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気になっていたことがある。数年前、移動中たまたま通りかかったハレ(Halle)という町に立つ、立派な給水塔に目が留まり、車を降りて写真を撮っていたときのこと。ふと、足元を見て、古い石畳にハッとしたのだった。

「あっ、斑岩だ!」と思わず呟いた。私は斑岩が好きなのだ。

赤っぽい石基にそれよりも薄い色の細かい斑晶ができている。このような石はドイツ語ではPorphyr(英語ではPorphyry)と呼ばれている。水玉模様みたいでなんかかわいいな、と思ったのが興味を持つようになったきっかけだった。

私が住んでいる北ドイツの古い石畳のほとんどは、はるかスカンジナビアやバルト海地域から氷河とともに運ばれて来た石の寄せ集めでできている。氷河は北方の様々な石を運んで来たので、北ドイツの石畳はカラフルなのが特徴だ。中には斑岩も含まれているけれど、全体の中では比較的少ないし、色や斑晶の大きさなどもまちまちである。

それがこの石畳ときたら、オール斑岩、それもすベて同じ石なのだ。ということは、この石畳に使われている石はどこか近くの石切場から切り出して来たということになる。ハレは首都ベルリンから南西におよそ170kmに位置しているが、火山もないのに斑岩が採れるんだろうか?

不思議に思ったけれど、この疑問はそのまま長らく放置していた。ところが、先日、こちらの記事に書いたようにベルリン中心部に使われている石を見て歩いていたら、また斑岩の石畳に遭遇したのだ。

ベルリン、ジャンダルメン広場前の石畳

手持ちの資料、”Steine in deutschen Städten: 18 Entdeckungsrouten in Architektur und Stadtgeschichte“によると、このグレーに白っぽい斑晶のある石はBeuchaer Porphyrと呼ばれ、ライプツィヒ郊外のボイヒャ(Beucha)というところで採れるらしい。ライプツィヒはハレと40kmちょっとしか離れていない。やっぱりあのあたりは斑岩が採れるのだろうか?でも、あの辺に火山なんてないよなあと再び気になりだし、調べてみるとライプツィヒの東には広さおよそ1.200 km²のジオパークがあり、その名もズバリ「斑岩ランド・ジオパーク(Geopark Porphyrland)」だというではないか!

まったく知らなかったのだが、そのあたりでは約2億9000万年前(ペルム紀)、超巨大火山が噴火を起こし、大規模な火砕流が一帯を覆ったのだという。それが冷えて固まってできたさまざまな種類の斑岩の層は、深いところでは500mを超える。つまり、ライプツィヒ近郊は斑岩の一大産地だったのだ。

ということで、行ってみた斑岩ランド・ジオパーク。

見どころはたくさんあって、1回で多くを回るのは難しい。斑岩ランド・ジオパークは、2億9400万年前の爆発的な噴火によって形成されたカルデラであるロッホリッツ(Rochlitz)エリアとそれよりも後の2億8700万年前にできたカルデラ、ヴルツェン(Wurzen)エリアとの2つの地域に大きく分けられる。より南部のロッホリッツエリアでは主にRochlitzer Porphyrtuffと呼ばれる真っ赤な石が採れる。

ロッホリッツァー・ベルク(Rochlitzer Berg)という山にはかつての石切場があり、現在はジオ散策ルートとなっている。

旧石切場 Gleisbergbruch

ここでは中世から採石が行われ、石臼にしたり彫刻を作るのに使われていた。

深いところは100メートルくらいある。

ロッククライミングをしている人がいた。

こちらは現在も稼働中の石切場

だけど、ちょっと待てよ。これって斑岩?私が思っていたのとずいぶん違っていて、混乱してしまった。これまでに見た石畳や、家の周辺で拾った斑岩は石基の部分がもっと硬くて緻密で、斑晶が模様のようにはっきりとしていたが、この石はもっと密度が低くて手触りもざらざらしている。よく見ると、黒っぽい小さな火山礫が混じっているがそれほど目立たない。Rochlitzer Porphyrtuffと言われる石だから、字面通りに解釈するなら、「斑晶(Porphyr)を持つTuff(凝灰岩)」ということになるが、ジオパークwebサイトの説明によると、Rochlitzer Porphyrtuffは固まった火山灰である一般的な凝灰岩とは異なり、ガスを多く含んだ熱い火山砕屑流が堆積してできた「イグニンブライト (Ignimbrit)」と呼ばれる石に分類される。(ラテン語で「火」を意味する ignis と「雨」を意味する imber  の合成語)

私のイメージする斑岩とは違ったが、薄紫から赤へのグラデーションやところどころに走る岩脈が味わい深いとても魅力的な石だ。この石は古くから現在に至るまで建材として広く使われており、2022年に国際地質学連合(IUGS)により、ドイツの岩石では初のヘリテージストーンに認定された。

Rocherlitzer Bergのてっぺんに立つ見晴らし塔、フリードリヒ・アウグスト塔

ヘリテージストーンというくらいなので、きっと最寄りの大都市ライプツィヒ市内にこの石を使った建物が見られるだろう。確認に行ってみたら、実際、旧市街はこの石だらけだった。

ライプツィヒ旧市庁舎。下のアーケードの部分がRochlizer Porphyrtuff。

でも、ライプツィヒだけじゃない。ベルリンやポツダムでも、この石を使った建物を見かけた。きっと、他の町でも幅広く使われているんだろう。知っている石ができると街歩きが楽しくなるなあ。

ベルリン、フリードリヒ通りの建物

 

次はヴルツェンエリアへ行ってみよう。まず向かったのはThallwitzというところにある山、Gaudlitzberg。

Gaudlitzbergの石の崖 

ここで採れるのは石英斑岩 (Quarzporphyr)。岩肌の割れ目から想像できるように、割れやすくかつ硬い石で、石畳や砂利としての利用に適しているのだそう。

左右に動かすと黒雲母の粒がキラキラして見える。

Gaudlitzbergの石の壁はロッククライマーに大人気で、年に一度、ここでクライミングと映画鑑賞のイベントが開催されるらしい。でも、この日は誰もいなくて、あたりにはニセアカシアの甘い香りが漂い、ナイチンゲールの鳴き声が響き渡っていた。

 

次は、Naunhofの石切場、Ammelshainへ。

1950年まで採石が行われていた跡地は今は水が張られ、自然保護区およびレクリエーションの場となっている。

ここで採れるのは、ジオパークのウェブサイトによると石英花崗斑岩(Quartzgranitporphyr)。それって、石英斑岩なの、それとも花崗斑岩なの、どっち?なんともややこしいが、花崗斑岩のうち、石英の割合が大きいものということらしい。

 

お次はボイヒャ(Beucha)の石切場、Kirchbruchへ。

石切場の上に教会が載っている。 なんとも言えない光景。

ボイヒャ花崗斑岩 (Beuchaer Granitporphyr)

この石がベルリン、ジャンダルメン広場の石畳に使われている斑岩だ。私はなぜか、このようなピンク色をしたカリ長石の斑晶に惹かれてしまう。石の性質としては、硬く霜や湿気にも強い。磨いてツルツルにするのにも適しているので、さまざまな用途に利用できるらしい。

Beuchaの別の石切場

そして、ボイヒャの斑岩はライプツィヒにある、プロイセン、オーストリア、ロシア、スウェーデンの連合軍がナポレオンを倒したことを記念して1913年に建てられた壮大なモニュメント、諸国民戦争記念碑(Völkerschlachtdenkmal)の建材でもある。是非とも見ておきたくてジオパークの帰りに寄った。

Völkerschlachtdenkmal

迫力!この全体が斑岩でできているのだー。重さ30万トンに及ぶこの巨大な記念碑を建てるのに、ボイヒャの石切場から2万6500個の石が切り出された。

壁のクローズアップ

内部の床。色のバリエーションはグレーっぽいのと赤っぽいのがある。ところどころに見える大きな黒い部分は黒曜石だろうか。

内部の石像には手の込んだ表面加工が施されている。

この記念碑以外に、ライプツィヒの中央駅、ドイツ国立図書館、ゲヴァントハウスなどにも同じ石が使われている。

斑岩といっても、いろんな種類のものがあるんだなあ。斑岩ランド・ジオパークはまだジオパークに認定されて日が浅いせいか、ウェブサイトはよくできているけれど、現地の説明パネルが少ないし、ビジターセンターの開館時間も限定的でその点はもうちょっとなんとかならないかなと感じたものの、斑岩が気になる私にとっては面白いジオパークだった。

 

ちなみに、このジオパーク訪問の伏線となったハレの石畳の斑岩の産地はまだわからない。ハレの周辺には斑岩ランドの斑岩とは別の時代に生成された斑岩の採れる場所があるらしく、そちらが産地かもしれない。探索は続く、、、。

 

この記事の参考サイト:

Geopark Porphyrlandウェブサイト

 

 

 

こちらの記事の続き。

庭に設置した3つの巣箱のうち、ハウス3で進行していたシジュウカラの営巣。4/23日に7つの卵からヒナが孵り、しばらくは成長ぶりに大きな個体差も見られず、みんな順調に育っていると思われたけれど、7羽のうち1羽は途中で死んでしまい、6羽となった。

生後およそ2週間後、ヒナたちの目が開き、「ヂヂヂヂヂッ」「ピピピピッ」というヒナに特徴的なフレーズでひっきりなしに鳴くようになった。このフレーズは過去数年のシジュウカラの営巣観察で私の耳にすっかりお馴染みになっている。巣箱の中で、ヒナたちは最初の数日はほとんど声を出さない。その後少しづつ「ピッ」とか「チッ」という単音を発するようになり、その声も次第に大きくなるけれど、「ヂヂヂヂヂッ」「ピピピピッ」というフレーズが出て来るのは巣立ち間近になってからのようだ。巣立った後もしばらくの間はヒナは親鳥に世話をしてもらわなければならないから、自分の居場所を知らせるために特定のフレーズが必要だということなんだろうか?だとすると、シジュウカラのヒナの「ヂヂヂヂヂッ」「ピピピピッ」は、つまり「おかあさーん」という意味かな?

そして、生後18日目の朝、巣箱カメラを覗くと、中が何やら騒々しい。

ヒナのうち、2羽が翼を広げて飛び上がっては降り、飛び上がっては降りを繰り返している!いよいよ巣立ちか?

朝ごはんを食べていた私はコーヒーの入ったマグカップとカメラを持って、急いで庭に出た。

あっという間に最初の1羽が巣箱から飛び出し、それから1時間半ほどの間に6羽中5羽が無事に巣立った。ヒナが飛び立つ瞬間は、いつ見ても感動的である。

巣立ったばかりのヒナ。かわいい〜。

でも、広い世界の危険をまだ把握していないヒナたちは地面にいることが多く、危なっかしい。

 

しかし、ここからが忍耐戦だった。最後の1羽が出てくるのを見届けようと、朝ごはんを中断したままカメラを抱えていたのだけれど、なかなか出て来ない。巣箱カメラを通して中を見ると、末っ子ちゃんは出入り口の穴に飛び上がるのにすら苦労しているようだ。ありゃりゃ、これは時間がかかりそうだなと一旦家の中に入ることにした。

それから数時間が経過。何度巣箱カメラを覗いても、末っ子ちゃんは一向に出る気配がない。お父さんお母さんが交代で何度も何度も迎えに来てはあの手この手で外へと誘導するのだが、どうやらかなり臆病な子らしく、なんとか出口には登っても、そこから飛んで出るのはどうしても怖いらしい。親鳥も巣立った子たちへの餌やりや飛び方指導などしなければならないのだから、この子ばっかりに構ってはいられない。巣箱に来る間隔がだんだん長くなっていく。

今日はこのままもう無理かもしれない。

そうこうしているうちに日が暮れた。鳥も寝る時間である。母鳥は巣立った他の子たちと一緒に外で寝るらしく、巣箱に戻って来ない。末っ子ちゃんはひとりぼっちで夜を明かすことになってしまった。あーん、かわいそう。初めての経験できっとすごく心細いよね?まさか、このままお父さんお母さんに忘れられたりはしまいね?

 

そして、一夜が明けた。

朝、目が覚めて早速巣箱の中を見ると、末っ子ちゃんはすでに目を覚まして鳴いている。今日も出られないのだろうかと心配になったが、お母さんは巣箱の中にまだもう1羽いることを忘れていなかったようで、ちゃんと迎えに来た。よかったー。

そして、お母さんの誘導の下、飛び出そうとしかけてはまた戻り、を何度か繰り返した後、末っ子ちゃんはついに巣箱から出ることに成功!!

でも、なんとか外には出たものの、羽ばたいて遠くまで飛ぶのはまだまだ怖いらしく、「おかーさーん。おかーさーん」と鳴いて助けを呼んでいる。いやはや、手のかかる子もいるもんだ。

 

こうして今年は6羽のシジュウカラの巣立ちを無事、見届けることができた。でも、広い世界は危険がいっぱい。1羽でも多くが大人になれますように!

 

ハウス2のアオガラのヒナたちも今のところ、順調に育っている。こちらも巣立ちが楽しみだ。