2024年春の野鳥営巣観察の続き。前回の記事で、庭に設置した3つのカメラ付き巣箱のそれぞれで営巣が始まったことを書いた。以下はそれからおよそ3週間が経過した、現在の様子を記録しておこう。

まず、ハウス1

シジュウカラが2日間、巣材を運び入れて作業していたが、なぜか放棄されてしまった。今まで3つの巣箱の中で最もよく使われて来た巣箱だけれど、今年はこのまま使われないのか、それとも誰かが引き継いで使うことになるのかはわからない。現時点では空き家状態である。

 

ハウス2

この巣箱ではシジュウカラが途中まで作った巣をアオガラが引き継いだ。このアオガラのメスは羽が大好きなようで、大量の鳥の羽を集めて来た。

羽は土台に編み込んだりせずにそのままなのでフワフワ舞っていて、なんだかカオス。

4/13から卵を産み始め、全部で5つ産んだ。でも、このフワフワ羽、ヒナが生まれたら邪魔そうなんだけど、いいのかなあ?ちょっと気になっている。

このアオガラのメスはちょっとだらしないタイプなのでは?と思うのだが、気は強いのか、パートナーのオスにしきりに餌をねだっている。

 

ハウス3

こちらの巣箱のシジュウカラはカラフルな巣材を集めて来た。

卵を7つ産んで、4/11に抱卵を開始。巣材で器用に丸い窪みを作って、ハウス2のアオガラの巣とは大違い。

そして、4/23に最初のヒナが孵った!

次々と誕生するヒナ達。感動的〜。

7羽のヒナ、今のところ元気に育ってる。無事に巣立ちますように!

 

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前々から欲しいと思っていた本を購入した。石材を見ながら街を歩く活動をしておられる名古屋市科学館主任学芸員、西本昌司先生の『東京「街角」地質学』という本だ。ジオパークや石切場に石を見にいくのも楽しいけれど、街の中でも石はいくらでも見られる。建築物やインフラにいろんな石が使われているから、見てざっくりとでも何の石か区別できるようになれば楽しいだろうなあと思って、この本を日本から取り寄せた。読んでみたら、想像以上にワクワクする本だ。石についての説明もわかりやすいし、特定の種類の石が使われた背景も面白い。さっそく自分でも街角地質学を実践してみたくなった。

とはいっても、東京へ行けるのはいつになるかわからないので、まずは住んでいるドイツの町で使われている石材を見に行くことにする。この目的にうってつけの”Steine in deutschen Städtchen(「ドイツの町にある石」)”というガイドブックがあるので、これら2冊をバッグに入れてベルリンへGo!

“Steine in deutschen Städtchen”のベルリンのページでは、ミッテ地区のジャンダルメンマルクトという広場周辺で使われている石材が紹介されている。地図上に番号が振られ、それぞれの番号の場所の石材の名称、産地、形成された時代が表にされているので、これを見ながら歩くことにしよう!

と思ったら、ジャンダルメンマルクトは2024年4月現在、工事中で、広場は立ち入り不可。いきなり出鼻を挫かれた。でも、広場周辺の建物を見て回るのには支障はなさそうだ。

まずはマルクグラーフェン通り(Markgrafenstraße)34番地の建物から見てみよう。

1階部分にアインシュタインカフェというカフェが入っているこの建物は、1994-96年に建造された。地階とそれ以外の階部分の外壁には異なる石材が使われている。

地階部分はイタリア産の蛇紋岩、「ヴェルデヴィットリア(Verde Vittoria)」。

上階部分はCanstatter Travertinというドイツ産のトラバーチン。シュトゥットガルト近郊のBad Cannstattで採れる石で、本場シュトゥットガルトではいろいろな建物に使われているらしい。

 

次に、広場の裏側のシャロッテン通り(Charlottenstraße)に回り込み、フランス大聖堂(Franzözischer Dom)前の石畳を観察する。

フランス大聖堂前の石畳

ここのモザイク石畳に使われている石は大部分がBeuchaer Granitporphyrという斑岩。ライプツィヒ近郊のBeuchaというところで採れる火山岩で、ライプツィヒでは中央駅や国立図書館の建物、諸国民戦争記念碑(Völkerschlachftdenkmal)などに使われているそうだ。

そこから1本西側のフリードリヒ通り(Friedrichstraße)には商業施設の大きな建物が立ち並んでいる。例えば、Kontorhausと呼ばれる建物は赤い壁が特徴的だ。

使われているのは南ア産の花崗岩で、石材名はTransvaal Red。花崗岩というと以前は白と黒とグレーのごま塩模様の日本の墓石を思い浮かべていたけれど、ドイツでは赤い花崗岩を目にすることがとても多い。石材用語では「赤御影石」と呼ばれるらしい。

建物のファサード全体と基礎部分では、同じ石でも表面加工の仕方が違っていて、全体はマットな質感、基礎部分はツヤがある。これは何か理由があるのかな?地面に近い部分は泥跳ねなどしやすいから、表面がツルツルしている方が合理的とか?それとも単なるデザインだろうか。

 

連続するお隣の建物ファサードには、縞模様のある淡いクリーム色の石材が使われている。

この石材は、イタリア、ローマ郊外チボリ産のトラバーチン、Travertino Romano(トラベルチーノ ロマーノ)。ローマのトレヴィの泉やコロッセオに使われているのと同じ石。ベルリンでは外務省ファサードにも使われている。『東京「街角」地質学』によると、東京ではパレスサイドビル内の階段に使われているらしい。

トラバーチンという石を『東京「街角」地質学』では以下のように説明している。

トラバーチンは、温泉に溶けていた石灰分(炭酸カルシウム)が、地表に湧き出したところで崩壊石として沈澱し、積み重なってできたものである。その沈殿は常に同じように起こるのではなく、結晶成長が速い時期や不純物が多く混ざる時期などがある。そのため、木に年輪ができるように、トラバーチンにも縞模様ができるのである。(出典: 『東京「街角」地質学』

なるほど、縞の太さや間隔は一定ではない。小さい穴がたくさん開いている(多孔質)のも、トラバーチンの特徴だ。

 

その隣の建物との境に使われている石は緑色。緑の石というと、蛇紋岩?

ガイドブックによると、ヴェルデヴィットリアとなっているから、最初に見たアインシュタインカフェのファサードと同じ石ということになる。随分色も模様も違って見えるけれど。

180-184番地の建物はガラッと違う雰囲気。建造年は1950年で、東ドイツ時代の建物だ。クリーム色の部分はドイツ産の砂岩(Seeberger Sandstein)で、赤っぽい部分は同じくドイツ産の斑状変成凝灰岩(Rochlitzer Porphyrtuff)だ。

このRochlitzer Porphyrtuffという石はとても味わい深い綺麗な石である。なんでも、この石は多くの重要建造物に使われていて、国際地質科学連合(IUGS)により認定されたヘリテージストーン(„IUGS Heritage Stone“)の第1号なのだそう(参考サイト)。ヘリテージストーンなるものがあるとは知らなかったけれど、なにやら面白そうだ。今後のジオサイト巡りの参考になるかもしれない。ちなみに、Rochlitzer Porphyrtuffの産地はザクセン州ライプツィヒ近郊で、Geopark Porphyrlandと呼ばれるジオパークに認定されていて、石切場を見学できるようなので、近々行ってみたい。

 

さて、次はこちら。

1984年にロシア科学文化院(Haus der russischen Wissenschaft und Kultur)として建造された建物で、建物のデザインはともかく、石材という点ではパッと見ずいぶん地味な感じ。

でも、よく見ると、地階部分のファサードには面白い模様の石が使われている。

Pietra de Bateigという名前のスペイン産の石灰岩で、日本で「アズールバティグ」と呼ばれる石に似ている気がするけれど、同じものだろうか?

 

道路を渡った反対側には、フリードリヒシュタットパッサージェン(Friedrichstadt Passagen)という大きなショッピングモールがある。

ファサードは化石が入っていることで有名な、「ジュライエロー」の名で知られる南ドイツ産の石灰岩。ジュライエローについてはいろいろ書きたいことがあるので、改めて別の記事に書くことにして、ここでは建物の中野石を見ていこう。この建物は内装がとても豪華なのだ。

大理石がふんだんに使われたショッピングモールの内装

地下の床に注目!いろんな色の石材を組み合わせて幾何学模様が描かれている。この建物の建造年は1992年から1996年。ドイツが東西に分断されていた頃は東ドイツ側にあったフリードリヒ通りにおいて再統一後まもない頃に建てられた建物アンサンブルの一つだが、その当時はこういうゴージャスな内装が求められたのだろうか。

白の石材はイタリア産大理石「アラべスカートヴァリ(Arabescato Vagli)」で、黒いのはフランス産大理石「ノワールサンローラン(Noir de Saint Laurent)」。ちなみに、大理石というのは石材用語では内装に使われる装飾石材の総称で、必ずしも結晶質石灰岩とは限らないから、ややこしい。”Steine in deutschen Städtchen”には「アラべスカートヴァリ」は結晶質石灰岩で「ノワールサンローラン」の方は石灰岩と記載されている。

赤い部分はスペイン産大理石(石灰岩)、Rojo Alicante(日本語で検索すると「ロッソアリカンテ」というのばかり出てくるのだけど、スペイン語で「赤」を意味する言葉だからロッホと読むのではないのかな?謎だー)。

こちらの黄色いのはイタリア、トスカーナ産のジャロ・シエナ(Giallo di Siena)。およそ2億年前に海に堆積し、圧縮されてできた石灰岩が、2500万年前のアペニン山脈形成時の圧力と高温下で変成して結晶質石灰岩となった。

 

同時期に建てられたお隣のオフィスビルは、ファサードに2種類の石灰岩が組み合わされている。色の濃い方がフランス産のValdenod Jauneで、クリーム色のがドイツ産のジュライエローだ。

でも、ファサード以上に目を奪われたのはエントランス前の床の石材だった。

床材も石灰岩づくしで、濃いベージュの石材はフランス産のBuxy Ambre、肌色っぽい方も同じくフランス産でChandore、黒いのはベルギー産Petit Granit。Chandoreは白亜紀に形成された石灰岩で、大きな巻貝の化石がたくさん入っている。

このサイズの化石があっちにもこっちにもあって興奮!

そして、花崗岩(Granite)ではないのにGranitとついて紛らわしいPetit Granitもまた、白亜紀に形成された石灰岩で、こちらも化石だらけなのだ。

サンゴかなあ?

これもサンゴ?大きい〜!

これは何だろう?

化石探しが楽しくて、人々が通りすぎる中、ビルの入り口でしゃがみ込んで床の写真を撮る変な人になってしまった。ここの床は今回の街角地質学ごっこで一番気分が上がった場所だ。街角地質学をやりに出て来て良かったと感じた。ただ、ベルリンで街角地質学をやる際、困ることが一つある。それは、ベルリンの町が汚いこと。このフリードリヒ通りはまだマシな方ではあるけれど、せっかくの素晴らしい石材が使われていてもロクに掃除がされていないので、ばっちくて触りたくないのだ。写真を撮るとき、化石の大きさがわかるようにとコインを置いたものの、そのコインをつまみ上げるのも躊躇してしまう。

 

さて、2時間近くも石を見ながら外を歩き回ったので、さすがにちょっと疲れて来たので、初回はこの建物で〆よう。Borchardtというおしゃれ〜なレストランが入っている赤い砂岩の建物である。

この砂岩はRoter Mainsandstein(直訳すると「赤いマインツの砂岩」というドイツ産の砂岩で、ドイツ三大大聖堂の一つ、マインツ大聖堂はこの石で建てられている。この建物は1899年に建てられており、ファサードの装飾が目を惹くが、石的に注目すべきは黒い柱の部分だ。

うーん。写真だと上手く伝わらないかな。光が当たるとキラキラ輝いて、とても美しい。ノルウェー産の閃長岩で、石材名は「ブルーパール(Blue Pearl)」。オスロの南西のラルヴィクというところで採れるので、地質学においては「ラルビカイト(Larvikite)」と呼ばれる岩石だ。東京駅東北新幹線ホームの柱や東海道新幹線起点プレート、住友不動産半蔵門駅前ビルの外壁にも使われているとのことで、東京に行ったときにはチェックすることにしよう。

 

それにしても、世の中にはたくさんの石材があるものだ。少しづつ見る目が養われていくといいな。

 

関連動画:

YouTubeチャンネル「ベルリン・ブランデンブルク探検隊」で過去にこんなスライド動画を上げています。よかったらこちらも見てね。

2020年から始めた庭の巣箱カメラを通した野鳥の営巣観察、早いもので今年で5年目!

思えばこれまでにいろいろなことがあった。最初の年、2020年の春にはオークの木に取り付けたばかりの巣箱でシジュウカラが営巣をし、9つの卵を産んだ。そのうち1つは孵らなかったものの、8羽のヒナが無事に巣立ち、その一部始終を巣箱の中に取り付けたカメラを通して観察することができた。巣箱からヒナたちが順番に飛び立つ瞬間も見ることができ、とても感動的だった。

その後、同じ巣箱で2回目の営巣が始まったが、母鳥が巣を離れている間に生まれたヒナたちが巣材を喉に詰まらせて次々に窒息、全滅するという痛ましい結果に。その様子をカメラを通して目にすることになり、どうにかしてあげたいのに何もできず、辛かった。

翌年の2021年はシジュウカラが卵を2つ産み、そのうちの1つが孵った。たった1羽のヒナを夫婦で過保護に育てる様子がなんとも可笑しかった。また、庭の垣根でクロウタドリも営巣し、無事にヒナたちが巣立った。

2022年春。シジュウカラが巣箱で営巣していたが、母鳥の不在中にクロジョウビタキが巣箱に侵入し、戻って来た母鳥とバトルに。母鳥はクロジョウビタキには勝ったけれど、なぜかそのまま巣を放棄してしまった。かなりがっかりだったけれど、庭の周辺でいろんな野鳥が繁殖し、親鳥たちがヒナを連れて我が家の餌場に集まってとても賑やかな春となった。

2023年は巣箱で初めてアオガラが営巣し、10個の卵を産んだ。しかし、ヒナ達が孵って喜んだのもつかの間、夜中にアライグマが庭に現れ、巣箱の中に手を突っ込んで母親を捕らえて食べてしまった。母親を失ったヒナ達の運命は言わずもがなである。

こんな風に野鳥の子育ては常に危険と隣り合わせで、毎年ハラハラして見守っている。

さて、今年の状況はというと、これまでとは少し違っている。去年までは営巣期間以外には巣箱は使われていなかったが、今年の冬は現在3つあるすべての巣箱がシジュウカラに寝ぐらとして使われていた。なぜ今年に限ってそうなったのだろう?巣箱が冬の寝ぐらとして便利だと思いついたシジュウカラがうちの庭にたまたま何羽もいた?それは偶然がすぎる気がする。1羽が巣箱を寝ぐらとして使い始めたのを見て他の個体がそれを真似したのだろうか。あるいは同じ餌場に集まる仲間同士、「巣箱で寝ればあったかくていいんじゃない?」というコミュニケーションがあったのか。わからないが、とにかく冬の間ずっと巣箱が使われていたので、もしかしたら春になったらそのまま営巣が始まるのではと期待していた。

そして、4月2日の状況はこんな具合である。

ハウス1 (去年まで旧館と呼んでいた巣箱)

シジュウカラが営巣。この子は本日(4/2)営巣を開始。それまでもちょくちょく昼間に巣箱に入ってはいたが、のんびりさんなのか、「ここで巣を作ろっかなー、どうしよっかな〜」と考えてでもいるかのように頭を傾げたりキョロキョロするばかりでいっこうに作業を始めなかったのだ。ようやく心が決まったのか、今朝から慌ただしく巣材を運んでいる。

今日1日でここまでできた。やる気になれば早いらしい。

 

ハウス2(去年までは新館と呼んでいた巣箱)

この巣箱ではアオガラが営巣中。実はこの巣箱では3/22日にシジュウカラが営巣を始め、突貫工事でたった1日で7割方完成していたのだが、なぜかその後放置されていた。夜になっても寝に戻って来ることがなかったので、この巣箱のシジュウカラの身に何かがあったのかもしれない。3/29の昼間、庭仕事をしていた夫が、「アオガラのオスがメスをハウス2に案内していたよ」と言う。すでに土台のできた巣があるので、いってみれば「家具付き物件」と言うことになる。メスも「タイパがいいわ!」と気に入ったのか、翌日から営巣を始めて、夜も寝泊まりしている。

なぜか画像が白黒だけど、現在の巣の様子。

 

ハウス3 

こちらのシジュウカラはコツコツ型で3/11に作業を開始し、毎日少しづつ進めていっている。パートナーのオスも巣作りに積極的に参加し、せっせと巣材を運んで来たりと仲がよい。

3つの巣箱の中で作業が一番進んでいる。

 

さて、今年はどうなるか。何が起こってもおかしくない野鳥の子育てなので心配だけど、3つの巣箱で同時進行の繁殖活動を観察できるのは初めてなので観察で忙しくなりそう。みんながんばって。成功を祈ってるよ。

 

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北ドイツに住むようになって以来、氷河地形が気になってしょうがない。氷河地形といっても北ドイツのそれはアルプスのような山岳氷河が形成した地形ではなく、かつてスカンジナビアから北ドイツまでを覆っていた大陸氷河が広い大地に残した痕跡である。

こちらの過去記事に書いたように、ベルリンの北東には氷河地形をテーマにしたジオパーク、Geopark Eiszeitland am Oderlandがあり、「エンドモレーン」が観察できる。エンドモレーンというのは、氷河が移動することによってその末端に砂礫が堆積してできた地形だ。さらに、そのエンドモレーンにはドイツ語で「Stauchmoräne(シュタウホモレーネ)直訳すると「圧縮モレーン」」と呼ばれる特殊な地形があるらしい。それは、ヒダ状にうねった地形だという。一体どんなものだろう?それを見にブランデンブルク州とザクセン州の境でポーランドとの国境を跨ぐUNESCOグローバルジオパーク、ムスカウアー・ファルテンボーゲン(UNESCO Global Geopark Muskauerfaltenbogen)へ行って来た。

ジオパークのダウンロード用資料の地図を使用

ムスカウアー・ファルテンボーゲンは、国境の町バート・ムスカウ(Bad Muskau)を中心にU字形に伸びている。上地図の茶色い部分だ。ファルテンボーゲンとは直訳すると「ヒダ(Falten)のある弧(Bogen)」という意味。なぜU字形をしているかというと、かつてここには長さ22km、幅20kmほどの舌のような形をした氷河があった。その縁に沿ってファルテンボーゲン、地質学用語でいうところのシュタウホモレーネが形成された。でも、ヒダ状の地形って、一体どんなの?

氷床の重みで押され、ヒダ状に盛り上がった地面。図はジオパークのダウンロード用資料から。

過去40万年の間にドイツは3度の氷期を経験した。氷期の名前は地域によって異なり、それぞれ川の名が付けられている。北ドイツでは新しい順にヴァイクセル氷期(Weichsel-Kaltzeit)、ザーレ氷期(Saale-Kaltzeit)、エルスター氷期(Elster-Kaltzeit)と呼ばれる(アルプス地域ではミンデル、リス、ヴュルム氷期)。3度の表記のうち最も古い、39万年前から32万年前まで続いたエルスター氷期には、氷床はこのジオパークのある現在のブランデンブルク州とザクセン州との州境あたりまで及んでいた。

では、ヒダヒダの地形はどうやってできたのか?ムスカウエリアの地層は厚さ500mにも及ぶ氷河の重みで潰され、割れて氷の縁の外側に押し出された。そのとき、割れた地層の塊は縦に起こされ、本棚に本を並べるような感じでくっついて、ヒダのような構造になったのだ。つまり、上の絵のように。

と、頭だけで理解しようとするのは難しい。ジオパークには散策ルートがたくさんあるが、ヒダヒダの地形がよくわかるドラゴン山ツアー(Drachenberg-Tour)というルートを実際に歩いてみた。森の中を4、5km歩くルートだ。

ジオパーク内の散策ルート。青い丸はインフォメーションポイント、赤はジオトープ、緑は展望台、黄色はその他の見どころ

歩いてみると、確かにアップダウンが激しい。

登って降りて登って降りて。まるで扇子のように小高い部分と谷が数十メートルごとに交互に続いていく。まさにヒダヒダ!こんな地形を体験するのは初めて。とても面白い。

切り込んだような谷の部分はギーザー(Gieser)と呼ばれる。ムスカウ周辺の地層は褐の層を含んでいるが、ファルテンボーゲンが形成された際に地層が縦に起こされたので、褐炭の層は地表に対して帯状に分布している。ギーザーはそれら褐炭の帯に対応しているのだ。地表近くの褐炭が風化することで地表が沈み、溝のような谷ができた。

別の散策ルート、地質学ツアー(Geologie-Tour)のルート上にはギーザーの断面が見られる場所がある。

下の方の茶色いのが褐炭

この地域では1800年代半ばから1970年代まで褐炭が採掘されていた。そのため、褐炭を掘り出した後の穴が無数にあり、そこに水が溜まって池になっている。

ジオパークの見どころの一つ、「4つのカラフルな池(Die vier bunten Seen)」。ドローンで撮影。

1901年から1908年まで採掘が行われたHorlitzaの採掘場の4つの池はそれぞれ水の色が違うので、「4つのカラフルな池」と呼ばれている。水の色の違いは水のpHや微生物、含まれるミネラル、温度などによるらしい。4つの池全部を写真に収めようとドローンで限界まで高度を上げて撮ったけれど、これが限界。曇りだったので、色の違いもそれほど明確ではないかな。(ジオパークのサイトのこちらのページに良い画像があるので、興味のある方は見てみてください。)

UNESCOグローバルジオパーク、ムスカウアー・ファルテンボーゲンには他にも見どころがたくさんあって、日帰りではとても回りきれなかった。さらに、バート・ムスカウのムスカウ城とその庭園であるムスカウ公園はUNESCO文化遺産に登録されているので、ジオ以外でも盛りだくさん。今回、時間切で見れなかったものを見に再訪したい。

ムスカウ城

クロムラウのシャクナゲ公園のラコッツ橋(Rakotzbrücke)