでを一通り観察しているので、プロセスはこちらも把握している。今回は前回ほど興奮せずに落ち着いて見守ることができそうだと思ったのだが、2度目でシーちゃんも慣れているからだろうか、今回はスピードがやたらと速い。

前回は営巣に10日ほどかけていたのに、今回はちゃちゃちゃっと手際よくやって、営巣開始から2日目にはもうほぼ完成したのか、すでに巣箱の中で寝ている。はやっ!!

わっ、もう産んだっ。営巣開始からわずか3日目である。

それからはマニュアル通り、毎朝1個づつ卵を産んだが、全部産み終わってから温めモードに入った前回と異なり、今回は温めながら産み足していく方針らしい。

おなじみの抱卵姿

今回は全部で7個。前回よりも2つ少ないが、前回は9つのうち1つ孵らなかったのがあったし、孵ったヒナのうち2羽が巣立ち前に死んでしまったので、今回は少なめでむしろほっとする気分。卵までスピード孵化ということはさすがになさそうだから、ヒナが生まれるのは6/20くらいかな。

ところで、前回巣立ったヒナ達は大きくなって、元気に庭を飛び回っている。巣立ち直後のようにぽけーとはしていないので、近寄って写真を撮るのは難しくなった。どれがマルちゃんでどれがチビちゃんなのかはもう識別できないが、今朝数えたら全員いることが確認できた。池に落ちてしまって大騒動を起こしたチビちゃんも無事で良かった。

あと1ヶ月もすれば第二期生たちが加わって、我が家の庭はいっそう賑やかになるだろう。楽しみだなあ。

5月19日

ヒナ達が日に日に成長するのを見るのはとても嬉しいが、気になることがあった。それは、ヒナ同士の間の個体差もまたどんどん大きくなるということだ。シーちゃんやダンナが巣箱に入って来ると、元気のいい子は勢いよく飛びついて餌をもらう。だから、どんどん大きくなる。その逆に、おとなしい子はなかなか食べ物にありつけないので、小さいままだ。巣箱の中が狭くなるにつれ、ヒナ達は重なり合うようになった。すると、どうしても小さい子が大きい子の下敷きになってしまう。

お相撲さんのように丸々太った一番大きい子(マルちゃんと名付けた)が一番上になっていることが多い。写真の丸で囲んだ小さい子は潰れてしまいそう。全部で8羽いるはずなので、他にも下になっている子がいる。心配だ。

5月20日

危惧していたことが起こってしまった。昨夜、大きい子達の下敷きになっていた小さい子が昨夜と同じポジションのまま、微動だにしない。シーちゃんが餌を持って来て他の子達が一斉にわっと動いても反応しない。どうやら死んでしまったようだ。よくあることなのかもしれないが、とても悲しい。8羽揃って巣立つところを見たかったのに。ヒナは7羽になった。

気を取り直して観察を続ける。シーちゃんとシーちゃんのダンナはますます忙しそうだ。よくもあんなにひっきりなしに餌を運んで来られるものだと感心する。自分が食べる暇はあるのだろうか。

シーちゃんが餌を運び入れるところ

5月21日

青空の広がる爽やかな朝。シーちゃんとダンナは高らかに鳴いている。そして、巣箱に出たり入ったり出たり入ったり、ほとんど分刻みだ。今日あたり、ヒナ達が巣立つのかもしれない。

しかし、巣の中をよく見ると、また1羽が死んでしまっていた。小さい方から2番目の子だ。辛い、、、。でも、中くらいの大きさだった子達がその分、一回り大きくなっているのがわかる。

この6羽は元気に巣立ってくれるだろう。左手前がマルちゃん。「ヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ」と大声で鳴いて、バタバタ羽ばたいている子もいる。まるで、運動会の朝のよう。いよいよか?今日はいろいろPC作業をしなければならないけど、巣立ちの瞬間を見逃したくないから、庭でやることにしよう。巣箱の見える場所にテーブルと椅子を出した。これで準備は万端だ。ワクワクしながら待つ。

しかし、日よけのパラソルが目立ち過ぎて警戒されているのか、いくら待ってもヒナ達は出てこない。私は巣箱が気になって、作業がちっとも捗らない。そうこうしているうちに日が暮れた。あ〜、残念。

シーちゃんが巣箱に戻って来た。もう添い寝も限界だね。マルちゃん(左上)が巨大!

5月22日

朝起きて巣箱を見ると、昨夜6羽いたヒナが5羽になっている。また1羽死んでしまったのか?とゾッとしたが、よく見ると、いないのはマルちゃんだ。一番体の大きいマルちゃんが死んだということはまず考えられないし、それらしき死骸も見当たらない。きっと、先頭を切って外に飛び出していったのだろう。マルちゃんの巣立ちを見られなかったのは残念だ。

他のヒナ達が巣箱を出るのを今か今かと待っていたが、なかなか飛び出す気配がない。お昼頃、ようやく1羽が巣穴から顔を出したが、ちょっと迷ってまた引っ込んでしまった。そうこうしているうちに夜になり、寝る時間に。しかし、シーちゃんは巣箱に現れず、子ども達だけで寝ている。もう添い寝は不要とシーちゃんは判断したのだろうか。それとも、先に巣を出たマルちゃんに付き添っていなければならないからだろうか。その辺はよくわからないが、シーちゃんもマルちゃんもいないので、巣箱の中は再びスペースにゆとりができて、5羽は今夜はゆっくり寝られているようである。

5月23日

日曜日だけど、朝5時半に目が覚めた。巣箱アプリを開けると、1羽が巣穴に向かって羽ばたいているのが見えた。慌ててカメラを手に取り、パジャマのまま庭に出た。空は曇っていて、肌寒い。スマホの画面を見つつ、巣穴に向かって望遠レンズを向けていたら、ついに1羽が穴から顔をのぞかせた。が、飛ぶのはやっぱり怖いみたい。すると、シーちゃんが餌を口にくわえて巣穴まで迎えに行った。

餌で巣立ちを誘導

シーちゃんに誘導されて、5羽のうち3羽はわりと楽に飛び立つことができた。でも、4羽目の子が臆病で、なっかなか出られない。顔を出しては引っ込むのを繰り返すこと約2時間。ようやく飛んだ。

そして、最後の子。この子も慎重派のようだ。

時間かかったけれど、飛ぶときは一瞬だね。さあこれで、マルちゃんを含めて6羽のヒナが無事、飛び立った!バンザーイ!!

飛び出したヒナ達は近くの枝に止まった。

かーわいい

頭が毛羽立ってる。かーわいい

初めて見る外の世界にお目目をパチクリ。めちゃくちゃかわいいー

かわいすぎー

1羽はバーベキュー用の窯の上に降り立ったはいいが、そこからどうしていいかわからず、「おかあさーん!」とシーちゃんを呼んでいる。

外の世界は危険がいっぱい。まだしばらくは親の保護が必要なようだ。もう少しの間、みんなでうちの庭にとどまってくれるだろうか。

と、ほのぼのしていたら、早速、とんでもないことが起きた。1羽が池のそばの茂みの中に入り込んで出られなくなっている。体の小さい子だ。早くシーちゃん、気づいてくれないかなと思っていたら、あろうことに、その子は自力で出ようとして羽ばたいて失敗し、池の淵に落ちてしまった!!池の淵は泥と藻でぬかるんでいる。まずい!助けてやらなければと思った瞬間、その子は再び羽ばたいた。

ボチャン!

水音がした。もしかして池に落ちた?慌てて水面を見るが、どこにいるのかわからない。池の淵の茂みの中も探ったが、ヒナは見当たらない。どうしよう!あんなに勇気を出して巣箱から飛んだばかりなのに、もう死んでしまうなんて、そんなの辛すぎる。ああ、なんてこと。幸せな気持ちが一気に黒雲に覆われてしまった。

ヒナ達がある程度大きくなってもシーちゃんが巣立ちに慎重だった理由が理解できた。生存率を高めるためにはヒナ達に可能な限り体力をつけさせることが重要なのだ。だからギリギリまであんなに一生懸命、食べさせてやっていたのだね。

そう考えながらもう一度池に目をやった。すると、、、、小さなヒナが水に落ちたと思われる場所から2メートルほど離れた池の淵で、ヒナが羽をバタバタさせてぬかるみの中を必死にもがいている。「いた!!」と大声で叫んで夫を呼び、二人で救助を開始。棒のついた網でヒナをぬかるみからすくい出した。全身ぐっしょりと濡れている。これでは飛べない。人間が生き物の世界にむやみに介入するのは良くないだろうけれど、寒い日で、自然に羽が乾くのを待っていたら、体温が下がってそのまま死んでしまうかもしれない。シーちゃんがあんなに頑張って育てた子をみすみす死なせたくない。

夫が家の中からドライヤーを持って来たので、庭のコンセントに繋ぎ、弱風を遠くから静かに当てて、羽を乾かした。チビちゃんはしばらくの間、目をつぶってじっとしていたが、温るにつれて次第に元気を回復した。兄弟ヒナ達の「ヂヂヂヂヂ」という鳴き声がよく聞こえる場所にそっと置いたら、そのうち目を開けて辺りを見回しながら、「ヂヂヂヂヂ」と鳴き出したので、シーちゃんが迎えに来やすいように私たちはその場を離れた。

1時間ほど経ってから様子を見にいってみると、チビちゃんはもういなかった。幸い、他の動物に襲われた形跡もない。無事に家族と合流できただろうか。あんな小さな体で、外界に出た早々に大変な目に遭って、それでも生きる気力を失わずにがんばったチビちゃん。どうか無事に生き延びて欲しい。

さて、我が家のシジュウカラの育児観察もこれでおしまいだ。約1ヶ月半の間、ハラハラする瞬間や悲しいこともあったけれど、シーちゃん夫婦の子育ての一部始終を見せてもらって、とても楽しかった。ヒナの成長のスピードにも驚いたが、なによりも感動したのはシーちゃんのノンストップの献身ぶりだった。私にも育児経験があるから、「ふふふ。鳥の育児も人間の育児も変わらないね」と共感するシーンも多々あったけど、あんなにたくさんの子どもを同時に育てるなんて、私にはとても無理だ。かなわない。シーちゃん、あなたは本当に立派な母親です。

シーちゃんのダンナも褒めてやらなければ。最初はちょっと頼りなそうに見えたけど、子どもが生まれてからは奮闘していた。最後まで名前もつけずに悪かったね。

空になった巣箱は掃除して、またもとの場所に取り付けておいた。また来てね、新しい命を育に。

ヒナたちは、だんだんシジュウカラらしい姿になって来た。巣立ちの日が近いのかもしれない。その日に備え、巣箱の出入り口を観察するための第二カメラを設置した。

第一カメラは残念ながらピントが合っていなくて画像が不鮮明になってしまった。でも、第二カメラの映像はばっちり。これならうまく巣立ちの場面を捉えることができそうだ。

これでこちらの準備は整った。あとはヒナたち自身の準備ができるまで待つのみである。しかし、このタイミングで悲しい事実に気づいてしまう。シーちゃんが産んだ卵は全部9つあったが、何度ヒナの数を数えても8羽しかいない。動きが激しいので、9羽目は他のヒナたちに隠れて見えないだけでありますようにと祈っていたのだが、そうではないことが判明してしまった。

巣の底に卵が1つ残っているのを発見。そうか、、、。最後の卵は孵らなかったんだね。9羽のヒナが飛び立つところを見たかったのに、残念。でも、8羽も元気に育っているのだから、比較的うまくいった方なのかもしれない。

5月17日。最初のヒナが孵ってから2週間。

大きくなったヒナ達は巣の窪みにはもう収まらない。シーちゃんが羽を広げて一生懸命、全員を覆うのだが、子どもたちは動きが激しくてすぐにはみ出してしまう。

何度も体勢を変えてモゾモゾする我が子らを覆っても覆っても、またすぐにはみ出す。疲れ切って、こっくりこっくりするシーちゃん。

しばらくしてモニターを覗き込んだら、一番大きい子はすっかり窪みの外に出てしまっていた。まるで、子どもがなかなか寝つかないので母親の方が寝落ちしてしまい、ハッと気づいたら子どもはお布団から出て遊んでいた、、、という図のようで、思わず笑ってしまった。人間の子どもの寝かしつけも、鳥の子どもの寝かしつけも、あまり変わりないのね。いやはやお疲れ様です。

それにしても、大きな子はシーちゃんともうほとんどサイズが変わらない。こうなるともう巣箱の中で添い寝は難しいね。

5月18日。ヒナたちの様子に明らかな変化が見られた。

外の様子に聞き耳を立てている。お母さんと食べ物だけでなく、外界を意識するようになったのだ。

声も急に大きくなったし、羽ばたくような仕草をしたり、羽をつくろったり、いよいよ巣立ちか!?

8羽のヒナたちは随分大きさが違う。巨体の子もいれば、その半分くらいしかなさそうな子もいる。みんな同時に巣立てるのだろうか。

前回から1週間が経った。ヒナたちはすくすくと成長している。

5/7の巣の様子

ひっきりなしにお腹を空かせ、食べ物をもらう赤ちゃんたち。夜はシーちゃんが彼らを覆うように巣に座って寝るが、ヒナたちは寝相が悪い。下からグイグイと押し上げられて、寝ているシーちゃんの体がまるで船のように上下する。昼間はずっと赤ちゃんの世話に追われ、夜は夜で安眠できないのだから大変だなあ。自分の育児時代を思い出してしまう、、、。

5/10の巣の様子

生後6日目のヒナは頭部を中心にうっすらと黒ずんでいる。羽毛が生えて来たんだね。でも、実は悲しいことに、ヒナたちの数をいつ数えても8羽しかいない。卵は9つだったのに。下に隠れているのではないかと何度も目を凝らすが、一度に9羽を確認できたことがない。もしかしたら、最後まで孵らなかった卵はダメになってしまったのかもしれない、、、。そうだったらとても残念だ。でも、8羽は順調に大きくなっている。

5/12の巣の様子

子どもたちの成長に合わせて、シーちゃんは巣の窪み周りの毛や羽を内側に向かって引っ張り、子どもたちが冷たい空気に晒されないようにしていた。まるで、夜中に子どもにそっと布団をかけてやる人間の親のようで、見ていてほろりとする。しかし、生後9日目ともなると、子どもたちはお母さんのお腹の下にはもう治らず、窪みからすっかりはみ出してしまうのだった。

おや?左の子はもう羽ができている!それに、みんなクチバシが尖って来たね。頭はシジュウカラらしく、すっかり黒くなった。

5/14日。面白い場面に遭遇。

シーちゃんが赤ちゃんのお尻をきれいにしている。そういえば、巣箱の中がフンだらけになったらどうするのだろうと思っていたのだが、どうやら排泄物はこのようにヒナのお尻から直接取って巣箱の外に出しているようだ。

それにしてもグングン大きくなる。立ち上がらんばかりの勢いで食べ物を求めている。特に右下の子のすごいこと!首を長くして待つとはこのことだ。

いよいよ卵からヒナが孵り始めた。5月4日に孵ったのは3羽だけだが、ついにシーちゃんのダンナも巣箱に姿を現し、夫婦でてんてこ舞いである。

さて、翌日の5月5日。朝5:30頃に巣箱を除いたら、シーちゃんはまだ眠っていたが、周辺に割れた卵の殻が散乱していた。

ということは、夜中にまたヒナが孵った?

私が朝の散歩に出かけて家に戻ったら、巣箱にシーちゃんの姿はなかった。ヒナの数が増えている!何羽孵ったのかな?少なくとも6羽いるのが確認できたけど、正確な数はわからない。それにしても、真っ赤っかだね。まだ、鳥には見えない。そういえば、先ほどあった卵の殻が見当たらないが、どこにいったのだろう?

ダンナもせっせと餌を運んで来てはシーちゃんに渡している。微笑ましいなあ。

おや、シーちゃんが卵の殻をクチバシにくわえているぞ。また1羽、孵ったようだ。見ていると、シーちゃんは卵の殻を食べてしまった。なるほど、そうだったのか〜。

ヒナの数が増えるほど、親は忙しくなる。この日、シーちゃん夫婦は夜の8時過ぎまで対応に追われていた。

5月6日。

あれ、赤ちゃんたち、もう大きくなった?お目目クリクリ。今日はもう卵は見当たらないが、9羽全て孵ったのだろうか。動きが激しいので、何羽いるのかうまく数えられない。

この日は用があって出かけていたので、昼間は観察ができなかった。夕方、帰って来てすぐに巣箱を覗いたら、ちょうどこんな場面に出くわして、思わず笑ってしまった。

バーン!とお母さんが帰って来た音がするなり、ヒナたちのお口がパカッ!何度見ても笑ってしまう。元気なのは良いことです。

卵が孵った後も、シーちゃんは夜はヒナたちを覆う体勢で眠る。まだ羽毛も生えていない子達、体が冷えてしまったら大変だものね。子育てって、24時間、ノンストップだね。

4月22日の朝、9つの卵を無事産み終わったシジュウカラのシーちゃん。抱卵体勢に入った。抱卵日数が平均12〜14日間ということは、最初のヒナが孵るのは5月の頭ということになる。じっと卵を温め続けなければならないシーちゃんは大変だが、赤ちゃんが産まれたら、その瞬間から異次元の忙しさになるから、せめてそれまではのんびりして体力を維持して欲しい。

抱卵期に突入したらシーちゃんのダンナがお食事ケータリングサービスをするのだろうと思っていたのだけれど、ダンナは一向に食べ物を運んで来る様子がなく、シーちゃんは度々自ら巣箱を出て行っている。もしかしたら、私が見えないところで妻を助けているのかもしれないけど、どうも不安だ。まさか、ヒナが孵ったらシーちゃんのワンオペ育児になってしまうのではあるまいね?

抱卵中、ときどき巣の窪みに頭をグイグイ押し入れる動作をしていた。卵が満遍なく温まるように回転させていたのだろうか。

シーちゃんの抱卵を見守っている間にも、引き続きいろいろなハプニングがあった。あるとき、窓から巣箱の方をぼんやりと眺めていたら、ちょうど巣箱にシーちゃんが入ろうとしているのが見えた。ところが、頭を穴に入れたものの、お腹がつっかえてなかなか中に入れ図、尾をバタバタさせてもがいているのだ。おかしいな?なぜスムーズに入れないのだろう?もしや?と思ってモニターを見ると、ちょうど鳥が巣箱に入った瞬間だったが、またもや違う鳥!シジュウカラよりもひと回りサイズの大きな鳥が無理やり巣箱に入って来たのだ。前にも別の鳥に侵入されたが、今回はそれとは違う種類の鳥だった。(詳しくは以下の記事に書きました)

そうかと思えば、2日連続でどこからともなくよその猫がやって来て、巣箱のある木に登ろうとするのを目撃して大焦り。夫が即席で木にワイヤーフェンスの切れ端を巻きつけ、猫ガードにした。野生動物の繁殖は危険がいっぱいで本当に大変だ。

さて、そうこうしているうちに10日ほど過ぎた。そろそろかな。

5月4日。朝起きて、いつものように巣箱をチェックする。画面を見た瞬間、「キャーッ!」

うま、産まれてる〜〜〜〜〜!ついに!!

ハート型の小さなお口がパックリと上を向いているではないか。下の方にもヒナがいるようだ。全部で3羽孵った?私の叫び声を聞いて、夫と娘もドタバタとキッチンに降りて来た。産まれたてのヒナを見て、みんなで歓声を上げる。いやー、今日は良い日。シーちゃん、おめでとう!

早速お腹を空かせた赤ちゃんにシーちゃんは餌を与えなければならない。でも、まだ残りの卵を温める作業もあるから、巣箱を出たり入ったりの大忙しになった。ああ、可哀想に、やっぱりワンオペなの?

と思ったら、突然、シーちゃんダンナが餌をくわえて巣箱に飛び込んで来た。おお、ダンナ、やっぱり父親の自覚はちゃんとあったんだね。疑ってごめん!

さあ、これからますます巣箱の観察が楽しくなるよ。どうか、残りの卵も全部無事に孵化しますように。

4月9日から1週間かけて巣作りをし、14日の朝からは毎朝1つづつ(なぜか初日のみ2つ)、順調に卵を産み続けて来たシジュウカラのシーちゃん。22日の朝に卵は全部で9つになった!

卵を産み続けながらも、日中は動物の毛などをせっせと追加で運び入れ、巣を整えていた。

卵を置いた部分の周囲にグイグイグイ〜と頭を押し込んで丸い窪みを作っている。

これまでのシーちゃんは、朝、卵を産み落とすとすぐに巣箱から出て行き、何度か巣材を持って戻って来る以外はどこかへ行っていて、夕方に巣箱に戻りそのままバタンキューと眠るというパターンだった。巣作り作業をする以外の時間はたくさん食べてエネルギーを蓄えていたのかもしれない。ところが、昨日はちょっと違った。頻繁に巣箱に戻って来ては座ってしばらく過ごす。そしてまた出て行くというのを繰り返している。

もしかして、抱卵モードに突入か?

と、判断を早まってもいけない。明日の朝、卵が増えているかどうかでわかることだろうと、確認するのを楽しみに私も寝た。

そして今朝(4/23)。朝8時半を回っても、普段ならとっくに出かけているシーちゃんはまだ巣に座っている。ってことは、ってことは?

ふとシーちゃんが動いた隙に卵の数を確認すると、前日と変わらない9個だった。つまり、卵は全部産み終わったのだろう。いよいよ抱卵期だ。シジュウカラの抱卵日数は12〜14日だそうなので、これからシーちゃんも約2週間、コロナで外出制限の私たち同様、#StayAtHomeなのである。でも、あんな狭いところに一羽ぼっちで2週間も退屈なのではないかと余計な心配をしてしまう。

見ていると実際、シーちゃんは退屈そうだ。

いやー、ほんとヒマそう。Zoomミーティングでもどう?って誘いたいけど、私からはシーちゃんが見えるけど、シーちゃんからこっちは見えないんだもんね、残念。

と思ったら、なんと、

シーちゃん、出てっちゃった。ノンストップで抱卵するんじゃなかったの?

シーちゃんダンナは何をやってるんですかね?シーちゃんの抱卵中はダンナがお食事ケータリングサービスをやるものだと思ってたのに、今のところ一度も現れないよ!ちょっと先行きが心配だ。

天気のせい何か、昨夜から巣箱に取り付けたカメラの接続が不良で、モニターに何も映らなくなっていた。夜11時頃になってようやく映像が映し出され、シーちゃんが無事、巣に戻って寝ていることが確認でき、ほっとして私も寝た。

今朝、シーちゃんはいつものように6時半に目を覚まし、ちょっとの間モゾモゾしてから巣箱を出ていったが、卵を覆って行ったので新しい卵を産んだかどうかはわからない。でも、毎朝1個づつ産むとしたら今日は5つになっていることだろう。

その後、再びカメラの不具合で映像は映ったり消えたりを繰り返していた。今日はうまく観察できそうもないなと思い、あまり真剣に見ていなかったのだが、午後、本を読んでいたら、テーブルの上のモニター画面の色が変わった。シーちゃんが巣箱に出入りする際、巣箱の穴を塞ぐので、一瞬画面が暗くなるのだ。「あ、戻って来たな」と画面に目をやった。

エッ?

今のは何?鳥が入って来て巣の中をうろついたと思ったらすぐに出て行ったのだが、何かがおかしい。

今のはシーちゃんではない。

一瞬の出来事だったので、スクリーンショットを取り損ねてしまった。でも、頭の丸いシーちゃんとは別の、もっとシュッとした体型でモノトーンの羽をした鳥を見たような気がする。いや、まさか。たぶん気のせいだよね?

そう思っていたら、数分後に再び鳥が入って来て、3秒ほどいてまた出て行った。間違いない、あれは別の鳥だ。どうしよう。シーちゃんに知らせなきゃ!でも、どうやって?

オロオロしていたら、シーちゃんが巣箱に戻って来た。

よ、よかった。と思ったのも束の間、シーちゃんの様子がおかしい。しきりに上を見ながらソワソワしている。背伸びして巣穴から外を覗くような仕草をしたり、外からの音に耳を澄ましている。モニター越しに巣箱の外から鳥の鳴き声が聞こえて来るが、シジュウカラの鳴き声とは違う。もしかして、さっき侵入して来た鳥はまだ近くにいるのでは?

これはなんとかしなくては!

急いで庭に出ると、いたいた!巣箱付近の枝に知らない鳥が止まって餌箱を狙っている。

餌箱に侵入したのはこの鳥だ!

「すみませ〜ん!その巣箱、もう貸してるんで!」と木の下から叫んだら、一瞬飛び立ったが、またすぐに戻って来た。近くの枝にはもう1羽、そっくりな鳥がいる。どうやらツガイのようだ。シロエリヒタキ かな?彼らも巣作りの場所を探して切羽詰まっているのだろう。

あたりを見回したら、かなり上の方の枝にシーちゃんのダンナがいて、遠くから文句を言っている。

シーちゃんのダンナ

縄張りを見張っていたダンナが他の鳥が侵入したことに気づいてシーちゃんに連絡したのかもしれない。でも、体を張って敵と戦う気はないようだ。私が何度かわざと大きな物音を立てて侵入者夫婦を追い払ったが、なかなかしぶとい。そのうちシーちゃん自らが巣箱から出て来て、そのタイミングで侵入者夫婦はその場を去った。

私はドキドキしっぱなし。邪魔者がいなくなってくれてよかったけど、シーちゃんのダンナはちょっとだらしがないんじゃ?ふっと一息ついて、モニターを見る。とりあえず、巣は大丈夫そうだ。そして機を見上げると、どこへ行ったのか、シーちゃんもダンナも姿が見えなくなっていた。

あの鳥夫婦、また巣箱を乗っ取りに来るだろうか?もう2度と来ないといいなあ。っていうか、うちの庭にはあと2つ、巣箱を設置してあるんだよね。そのうちのどちらか、好きな方を選んでご入居頂ければと思うのだけど、オークの木に取り付けた巣箱はロケーションが良いのか、希望者が集中してしてしまうようだ。とにかく、私としてはシーちゃんにオークの木の餌箱で安心して卵を産んでヒナを育ててもらいたい。モニタリングを強化せねば。

今日はハラハラさせられる日だったが、いつものようにシーちゃんは7時半に帰って来た。ああ、よかった、よかった。ぐっすり寝て、明日も元気に卵を産むんだよ。見守ってるからね。

観察記録その2を書いた4月14日(観察開始から6日目)の夜9時頃、シーちゃんが巣箱に姿を見せた。それまで巣作り作業は主に午前中に集中していて、夕方5時以降に巣箱に来ることはなかったので、あれっ?と驚いた。

こんな時間に何をするんだろう?と思ったら、シーちゃんは自分の作った巣の中に突っ伏してすぐに寝てしまった。帰宅してベットに直行、バタンキュー、という感じ。膨らませた背中の羽が掛け布団のよう。これからは巣箱に寝泊まりするのだろうか。ということは巣はもう完成?

翌朝、起きて画面を開けると、シーちゃんはまだ寝ていた。「鳥=早起き」のイメージだけど、意外と遅くまで寝ているんだなあ〜なんて思って眺めていたら、目を覚ましたシーちゃんがモゾモゾと動いて、その数秒後に巣穴から外へ出ていった。次の瞬間、私の目に入ったものは、、、

卵が2つ!

わおっ。もう卵を産んだ!すごい。

感動しつつしばらく卵を鑑賞。あれ、でもシーちゃんはどこへ行ったんだ?朝ごはんを食べに行った?なかなか巣に戻って来ない。おーい、せっかく産んだ卵、温めなくていいのかーい?

そのうち戻って来るだろうと何度も画面を確認するのだが、いつ見てもそこにシーちゃんの姿はない。巣の様子も変化していないので、朝、出て行ったきり、一度も戻って来ていない模様。卵、このままで大丈夫なの〜?心配になって調べたところ、シジュウカラは卵を全部産み終わってから抱卵することがわかった。ああ、よかった。

夜7時半。シーちゃんはようやく巣に戻って来たが、またもや瞬時に眠りに落ちた様子である。

翌朝(巣作りから7日目)。この日も私の方がずっと先に目が覚めた。なにか違う気がするけど、シーちゃんは妊婦だからたくさん寝る必要があるのかもしれない。そう思って納得することにする。

しばらく観察していたらようやく目を覚まして巣箱から出て行ったが、この日は卵を覆って出て行ったので、新しい卵を産んだかどうかはわからない。この日はシーちゃんは忙しく、何度も新しい羽や毛を運んで来て、巣を整えていた。巣が完成してから卵を産むものとなんとなく思っていたけれど、産みながら調整していくらしいな。夜は前日と同じ7時半に帰宅、そしてすぐに就寝。

今朝は巣作りから9日目。やはり6時半頃まで寝ていて、急にモゾモゾッと動いて巣から出て行った。

卵が4つに増えてる!

フワフワした材料がドーナツ状に整えられ、いかにも鳥の巣という感じになって来たね。シジュウカラは毎朝1つづつ卵を産むと読んだが、初日は2つだった。その後、昨日1つ、今朝1つ産んだのかな。だとしたら順調だね。全部でいくつ産むかなあ。

また卵を剥き出しのまま放置するのかと思ったら、今日は一旦戻って来て卵を覆って行った。ホッ。

前回の記事では、赤外線カメラを入れた鳥の巣箱を庭の木に取り付けたら、早速シジュウカラのメス(シーちゃん)が使い始めてくれたことについて書いた。その話の続き。

巣箱の中の様子はGreen BackYard社の巣箱用カメラ、Wireless Bird Box Cameraのスマホアプリ、iCSeeで24時間観察できる。PC用ソフトウェアもあり、大きい画面でモニタリングすることも可能だ。鳥の巣作りを真上から観察するなんて、初めての経験。もう、気になって仕方なく、初日は画面開けっ放しでしょっちゅう見てしまった。

シーちゃんはコケや枯葉、細い柔らかい枝などを巣箱の中に運び込んでいるが、テキトウに投げ入れているのではなく、適切な位置に配置しているようである。長い枝をクチバシに加えて左右にシュバッ、シュバッと振り、箱の隅に沿うように器用に回して置いているのがすごい。

羽を広げて頭を材料の下に潜らせるようにグイグイグイと押して、枠を作っている。シーちゃんは巣作り何年目なのだろうか。手慣れた様子である(手はないけど)。

実際の動きは以下のような感じ。(PC上で再生したものをスマホで撮ってYouTubeに上げたものなのでクオリティが悪くてすみません)

巣作り2日目。朝8時くらいから巣作りの続きが始まった。

後に卵を抱えて座ることになる真ん中の部分はちゃんと窪んでいる。作業をするのは午前中が多く、シーちゃんは午後にはあまり巣箱に姿を見せない。

4日目。

丸3日かけて土台の部分は大体出来上がったようで、4日目からは綿や羽などフワフワした材料が運び込まれた。うちの庭にはこのような素材はないんだけど、どこから運んで来ているんだろう。巣作りの場所を選ぶときには、必要な材料が周辺にあるかどうかもチェックしてから決めているんだろうね。

ふわふわ材料を取りに行って戻って来たシーちゃん

ちなみに、巣箱を出入りするところをカメラで撮るのは結構難しい。近くの枝にシーちゃんの夫が止まって見張っていることがあり、巣の方に近づくとチチチチ!と大声を出すから。

5日目。

6日目。

だんだん巣らしくなって来た。出産ももう時期だろうか。待ち遠しいなあ。

冬の間、自宅の庭を中心に、バードウォッチングに熱中していた。完全に初心者なのだけれど、テラスに餌台を設置したところ、思いのほかたくさんの野鳥がやって来て、楽しませてくれた。

春になったので、鳥たちは私が餌を提供しなくとも、自力で食べ物を見つけられるようである。そして、春は鳥たちの恋の季節。パートナーを探す鳥たちの歌声で庭はますます賑やかだ。

我が家の自宅バードウォッチングも次のステップに進もう。今度は巣箱を用意するのだ。うまく行けば、鳥の子育ての様子を観察できるかもしれない。

と、思ったものの、どういう巣箱をどこに設置すればいいのか、よくわからない。少し調べてみたところ、鳥の種類によって巣箱の穴の適切な大きさが違うらしい。うちの庭に来る野鳥の中で一番数が多いのはアオガラ(Blaumeise)とシジュウカラ(Kohlmeise)なので、彼らの体の大きさに合わせた巣箱を用意することにした。アオガラ用は穴が直径27mmのもの、シジュウカラ用は32mmである。

しかし、これらをどこに設置すればいいのだろう?とりあえず、庭の中央にある、鳥たちに大人気のチェリープラム の木に取り付けてみる。

こんな感じ。これで2、3 日様子を見たのだが、うーん、、、どうも違う気がする。というのは、この木にはアオガラとシジュウカラ以外にもイエスズメなど他の鳥も頻繁にやって来る。庭の中央に位置することもあり、「中央市場」のような場所である。2つの巣箱が近すぎるのも良くない気がして来た。これではとても落ち着いて子育てをする環境ではないだろう。庭に巣箱を設置している近所の人にアドバイスを求めたところ、「複数の巣箱を設置してるけど、使われるのもあればそうでないのもあるね。まあ、トライ&エラーでやるしかないよね」との返答。そっかあ。そんなに簡単ではないんだね。

巣箱の数が多いほど利用率が上がるだろうからと、3つ目の巣箱を別の場所に設置することに決めた。夫が「どうせなら、赤外線カメラを入れようよ。もし、巣箱を使ってくれたら、中の様子が観察できるじゃん?」と言う。そんなにうまくいくかなあ。ま、ダメもとでやってみるか。

今回は穴の大きさ32mmのものを庭の端のオークの木に取り付けてもらった。高さがあるので、少しは鳥も安心だろう。ちなみに、巣箱の天井部分に取り付けたカメラはGreen Backyard社製のWireless Bird Box Cameraというもの。スマホアプリで巣箱の中をモニタリングできるようで良さそうだ。ちょうどディスカウントになっていたので、これにした。

でも、使ってくれるかなあ、、、。巣作りシーズンはとうに始まっているし、今年はうまくいかないかもね。と言いながら巣箱を眺めていると、夫が「1回、巣箱取り外すね」と言う。中がよく見えるように小さい横穴を開けたいそうだ。「明日にでもまた取り付けるよ。どうせそんなにすぐに使われないから、急ぐことないよね」。せっかく設置した巣箱だが、再び夫の手で取り外された。

ところが、夕方、庭で異変に気付いた私。

「ちょっと、ちょっと。巣箱があったあたりをシジュウカラが飛んでいるよ」

「え、どれどれ?」目を凝らす夫。

「なんか慌ててない?」

2羽のシジュウカラが何かを探すかのようにバタバタとオークの木の枝の周りを飛んでいるのだ。

「も、もしかして、あの巣箱を使うつもりだったんじゃない?なくなってびっくりしてるのかも?」

「ガアーーーーーーン!そんなあ!」

夫は慌てて家の中に飛び込み、巣箱を抱えて戻って来た。

「すぐに元の位置に戻さなきゃ」

そう言いながら巣箱の蓋を開けて中を見た夫は再び叫んだ。

「うわあ、もう最初のコケが投げ込まれてるよ!」

「エエエーッ!」

なんということだ、シジュウカラは夫の設置した巣箱の採用をすでに決め、巣作りを開始していたのだ。早く巣箱を元の位置に戻さなければ。大慌てて巣箱を再設置したが、シジュウカラは戻って来てくれるだろうか。「ここに巣箱があったと思ったんだけど、どっか行っちゃったね。じゃ、他の場所でもいっか」と気が変わってしまうかもしれない。ああ、どうか戻って来てくれますように!その夜は祈るような気持ちでベッドに入った。

巣箱を再設置した時の巣箱の中の様子。左下の端に写っている影が投げ込まれていたコケ

翌朝。起きてスマホを手に取り、メールチェックをした後、巣箱カメラアプリを開けてみた。すると、

コケが増えている!!!

うわーっ。増えているよ。やっぱり使ってくれるんだ!

大興奮で夫を起こす。「アプリを早く開けろ!」。画面を見た夫、一気に目が覚めたようである。「やった!間に合ったな」。こうなったら画面から目が離せない。スマホ画面を睨みながら朝ごはんを食べる。そして、数十分後、、、。

じゃあ〜ん!

巣箱の中にシジュウカラが入っているのを確認!やったあ!

シジュウカラは夫婦で巣作りの場所を探すが、決定権はメスにあり、実際の巣作りもほとんどメスがするそうだ。ということは、このシジュウカラはメスである。これから彼女の子育てを観察させてもらえることになりそうだ。しばらくのお付き合いになるので、他のシジュウカラとは区別して「シーちゃん」とお呼びすることにしよう。

巣箱から飛び出すシーちゃん

いよいよ始まるシーちゃんの子育て。勝手にドキドキしている私たちである。

(次回に続く)