前回の記事ではバルト海沿岸の港町ロストックを訪れたことについて書いたが、そこから東に約75kmのシュトラールズントへ移動した。シュトラールズントはUNESCO歴史遺産に登録されている美しい町だ。

でも今回は時間が限られているので町歩きはなしで、前回来たときに見られなかった博物館に集中したい。目当てはドイツ海洋博物館(Meeresmuseum)と水族館(Ozeaneum)だ。どちらを先に見ようか。事前にリサーチしたところ、Ozeaneumの方が新しく大規模でビジュアル性が高そうだが、私にはどちらかというと海洋博物館の方が気に入りそうな気がする。今は夏休み中なので、きっとOzeaneumは家族連れで混んでいるだろうと思ったので、まずは海洋博物館を見ることにした。

ドイツ海洋博物館はカタリーナ教会の中にある

展示室に入ってすぐのスペースには海底地形についての説明があり、その裏にはこのような海洋生物の進化図パネルが設置されている。うん、この博物館は思った通り、私好みだ。ベタな展示だけど、こういうわかりやすいのはやっぱりいいなあ。他に大型アンモナイトの展示コーナーやサンゴのショーケースなどが並び、

1階奥には美しい海中世界のディスプレー。

クジラとイルカの骨格展示室。これはたまらない空間だ。博物館として使うことを目的に建設された建物もいいけど、このように古い建造物を利用した博物館も味があってよい。

天井から吊り下げられている全長15メートルの骨格はナガスジクジラのもの。

左からナガスジクジラのペニス、大動脈弓、気管

2階では主にドイツの漁業史を展示している。今まで漁業には特に関心がなかったのだけれど、先日休暇で行ったパナマで持続可能な漁法で採れた魚のみを出すレストランで食事をする機会があり、オーナーの方から漁法に関する話を少し聞いてきたところなので(記事はこちら)、この展示は面白かった。バルト海沿岸で人は石器時代から魚を獲って食べていた。もちろん、最初は原始的な方法で。写真の細長いカゴはこの地域でウナギを採るために比較的最近まで使われていた伝統的な道具。

古代から魚を食べていたとはいえ、第二次世界大戦まではバルト海における漁業は小規模で、沿岸漁業に限られていた。戦後の東ドイツ(DDR)では食糧確保のため、ロストックおよびリューゲン島のザスニッツに遠洋漁業のための人民公社が設けられ、バルト海の漁業は急激に規模を拡大していった。

ロストックの漁業コンビナートの漁師募集ポスター
ドイツの漁船が獲る主な魚
DDRの漁業研究船Ernst Haeckel
1980年代に使われていたDDRの大型漁船Atlantik-Supertrawler号の模型

3階には人間と海の関わりについて、そしてバルト海の生き物について展示されている。

1965年にシュトラールズント近くの海岸で捕獲されたオサガメ

海の資源コーナーのマンガン団塊。魚の骨やサメの歯などの物体の周りに海水中の金属が凝結してできた塊で、水面下3500〜6500メートルの深さの海底にこのような塊がジャガイモのようにゴロゴロと転がっている。テニスボールくらいの大きさに成長するのに500万年くらいかかるらしい。凝結するのは主にマンガンと鉄だが、銅やコバルト、モリブデン、リチウム、レアアースなども含むため、有望な資源として注目されている。

この博物館の展示の中で一番びっくりしたのはこれ。海底の熱水噴出孔、ブラックスモーカーの実物だって!2013年にインド洋の3296メートルの深さのところで採掘されたものだそう。ブラックスモーカーって採掘できるんだね。

海洋博物館は水族館としても楽しめる。この日は全体的にそれほど混んでいなかったので、落ち着いて見られて良かった。