前回の記事ではフンスリュック山地での化石探しエクスカーション、Steinerne Schätze Hunsrücks – Geführte Mineralien- und Fossiliensucheについてレポートした。今回はその同じ週末エクスカーションの二日目、鉱石探しについて書く。二日目はグッと参加者が減って、ガイドのヴァルターさんの他は3人だけだった。

そもそもイーダー・オーバーシュタインに来たのは鉱石を見るためだ。フンスリュック山地、特にイーダー・オーバーシュタイン周辺は昔から貴石、特にアメジストや瑪瑙がよく採れ、貴石の研磨・加工技術が発達した地域である。19世紀以降は産出量が減り、宝石産業は一時衰退したが、新天地を求めて多くの労働者が移住したブラジルで運よくも鉱脈を掘り当て、上質な貴石とともに帰還する。すでに研磨技術や加工ノウハウが蓄積されていたため、イーダー・オーバーシュタインはドイツの宝石産業の中心地となった。どちらかというとあまり目立たない町だが、現在もドイツの誇るhidden champions(隠れたチャンピオン)の一つとして世界的に重要な宝石貿易の拠点である。

さて、エクスカーションであるが、二日目の集合場所はイーダー・オーバーシュタインから北東12kmほどのところにある観光銅鉱山、Historisches Besucherbergwerk Fischbachだった。まずは500年以上前から1792年にフランス革命軍に占領されるまで銅の採掘が行われていたこの銅山を見学する。

ヘルメットを被って坑道の中へ

去年の秋にシュヴェービッシェ・アルプ地方で洞窟三昧の1週間を過ごしたので、洞窟にはすっかり入り慣れてしまっているが(例えばこれなど、ものすごいので見てね)、ここもかなりの規模で見応えがあった。

鉱夫の守護聖人、聖バルバラ

これは自然に形成された洞窟ではなく、鉱夫がハンマーで岩を叩いて広げていったものだが、これだけ掘るのに一体どれだけの労力が費やされたのだろうか。

今日もエクスカーションのガイド、ヴァルターさんに案内してもらった

内部の各所には鉱夫人形が置かれ、当時の作業の様子が伺える

ヴァルターさんは地質学的な説明だけでなく、社会文化史にも触れた説明をしてくださって面白かった。下の動画のように古い砕石機の実演などもあるので、子どもにも面白いと思う。今回の記事のテーマは鉱石探しなので、銅鉱山の詳しい説明は省略して次に行こう。

鉱山を見学した後は、山の裏手に回っていよいよ鉱石探しだ、

普通の山にしか見えないが、、、

地面を見るとカラフルな石がたくさんある。緑色はマラカイト(孔雀石)の色だそう。ヴァルターさんに「ここではMandelsteineを探しましょう」と言われた。Mandelsteineとは直訳すると「アーモンドの石」である。アーモンドの石とは何だろうか?

説明によると、この一帯はかつて火山活動によって溶岩が流れた地域で、火成岩内部で気泡が固まってできた空洞(晶洞、ジオード)が結晶で満たされたものをMandelと呼ぶそうだ。つまり、Mandelを割ると中に結晶を見ることができる。この地域で多く産出される瑪瑙もMandelの一種で、結晶が層状になり美しい縞模様を作る。(瑪瑙の話は改めて別記事で)

Mandelsteineを探しているところ。ヴァルターさんは「大きければ大きいほど良い」と言うが、大きなMandelはなかなか見つからなかった。

石英の結晶が詰まったMandel。

ピンボケの下の石には層状の模様があるが、なんだかよくわからない。化石探しも鉱石探しもまだ初心者なので、初めての採掘場所に行くと何をどう探していいのかわからないまましばらくうろうろしてしまう。残念ながらここで見つけられたのはこのくらいだった。

お昼ご飯を食べた後は、イーダー・オーバーシュタインから20kmほど北西のMorbachにある石英採石場へ移動。

今度はここで水晶を採るそうだ。許可なしで立ち入るのは禁止だけれど、専門家の同行するエクスカーションなのでこの日は特別だ。

作業したのは道路が通っている3段目

地層の湾曲やずれもすごくて、見るだけでもけっこう面白い

石英の結晶は岩の裂け目に形成されている。こうした裂け目のあたりをハンマーでガンガン叩き割り、透明な水晶を取り出すのだ。

しかし、、、はっきり言って危ないわ、これ。上から石が落ちて来る可能性があるし、足場もすぐにガラガラと崩れて滑り落ちそうになる。そもそも非力の私にはハンマーで岩を割るということからして難しい。ましてや急斜面では到底無理。鉱石探しワークショップがこんなサバイバル的なものだとは聞いていないぞ!仕方ないので力仕事は男性たちに任せ、私は水晶の埋まっていそうな場所を探すのを担当した。

でも、意外と地面にころんと転がってたりもする。ヴァルターさんは特別に繊細で美しい結晶を見つけ、「奥さんにプレゼントしよう」とつぶやいていた。なんか、いいなあ。お店で買ったものより嬉しいかもね。

私たちの収穫はこんな感じ

これが一番気に入った。

まあ、たかだか水晶の小さなかけらのためにわざわざ体を張って、、、と思わないでもない。でも、一生に一度くらいはこういうの体験してもいいんじゃない?面白かったよ。

ドローン動画を撮影したので、おまけに貼っておこう。