Googleマイマップを使った「まにあっくドイツ観光マップ作りプロジェクト」。第一弾は「ドイツ考古学スポットマップ」、第二弾は「ドイツ自然史博物館マップ」だった。第三弾として今回は「ドイツ植物園・植物関連施設マップ」を作った。

マップのサブカテゴリーは「植物園」「ハーブ園」「バラ園」「日本庭園」「その他の植物関連施設」とした。

植物園だけを表示したところ。ドイツの植物園の大半は各地の大学の付属施設で、各州の大学都市にはほぼ必ず植物園がある。花のアイコンは庭園タイプの植物園で木のアイコンは樹木園などのパークタイプと一応分けたけれど、厳密ではない。(分けるのが難しいので、、、、)

これはハーブ園マップ。薬草学は中世に修道院で発達した(修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの薬草学が有名)ので、ハーブ園は修道院との関連性が高い。ほぼ全ての修道院がハーブ園を持っていると思われるが、ごく小さいものまで入れると膨大な数になるのでとりあえず主要なハーブ園を反映している。

これはバラ園。いくつかあるが、バート・ナウハイムのバラ園はドイツ最古、ザンガーハウゼンのバラ園は世界最大らしい。どちらもまだ行ったことがないので、行ってみたい。

日本庭園マップ。庭園はまた別のカテゴリーなのでこのマップには含めなかったのだが(お城の庭園などを含めると尋常ではないので)、例外的に日本庭園のみ入れた。まだまだあると思うので見つけたら随時追加していく。ちなみにアイコンが赤くなっているのはうちの近所の日本庭園、「Japanischer Bonsaigarden Ferch」である。田舎にあるこじんまりとした庭園だけれど、本格的で日本茶や和菓子が楽しめる喫茶コーナーもある。桜や紅葉の時期はとても綺麗でまるで日本にいるかのようだ。

「その他の関連施設」には主に植物関連の博物館を反映した。

情報を集めていたらマニアックで面白そうなものがたくさんあって嬉しくなってしまった。私は植物に疎くて、まだ植物関連博物館はほんのいくつかしか行っていない。行ったことがあるのは、エアフルトにあるドイツ最古のサボテン園と、

ベルリンの「ヘンプ博物館」。特定の植物に特化した博物館は面白い。これから少しづつ行ってみようと思う。

「ドイツ植物園・植物関連施設マップ」はこちらのリンクから見られるように設定したので、植物の好きな方、よかったらどうぞ利用してください。

これまでに3つのマップを作成した「まにあっくドイツ観光マップ作りプロジェクト」、まだまだ続けていくつもり。「こんなマップが欲しい」というリクエストがあればTwitterで投げて頂ければ作るかもしれません。また、すでに作ったマップも更新して行くので、「こんなスポットもあるよ」というご指摘も歓迎です。

 

 

ここのところ、「まにあっくドイツ観光マップ」作りにすっかりハマっている。ドイツ全国にある観光スポットのテーマ別マップを作成しようという試みで、これまでに「ドイツ考古学スポットマップ」と「ドイツ自然史博物館マップ」を作った。第三弾として植物園・植物関連施設マップを作成中である。ドイツ全国にある植物園の他、植物に関する博物館や学習施設の情報を集めていたら、ふと以前訪れたベルリンのヘンプ博物館を思い出した。大麻に関する博物館で、この「まにあっくドイツ観光」ブログを始める前に行ったので記事化していなかった。でも、写真とメモはあるので思い出しつつ記事にしておこう。これが、なかなか面白い博物館なのである。

 

ヘンプ博物館入り口

ヘンプ(大麻)はマリファナなどの違法な嗜好品の原料にもなることからなんとなくタブー視されていて、植物としてのヘンプについて詳しく知っている人はあまりいないのではないか。私もよく知らなかった。ヘンプはその部位ごとに用途が異なる。花は医薬品原料や嗜好品として使われ、種からはオイルが採れる。茎の繊維はテキスタイルや断熱材、建材などに利用できる。産業革命による近代化以前、ヘンプは生活のあらゆる場所で使われていた。ヘンプから採れる繊維は縄や布の原料となり、オイルは食用や石鹸の原料として使われた。

館内に展示されているヘンプの苗

ヘンプを原料とする様々なもの

しかし、近代化にともなって多くの労働力を必要とする大麻の栽培は衰退して行った。また、戦後、学生運動が盛んになると嗜好品としてのマリファナ消費が広がり、その撲滅キャンペーンの流れの中で大麻は産業用も含め全面禁止された。

しかし、1990年代からエコロジカルな建材としてヘンプが再び見直されるようになる。ドイツでは1996年に規制が緩和され、一定の条件のもとで産業用ヘンプの栽培が許可されるようになった。とはいえ、栽培許可が得られるのは専業農家のみで、使用できる種も認証を受けたもの(薬理効果を持つ成分、テトラヒドロカンナビノール、THC濃度が0.2%以下の種類)に限られる。また、栽培が禁じられていた20年ほどの間に栽培技術の継承が途切れてしまったため、ノウハウを持つ農家がいない。ヘンプは丈夫で生育が早く、わりあいどこでも育つのであまり世話は必要ないらしいが、収穫はかなり大変で人手がかなり必要なことや、せっかく収穫しても加工業者がいないなど、ヘンプ栽培に踏み切るために農家が超えなければならないハードルは多いようだ。

 

ヘンプの食料としての利用

農作物としてヘンプを栽培する際にはもう一つ厄介な問題がある。茎から採れる繊維の質が最高の状態になるのは種が熟する8〜12日前なので、昔は収穫してからしばらく置いておき、種が熟すのを待っていた。しかしそれでは工程が多くて効率が悪い。現代では繊維を利用するか種からオイルを採るかのどちらかに特化しなければ採算が取れない状況である。今後、ヘンプ栽培を拡大していくためには、繊維と種の両方を同時に利用する方法の確率が必要だとのこと。

私がこの博物館を訪れたのは平日の昼間だったが、中学生グループが来ていた。展示を見ながらメモを取っていたので、「学校の課題?」と話しかけると、「はい、そうです」と返事が帰って来た。

展示の前半はヘンプの様々な用途や利用の歴史についてだったが、嗜好品としてのヘンプ消費(つまりマリファナ)についても少なくない情報が提示されている。

大麻文化を描いた絵のギャラリー

水パイプなど

この博物館は別に怪しい博物館ではなく、ヘンプという植物に関する総合的な情報が得られる場所なのだが、大麻の合法化を求めるデモ「Hanfparade」参加者の集いの場にもなっているそうで、博物館内に「合法化しようよ」という空気が漂っていないと言えば嘘になる。ちなみに、ドイツでは医療用は2017年に合法化された。

ミュージアムショップにはいろいろなヘンプグッズが売っている。もちろん、薬理作用を持つTHC成分を含まない合法な商品ばかりだ。

ヘンプに関する書籍もいろいろ

ヘンプコンドーム

せっかく来たから何か買っていこうと、いくつか選んでみた。買ったのはヘンプ茶、ヘンプチョコレート、ヘンプドリンク。(念のためもう一度言うけど、THC成分は入ってないので、摂取してもハイにはなりません)

ヘンプチョコレートは甘さ控えめで独特の食感で美味しい。ヘンプ茶はそれほど美味しくはなかったが、飲めないこともない。しかし、ヘンプドリンクは強烈な味だった!あまりにもまずくて、どうしても飲みきれなかった。

 

こないだの「ドイツ考古学スポットマップ」に引き続き、同じくGoogle My Mapsで今度は「ドイツ自然史博物館マップ」も作った。

どんな場所にも自然史があるので、自然史博物館は全国にわりあい満遍なくある。自然史博物館の絶対数が少ないのは人口密度が低い地域だ。

マップのコンセプトはほぼ考古学スポットマップ同様。カテゴリーはマップでは総合的な自然史博物館と特定分野に特化した展示を行なっている博物館や地域の自然学習センターの二つ。カテゴリーごとにも表示できる。赤いアイコンのスポットはすでに行ったことがある博物館で、クリックするとブログ記事リンクが表示される。

青いアイコンは私のまだ行ったことのない博物館だけれど、全てのスポットに簡単なコメントを入れた。自然史博物館もそれぞれ特色があり、その博物館でしか見られない展示物もあるので、展示の重点や見所を書き入れている。クラシカルな標本キャビネットが置かれた雰囲気のある博物館からインタラクティブで学際的な展示を行なっている新しい博物館までいろいろあるので、たくさん見ていけば「自然史博物館の歴史」にも触れられて面白いかもしれない。これまでに情報を得られた範囲でどの博物館にどんな恐竜の骨があるかもコメントとして入れた。恐竜についてはこれとは別に恐竜関連スポットに特化したマップも作る予定である。

メジャーな博物館はほぼ網羅している。地方の小さいけれど特色ある良い自然史博物館を発見したら随時アップデイトしていくつもり。

ドイツ自然史博物館マップはこちらからアクセスできます。

 

グーグルマップを眺めるのも好きだが、マップを作るのも好き。Google MyMapsを使ってよく自分用のマップを作成している。

行った場所や行きたい場所をグーグルマップに登録していくのも楽しいが、分野別のマニアックの地図があったら良いのではないかと思いつき、作ってみることにした。どんな分野でもいいのだけれど、とりあえず「まにあっくドイツ観光」の扱う観光分野で特にスポットが多く、全国に散らばっている考古学スポットの地図を作成した。名付けて「ドイツ考古学スポットマップ」。

アイコンのある場所が考古学関連のスポットのある場所。赤っぽいアイコンは行ったことのあるスポット。こうやって見ると、全国の考古学スポットはすごい数!まだ全然行ってないなあ。Google MyMapsでは複数レイヤーを作成してレイヤーごとに表示できるので、「考古学総合博物館」「ローマ関連遺跡・博物館」「リーメス(古代ローマとゲルマンの領土の境界線)」「ケルト・ヴァイキング・ゲルマン・スラブ関連」「エジプト関連」「古代ギリシア関連」「旧人類関連」「野外博物館」「その他の発掘地」にカテゴリー分けした。ローマ関連の野外博物館はどちらのカテゴリーに入れるか迷ったけれど、だいたいは野外博物館の方に分けた。

ローマ関連とリーメス関連だけを表示するとこんな感じ。当たり前だけれど、古代ローマとゲルマン人の領土の教会であるリーメスの南側の古代ローマの領土に集中している。

アイコンは「博物館」「歴史的建物」「鉱山」(← ローマ時代の炭鉱跡がいくつかある)と「ハイキングルート」の4種類を使っている。複数アイコンが使えないようなのが残念。野外博物館もしくはテーマパークのアイコンもあるとよかったのだが、、、。赤っぽいアイコンを押すと、私が書いた記事が表示されるようにリンクを貼った。

Google MyMapsではルート作成もできるのが便利。たとえば、ハノーファーからミュンスターまで行く途中に考古学スポットを拾って行きたければ、こんな感じになる。これは車で行く場合ね。

この地図を作るのに丸一日かかったけど、なかなか良いものになったと思う。観光スポットの情報は分散しているし、リストにまとめても場所をその度に確認しなければならないのは面倒だから、一目で位置関係がわかるのはかなり便利。田舎のごく小さな遺跡はとても網羅しきれないので完全なマップとは言えないけれど、既存の考古学博物館は大部分を登録したつもり。ときどきアップデイトして最適化していく。それにしても恐るべしドイツ考古学の世界!考古学者でも全て見ることは不可能であろう。

マッピング作業はかなり楽しかったので、これからいろんな種類のまにあっく観光マップを作って行こうと考えている。

 

この「ドイツ考古学スポットマップ」は以下のリンクからアクセスできます。

ドイツ考古学スポットマップ

 

 

このブログを見てくださった方からよく聞かれる。

ああいうマニアックな観光スポットをどうやって探しているのですか

メジャーな観光地ならガイドブックやインターネットの観光サイトに載っているけれど、マイナーなところはそもそも情報が少ないので、偶然人に教えてもらったりしなければなかなか見つけられないのでは?と思う人が多いようだ。

私はマイナーな観光スポットを見つけるのが趣味なので、日々、いろんな手段を使って新たなスポットの発掘に取り組んでいる。主にどんなことをしているかについて書いてみることにしよう。

 

グーグルマップの活用

グーグルマップを眺めるのが趣味兼日課で、行ったことのない場所をクリックし、そこに何があるかを見る。画像はポツダムの例。

「In der Nähe (日本語版では「周辺のスポット」)ボタンをクリックして「Museen(博物館)」と入れると、次のように情報が出て来る。

 

州や都市の公式サイトの観光ページや観光協会のサイトをチェック 

エアフルトのサイト

サイトにある情報を読んで面白そうなスポットがあったら、YouTubeで動画がないかを検索する。例えば、エアフルトのサイトにシナゴーグの情報があったので、動画検索してみた。

 

観光パンフレットの収集

ツーリストインフォメーションや各観光スポットに置いてある観光パンフレットの類をあるだけ貰って来る。田舎のマイナーな観光スポットのパンフレットは現地にしかないことが多い。聞いたこともないような小さな町や村にも結構面白いものがある。そういうスポットを発見したときは嬉しい。

まにあっくドイツ観光企画室の床

 

書店で観光ガイドブックをチェック

ドイツにはマニアックな観光ガイドがたくさんある。しかも、どんどん新しいものが出版される。

壁の棚にある本全部、ドイツ国内の観光ガイドブック

 

ミュージアムショップの書籍をチェック

マニアックな情報を得るのにとても重要!ミュージアムショップにはテーマ関連書がたくさん売っていて、類似スポットの情報が載っている。いろんな分野の本を幅広く読むと、行ってみたい観光スポットの種類が増えるので楽しいよ。

化石や岩石の本

 

Wikipediaの観光スポットリストをチェック

Wikipediaには分野別博物館リストがある。完全に網羅しているわけではないけれど、かなり使える。

Wikipedia: Liste deutscher Museen nach Themen

 

各分野の研究会、支援団体、同好会サイトをチェック

テーマごとの専門サイトは詳しい説明を含む観光情報が充実していて、とても有用だ。例えば化石発掘場所なら、こんなサイトをチェックしている。

Steinkern.de

 

人の話に耳をそばだてる

ドイツ人は旅行好きな人が多いので、「バカンスにはどこへ行った?」などと質問し、面白そうな情報はすぐにメモする。ドイツ人相手に限らず誰に対しても旅行好きであることを日頃から公言していると、いろんな人が「こんな場所があるらしいよ」と面白そうな場所を教えてくれる。実際、この「まにあっくドイツ観光」プロジェクトで行った場所の中には「こんな場所があって面白そうだから、行ってきたら?」と勧められて行った場所がいくつもあるのだ。

 

SNSで良い観光情報を流すアカウントをフォロー

集めたいと思う分野の情報を自分から発信すると、それに詳しい人がふぁぼってくれたりRTしてくれたりするので、その人のアカウントを見に行き、面白い情報を発信していたらフォローすると、観光のヒントになる情報が流れて来るようになる。大変便利。

 

こんな感じで情報収集し、行ってみたい場所に片っ端から行き、そこで得た情報をまとめて記事にして発信しているのが当ブログ。ネット時代の今は情報はいくらでもあるとはいえ、外国のマイナーな場所についての情報はやはり現地語によるものが圧倒的だ。ドイツの観光に関しては、ドイツ語が理解できると得られる情報量が膨大になる。英語の情報もたくさんあるけれど、現地語の情報量にはかなわない。日本語限定となると、すごく少なくなってしまう。

なので、ドイツ在住翻訳者としてのスキルを使って、これからもドイツのマニアックな観光情報を日本語で発信していきたいと思うので、記事のRTなどで応援して頂けたらとても嬉しいです!!

 

noteでも「まにあっくドイツ観光裏話」を音声で配信しています。

 

こちらの記事に書いたように、突然、私の心の中に「恐竜」が侵入して来た。恐竜の世界はいかにも奥が深そうで、ハマると大変なことになりそうだという懸念もあるが、少しくらい知っておいて損はないだろう。しかし、恐竜はいかんせん種類が多くてどこから手をつけていいかわからない。とりあえず身近な自然博物館にいる恐竜から見ていくことにしよう。

ということで、ベルリン自然博物館(Museum für Naturkunde Berlin)へGo!

ベルリン自然博物館(別名、フンボルト博物館)はドイツに数多くある自然博物館の中でも特にメジャーなので説明するまでもないかもしれないが、館内中央に有名な「恐竜の間」がある。

廊下から見た恐竜の間。どどーんと頭が廊下にはみ出しているのは、アロサウルス(Allosaurus fragilis)。ベルリン自然史博物館に展示されている数々の恐竜の骨は、ヴェルナー・ヤネンシュ率いるドイツの地質学・古生物学研究者チームが1903年から1913年にかけ、タンザニアのテンダグル化石産地のジュラ紀後期の地層から発掘したものである。この探検では合計250トンもの恐竜の骨が見つかっており、史上最も成功した恐竜発掘とされる。

アロサウルスは平均体重約2トン、前長8.55mの大型肉食竜脚類。ジュラ紀後期最大の捕食者だった。やたらと重そうに見える大きな頭だが、大きさのわりには骨はスカスカで軽い。この大きな口をガバッと開けて獲物を捉え、顎をガシャンと素速く閉めて歯で獲物を刺し殺した。

それに比べて小さくて可愛らしいこちらの恐竜はディサロトサウルス(Dysalotosaurus lettowvorbecki)。体重70kgと、私の夫より軽い。尻尾がもっと短ければ、家で飼ってもそれほど違和感ないかもしれない。ディサロトサウルスの骨は複数の固体のものがまとまって発見されたので、群れを作って生活していたと考えられるそう。

こちらはエラフロサウルス(Elaphrosaurus bambergi)。体重は250kgあったらしいけど、スレンダーな感じ。しかし、ディサロトサウルスと違って肉食である。テンダグル層で発掘された恐竜の化石の中では最も状態が良かった。腿が短くて脛が長い体型から、歩行スピード速かった(30-70km/h)と考えられている。

右のキリンのような骨格の恐竜は、ディプロドクス(Diplodocus carnegli)。体重12トン、体長27メートル。残念ながら、この写真の撮り方は失敗だった。なぜなら、ディプロドクスは長い首だけでなく、長い尾も特徴だから。ものすごく長い首と鞭のような尾が脚の前後にシーソーのようにほぼ水平に伸びた体勢が凄いので、それがわかるように撮るべきだった。それにしても、こんなに長い首、ずっと持ち上げていて疲れなかったのかなあ。ちなみにこの標本は1899年に米国で発掘されたもののコピーである。

じゃーん。こちらがベルリン自然史博物館の目玉、ブラキオサウルス。全身骨格標本では世界最大だそうだ。ブラキオサウルスの特徴は前肢が後肢よりも長く、肩が後ろに向かって傾斜していること。このような骨格のため高い木の上の方の葉っぱをうまく食べることができたそうだが、体重50トンで草食だなんて、生きるのに一体どれだけの量の植物を食べてたんだろう?

ブラキオサウルスの頭蓋骨。クシのような歯をしており、装飾の哺乳類のように葉っぱをムシャムシャ噛むことができなかったので、枝ごと折って丸呑みしていた。胃の中にある石が消化を助けていたという説があるらしい。

こちらの頭がなんとなくロバっぽいのは、ディクラエオサウルス(Dicraeosaurus hansemannni)。低いところの葉っぱを専門に食べていたそうだから、高いところ専門のブラキオサウルスとはうまく共存できていたのだろうか。

ケントロサウルス(Kentrosaurus aethiopicus)。ステゴサウルスの近縁だが、ステゴサウルスよりも小さい。背中の板にはいろいろな役割があり、仲間を識別したり異性にアピールするための道具であった他、空調設備の機能も果たしていたそう。

「恐竜の間」にある大型標本はこれだけ。でも、2015年からベルリン自然史博物館にはなんとティラノサウルス(Tyrannosaurus rex)の標本も展示されているのだ。

別室のティラノサウルス。彼の名はトリスタン・オットー(Tristan Otto)。2012年、米国モンタナ州Hell Creekの白亜紀の地層から発掘された。トリスタンの化石は当初、米国やカナダの各地の博物館にオファーされたが、プレパレーションに膨大なお金がかかることから、引き取り手が見つからなかった。バラバラにいろいろな人の手に渡る危機に瀕していたところを化石コレクター、ニールス・ニールセン氏が一括で買い取り、ベルリン自然史博物館に貸し出している。

ティラノサウルスの化石は世界でこれまでに合計50体発見されている。トリスタンの頭蓋骨は55個のうち50個が見つかっており、最も保存状態が良い。

写真では見えないが下顎の歯根に腫瘍があり、トリスタンは歯痛に悩まされていたらしい。気の毒に。推定年齢は20歳。

後ろから見たトリスタン。

この博物館にはもう何度も来ているけれど、恐竜をじっくり眺めたのは実は今回が初めてだった。良く見ると面白いものだ。こんなことなら、先日訪れたフランクフルトのゼンケンベルク自然博物館でもしっかり恐竜を見ればよかったとやや後悔、、、。ゼンケンベルクではメッセル・ピットから発掘された古生物化石の展示が面白すぎて、そちらに注意が集中していた(そのときの記事はこちら)。

今年ドイツで新しい恐竜に関する本が出版されたので、現在、読んでいる。読み始めたばかりだが、面白い。

Bernhard, Kegel    Ausgestorben , um zu bleiben: Dinosaurier und ihre Nachfahren

ちょうど今、「ジュラシック・ワールド」が上映中なので、週末にでも見に行こうっと。

 

ハルバーシュタットで訪れた3つ目のスポットは、旧市街にあるSchraube-Museum Wohnkultur Jahrtausendwendeだ。Schraubeというのは「ネジ」のこと。でも、この博物館はネジの博物館ではない。ハルバーシュタットの裕福な洗濯屋兼染物屋の娘に生まれたマルガレーテ・シュラウべ(Margarete Schraube)さんの家が家財道具ごと博物館になっている。博物館の中にはシュラウベさんの両親がそこで暮らしていた1900年頃の様子が再現されているという。

博物館は通りに直接面していなくて、この建物の中庭の奥にある。

この建物自体がすでにいい感じ

中庭

大きな木の向こう、右手の赤煉瓦の建物が博物館だ。この中庭はカフェのテラス席になっていて、とても素敵。座ってお茶を飲みたくなったけれど、それは後からにしてまずは展示、展示。

マルガレーテ・シュラウべさんは1980年までこの建物に住んでいたが、お子さんがいなかったため、両親から引き継いだ大切な家財道具をハルバーシュタットに寄付したという。博物館の展示物は全てがシュラウべ家のものだそう。では、中を見てみよう。

マルガレーテ・シュラウべさん。猫がお好きだった様子

寝室

洗面台。洗面器や水瓶、石鹸入れなどが素敵だなあ

おまる椅子

こじんまりした居間

見事な装飾を施したタイルストーブ

ダイニングキッチン

廊下にはいろんな小物が展示されているが、面白かったのはこれらのカード。スープの素に付いていたおまけのカードだそうだ。日本でもお菓子のおまけのカードを集めるのが子どもの間で人気だったりするが、1900年頃のドイツでも似たようなことをしていたようだ。

日本のカードも

応接間

立派なカップボード

屋根裏にはベビー用品が展示されている

洗礼用ドレス

この博物館には詳しい説明やオーディオガイドなどはないけれど、一つ一つの部屋を見るだけでも楽しく、とても気に入った。

そして、展示を見た後は博物館のカフェで休憩!

すごく気に入ったのは、テラス席に座ると、カフェの女主人が注文したものをこんなバスケットに入れてカフェ入り口の台に置いてくれること。手作りケーキ(カスタードとグレープフルーツのケーキで、スポンジがふわふわだった)もすごく美味しかった。

マニアックというわけではないけど、博物館の中もカフェも素敵で思わぬ掘り出し物に満足。

今回でハルバーシュタット編はおしまいです。

ジョン・ケージの「世界で最も長い曲」を聴きにはるばるやって来たハルバーシュタットだったが(前回の記事はこちら)、来てみれば他にもいろいろ見所がありそうな町である。旧市街には木組みの建物が多く残り、博物館もたくさんある。せっかく来たのでもう少し見て行くことにした。あらかじめ情報収集して目星をつけておいたのはMuseum Heineanumだ。

というのも、実は最近、にわかに恐竜に興味が湧いている。きっかけは先日、フランクフルトのゼンケンベルク自然博物館で圧倒的な恐竜の展示を見たことや、ゾルンホーフェンで化石探しをして古生物に惹かれるようになったことにある。それで、図書館からこんな図鑑を借りて来た。

Dorling Kindersley社の古生物図鑑。図鑑が乗っているのは我が家の「拾ったものが入れられる」居間のテーブル

私はDorling Kindersley社の図鑑シリーズが大好きで、これもすごくいい!!感動もの。古生代や中生代の生き物が見たくて借りて来たのだけれど、恐竜もたくさん載っていて、見ているうちになんだか恐竜が面白くなってしまった。私は子どもの頃はそれほど恐竜に興味がなかったので、知っているのはメジャーなティラノサウルス、ステゴサウルス、トリケラトプス、、、、あと何がいたっけ?という超低レベル。恐竜の基礎知識が欲しいなと思い、以下の本を読んでみた。

木村雄一著 大人の恐竜図鑑

土屋健著 大人のための「恐竜学」

おんもしろ〜い!!どちらもオススメ。

 

ハルバーシュタットに話を戻すと、この町は恐竜、プラテオサウルスの骨が大量に見つかったことで有名な町であるらしいのだ。Museum Heineanumという博物館でプラテオサウルスが見られるという。Museum Heineanumは郷土博物館(Städtisches Museum Halberstadt)の敷地にある。

郷土博物館。左に恐竜の置物

郷土博物館とHeineanumへは共通チケットで入館できる。郷土博物館の方は今回はパスしようと思ったけれど、運の良いことにたまたま8月26日まで恐竜展「Plateosaurus, Mammut & Co.」をやっているので見ることにした。

プラテオサウルスは三畳紀後半、ヨーロッパの森や湿地にに広く棲息していた竜盤類の恐竜で、最も最初に発見された恐竜の1つ。草食だが、小型の肉食恐竜から進化したとされる。

プラテオザウルスは50体以上もの骨格が丸ごと発掘されていることから、研究が良く進んでいる恐竜だそうだ。その大部分はドイツで発見されている。(写真のものは複製)

坐骨と尾椎の一部

左から、坐骨、脛骨、大腿骨

 

郷土博物館の特別展示を見た後は、一旦建物を出てすぐ側のHeineanumへ。Heineanumは基本的には鳥類博物館で充実した鳥類の剥製コレクションがあるので有名だそうだが、全部見ている時間がなかったので、今回は恐竜だけを見た。

プラテオサウルスは四足歩行だったのか二足歩行だったのか、長いこと議論されていた。最近の研究から、「基本的には四足歩行だったが、二足歩行もできた」とみなされている。

足の指と爪(左)と手の指と爪(右)

これは1899年にハルバーシュタットで発掘されたEurycleidus arucuatus。凄いね。でもこれは、大型の海棲爬虫類で、恐竜ではないそうだ。

恐竜の他にも重要な古生物として、長らく鳥の先祖だと思われていた祖始鳥(アーケオプテリクス)がある。祖始鳥の化石が初めて発見されたのは1860年で、南ドイツのゾーレンホーフェンのジュラ紀の地層から羽が見つかった。その後、周辺の地層から12の骨の化石が発見されている。

そういえば祖始鳥の標本はベルリンの自然史博物館で見られるんだった。前に写真を撮ったつもりだけれど探せなくなってしまったので、今度ベルリンの自然史博物館へ行ったらもう一度撮って来てここに追加しておきます。

さて、ハルバーシュタットで恐竜学へのささやかな一歩は踏み出せた。今後、他の自然史博物館へ行ったら、恐竜がないか探して、少しづついろんな恐竜のことを知りたいな。