過去旅風景リバイバル、米国編その6は前回に引き続き、アリゾナ州北部にあるアンテロープ・キャニオン(Antelope Canyon)。「キャニオン」という名の通り峡谷で、動物の「レイヨウ」を意味する「アンテロープ」は、かつて、この峡谷をエダツノレイヨウの群れが移動していたことによるらしい。砂岩などの柔らかい堆積岩が水の流れによって侵食されてできた狭いV字型の渓谷で、そのような峡谷はスロットキャニオンと呼ばれる。赤い砂岩の地層を川が削り取ってできた細い渓谷に光が差し込むと、岩肌の縞模様が独特な神秘的な風景をつくり出す。
アンテロープ・キャニオンは先住民ナバホ族(Navajo)の居留地「ナバホ・ネイション」内にあり、自由にアクセスすることはできない。最寄りの町、ページ(Page)でガイドツアーに申し込む必要があった。アンテロープ・キャニオンは「アッパー・アンテロープ・キャニオン」と「ローワー・アンテロープ・キャニオン」に分かれていて、私たちが参加したのは「アッパー・アンテロープ・キャニオン」のツアーだ。
公園の入り口でナバホ族のガイドさんと一緒に数名づつトラックに乗り込んで渓谷まで行く。移動時間はそう長くなかったはずだが、ガイドさんが事前に「地面が凸凹なので、移動中、かなり揺れますよ」と言っていた通り、すごく揺れてまるで波乗りのような状態だったので、途中の景色を写真に撮ることは無理だった。GoogleMapの航空写真で見ると、渓谷の入り口あたりはこんな感じである。
分厚い砂岩の地層に割れ目ができているのが見える。ナバホ砂岩層と呼ばれる、砂丘が固まってできたこの地層は、およそ1億8000万年前に形成された。一帯は見ての通り、カラッカラの乾燥地だけれど、夏期には雨が降ることがある。集中豪雨が発生すると、雨水が鉄砲水となって細い谷間を流れる。勢いよく流れる水で地層が少しづつ侵食されてできたのが、このアンテロープ・キャニオンなのである。
赤い砂岩の地層にできた割れ目。岩肌には細かい縞模様ができている。ナバホ族にとっての聖地であるこの峡谷内部をガイドさんが案内してくれた。中は薄暗く、ところによってはすごく狭い。
岩壁は複雑で滑らかな曲線を描いていて、上から差し込む太陽の光が陰影を作り、とても美しい。光の入り具合によって色が変わるので、刻々と変化する岩のマジックをずっと眺めていたら、さぞかし感動的なことだろう。でも、ここに鉄砲水が流れ込んで来たらと想像すると怖くて、とても長居する気にはなれないのだった。
以下、当時使っていた古いコンデジで撮ったものなので、アンテロープ・キャニオンの美しさを十分に捉えられたとは言えないけれど、写真を何枚か。それにしても、自然の造形って本当に面白い。