先日、ノルトライン=ヴェストファーレン州のジーゲンを訪れる機会があった。ジーゲンを中心とする一帯はジーガーラントと呼ばれる。雨の多い地方で、その日も小雨が降ってややジメッとしていた。ジーガーラントにはスレート屋根の街並みが美しいフロイデンベルクやクロンバッハ醸造所のあるクロイツタールなどの見どころが知られているが、ジーゲンの町にはどんな面白いものがあるのだろうか。簡単なリサーチの結果、ジーガーラント博物館(Siegerlandmuseum)へ行くことにしよう。
ジーゲンの旧市街は丘の上にある。駅から坂道を登って行き、登りきったところにあるお城(Oberes Schloß)の中に博物館がある。(注意 Oberers SchloßとUnteres Schloßの二つのお城がある)
ジーガーラント博物館はカテゴリーとしては郷土博物館だけれど、4階建てで思っていたよりも内容が充実していた。ジーゲンの町の歴史やジーガーラントの炭鉱史に関する展示の他、ルーベンスの絵画ギャラリーもあり、また、現在はファン・ダイクの特別展示を開催中である。一通り見たが、美術関係の展示は写真撮影不可ということもあり、この記事では私が重点的に見たジーガーラントの炭鉱史に的を絞って紹介したい。
ジーガーラントの鉱山業の始まりは約2500年前に遡る。紀元前600年頃、この地方に定住しラ・テーヌ文化を開花させたケルト人がすでに鉄鉱石を利用していたことを示す記録がある。鉄器の製造に使われていたケルト人の窯も見つかっている。
15世紀に火薬が発明されたことで坑道が掘られるようになり、19世紀の産業革命期にはジーガーランドは欧州で有数の鉱山業及び製鉄業の拠点となった。鉱山は1965年に全て廃坑となったが、 金属加工業は今なお地域を支える重要な産業だ。
ジーガーラント博物館では鉱業に使われた道具や機械、鉄鉱石の採掘時に一緒に掘り出された様々な鉱物が展示されている。
博物館の地下には体験坑道もある。
おおっ。いい感じ!足元が滑りやすいので危険が全くないわけではない。見学したい人は自己責任で、と貼り紙がしてあった。地下に潜るのが好きなのでもちろん降りて行く。深さは地下14メートル。
平日の午前中だったせいか、見学者は私だけ。貸切状態だ。
体験坑道は100メートルほどの長さなので、あっという間に終わってしまった。本物の鉱山をいくつも見学して来た私としてはちょっと物足りなかったかな。
他の展示室も面白く、ルーベンスの間では特に「ローマの慈愛」が印象的だった。