スコットランドのモダニズムに触れる旅、前回の記事にグラスゴー出身の建築家/デザイナー/芸術家、チャールズ・レニー・マッキントッシュのインテリアデザインをウィロー・ティールームで鑑賞したことを書いた。今回はマッキントッシュデザインの鑑賞に訪れた2つ目のスポット、マッキントッシュ・ハウス (The Mackintosh House)について記録しておこう。

マッキントッシュ・ハウスは、マッキントッシュが妻であり、創作活動のパートナーでもあった画家マーガレット•マクドナルド・マッキントッシュが自らデザインし、1906年から1914年まで生活していた家を再現したものである。現在のサウスパーク・アベニューに建っていた彼らの家は取り壊されてしまったが、そこからわずか数十メートルの位置にマッキントッシュのオリジナル家具を使い、できるだけ忠実に再現されたという。現在はハンタリアン美術館の一部となっていて、見学することができる。

マッキントッシュ・ハウス外観。1906年設計でこの外観!?

マッキントッシュは妻マーガレットとその妹のフランシス、そしてハーバート・マクネアと共に”The Four (四人組)”の名で呼ばれ、グラスゴー発のモダンデザイン「グラスゴースタイル」を生み出したことで知られるが、当時のグラスゴーでは建築家としてそれほど評判が良かったわけではなかったそうだ。マッキントッシュのデザインは自国よりもドイツやオーストリアで高い評価を得ていたという。

斬新な外観には驚かされたが、中はとても良かった。当時、スコットランドの家において一般的だったという模様のある壁紙やカーペットなどはなく、全体がすっきりとしている。

1階のダイニングルーム

家具は1890年代から1900年にかけて作られたものだそう。ここでもマッキントッシュのデザインを象徴するハイバックチェアーが使われている。

黒いマントルピースの暖炉

後ろから見たハイバックチェアー

マッキントッシュがデザインしたカトラリー

2階に上がると、暗い色でまとめられた1階とはガラッと変わり、書斎は白と黒のコントラストが効いた空間だ。

扉に真珠母が埋め込まれたデスク。

今、写真を見ながらこれを書いていて初めて気づいたが、窓枠にも色ガラスのようなものが嵌め込まれている。マッキントッシュは光の効果を取り入れるのを好んだのだろうか。色ガラスの飾りやステンドガラスを各所に使っている。

書斎から続く応接間は白メインで明るい。今見てもまったく古さを感じさせないのがすごいなあ。

白いマントルピースの上に飾られたパネルは、妻マーガレットの『白いバラと赤いバラ (“The White Rose and The Red Rose”)』と題された作品。マッキントッシュのインテリアデザインはマーガレットのアートと切り離すことができない。マッキントッシュのデザインした空間においてマーガレットの作品が大きな役割を果たしているだけでなく、二人はまた、多くを共作しているからだ。

こちらは応接間の暖炉。マッキントッシュは日本文化から大きな影響を受けていた。マントルピースの上には日本絵が飾られている。

キャビネットのドアの内側にはバラの花と女性が描かれている。バラは1900年頃のグラスゴースタイルのシンボルだった。マッキントッシュ夫妻の作品には抽象化されたバラのモチーフが繰り返し使われている。

今まで知らなかったが、「チャールズ・レニー・マッキントッシュ」というバラの品種があるそうだ。

3階のベッドルーム。ベッドはマーガレットとの結婚に向けてマッキントッシュがデザインした。

ベッドの中央枠に嵌め込まれた色ガラスを通して光がベッド内に差し込むようにデザインされたそう

吹き抜けは展示スペースとして使われ、600作品を超えるというハンタリアン美術館のマッキントッシュコレクションの中からいろいろな作品が展示されている。

ウィロー・ティールームのためにデザインされたハイバックチェア

ウィロー・ティールームとマッキントッシュ・ハウスという二つの場所を見て、マッキントッシュのデザインの特徴がいくらか見えて来たのと同時に、当時のグラスゴーでは広く受け入れられなかったというのもわかるような気がした。今見ても新鮮さを感じるのだから、きっと、早過ぎたのだろうなあ。

 

この記事の参考文献:

John McKean, “Charles Rennie Macintosh  Pocket Guide” (2010)