全32ページのこの冊子、基本的にはレシピ集だが、最初に漁業についてのかなり詳しい説明が載っている。ナチ党は食糧政策の一環として”Eßt mehr Fische(もっと魚を食べよう)”というスローガンを掲げ、肉よりも魚を食べるように国民を誘導していたようだ。畜産は大量の穀物飼料を要するので食糧自給率を下げるには肉食を減らす必要があったのだろう。といっても、一般主婦は魚にそれほど馴染みがなく、どこでどの魚を買ってどう調理したら良いかわからない。そこで、魚は自然の恵みであり、水揚げ量は季節や天候に左右されることや、それぞれの種類の魚がどのように捕獲されるのかなどを説明している。細かい字でびっしり6ページも!
エーリッヒ・オーザーのイラストには馴染みがあったが、実はこの時までオーザーの名前を知らなかった。プラウエン旧市街にあるフォークトラント博物館(Vogtlandmuseum)へ行ったところ、入り口がエーリッヒ・オーザー・ハウスの入り口も兼ねていて、有名なコミック「Vater und Sohn(父と息子)」やグッズが並べられていたので、「あ、これはよく見かけるあのコミック、、」と、そこで初めてエーリッヒ・オーザーが誰なのかに気がついたのだ。
3階建ての資料館にはコミック「Vater und Sohn」(日本では「おとうさんとぼく」のタイトルで岩波少年文庫から出版されている)を中心に、オーザーのイラストや関連資料などが展示されている。半年ごとに展示物を入れ替え、これまで公表されていなかった遺品も目にすることができるそうだ。
「Vater und Sohn」の初版
「Vater und Sohn」はナチスが政権を掌握した翌年の1934年に誕生した。風刺画でナチスを批判したために職業停止処分を受けていたオーザーがe.o.plauenのペンネームで描くことを許され、Berliner Illustrierte Zeitungに連載されていたコミックである。当時、模範とされた権威的な父親像からは程遠い、遊び心のある父親と素直なお利口さんではなく、ちょっとやんちゃな息子が織りなすユーモラスで温かい日常は、ナチス政権下の重く息苦しい時代に人々の心を明るくした。
ほのぼのとした絵の中でも特に上の6コマ漫画にはほろりとさせられた。わかるなあ、この父親の気持ち。
筋金入りの反ナチスだったオーザーだったが、「Vater und Sohn」の爆発的人気をナチスは見逃さなかった。「父と息子」のキャラクターはナチスが慈善募金活動として展開した冬季救済運動のイメージキャラクターに起用される。さらに、宣伝相ゲッペルスは戦争プロパガンダ紙”Das Reich”に敵国の風刺画を描くようオーザーに要求した。大人気イラストレーターとしての栄光の裏でオーザーは苦悩し、精神の安定を失っていく。作家ハンス・ファラダによると、意に添わぬ仕事を余儀なくされながらも、オーザーは反ユダヤのイラストだけは決して描かなかったという。
壮絶な最期とともに短い人生を終えたオーザー。しかし、彼のイラストは国境を越え、時代を超えて愛され続けている。「Vater und Sohn」の連載当時はキャラクターのおもちゃや雑貨が作られるなどの大旋風が巻き起こった。Vater und Sohnのぬいぐるみと共にホロコーストを生き延びたユダヤ人の子どももいたという。
とても心に残る展示だった。余韻の中、資料館を出たが、資料館の中だけでなく、プラウエン の町は「Vater und Sohn」でいっぱいだった。メインストリートのBahnhofsstraßeからオーザーの資料館までのルートのあちこちに「Vater und Sohn」の等身大フィギュアが設置されているのだ。
狂信的な愛国主義者ヤーンは単なる体操の指導者としてではなく、国民運動のカリスマ指導者として力を得ていった。落ち着きがなく喧嘩っ早かったが、非常に雄弁で、説得力ある演説で若者を引きつける才能に長けていた。1816年、著書「Die Deutsche Turnkunst(ドイツの体操術) 」を発表し、ヤーンの名声は頂点に達する。
今回は1931年にライプツィヒで出版された古生物学の本、”Das Leben der Urwelt(原始時代の生き物)”を紹介しよう。アンティークショップの店内をなんとなく見ているとき、変色した布製のハードカバーに恐竜のイラストが描かれているのに惹かれて手に取った。著者はヴィルヘルム・ベルシェ(Wilhelm Bölsche)。専門家向けではなく一般書のようである。1931年といえば日本では昭和6年。その時代のドイツで読まれていた古生物学の本とはどんなものなのだろうか。
著者ヴィルヘルム・ベルシェ(1861 – 1939)は自然科学を自ら専門的に学んだことはなかったが、作家として科学をポピュラーにするのに大いに貢献した人物のようだ。自然科学の読み物を数多くしたためただけでなく、ドイツの生涯学習機関Volkshochschuleの創始者でもあった。Volkshochschule(直訳すると「市民大学」)はある程度の規模の町には必ずあるカルチャーセンターのような機関で、手頃な受講料でいろいろなことが学べる。私もスペイン語を習ったりなど、よく利用しているのだけど、Volkshochschuleは今年、ちょうど創立100周年を迎えたらしい。その記念すべき年に創始者の著書に遭遇したということになる。ベルシェはドイツ古生物学会の発足時からのメンバーでもあり、古生物学には特に造詣が深かったらしい。古生物に関する本をたくさん書いている。この”Das Leben der Urwelt”はベルシェの晩年の作品なので、長年に渡って蓄積してきた彼の知識の集大成だったのかもしれない。
イクチオサウルスの頭蓋骨ベルンハルト・ハウフ博士(Dr. Bernhard Hauff)。過去記事で紹介した南ドイツ、ホルツマーデンにある凄い化石博物館、Urweltmuseum Hauffの設立者だ。(過去記事はこちら)フランクフルト、ゼンケンベルク博物館所蔵のトラコドンのミイラ(左ページ)とメガロサウルスから逃げる草食恐竜イグアノドン(右ベージ)。ゼンケンベルク博物館に関する過去記事はこちら。20世紀前半のティラノサウルス・レックス想像図。ティラノサウルスの骨格標本はベルリン自然史博物館で見られる。関連過去記事はこちら。
中を見てみよう。表紙裏にはホテルの設備を表すアイコンとその説明一覧表が載っている。ガイドブックのタイトルは「Hotelführer Deutsche Demokratische Republik(ドイツ民主共和国ホテルガイド)」とそのまんま。DDR時代、国民はどこでも好きなところへ旅行ができたわけではなかった。観光が可能だったのは国内とDDRと友好関係にあった他の社会主義国のみだった。
何のお知らせだろう?と思ってよく見ると、”neue werbung(新しい広告)”という文字。「新しい広告」の広告、いや、お知らせ?。ちょっとよく意味がわからない。そしてそのすぐ下には Fachzeitschrift für Theorie und Praxis der sozialistische Werbung(社会主義的広告の理論と実践のための専門誌)と書いてある。ううむ、、、、。
前回、Wittenbergeへ行ったら1字違いのWittenbergへも行きたくなった。ザクセン=アンハルト州のWittenbergは宗教改革家マルティン・ルターが教鞭を執った大学があることで有名な町である。でも、今回私が目指したのは宗教とは関係のない博物館、Haus der Geschichte。1920年代から東西ドイツが再統一するまでの東ドイツの生活文化を展示した博物館だ。
https://chikatravel.com/wp-content/uploads/2019/08/DSC_0341.jpg13332000Chikahttps://chikatravel.com/wp-content/uploads/2020/10/chika_logo_black-d-2.pngChika2019-08-22 22:21:342020-03-16 14:45:52部屋に見るDDRの生活文化史 〜 Lutherstadt WittenbergのHaus der Geschichte
「この写真は私の従姉妹の結婚式の写真ですよ。このレースの帽子は式を挙げた後のパーティで従姉妹が被ったの。ほら、女性が結婚することを “unter die Haube kommen(被り物を被る)”と今でも言うでしょう?昔は既婚女性は髪を被り物で覆わなければならなかったの。それからこの湯たんぽ。コップを入れるところがついていて、飲み物を保温できるの。便利でしょ?」
おおーっ。ヘリコプター!(実はヘリコプター好き)これはソ連のカモフ設計局が開発した多目的ヘリコプターKamov Ka 26。1966年から 1985年にかけて850台が製造された。
これは言わずと知れた東ドイツのトラバント。何も書いてないのではっきりわからないけど、P60かなあ?
ツヴィッカウ工場のステッカーが貼ってあるこれは特定できなかった。ご存知の方がいたら教えてください
ちなみに博物館名のHans Gradeは、1879年に旧東プロイセンのコシャリンに生まれの空港パイオニア。ベルリンのシャルロッテンブルク工科大で学び、自動車および航空機メーカーGrade Motor Werkeを設立した。軍用飛行場のあったこのBorkheideに拠点を移し、軍用飛行機を修理及び自動車の生産を行なった。
https://chikatravel.com/wp-content/uploads/2019/08/DSC_0353.jpg13332000Chikahttps://chikatravel.com/wp-content/uploads/2020/10/chika_logo_black-d-2.pngChika2019-08-08 18:40:092019-11-26 10:51:35穴場発見!旧共産圏の航空機が展示されているBorkheideのHans Grade Museum
ミュージアムショップに”Geheimnisvolle Sauärierfährten aus der fränkischen Trias – Wer hat hier seine Spuren hinterlassen?(フランケン地方の三畳紀地層に見られる絶滅古生物の足跡の謎 〜 痕跡を残したのは誰?)”というタイトルの付いた小冊子があったので手に取った。2013年2月1日から12月31日までニュルンベルク自然史博物館で開催された同名の特別展の資料として発行された冊子で、図表やカラーイラストを多く含んだ31ページで構成されている。