2013年の米国旅行の際に印象深かった風景を思い出しながら綴る「過去旅風景リバイバル 米国編」。これまで7回にわたって主にアリゾナの風景について記して来たが、今回が最終回である。最後の風景はアリゾナ州とユタ州にまたがるモニュメントバレー(Monument valley)。
ユタ州からモニュメントバレーに向かってハイウェイ163を南下すると、映画「フォレスト・ガンプ」でフォレストが一直線の道を走ったシーンの撮影場を通過することで有名だ。私たちはアリゾナ州側から北上したので、残念ながらフォレスト・ガンプ・ポイントは通過しなかった。モニュメントバレーはその6に書いたアンテロープ・キャニオン同様にナバホ族の居留地である。ハイウェイ163をナバホ・ウェルカムセンター(Navajo Welcome Center)のところで降りて右折し、モニュメント・バレー・ロード沿いにあるビジターセンターに向かった。
ビジターセンターの展望台からは赤い砂岩の3つのビュート(残丘)が見える。名称は左からそれぞれウェスト・ミトン・ビュート(West Mitten Butte)、イースト・ミトン・ビュート(East Mitten Butte)、そしてメリック・ビュート(Merrick Butte)。左の二つはミトンように見えるからミトンビュートと名付けられた。それにしても、西部劇の舞台が現実にあるんだね。ただひたすら驚き、圧倒される。
ビュートというのは、岩山が川による侵食を受ける際、上部にある硬い地層が蓋となって(キャップロック)その下の柔らかい地層を侵食から守ることでできる。ビュートの末広がりの下部は泥が固まってできたオルガン・ロック頁岩(Organ Rock Shale)で、その上に垂直にde Chelly Sandstoneという砂岩が乗っている。キャップロックの部分はShinarump Conglomerateと呼ばれる礫岩だ。
これらビュートの独特な形状がモニュメントのようだから、この一帯はモニュメント・バレーと呼ばれているわけだけれど、ナバホ族はこの地域をシンプルに「岩の谷」と呼ぶそうだ。この風景もアリゾナの他の多くの風景と同様に、堆積→隆起→侵食というプロセスが生み出している。侵食が進んでモニュメントのようなビュートが残ったこの景色はグランドキャニオンやレッド・ロック国立公園の遠い未来の姿ということだろうか。乾燥していて植物がほとんど生えていないからこそ、そうした自然の作用をこんなにも直接的に感じることができる。
それにしても米国の風景はスケールが違う。3週間に渡るこの米国旅行では今回まとめた「過去旅風景リバイバル」で取り上げなかった他のたくさんの場所を訪れた。それぞれ面白かったけれど、旅を終えて8年半が経過した今、振り返ると、特に心に残っているのは驚異的な自然風景ばかりだ。もちろん、都市は都市で興味深いのだけれど、スケールの大きな自然風景に身を置いたときの感動と驚きは、より深く記憶に刻まれるような気がする。私の場合は、だけどね。
さて、「過去旅風景リバイバル」の米国編はこれで一旦おしまい。米国だけでなく、過去に旅した他の国についても、おいおい記憶を辿って記していこう。