投稿

今年初めてニーダーラウジッツ地方へ行って来た。ニーダーラウジッツはブランデンブルク州南東の旧東ドイツ時代には豊富に埋蔵する褐炭でエネルギー産業を支えていた地方だ。ドイツ再統一により褐炭の採掘場や関連の工場、発電所の多くは閉鎖されたが、いくつかは産業遺産として保存され、観光化が進められている。そうした褐炭産業関連のスポットを巡る250kmに及ぶ観光ルートは「ラウジッツ産業文化・エネルギー街道」と名付けられている。ドイツに150以上ある観光街道の1つなのだ。

私はこれまでにそのうちのプレサ(Plessa)の 発電所ミュージアムやコトブス(Cottbus)のディーゼル発電所ミュージアムを訪れた。また、街道沿いではないが、やはり褐炭関連のオープンエアミュージアムFerropolis、褐炭採掘で掘り起こされた迷子石を集めた公園Findlingspark Nochtenにも行ってみたが、どれもとても面白い。ドイツの観光街道は日本ではロマンチック街道やメルヘン街道が有名だが、ラウジッツは褐炭観光というかなりマニアックで興味深い観光ができるのが魅力なのである。

さて、今回訪れたのは産業文化・エネルギー街道の目玉の一つであるオープンエアミュージアム、F60。なんとこのミュージアムでは褐炭の露天掘り場で実際に使われていた高さ74m、長さ502mという巨大なコンベアブリッジを歩いて渡ることができるのだ。周辺に大きな町はないのでアクセスは結構大変。

Lichterfeldという村が最寄りの村で、こんな感じ。

ドイツの村の作りにはいくつか種類があって、これはシュトラーセンドルフ(Straßendorf)というもので、1本の通りの両脇に民家が並び、一番向こうに教会が建っている。ブランデンブルクではこのタイプの村をよく見かける。過去記事で紹介したが、変わった集落タイプとしては広場を中心に丸く家が並ぶルンドリンクというのもある。

 

さて、集落のすぐ向こうはもうミュージアムである。視界に巨大なコンベアブリッジ、がどーんと登場した瞬間、思わず歓声を上げてしまった。しかし、あまりに大きすぎて駐車場からは全体像を撮ることができない。

ビジターセンターでガイドツアーに申し込むとこのコンベアブリッジに登ることができる。ツアーには何種類かあり、私たちは90分間のロングツアーに参加することにした。ロングツアーではコンベアブリッジの先端まで歩いて渡れるのだ。しかし、そもそもコンベアブリッジって何?という人は下の図を見て欲しい。

 

ちょっと見にくいかもしれないが、ビジターセンターに貼ってあった褐炭の露天掘り採掘場の写真だ。地下に埋まっている褐炭を掘り出すためには、まず掘削機で表土を剥ぎ取らなければならない。剥ぎ取った表土はすでに褐炭を掘り出した後の穴に入れて表面を均す。新しく剥ぎ取った表土はそれ以前に掘った穴に入れ、次に剥ぎ取る表土はこれから掘る穴に入れる、という要領で土を掘っては埋め、掘っては埋めしながら採掘用の溝は周辺にどんどん移動して行くのだが、この際に表土をこちらからあちらへと運ぶのがコンベアブリッジである。写真の左側から右に伸びる長い橋のようなものがそれだ。なぜF60という名前がついているかというと、ここで実際に採掘が行われていたときの溝の深さが60mに達していたから。このコンベアブリッジは世界でも最大規模のものなのだが、実際に使われていたのはなんとわずか15ヶ月だったらしい。通常はコンベアの寿命は40年ほどだそうだが、F60が建設が始まったのはベルリンの壁が崩壊する直前の1989年で、このコンベアブリッジが導入された炭田は1992年に閉鎖されたため、ほとんど使われないままお払い箱になってしまったというわけ。しかし、全部で5台建設されたF60のうち残りの4台は現在も稼働中だ。

 

では、登ってみよう。見学は高いところが平気なら子どもでも大丈夫だが、ヘルメットは必ず着用しなければならない。

コンベアブリッジの上まで登ったら、橋を歩いて先端まで行く。足場の網は目が細かく、左右の柵も結構な高さがあるので怖さは感じなかった。ところどころで立ち止まってガイドさんの説明を聞きながら進んで行く。

途中で後ろを振り返ったところ。このコンベアベルトで表土を運んでいたんだね。

渡っているときには歩くのに忙しくて周辺を眺める余裕があまりなく、先端についてようやく景色を眺めた。

ラウジッツ地方の露天掘り褐炭採掘場の多くは現在、人工湖になっている。このあたりは「ラウジッツ湖水地方(Lauziter Seenland)  」と呼ばれ、リゾート地として開発が進められているのだ。観光を新たな産業にすることで褐炭産業の衰退による人口の減少に歯止めをかけ、地域を活性化させることが狙いだ。

左の地面にソーラーパネルが並び、向こうには風車が見える。リゾート開発だけでなく、褐炭による火力エネルギーから再生可能エネルギーへの転換も進められている。

湖周辺にはビーチ、ボートハーバー、キャンプ場などを整備していく計画で、2005年からは湖での遊泳も解禁となった。(でも、湖水は今のところPH3.2と結構な酸性だそう、、、) また、湖面には宿泊施設としてハウスボートを浮かべる計画である。ハウスボートと言われても日本ではあまりピンと来ないかもしれないけれど、ドイツでは水上で宿泊できるハウスボートが人気で、エネルギー自給自足のハウスボートの開発も進んでいるのだ。

こうした再開発プロジェクトは地域に経済的メリットをもたらすと期待されているが、実はもう一つ大きな意義がある。それは環境保護としての側面だ。褐炭の大規模な採掘でこの地方の自然はすっかり破壊されてしまった。しかし、そのような環境にも「絶滅が危惧される動植物の繁殖地」としてのメリットがあるのだという。人がいなくなった場所には野生が戻って来る。実際、渡り鳥やオオカミなどが多く観察されるようになっており、自然保護団体、Naturschutzverbund Deutschland(通称NABU)が中心となって自然保護プロジェクトを次々と立ち上げているようだ。これについてはまた改めで掘り下げてみたいと思った。

さて、再び橋を渡って地上に降りよう。

晴天とはいえ、1月の寒空の下、90分歩いたらすっかり手が冷たくなってしまった。でも、すごく面白かったので大満足。

 

 

イースター休暇も過ぎたというのに、相変わらず寒い日が続いていたが、日曜は春らしい天気になった。このチャンスを逃してはもったいない。晴れている日には野外観光スポットのリストから目的地を選ぶことにしている。今回は、ベルリン東部、Rüdersdorfにある北ドイツ最大の露天掘り石灰鉱山に隣接した野外ミュージアムMuseumpark Rüdersdorfを訪れることにした。

 

 

結論から言ってしまうが、この野外ミュージアムはかなり楽しめる!しかも、万人向けである。というのも、内容が盛りだくさんなのだ。

 

13世紀から稼働している石灰石の露天掘り鉱山と、隣接する17ヘクタールの公園は「欧州産業遺産の道」上の観光スポットの一つ。過去に紹介したブランデンブルク産業博物館もこの観光ルート上にある。

公園内では焼成炉を中心に、多くの石灰岩採掘・加工・運搬施設が見学できる。

 

この鉱山では13世紀の初めより採掘が行われていたが、生石灰が生産されるようになったのは17世紀に入ってからのことである。19世紀初頭に、温度調整の可能な画期的な石灰窯が建設された。この窯は発明者のRumford氏にちなんでRumfordofenと呼ばれている。

 

窯の内部も見学できる。お城の中のようで、ちょっとワクワクする。

 

窯の内部はかつて、鉱山労働者の住居としても使われていた。当時の労働者の生活の様子を伺い知ることができる。

 

竪窯(シャフトキルン)と呼ばれる石灰窯。

 

 

公園内にはポニーなどに触れ合うことのできる小さな動物園もあり、また、いろいろなタイプのクレーン車が設置されたクレーンパーク区画もあるので、子どももたっぷり楽しめると思う。

 

 

ガイドツアーに参加すれば、鉱山施設の歴史を詳しく知ることができる。しかし、この野外ミュージアムの目玉はなんといっても、露天掘り場をジープで1時間かけて回るツアーだ。もちろん、私たちはジープツアーに参加した。運転手兼ガイドさんが鉱山についての詳しい説明をしてくれる。

 

広大な採掘場。

 

 

 

よく見ると石灰岩の地層の厚さがまちまちなのだが、それはその地層年代の気温の違いから来るものだという。暖かいとそれだけ生物が繁殖するので、堆積物の量が多くなり、層が厚くなる。

 

と、ここまでたいした説明もせずに写真だけ貼ってしまったが、それには理由がある。このミュージアムには、さらに見所があるのだ。

 

というのも、このミュージアムは産業遺産であるだけでなく、同時にジオパークでもある。氷河の移動が終わった後、このあたりにはエンドモレーンと呼ばれる土砂の山が形成された。このため、Rüdersdorfは非常に重要な地質学研究のフィールドなのである。上述のジープツアーの他、化石掘りツアーにも参加することもできる。ガイドに「化石が見つかる確率って、どのくらいなんですか?」と聞くと、「100%ですよ」という返事が返って来た。

 

ミュージアム敷地内には岩石資料館があり、地質学的説明や岩石や化石お展示を見ることができる。これがかなり面白かった。この資料館を見るだけでもここに来る価値があると思う。

 

 

うまく写真が撮れなくて残念。

 

岩石資料館の前には氷河によって運ばれて来た様々な迷子石が展示されている。

 

マニアックなものが好きな人はもちろん、産業遺産にも化石にも興味ないよ!という人でも、ただ公園内を普通に散策するだけでも楽しいはず。週末や祝日には様々なイベントもやっていて、家族レジャーにも最適と、満足度の高い観光スポットだ。