アイフェル地方へ行って来た。今回から数回に渡って書く記事は「まにあっくドイツ観光火山編」である。ドイツと聞いて火山を思い浮かべる人は少ないかもしれないが、ドイツにも火山はあるのだ。ノルトライン=ヴェストファーレン州南西部からラインラント=プファルツ州北西部に広がる山地、アイフェル地方には「ドイツ火山街道」という全長約280kmに及ぶ観光ルートがある。夏の最後の旅行として、火山街道のおよそ西半分に当たるUNESCOグローバルジオパーク、火山アイフェル(Vulkaneifel)に4泊滞在した。

火山アイフェルで是非とも見たかったのはこの地方に点在するマール湖だ。マールとは火山地形の一つで、上昇マグマが地下水と接触して水蒸気爆発を起こし、周囲の岩石を吹き飛ばすことでできた漏斗状の空洞である。この空洞に水が溜まると湖ができる。まん丸な湖を縁取るように森が広がっているので「アイフェルの目」と呼ばれることも多い。観光ポスターなどで目にして、その神秘的な美しさに憧れていたのだ。

アイフェル地方には75ほどのマール湖があるとされるが、その大部分は干上がっていて、現在、常に水に満たされているマール湖は10ほど。そのうちのダウナー・マーレ (Dauner Maare)と呼ばれるマール群は、ダウン市周辺に数キロメートルづつ離れて存在する。今回、私たちはダウンのマール群の一つ、シャルケンメーレナー・マール(Schalkenmehrener Maar)のほとりにある村、シャルケンメール村を拠点に動くことにした。目標はできるだけたくさんのマール湖を見ること。

では早速、マール湖はしごツアーに出発!

まずはシャルケンメーレナー・マール。湖の向こう側に見えるのがシャルケンメーレン村。アイフェル地方は世界的にも有名(らしい)なスレートの産地なので、この地方のほとんどの建物の屋根はスレート葺きである。シルバーグレーのスレートは真っ白な壁に映え、すっきりと美しい。

反対側から見たところ。湖面がレンズのようで綺麗。ダウンのマール群はおよそ2〜3万年前、最後の氷河期に形成された。湖の向こう側、右上のあたりに円形の平らなスペースが見える。実はシャルケンメーレナー・マールは双子のマールで、片方は干上がり、もう片方のみに水が残っているのでこのような地形になっている。

次はお隣のヴァインフェルダー・マール (Weinfelder Maar)へ。

こちらはよりマール湖らしく、周囲が盛り上がっている。爆発の際に飛び出した噴出物(テフラ)が堆積してドーナツ状の低い丘を形成したのだ。

丘がはっきりわかるね。

マール湖の水はとても透き通っている。私の住むブランデンブルク州には氷河湖が数え切れないほどあり、そのほとんどで泳げるが、アイフェルのマールはとても深く水も冷たいので、泳げるのは特定の場所に限定されている。ちなみにこのヴァインフェルダー・マールの中心部の深さはなんと51メートルもある。

ダウン周辺の3つ目のマールはグミュンデナー・マール (Gmündener Maar)。山の上にある塔、ドロンケ塔(Dronketurm)から見下ろすことができる。

ドロンケ塔

向こうのところどころに見える盛り上がりは火山。これまで持っていた火山のイメージとはだいぶ違うけれど、、、。

ドロンけ塔の側には「マールブランコ」なるものがあり、グミュンデナー・マールを見下ろしながらブランコが漕げる。もちろん、乗ったよ。

さて、ダウンから南下し、次はギレンフェルト(Gillenfeld)のマール群に属するプルファー・マール (Pulvermaar)へ 。

このマールの側のキャンプ場で地質学者による岩石講座をやっていたので参加した。それについては別の記事で書くことにするが、岩石だけでなくマールの成り立ちについても講義してもらい、とても面白かった。日本語版ウィキペディアのマールのページにはマールは「通常は1回だけの噴火で形成され(単成火山)」と書いてあるのだけど、地元の学者先生によるとアイフェルのマールは短期間に30〜40回の爆発を繰り返しながら形成されたそうだ。

お次はマンダーシャイト(Manderscheid)市近くにあるメルフェルダー・マール (Meerfelder Maar)。

日没にさしかかっていたので、こんな写真が撮れた。このマールができたのは約8万年前。周辺に遊歩道があり、泳げる場所もある。

メルフェルダー・マールとは対照的に最も最近形成されたのはウルメン(Ulmen)市にあるウルメナー・マール (Ulmener Maar)。形成時期は約1万900年前。地質学的な時間スケールで考えるとごく最近生まれたマール湖ってことになるかな。

このマールはそれほどまん丸ではないので、見た目のマールらしさが薄い。(ちょっと不満)

でも、やっぱり綺麗。

今回、3日間で7つのマールを回ることができた。どのマールもそれぞれ美しいが、最も気に入ったのはこれから紹介するホルツマール (Holzmaar)だ。このマールの素晴らしさといったら!!

息を呑む素晴らしさで感動!(伝わらなかったら私の下手な写真のせいです。すみません)しばらくウットリとして佇んでいたが、夫が「ドローンで上から写真撮ろう」と言うので、ドローンを飛ばせる場所を探すことに。ドイツはドローン規制が厳しく、マール湖の真上及びその周辺は自然保護区に指定されているため飛ばすことができないが、少し離れた駐車場からドローンを上げて斜めに見下ろすように撮影することができた。

これ、これこそが私が憧れていたマールの姿。森に縁取られた深いブルーの湖水が本当に美しい。

動画も撮ったので見てみてね。

幸いお天気にも恵まれ、たくさんのマール湖を回ることができ、大満足である。しかし、アイフェルの魅力はマールだけではなかった。次回の記事からはマール以外のアイフェルの素晴らしさを紹介していこう。