過去旅風景リバイバル、米国編。今回スポットを当てるのは、カリフォルニア州デスバレー国立公園北部にあるメスキートフラット砂丘(Mesquete Flat Sand Dunes)。カリフォルニア州北東部のマンモスレイクス(Mammoth Lakes)からネバダ州ラス・ベガスへ移動する途中に見た風景である。

真夏だったので、デスバレーは迂回した方がいいのではないかと思った。なにしろ、デスバレーは世界で最も暑い場所の一つで、56.7℃という世界最高気温を叩き出している。水をたっぷり積んで走るにしても、途中で車がエンコするかもしれない。外に出て灼けた地面を歩いたら靴底が溶けたという体験談も聞いていた。でも、「デスバレー(Death Valley)」という言葉の響きにはやっぱり興味をそそられる。一目見たかった。夫も、迂回すると遠いから、やっぱりデスバレーを突っ切って行こうと言う。一番暑い時間帯に当たらないようにと、早めに出発することにした。

ところが、家族が朝、なかなか起きないので出発が遅れ、途中でマンザナーにあるかつての日本人強制収容所を見学していたらあっという間に時間が過ぎて、午後になってしまった。オーエンズ湖の東側を通り、州道190号線に入ってしばらく走るとデスバレーに突入する。

車を停めて、少し歩いてみる。暑いが、まだこの時点では耐えられないほどではない。

 

さらに190号線沿いを進むと、メスキート・フラット砂丘と呼ばれる砂丘地帯に到達した。駐車場があったので、休憩することにした。

恐る恐る、車のドアを開けて外に出る。うわぁ、暑い!まるでドライヤーの熱風を全身に浴びているかのよう。砂丘の奥に向かって、少しだけ歩いてみる。

眩い光にクラクラしながら眺める風景は、なんだか現実感がなく、不思議だった。

デスバレーは広大なモハーヴェ砂漠の北に位置している。砂漠なんだから砂丘があって当たり前な感じがするが、実際にはそうではなく、砂漠には砂砂漠の他に土砂漠、岩石砂漠、礫砂漠などいろんな種類がある。この一帯は山脈に挟まれていて、風上にある山が侵食を受けて砂が運ばれて来るが、風下にある山がバリアとなって砂がそれ以上飛ばされず、この一帯に溜まることで砂丘となった。デスバレーは「バレー」という名の示す通り谷で、一番低いところは海面下マイナス86mととても低い。北西から南北に伸びるデスバレーの真ん中には活断層がある。その断層が水平方向にずれて谷底が広がり、中央部が沈下していったからそんなに低いのそうだ。(参考: 渡邉克晃「美しすぎる地学辞典」)

砂の上を歩いていたのは10分ほどだったろうか。圧倒的で魅力ある風景だけれど、暑くてとてもじゃないけれどこれ以上は外にいられない。急いで車に乗り込み、出発した。

そこから先の景色も凄かった。もう車は降りず、車の窓ガラス越しに撮ったのでのでぼんやりとしているけれど、ネバダ州へ抜けるには、こんな山を越えていく。

冬が観光シーズンの米国最大の国立公園、デスバレー。このときは夏だったので、サッと通り過ぎてしまったけれど、「アーチストパレット」や「サブリスキーポイント」など、驚異的な風景の宝庫だから、いつかまた行くチャンスがあったらトレッキングしてみたいなあ。