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シュヴェービッシェ・アルプでの休暇でたくさんの洞窟に入り、また、考古学パークで氷河期体験をしたことで、すっかり氷河期ファン(?)になってしまった。中を見学した洞窟のいくつかからは人類史最古の芸術作品が発掘されているが、それら出土品はシュヴァーベン地方のあちこちの博物館や美術館に分散展示されている。ホーレ・フェルス洞窟から掘り出されたヴィーナス像と横笛、そして鳥のフィギュアはウルム近郊のブラウボイレン先史博物館(Urgeschichtliches Museum Blaubeuren)にあると聞き、見に行って来た。

ブラウボイレンは人口1万2000人の小さな町だが、ブラウトップフ(Blautopf)と呼ばれる青い泉があることで有名である。観光パンフレットなどに載っている神秘的な写真を見て、いつか行って見たいと思っていた。

 

 

 

あいにく空は曇っていたけれど、それでも泉の青さははっきりとわかる。このブラウトップフはカルスト泉で、ブラウトップフ洞窟と呼ばれる全長4900メートルにも及ぶ地下洞窟の一部なのだ。ブラウトップフ洞窟内部は水で満たされているため、洞窟ダイバーによる調査が行われている。

 

泉を見た後は先史博物館に向かう。

規模はそれほど大きくないが、とてもわかりやすい展示をしている良いミュージアムだ。

石器の作り方を詳しく説明するコーナーが合った。いろんな洞窟に入った後にこういうものを見ると、本当に面白く感じる。

出土されたものを深さごとに展示しているのが良い。

氷河期のヨーロッパ。スカンジナビア、英国北部、北東ドイツとシュヴェービッシェ・アルプが氷河に覆われている。丸い印は氷河期の遺物が発掘された場所だ。ドイツに特に多いように見えるが、必ずしもドイツに集中して人が住んでいたというわけではなく、発掘調査がドイツで特に盛んなことが理由らしい。

ローネ渓谷とアハ渓谷周辺から特に多く出土されていることがわかる。

これは最近、ホーレ・フェルス洞窟で見つかった三つ穴の装飾品(Dreilochperlen)。4万2000年〜3万6000年前のものと推定されている。

小さなアンモナイトのピアスと貝のペンダント。アンモナイトピアス、いいなあ〜。

 

さて、いよいよこの博物館のハイライト。

世界最古のヴィーナス像。「ホーレ・フェルスのヴィーナス」。

横笛。

水鳥。どれもとにかく素晴らしい。

 

シュヴェービッシェ・アルプに来たなら、洞窟や考古学パークでの生の体験とミュージアムをセットで考古学を堪能するのがおすすめだ。

 

 

まだまだ終わらないシュヴェービッシェ・アルプ洞窟探検旅行。今回は、ウルムから西に約60kmの地点にあるベーレンへーレ(Bärenhöhle、熊洞窟の意)とネーベルヘーレ(Nebelhöhle、霧洞窟の意)という二つの洞窟を紹介しよう。

 

ベーレンヘーレは、中からアナグマの骨が多く出て来たことから「熊の洞窟」と呼ばれる石灰洞窟だ。シュヴェービッシェ・アルプシュヴェービッシェ・アルプの洞窟群の中では特に良く観光化されており、周辺には子どもの遊び場や土産物屋などがあるため、家族連れで賑わっていた。

早速、ガイドツアーに申し込んで中に入ってみる。

 

洞窟の中は照明を多く使っているため、苔が生えて緑色になっているところが多く見られる。

 

こんな感じでゾロゾロと見学。保護のため、フェンスで囲まれている部分が多いのも特徴。

 

つらら石や石筍、ストロー(マカロニとも呼ばれる)などいろいろな鍾乳石がぎっしりだ。洞窟内はカラーLEDでライトアップされていて、少々キッチュな感じがしないでもないが、子どもには魅力的だろう。また、わりあい明るいので、小さな子どもでも安心して歩ける。

これが上下繋がって石柱になるまで、あとどのくらいかかるだろうか。1立方センチメートル成長するのに60〜80年かかるとのこと。

これも見事。

この洞窟からはアナグマだけではなく、様々な動物の骨が発見されたことから、一時期、ハイエナの巣穴だったのではないかとされている。人骨も見つかっており、旧石器時代に人々が生活していたこと、また、その後の人類の歴史においてあらゆる時代の人々がゴミ処理場としても使用していたことがわかっている。

地面には上から滴り落ちる水で濡れ、石筍が形成され始めているところがあった。(右上の丸く盛り上がっているところ)

天井に何か黒いものが見えると思ったら、、、、。

コウモリの死骸だった。冬眠したまま死んでしまったのだろうか。

ベーレンヘーレでは一般ツアーの他に、「宝探しツアー」「メルヘンツアー」など小さな子どもを対象としたガイドツアーもあり、マルチメディアCDも販売されている。ベーレンヘーレのすぐ側には、ネーベルヘーレ(霧の洞窟)がある。ベーレンヘーレは見学できる部分の奥行きが250mだが、ネーベルヘーレは450mとさらに深い。発見は1920年で、シュヴェービッシェ・アルプで最も古くから知られている洞窟の一つだ。ベーレンヘーレほど混んでいなかったのでゆっくりと見学でき、私はどちらかというとネーベルヘーレの方が気に入った。

 

石筍の断面。初めて見た。

なんとも言えない不思議な光景。

 

この二つの洞窟は見応えがありながら観光のハードルが低いので、家族でのお出かけにピッタリ。

 

まだまだ続くシュヴェービッシェ・アルプ洞窟探検旅行、次の目的地はアハ渓谷シェルクリンゲン(Schelklingen)にある洞窟、ホーレ・フェルス(Hohle Fels)だ。ホーレ・フェルス洞窟からは1830年代以降、アナグマやマンモス、野生の馬の骨や石器時代の道具などが発掘されて来たが、2008年の再調査において、考古学的記録を塗り替える約4万2500年前のヴィーナス像と横笛が見つかった。これまでに発見された中で最も古い、人をかたどった芸術作品と楽器である。また、ホモ・サピエンスだけではなく、さらに時代を遡った6万5000年前頃にネアンデルタール人が同じ洞窟には生活していた証拠もあるという。

 

 

シュヴェーヴィッシェ・アルプの一般公開されている洞窟群は冬季はコウモリ達が中で冬眠するため、10月末、または11月のはじめに閉鎖される。その洞窟により見学できる期間が多少異なり、私たちは10月の終わりから11月のはじめにかけて休暇を取ったので、ギリギリ入れるか入れないかだった。ホーレ・フェルス洞窟に着くと周りに人影はなく、入り口のフェンスが閉まっていたので「遅かったか」とガッカリしていたところ、地元の人と思われる男性が数名の客人を連れて近づいて来た。声をかけると、今年の一般公開期間は前日に終了したが、自分は管理者の一人で、特別に案内してもいいと言ってくれた。たまたま良いタイミングで洞窟に着いて運が良かった!

 

洞窟入り口。

 

入り口はトンネルになっており、その奥にドームのような空間が広がっている。

 

想像していたよりも大きくて圧倒される。これは下から上部を見上げたところ。空間の大きさは6000立方メートルだそうだ。

出土されたヴィーナス像と横笛はブラウボイレンの先史博物館に展示されている。

後日、博物館で撮影したVenus of Hohle Fels。フォーゲルヘルト洞窟からの出土品同様、マンモスの牙でできている。

シロエリハゲワシの橈骨から作られた20cmほどの長さの横笛。4万年も前の人々が楽器を作り、音楽を奏でていたとは驚きである。

 

洞窟の上部奥から下を眺める。入り口付近に椅子が並べられているが、こうして見るとまるでベルリンフィルのホールで上部客席からステージを見下ろしているときのようだ。そんなことを考えていたら、案内役の男性が音楽をかけてくれた。プロの演奏家による横笛の演奏を録音したものだそうだ。しばらく聞き入ってしまった。4万年前の人たちがどんなメロディーを奏でていたのかはわからないが、この洞窟の中で同じような音を聴いていたのかと想像すると、とても感動的だった。

最初に発見されて以来、この洞窟ではお祭りのようなイベントがしばしば開催されて来た。戦時中、防空壕や武器の倉庫として使われていたため中断されていたが、1950年からは毎年、洞窟祭りが催されている。ときどき洞窟コンサートも開かれるとのこと。中で火を焚いたら凄いだろうなあ。

 

コンサート動画。

 

 

来る前はそこまで期待していなかったシュヴェービッシェ・アルプだが、どんどんと面白さを増して行く。初日にはCharlottenhöhleVogelherdhöhleという二つの洞窟を訪れたが、二日目はハイデンハイムから南西に移動し、地下洞窟Laichinger Tiefenhöhleへ行くことにした。この洞窟は観光客に一般公開されている洞窟としてはドイツ国内で最も大規模なものの一つである。苦灰岩(ドロマイト)が地下水に侵食されてできた迷宮のような洞窟が地下80メートルの深さまで探索調査されている。そのうち55メートルの深さまでは観光客も潜れるように整備されているという。

 

地下に潜れると言われても、イメージが掴みにくいかもしれない。断面図で見るとこんな感じ。

©Tiefenhöhle Laichingen

図の上部左側に描かれた建物内に洞窟の入り口があり、カルストの通路を伝って地下55メートルの深さまで降りて行く。そこから奥へと移動しながら再び地上に向かって登って行き、最後は右側の建物から地上に出る。一般公開されている通路の長さは約330メートル(洞窟全体の長さは1253メートル)だ。この図を見ただけで、ワクワクして来た。この洞窟にはガイドさんなしで入ることができる。ヘルメット着用は義務付けられていないが、ズボンの裾が濡れないように防水のバンドを脛に巻くように言われた。

 

入り口。いざ、洞窟内へ。

 

いきなり狭い!下がどうなっているのか全然わからない。

 

通路には手すりがついている(水を抜く導管を手すりに利用しているようだ)が、階段はかなり急。足場はしっかりしているので気をつけて降りれば特に危険ではないが、幼児には難しいだろう。閉所恐怖症だったり心臓の弱い人にも向かないかもしれない。

足元に気をつけながらどんどん降りて行く。アドレナリン出まくりである。

 

 

ところどころに音声による説明ポイントがあり、ドイツ語、英語またはフランス語のいずれかで洞窟の地質について学べる。こちらの記事にも書いたように、シュヴェービッシェ・アルプはジュラ紀には海水に覆われていた。この洞窟は地表から28mの深さまでは、ジュラ紀に堆積した石灰岩中の炭酸カルシウムが炭酸マグネシウムに変質した(ドロマイト化)と考えられているそうだ。上層の岩はゴツゴツとして硬いが、空洞が多い。それより下に潜ると岩の密度が高くなり、ずっしりとした質感になる。

 

狭い!!

どのくらいの狭さかというと、この通り。岩の裂け目の中を通るなんて楽しすぎる。

 

言葉でこの感動を伝えるのはとても難しい。

普段どのくらい観光客が訪れるのかわからないが、このときは洞窟の中は私と夫だけだったので、その分余計にエキサイティングに感じたかもしれない。

 

 

うわあーーーーー!!写真では抑揚感を伝えられなくて残念!

これは「カーテン」と呼ばれる鍾乳石だろうか。ガイドさんがいないのではっきりわからないが。

また少しづつ登って行き、外界に出た。所要時間は約40分。面白かったーーーー!!

やはり自然は壮大だ。私はいろんな種類の旅行が好きで、知らない町を街並みを眺めながら散策したり、海で泳いだり、博物館を訪れるのもとても楽しいが、これまで旅して来た中で特に印象に残った場所はどこだったかと思い起こしてみると、そのほとんどはスケールの大きな自然を体感した場所である気がする。このシュヴェービッシェ・アルプ地方は間違いなくこれまでで特に感動的だった場所の一つになった。中でもこの洞窟に潜った体験は後々まで忘れられないものとなりそうだ。

 

 

 

洞窟体験休暇と名付けたシュヴェービッシェ・アルプでの休暇では、まず洞窟、Charlottenhöhleに入った。(その記事はこちら)次に向かうは同じくローネ渓谷にあるフォーゲルヘルト考古学テーマパーク、Archäopark Vogelherdだ。

 

Archäopark Vögelherdは、2013年にオープンした考古学テーマパークで、フォーゲルヘルト洞窟(Vögelherdhöhle)のすぐ下に位置する。今年、2017年にユネスコ世界ジオパークに認定されたシュヴェービッシェ・アルプの洞窟群は考古学的に非常に重要な洞窟群である。これらの洞窟からは今から約3万2000年〜4万年前に作られたとみられる芸術作品が複数の洞窟の中から次々と発見されているのだ。フォーゲルヘルト洞窟からは氷河時代の様々な動物をかたどった11個の小さな象牙の彫り物が出土されている。

 

フォーゲルヘルト考古学パークを洞窟のある丘の上から見たところ。写真の奥に見える細長い建物はビジターセンター。まだオープンして間もないこともあり全体的にシンプルな印象だが、侮ることなかれ。ここは子どもにも大人にも面白いテーマパークなのである。

私たちはガイドツアーに参加することにした。オフシーズンで肌寒い日だったせいか、ツアーは私たち夫婦と二人のティーンエイジャー連れの家族が一家族のみだった。ツアー内容はパーク内の学習ポイントのそれぞれでガイドさんの説明を聞きながら氷河期(旧石器時代)にローネ渓谷に住んでいた人々の生活を体験しながら回るという趣向だ。

 

最初の学習ポイントでは氷河期に人々が使用していた道具について学ぶ。いろいろなハンドアックス(握斧、ドイツ語ではFaustkeilと呼ぶ)を握らせてもらった。ハンドアックスは氷河期のアーミーナイフのようなもので、一つで切る、叩く、削る、砕くなどのいろいろな手作業を行うことができる。試しに皮を切って見たが、よく切れる。ハンドアックスによく使われるのは主に燧石(フリント、火打ち石)がよく使われる。写真中央に見えるのは木の棒の先に石器を紐でくくりつけた石槍だが、紐で結わえるだけでは取れやすいので、何かで接着しなければならない。

当時は白樺のタールが接着剤として使われていた。(写真の黒い物質)熱して溶かし、熱いうちに道具をくっつけて冷えて固まるのを待つ。ホモ・サピエンスだけでなく、ネアンデルタール人も使っていたという。

 

次のポイントでは獲物を捕まえる体験。ネアンデルタール式の槍とホモ・サピエンスホモ・サピエンス式の矢の両方を獲物めがけて放ってみる。

ネアンデルタール式投げ槍。投げてみたけど、届きゃしない、、、、。食糧を得るのは大変だね。

こっちはホモ・サピエンス式の矢。矢のお尻の部分にドイツ語でSperrschleuderと呼バレる投槍器を当てて握り、投槍器は握ったまま矢だけを飛ばす。ネアンデルタール式の投げ槍よりははるかに軽く、飛ばしやすいが、これも私は獲物に全然当たらなかった。今日の晩御飯はなしか、、、。

と思ったが、夫は楽々と50メートルほど飛ばし、命中。憎たらしい。が、これで肉鍋が食べられるのだから良しとしよう。

別の学習ポイントではローネ渓谷で見つかった様々な動物の骨を観察した。これはマンモスの臼歯。

 

パーク内の学習ポイントを回りながら丘を登り、フォーゲルヘルト洞窟へ。

 

中は外よりずっと暖かい。ここで石器時代の人たちが生活していたのかと思うと、なんだか感動的である。それも、ただ生存していただけではない。3万2000年も前にこの洞窟に住んだ人々は芸術作品まで生み出していたのだ。それらはヨーロッパにおいて最後の氷河期の第1亜間氷期から第2亜間氷期まで続いていたオーリニャック文化の一部をなすもので、シュヴェービッシェ・アルプの他の洞窟で見つかったものと合わせ、これまでに発見された最古の「持ち運べる芸術作品」である。パークの入口のビジターセンターではこの洞窟で出土された11の作品のうち、2つが展示されている。

 

モンモスの牙で作ったマンモスのフィギュア。大きさ3.7cm、重さ7.5g。石器の道具でこんな小さなフィギュアを作るなんて、作者は手先の器用な人だったのだな。

同じくマンモスの牙で作ったホラアナライオンのフィギュア。この洞窟からは、これら二つの他に野生の馬、トナカイ、バイソン、アナグマ、パンサーなどが見つかっている。(こちらのページに一覧写真がある) その中で特に人気で野生の馬はこのテーマパークが属するNiederstotzingen市のロゴになっており、実物はチュービンゲン大学博物館で見られる。

 

洞窟を出ると、日没間近になったせいか、さらに寒くなった。ぶるる。でも、この程度の寒さで寒いと言っていたら、氷河期を生きた人には呆れられてしまう。そんなことを考えているとガイドさんが「さあ、みなさん。最後に石器時代の人たちのやり方で火を起こしてツアーはおしまいです」と言った。やった、暖を取れる!

石器時代の焚き火起こしセット。これは後日、先史博物館で見たものだが、当時の人たちは火を起こすのに火打ち石(フリント)、黄鉄鉱(パイライト)、乾燥させたキノコ(火口として使う)、アザミの綿毛などを使っていた。

 

ガイドさんが火打ち石(フリント)と黄鉄鉱(パイライト)をカチカチと打ち合わせると火花が散った。火花を素早く乾燥キノコに接近させて発火させる。

発火したら素早くアザミの綿毛と藁で包み、巣のようなものを作る。

それを手に持ってフウフウ吹く。結構な肺活量が必要そうだ。

やった!

あったかいねー。


煙たいのですぐに出てしまった。

1時間ほどのツアーだったが、かなり面白かった。子どもも楽しめるのはもちろん、大人にとっても為になる内容だ。まだ新しいテーマパークなので、今後は一層充実していくだろう。私はこれまで石器時代に特別興味を持っていたわけではなく、先史博物館などに石器がずらりと展示されているのを見ても、何がどう違うのか今ひとつピンと来ていなかった。しかし、この考古学パークで石器時代の手ほどきを受けたおかげで、この後訪れた博物館ではハンドアックスなどの道具が急に生き生きとしたものに見えて来た。たとえ真似事ではあっても自分で少しでも体験してみることで、それまで自分とは無関係と思われたものが意味を持ち始めると実感した。

 

ドイツ語だけれど、関連動画を見つけたので、興味のある方は是非、見てみてください。

 

夫が秋休みを取ったので、私たちは10月の終わりから11月にかけての一週間を南ドイツのシュヴェービッシェ・アルプ(Schwäbische Alb)で過ごすことにした。シュヴェービッシェ・アルプとは「シュヴァーベン地方のアルプス」の意味であり、その名が示す通り、山脈を中心に長さ約400km、幅35〜40kmに広がる地帯だ。シュヴェービッシュ・アルプは今年、2017年にユネスコ世界ジオパークに登録された。ゴツゴツとした岩が剥き出しになった山脈のあちこちに約3万5000〜4万3000年前に人類が住んでいたとされる洞窟がいくつもあり、驚くべきことにそのいくつかからは彼らの残した芸術作品や楽器が数多く出土されているのである。

世界最古の芸術作品が出土された洞窟!!

それは何やら凄そうではないか。そこで今回の旅行を「洞窟探検休暇」と名付けて出かけた私たちである。Heidenheim an der Brenzという町を拠点にシュヴェービッシュ・アルプの洞窟を回った。まず最初に訪れたのは、ローネ渓谷(Lonetal)にあるシャーロッテンヘーレ(Charlottenhöhle)だ。

 

 

Charlottenhöhleは1893年に発見され、当時のヴュルテンベルク王女、シャルロッテにちなんで名付けられた鍾乳洞で、深さはおよそ地下35m、長さ532mの通路。シュヴェービッシェ・アルプの洞窟には一般公開されているものと研究者しか中に入ることのできないものとがあるが、この洞窟は一般公開されているものの中では最も長さがある。早速ツアーに申し込み、ガイドさんの後をついて中に入った。

 

鍾乳石や石筍に関する説明を聞きながら奥へと進む。鍾乳洞は日本やその他の国でも何度も見たことがあるが、ドイツでは初めてなので久しぶりだ。

シュヴェービッシュ・アルプはかつては浅いトロピカルな海だった。海の生物の死骸が堆積してできた石灰岩が地殻変動によって隆起し、二酸化炭素を含む雨水や地下水によって長い時間をかけて侵食されカルスト地形を形成している。石灰岩の割れ目から入り込んだ水が炭酸の作用で周辺を溶かして空洞を作る。空洞を満たしていた水がなくなると、歩いて入ることのできる洞窟となる。このCharlottenhöhleはおよそ250〜300万年前のジュラ紀後期に形成されたものだという。

 

つららがたくさん。

リンゴの木のような形をした鍾乳石。上部の丸いつぶつぶはケイブパール(「洞窟の真珠」の意味)と呼ぶそうだ。

 

大きな石筍。

 

これは、フローストーンというものかな。(間違ってたらすみません)

 

石筍と鍾乳石が繋がって石柱を形成しているところもある。

 

なっかなか面白い。これが最初に入った洞窟だったので、この時点ではかなり興奮していた。この後もっと凄くなるのだが、、、。

 

鍾乳洞の近くにはHöhlenSchauLandというビジターセンターがあり、ローネ渓谷の自然史について展示を行なっている。

貝、魚の骨、サンゴ、、、本当にここはかつて海の底だったんだね。現在は国土の最北にしか海のないドイツに住んでいるとなんだか不思議な気がするが。

 

石筍の断面。縞模様ができているのが見えるだろうか。木の年輪のようなもので、この成長縞を元にウラン-トリウム法という方法を使って石筍の年代を測定する。石筍に取り込まれた放射性アイソトープU234とTh230の半減期がそれぞれ異なるので、両アイソトープの比率を調べることで形成時期を知ることができるのだ。

面白いなあ。でも、これはまだ序の口。これからもっともっと面白くなるのだ!