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ケニア・サファリ旅行⑦ ヘルズゲート国立公園でサイクリング
ナイバシャ湖のすぐ南にはヘルズゲート国立公園(Hell´s Gate National Park)という小規模の国立公園がある。
1984年に設立された「地獄の入り口(ヘルズゲート)」という怖い名前のこの国立公園は、東アフリカ大地溝帯(グレート・リフト・バレー) の一部を成し、火山活動によって形成された渓谷や岩の絶壁 が特徴である。これまで回って来た国立公園や保護区では基本的にサファリカーに乗ったままの観光だったが、ヘルズゲート国立公園は大型肉食動物が少ないので(いないわけではない!)、徒歩やサイクリングでも回ることができる。運動不足の日が続いていたので、サイクリングをすることにした。サルマックヴィレッジのヘルズゲート国立公園通り(Road to Hell´s Gate National Park)にある貸し自転車ショップで自転車を借りると、エルザ・ゲートまでは貸し自転車ショップのスタッフがバイクで自転車を運んでくれる。
エルザゲート
あらかじめルーカスさんがサイクリングツアーを手配してくれており、ここでもガイドさんがついた。でも、ここでのサイクリングにはガイドは特に必要ないと思う。
サイクリングにしゅっぱーつ。
ゴージロード(Gorge Road)と名付けられた道路を8km走り、ヘルズゲート渓谷(Hell´s Gate Gorge)を目指す。道路の左右には赤い岩壁が続き、晴れ渡った青空とのコントラストが素晴らしい。
岩は火山活動による玄武岩で、溶岩流の冷却によってできた柱状節理が水の侵食や風化によって露出し、荒々しい景観を作り出している。赤みがかっているのは酸化鉄(Fe₂O₃)を含むため。
道路の砂利には黒曜石が含まれていて、ところどころキラキラ光っていた。
サイクリングルートは片道8km 。道路のコンディションはそう悪くなく、傾斜も緩やかなのだけれど、古い安物の貸し自転車なので全然スピードが出ない。 途中、何ヶ所か自転車を降りてガイドさんの説明を聞くこともあり、たった8kmに1時間近くかかった。
さて、ヘルズゲートには、火山の噴火によって形成されたタワー状の岩がいくつかあり、見どころとなっている。その一つが、フィッシャーズ・タワー(Fischer’s Tower)だ。
フィッシャーズタワー。発見者のドイツ人、フィッシャーにちなんで名付けられた。
高さ25mのこの岩は過去の大規模な火山噴火による溶岩の固まりで、周囲の地層が侵食され、硬い部分だけが残ってこのようなタワー状になった。
ロッククライマーにも人気。
岩のうえにロックハイラックス(Procavia capensis),がいた。
公園内のもう一つの有名な岩の塔、セントラル・タワー(Central Tower)
ヘルズゲート国立公園は、ハゲワシや猛禽類の生息地としても有名だ。
「あの岩の白っぽくなっているところにハゲワシの巣がありますよ」とガイドさんに言われ、目を凝らした。遠くてよく見えないので双眼鏡を目に当てる。
何羽かのアフリカハゲワシ(Rüppell’s Griffon Vulture, Gyps rueppelli) とおぼしき鳥が見えた。生まれたてのヒナというより、もうだいぶ大きくなっているようだ。
火山活動が活発なヘルズゲートは ケニア最大の地熱発電所 があるエリアで、地熱で温められた間欠泉や温泉 があり、地面のあちこちから蒸気が噴き出している。地熱エネルギーはナイロビなどの都市へ供給されている。
渓谷、ヘルズゲート・ゴージの入り口まで行ったら、自転車を停めてキャニオンウォーク。
ヘルズゲート・ゴージは、火山の噴火による堆積物(火山灰・軽石・火砕流)と、その後の侵食作用 で形成された渓谷だ。数十万年前~数千年前の大規模な火山噴火(主にロンゴノート山)で分厚く降り積もった火山灰や軽石(テフラ)から成る地層が水や風、そして地熱によって侵食を受けてできた。
火山灰の層には過去の噴火の記録が刻まれている。
この滝の水は実はお湯で、温泉水である。
この渓谷は映画『トゥームレイダー2』(2003年)のロケ地として使われたそう。
渓谷は奥に進むにつれ、狭くなっている。雨季には鉄砲水が発生することがあり、とても危険だ。2019年に観光客とガイドが突然の豪雨による鉄砲水に巻き込まれて亡くなるという事故があり、現在、危険なエリアにはロープが貼られ、一番奥まで行くことはできない。
ヘルズゲート国立公園はナイロビからのアクセスも良く、サファリ以外のアウトドアアクティビティを楽しめる場所として人気が高い。
ケニア・サファリ旅行⑥ カバだらけのナイヴァシャ湖でボートサファリ
素晴らしい体験ができたサンブル国立保護区を後にし、次に向かったのは、巨大な大地の裂け目、東アフリカグレート・リフト・バレー(大地溝帯) に位置する淡水湖、ナイヴァシャ湖(Lake Naivasha)だ。
ナイヴァシャ湖は首都ナイロビの北西約90km、標高約 1,884m にあり、ケニアで最も高い場所にある湖のひとつ。気候は赤道直下にしては涼しく、輸出用の花の栽培が盛んである。湖沿いにはたくさんのビニールハウスが並んでいた。
予定されていたここでのアクティビティはボートサファリである。ナイヴァシャ湖は水鳥の楽園 として有名で、約 400種以上の鳥類 が記録されているのだ。1995年にラムサール条約湿地に登録されている。
ボートに乗り込んだ。サンブルの暑い空気と比べると、とても爽やかだ。
湖の浅瀬にたくさんの枯れ木があるのが目に付く。ナイヴァシャ湖の水位は変動しやすく、2020年には過去50年間で最も水位が上昇し、湖の面積は154㎢から193㎢へと大きく拡大したという。つまり、枯れ木の立っているところは、数年前までは陸だったのだ。「ナイヴァシャ」とはマサイ語で「大きな、動きのある水」を意味するらしい。
いくつかのリゾート施設も水没してしまっている。ひゃー。
ナイヴァシャ湖は、リフトバレーが形成される過程で火山活動と地殻変動 によってできた盆地に水が溜まって形成された。特徴的なのは、出口がないのに淡水湖であることだ。出口のない湖は蒸発によって塩分が濃縮されて塩湖になるのが通常だが、ナイヴァシャ湖は地下水や湿地を通じて水が流出しているので、淡水湖のまま 保たれているのだという。湖とその周辺には多様な生態系が発達し、鳥類だけでなくさまざまな生き物が生息している。
たとえば、カバ。ナイヴァシャ湖には1500頭ものカバが生息し、湖の象徴的な動物とされているらしい。サファリカーに乗ったままライオンを間近で見ても怖いとは感じなかったが、カバだらけの湖でボートに乗るのはさすがに怖いものがある。なんといってもカバは体重1.5〜3トンもあるし、縄張り意識がすごく強くて攻撃的だという。ケニアにおける野生動物による死亡事故はカバとの遭遇によるものが一番多いそうだ。もちろん、ガイドさんはカバの習性を熟知しており、危険な距離まで近づいたりはしないだろうけれど、、、。
びっくりしたのは、浅瀬の水の中に立って魚釣りをしている人たちがたくさんいたことだ。カバが怖くないのだろうか?と思って観察していたら、しばらく後、なんらかの合図のようなものがあり、急にみんな岸に上がって走り去った。ボートサファリのガイドさんによると、「彼らがやっているのは違法なんです。ライセンスを持っていなければ漁業はできません。今、取り締まりの警察が来たので、急いで逃げたんですよ」とのことだ。ほとんどの人は上手く逃げたが、何人か逃げ遅れた人がいて、岸に上がるのは諦め、泳いで岸から離れようとしている。なんてこと。カバに気をつけてー。
すっかりカバに気を取られてしまったが、目的は野鳥。ボートサファリ中、いろいろな野鳥が観察できた。
カワウ (Great cormorant, Phalacrocorax carbo)。近くの木に大きなコロニーを作っていた。
魚を捕まえたヒメヤマセミ (Pied Kingfisher, Ceryle rudis)
モモイロペリカン (Great white pelican ,Pelecanus onocrotalus) 目の前でど迫力。
アフリカトキコウ (Yellow-billed Stork, Mycteria ibis)
キエリボタンインコ (Yellow-collored lovebird, Agapornis personatus)
ハダダトキ (Hadada ibis, Bostrychia hagedash)
さっきの違法な漁師の人から買った魚をガイドさんがボートから湖面へ放り投げると、すぐにサンショクウミワシ(African Fish Eagle, Haliaeetus vocifer)が取りに来た。
写真を撮れなかったけれど、他にもたくさんの野鳥を見ることができた。
さて、岸の方に目をやると、岸辺の水面にはホテイアオイ(Water hyacinth, Pontederia crassipes)がびっしり。 涼しげで綺麗だなと思ったけれど世界の侵略的外来種ワースト100の一つなんだってね。ここナイヴァシャ湖でも問題になっているらしい。
ウォーターバックがホテイアオイの葉をムシャムシャ食べていた。ウォーターバックは平気で水の中に入るからウォーターバックというのだと教えてもらった。ライオンなどの捕食者が接近したときに、サッと水の中に逃げる。でも、水の中にはカバがいるんじゃ?肉食のライオンと違って草食のカバは、縄張りに侵入して怒らせない限り大丈夫ということなのだろうか?とにかく、ナイヴァシャ湖付近にはウォーターバックがたくさんいてホテイアオイを食べてくれている。増殖のスピードの方が速そうだけれど。
ボートを降りた後は、別のガイドさんと一緒に湖の周りを歩き、陸の動物を観察した。ケニアではとにかく、何をするにもガイドさんをつけるように言われる。いろいろ説明してくれるのはありがたいけれど、その都度チップをお渡しするので、チリも積もればでそれなりの出費になる。
ウォーターバックのボス
ガイドさんによると、強いオスは水辺の良い場所に縄張りを持ち、メスの群れを引き寄せる。しかし、ずっとボス(territorial bull)でいられるわけではなく、チャレンジャーの他のオスが闘いを挑んで来ることがある。闘いに敗れるとボスは交代し、負けた元ボスは群れの外に追いやられるのだという。
「ウォーターバックの鼻のかたちはハート形なんですよ」と言われてよく見ると、
ほんとだ!かわいい。
バッファローもたくさんいた。レクリエーション客が普通に歩く場所なのに、危ない生き物たちが普通にいるなあ。
地面のあちこちに大きな穴が空いていた。「イボイノシシがシロアリ掘り出して食べるんです」
これはカバの寝ぐら。糞でマーキングしてある。昼間は水の中にいるカバたちは、日が暮れると岸に上がって来る。のっそりしてそうな体型だけれど、陸に上がると意外とすごいスピードで歩く動くらしいのだ。
カバの足跡があった。4本の指の跡がくっきり。ナイバシャ湖の湖畔にはロッジが並んでいる。夜間にロッジの敷地を出て、湖の周りをウロウロするのは危険だ。サファリガイドさんの言うことを聞かずに勝手に出かけた観光客がカバに襲われて亡くなったケースがあるらしい。おお、こわこわ。ほんと、カバには気をつけよう。
ケニア・サファリ旅行⑤ ライオンの授乳シーンに感動
サンブル地域でしか見られない珍しい動物、「サンブル・スペシャル5」をしっかり見ることができ、来た甲斐があったと感じるサンブル国立公園(Samburu National Reserve)でのサファリ(厳密には隣接するバッファロースプリングス国立保護区)Buffalosprings National Reserve)だったが、実はさらに素晴らしい体験ができた。アンボセリ国立公園では遠目に姿を認めただけのライオンを間近にじっくりと観察することができたのだ!
サンブルには2泊したので、1日目は夕方のサファリ、2日目は早朝からの終日サファリができた。1日目に前述のサンブル・スペシャル5を見て大満足し、そろそろロッジに戻る時間かなと思ったとき、無線で他のサファリガイドとスワヒリ語でコミュニケーションを取っていたルーカスさんが、「ちょっと遠いですが、面白そうなものが見られそうな場所があるようなので、行ってみましょう」と言う。保護区の中は当然ながら住所などはないので、「〇〇のところまで行ったら右に曲がって、△△のところで左の道に入って、300mくらいのところで云々、、、」などとお互いに説明し合うのだろう。移動中、ルーカスさんはずっと仲間のガイドとやり取りを続けていた。スワヒリ語はわからないが、ときどき「シンバ」と言っているのだけは聞き取れた。
シンバ、、、、もしかして、ライオン?ワクワクしながら、凸凹道に揺れるサファリカーの枠につかまり、窓の外に目を凝らす。
30分は経っただろうか。日が沈みかけた頃、前方に何台かのジープが止まっているのが見えた。あそこにライオンが?
車を横付けし、エンジンを切ると、一台のジープの運転手が茂みを指差して小さな声で言う。「あそこにライオンの赤ちゃんがいますよ」「え、どこどこ?」
双眼鏡で覗くと、いた!
全部で何匹いるんだろう、他の2匹は倒木の上でじゃれあっている。
赤ちゃんライオンの側にはメスライオンも潜んでいると思われるが、よく見えない。「きっと近くにオスもいますよ。あの辺かな?」とルーカスさんが少し離れた場所の茂みを指差した。すると、、、。
出て来た!!私たちのいる道路に向かって歩いて来る。
えっ?まさかのトイレタイム。
そして、なんとおすライオンがもう1匹姿を現した。
「兄弟ライオンです。」「一つの群れに複数のオスがいることもあるんですか?」「そういうこともありますよ。兄弟が協力すれば、広い縄張りを守るのに有利なんです」「メスはどちらとも交尾するんでしょうか?」「はい。でも、どちらと交尾をするか、決める決定権はメスにあります」
すぐ目の前に強そうなオスライオンが2頭も現れ、圧倒されてしまう。なんだか現実のこととは思えない。言葉もなく、しばらく眺めていたらいよいよ日が暮れて来た。「そろそろロッジに戻りましょうか。きっと、赤ちゃんライオンが隠れているあの木の下は今夜の彼らの寝ぐらですよ。明日の朝、ここに戻って来ましょう」。ルーカスさんはそう言ってエンジンをかけた。
翌朝。
サファリカーに乗り込んだ私たちは、真っ先にライオンの寝ぐら付近へと向かった。すると、近くの原っぱに赤ちゃんライオンを連れたメスたちが歩いているのが見えた。
おお!!
赤ちゃんがたくさん!そして、赤ちゃんたちは一斉にニャオニャオと鳴き始めた。
「あの子たち、お腹が空いていますよ」。そっか、お腹が空いて鳴いているのね。
日陰に戻ったメスライオンたちは地面に体を横たえた。
お乳を求めておしくらまんじゅうの赤ちゃんたち
満腹になってゴキゲンの赤ちゃんたち
近くではお父さんが見張っている。
ああ、なんて素晴らしい光景だろう。この後のサファリで他にもいろんな動物を目にしたが、ライオンの授乳風景が目に焼き付いて離れず、それ以外のものがかすんでしまうほどの感動的な体験だった。
サンブル国立保護区はアンボセリ国立公園やマサイマラ国立公園ほど有名ではないが、その分、観光客がそれほど多くなく、ゆっくりと動物たちを観察できるのがとても良い。そして、野趣あふれる景観と、そこでしか見られない希少な動物に遭遇するチャンスがあるという意味でも素晴らしい場所だと思う。すっかりお気に入りの保護区になった。
ケニア・サファリ旅行④ 独特な動物の見られる美しいサンブル国立保護区 その1
ケニアで訪れた3つ目の生物保護区、サンブル生物保護区(Samburu National Reserve)は、前日に滞在したオルペジェタ生物保護区(Ol Pejeta Conservancy)から、ケニアの地理的中心とされるイシオロ(Isiolo)の町を通過し、北東に150kmほど移動したところにある。イシオロの町には、服装からムスリムとわかる人がとても多かった。サンブル族、ボラナ族、トゥルカナ族、ソマリ族などの民族が暮らしているが、特にムスリムのソマリ系の住民が多く、また、ナイロビと北部の都市を結ぶ交通の要所で、エチオピアやソマリア方面との交易の拠点でもあることから、イスラム文化が根付いているらしい。
ケニア山周辺の緑多い景色から一転して、窓から眺める景色は乾燥した大地となり、民家もまばらになっていった。ルーカスさんによると、朝晩は気温が下がり比較的過ごしやすいケニア南部と比べ、ケニア北部は反砂漠気候でとても暑いとのこと。
サンブル国立保護区は行政区画サンブル郡にあり、隣接するイシオロ郡のバッファロースプリングス国立保護区(Buffalo Springs National Reserve)とシャバ国立保護区(Shaba National Reserve)と共に、総面積およそ600㎢の繋がりのある生態系を形成している。「サンブル」という名前はこの地域に古くから住んでいるサンブル族に由来する。サンブル族は、マサイ族と近い関係を持つナイル系の牧畜民族で、伝統的に牛やヤギ、羊を飼いながら半遊牧生活をしている。文化や言語もマサイ族に似ている。サンブル生物保護区の特徴は、野趣溢れる美しい景色と、「サンブル・スペシャル・ファイブ」と呼ばれる独特な野生動物だ。
サンブル・スペシャル・ファイブとは、
さて、果たしてこれらを見ることはできるだろうか。
サンブル国立保護区の方が知られているのでタイトルにはサンブル国立保護区と書いたが、実は私たちが滞在したのロッジはエワソ・ニーロ川(Ewaso Ng’iro River)を挟んで南側にあるバッファロースプリングス国立保護区内にあった。生態系も生息する動物も川の北側と南側で変わりないが、運営が違うので両方でサファリをする場合には入場料が2倍かかってしまう。そういう事情で、私たちがサファリを楽しんだのはバッファロースプリングス国立保護区である。
エワソ・ニーロ川沿いに立つロッジのベランダからの眺めは素晴らしかった。ヒヒの群れが水浴びをしに川へと向かっている。
プールからはゾウの家族がゆっくりと歩く姿を眺めることができた。夢のよう。
ロッジの敷地内にはジリスやコビトマングースがいた。
ジリス (Ground squirrel)
コビトマングース (common dwarf mongoose, Helogale parvula)
今回のケニアでのサファリ旅行を通じて少し残念だったのは、観光客が自由に歩けるのは基本的にフェンスに囲まれたロッジの敷地内だけなこと。サファリでは車に乗っているだけなので運動不足になってしまうし、自然の中を散歩したいという欲求があった。でも、町ならともかく、生物保護区には危険な生き物がたくさんいるのだからしかたがない。
さて、いよいよサファリの時間である。
バッファロースプリングス国立保護区。
早速、見つけた!
これが赤道以北でしか見られない、グレビーシマウマ (Gravy´s zebra, Equus grevyi)。確かにシマが細かくて、見ていると目が回りそう。お腹の部分には模様がなく、白い。
オリックスの群れがいた。向こうに見えるのはアミメキリン?
ベイサオリックス (East African Oryx, Oryx beisa)
真っ直ぐ伸びた長いツノ、前脚には黒い帯模様。顔はかなり牛っぽい。
赤ちゃんオリックスもいた。
お母さんが来て、体をきれいにしてくれた。
アミメキリン (Reticulated giraffe, Giraffa reticulata)
トゲトゲのアカシア上手にしごいての葉っぱだけ取って食べている。
ケガして治った跡?
こちらはゲレヌク (Gerenuk, Litocranius walleri)の親子。ほんと、首が長い。
そして、スペシャル5の5つ目は、ソマリダチョウ (Somali Ostrich, Struthio molybdophanes)。
「ダチョウ」と付くけどダチョウではなく、ダチョウ属に属する別の主だそう。
オス
メス
ここでしか見られないスペシャル5、あっさり全部見れてしまった!が、バッファロースプリングスで見られるのはこれらにとどまらない。翌日のサファリではさらなる感動が待っていたのである。
その2に続く。
ケニア・サファリ旅行③ 地球上に残る最後のキタシロサイが見られる、オル・ペジェタ生物保護区
1日半、アンボセリ国立公園でのサファリを楽しんだ後は、ケニア中央部にあるオル・ペジェタ生物保護区(Ol Pejeta Conservancy)へと向かう。移動に8時間近くかかるので、早朝6時に出発である。ロッジの朝食は6時からなので、朝ごはんを食べている時間はない。ガイドのルーカスさんが車の中で食べられるようにとコーヒーや朝食を箱詰めしたものを手配してくれていた。
ナイロビを通過し、ケニア山の西側山麓を回って北上した。残念ながら車の中からは写真が撮れなかったが、山頂の尖ったケニア山とその周辺の青々した森林風景はとても美しい。山麓の剥き出しになった土壌はこれ以上あり得ないと思うほど赤い。かつて活発な火山だったケニア山の周囲には火山噴出物が豊富に堆積し、それが長年にわたって風化し、酸化鉄(Fe₂O₃)を多く含む赤土が形成された。このような土壌はラテライト(latelite)、日本語では紅土と呼ばれ、高温多湿な環境で形成されやすい。ケニア山の麓は比較的雨が多く、化学風化が進みやすい環境であるらしい。
ナニュキ(Nanyki)という町で幹線道路を降りて、さらに14km。道路のコンディションが悪く、だんだん移動に嫌気が差してきた頃、ようやく宿に到着。ロッジはオルペジェタ生物保護区のゲートの目の前にあった。ランチを食べて少し休憩の後、保護区内に入った。
オルペジェタ保護区のゲート内の管理棟
オルペジェタは国立公園ではなく、国際NGOであるFauna & Flora Internationalが管理する保護区(Conservancy)だ。総面積は360km2とアンボセリ国立公園に匹敵し、ビックファイブを始めとする多様な野生動物が生息している。この保護区について特筆すべきは、絶滅の恐れのある種の保護に力を入れていることで、虐待や違法取引から救助されたチンパンジーたちや地球上に残る最後の2頭のキタシロサイを保護している。
この保護区ではサファリカーによるドライブサファリの他にもブッシュウォークやナイトサファリ、犬を使ったアニマルトラッキングなどいろいろな面白そうなアクティビティが提供されている。しかし、私たちは翌朝には次の目的地に向かって出発することになっていたので、保護区内を楽しむ時間は残念ながらこの日の午後の2時間ほどしかなかった。チンパンジーの保護センター(Chimpanzee Sanctuary)が16:30に閉まってしまうので、先にそちらに行きましょうとルーカスさんに提案されて、まずはそちらを見学することにした。
Chimpanzee Sanctuary
案内してくれたレンジャーさんの説明によると、この施設はケニアで唯一のチンパンジーの保護施設で、密猟や虐待から救助されたチンパンジーが適切な環境で回復し、社会性を取り戻せるように支援している。チンパンジーたちはフェンスで囲まれた広い敷地で群れを作り、専門家によるケアを受けながら自然に近い生活を送っている。ビジターはフェンス越しにチンパンジーの生活の様子を観察することができる、、、、のだけれど、私たちが行ったとき、ちょうどチンパンジーの食事どきに当たっていて、大部分のチンパンジーは敷地の奥へ移動していた。かろうじて3匹がフェンス付近にいたが、私たちの姿を見るとサッといなくなってしまった。レンジャーさんは「あの子たちは、目の前で親を殺されるという壮絶な体験をしたのでそれが強いトラウマになっていて、人間が嫌いなのです」と説明してくれた。そして、「あれはチンパンジーたちの宿舎です。夜はあの中に入って寝るんです」と広大の敷地の向こうにある建物を指した。「自然に近い生活をしているのに、チンパンジーたちは建物の中で寝るんですか?」と質問したら、「人間にペットとして飼われていたチンパンジーは幼少期から家の中で寝ていたので、屋外で寝るのに体が慣れていないんです。外で寝ると風邪をひいたり、酷いときには肺炎になってしまうこともあります。だから、建物の中で寝かせています」とのことだった。
サンクチュアリーの入り口付近には展示小屋があり、チンパンジーとその保護についての説明がある。ジェーン・グドールの写真も。
サンクチュアリーで保護されているチンパンジーたち。
残念ながら私たちはチンパンジーの姿はよく見られなかったが、事前に予約をすれば敷地内に入って餌やりの様子を見学することができるそうだ。忠志、1日に最大6名までに限定されており、見学には60ドルかかる。
チンパンジーの保護施設を見学した後は、サイを見に行く。保護区内にはシロサイ(white rhinoceros, Ceratotherium simum)、クロサイ(black rhinoceros, Diceros bicornis) 、そして前述の2頭のキタシロサイ(northern white rhinoceros, Ceratotherium simum cottoni)がいる。
シロサイ
シロサイは保護区内に130頭ほどいるそうだ。大きくて、身近で見るとすごい迫力がある。恐竜のトリケラトプスを思い浮かべてしまう。でも、トリケラトプスはサイの倍以上の大きさで、哺乳類であるサイの先祖ではないのだよね。種類の全く違う生き物が似た特徴を持つようになることを収斂進化といい、トリケラトプスとサイはまさに収斂進化によって似たよう見た目になったらしいが、なんだか不思議だなあ。
ナイロビの国立博物館に展示されているシロサイ(右)とクロサイ(左)の頭蓋骨。ツノはシロサイの方が長い。
シロサイはドイツ語でBreitmaulnashorn(「口の広いサイ」)と呼ばれるよう、口の幅が広くて四角い。それに対し、クロサイはSpitzmaulnashorn(直訳すると「口の尖ったサイ」)と呼ばれ、口の幅が狭くて尖っている。シロサイ、クロサイと言うけれど体の色は関係なく、シロサイが口の幅がwide(アフリカの言葉でwijde)なサイと呼ばれていたのをwhiteと勘違いして広まってしまったらしい。では、クロサイの方は?
保護区にはバラカ(Baraka)という名前の盲目のクロサイが保護されている。
クロサイのバラカ
完全に失明しているが、自分の名前はわかるそうで、レンジャーさんが「バラカ、バラカ」と呼ぶとゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。フェンス越しに餌をあげさせてもらった。バラカというのは「神から祝福されている」という意味だそう。
バラカの背中に乗った鳥
サイやゾウなど、野生の動物の体にはその動物と共生関係にある野鳥が乗っているのをよく見かける。バラカにはツキノワテリムク (superb starling, Lamprotornis superbus)とアカハシウシツツキ(Rred-billed oxpecker, Buphagus erythrorynchus)がくっついていた。これらはサイの体についた寄生虫などを食べることでサイから利益を得ている一方で、ライオンなどサイを捕食する動物が近づくと警戒の鳴き声を上げてサイを危険から守っている。
さて、オルペジェタ保護区内の最大の目玉はキタシロサイだ。キタシロサイは特に1970年代から1990年代にかけて、中央アフリカの内戦や武装勢力の活動と絡んで、密猟が急増した。サイの角が漢方薬に使われ、高額で売買されているのは周知の通り。また、キタシロサイの主な生息地である中央アフリカのサバンナや森林が、人間の開発によって大きく縮小したことも原因である。2008年に野生での個体は確認されなくなり、事実上の野生絶滅が宣言された。地球上の最後のオス「スーダン」はここ、オルペジェタ保護区で保護されていたが、2018年に死亡し、ついにキタシロサイは生殖可能な個体がいない状態となってしまった。現在、スーダンの娘と孫娘である2頭、NajinとFatuが保護されている。スーダンの精子は冷凍保存されており、人工授精による復活が試みられているが、現時点では成功していない。つまり、キタシロサイは地球上、ここでしか見られない。
キタシロサイのNajin?それともFatu?
なのに、ああ〜。時間が押せ押せで、遠目にチラッとその姿を拝んだだけで保護区を出なければならないことになってしまった。なんとも無念。保護区内には保護活動について学べるMorani Information Centerもあるが、寄る時間はなかった。
いろいろと心残りのある訪問となったけれど、ゲートに戻る道中、アンボセリ国立公園では目にしなかったいくつかの動物が見られたので、よしとしよう。
ハーテビースト (Hartebeest, Alcelaphus buselaphus)
ウォーターバック(Waterbuck, Kobus ellipsiprymnus)
オルペジェタ生物保護区は、もしまたケニアに行くことがあれば、優先的に再訪したい場所の一つだ。
この記事の参考サイト&文献:
オルペジェタ生物保護区のウェブサイト
ドイツ語ガイドブック Reise Know-How Verlag, “Kenia – Reiseführer für individuelles Entdecken”
ナショナルジオグラック記事 最後の2頭となったキタシロサイ、「脱絶滅」技術で救えるか
ケニア・サファリ旅行② アンボセリ国立公園
前回の記事に書いたように、今回のケニアでのサファリ旅行の行程は現地のサファリ会社、Meektrails Safariに組んでもらった。ナイロビ到着が夜遅くだったので、到着日は空港近くのホテルに泊まり、翌日の早朝にスタッフにピックアップしてもらい、清算を済ませたらドライバー兼サファリガイドのルーカスさんと最初の目的地、アンボセリ国立公園(Amboseli National Park)に向けて出発した。
アンボセリ国立公園は、ケニア南部、タンザニアとの国境近くに位置する国立公園で、タンザニアに位置するキリマンジャロ山をバックに野生動物が見られることで知られている。ナイロビからの距離は240km なので2、3時間で着くかと思ったら、ケニアは道路のコンディションが良くないので、4時間半ほどかかった。でも、アンボセリ国立公園までの道は良い方。エリアによっては相当凸凹な場所も少なくないので、車酔いしやすい人にはキツイかな。酔い止めを持参するのをお忘れなく。
国立公園や生物保護区以外の場所でも野生動物の姿は見られる。写真はナイロビからアンボセリ国立公園へ行く途中に車の中から撮ったもの。シマウマやキリンが普通に道路を横断したりする。
まずは公園近くのロッジにチェックインし、昼食を取ってしばらく休憩。ロッジの敷地内にも、いろいろな生き物がいて楽しい。
シママングース (Banded Mongoose, Mungos mungo)
ロックハイラックスの仲間Bush Hyrax, Heterohyrax brucei
サバンナモンキー (Vervet monkey, Chlorocebus pygerythrus)
さて、少し休憩したらガイドのルーカスさんと共に私たちの初のサファリ(英語ではgame driveと言う)となる午後のサファリに出発だ。
このキマナゲートから入園し、この夕方と翌日の二日間、たっぷりとサファリを楽しむことになる。
標高約1,150mにあるアンボセリ国立公園は、1974年に設立され、1991年からは生物圏保護区に指定されている。面積392㎢の公園内には乾燥した平原、湿地、アカシア林、塩類平原などの多様な環境があり、多様な生き物が生息している。
特に個体数が多いのはレイヨウ(Antelope)で、いろんな種を目にした。
トムソンガゼル (Thomson´s Gazelle, Gazella thomsonii) 側面にクッキリとして焦茶のラインがあるのが特徴。
グランドガゼル (Grant`s Gazelle, Nanger granti) トムソンガゼルよりも大きい。
インパラ (Impala, Aepyceros melampus)。トムソンガゼルやグラントガゼルと違い、メスにはツノがない。
ディクディク (Kirk-Dikdik、Madoqua kirkii) 小さくて目がパッチリで可愛い
オグロヌー (Wildebeest, Connochaetes taurinus) これはメスかな?
もちろん、キリンもいる。キリンは動物園では見慣れた生き物だけれど、草原をゆっくりと移動する姿は本当に優雅で見惚れてしまう。それにしても、つくづく不思議なかたちをした生き物だ、と感じる。
アンボセリ公園で見られるのはマサイキリン (Masai Giraffe, Giraffa tippelskirchi) 。体の模様がギザギザしていて、その他の部分も黄色っぽい。
グラントシマウマ (Grant´s zebra, Equus quagga) 体型はロバに近い。子どものシマウマはシマシマが茶色っぽい。
砂浴びをする子どものアフリカゾウ (African Elephant, Loxodonta africana)
個体数およそ1,600頭と推定されるゾウは公園内の至るところで見られるが、特にオル・トカイ湿地(Ol Tukai Swamp)では水浴びをする姿が見られてとてもよかった。
水辺にはカバ (Hippopotamus, Hippopotamus amphibius)の姿も。昼間はこうして水場でグダグダしてるが、実は意外に活発で、かなり凶暴らしい。
サバンナヒヒ (Olive, Baboon, Papio anubis)の家族
そして、なんと草むらを歩くライオンの姿も見られて大感激。
こんなにたくさんの野生動物が見られるなんて、期待以上である。哺乳類の他に野鳥もたくさん見たのだけれど、野鳥については別記事でまとめたい。
国立公園ではサファリ客がサファリカーから降りることは禁じられており、サファリカーに乗ったまま、窓またはポップアップした屋根の下から動物を観察するのが原則だ。しかし、一部の特定の場所またはエリアでは車を降りてピクニックをしたり、歩いたりできる。
オブザベーションヒル(Noomotio Observation Hill)の下でサファリカーを降りて、丘を登る。遊歩道の途中には立て看板がいくつかあり、アンボセリ公園の地質やアフリカの最高峰キリマンジャロ山などについての説明を読むことができる。しかし、雲が多かったため、アンボセリ国立公園のウリである肝心のキリマンジャロ山の姿は拝むことができなかった。ちょっと残念だけれど、これだけたくさんの野生動物が見られたのだから、まあ、いいか。
丘の上から公園を見渡す。
大満足してサファリを終え、ロッジに戻ろうとしたところ、出口付近の道路脇からゾウが出て来た。至近距離で大迫力。このゾウはアンボセリ国立公園で最も年長のオスゾウだそう。恒例だからか、丸太を乗り越えるのに苦労しているように見えた。