サンブル地域でしか見られない珍しい動物、「サンブル・スペシャル5」をしっかり見ることができ、来た甲斐があったと感じるサンブル国立公園(Samburu National Reserve)でのサファリ(厳密には隣接するバッファロースプリングス国立保護区)Buffalosprings National Reserve)だったが、実はさらに素晴らしい体験ができた。アンボセリ国立公園では遠目に姿を認めただけのライオンを間近にじっくりと観察することができたのだ!

サンブルには2泊したので、1日目は夕方のサファリ、2日目は早朝からの終日サファリができた。1日目に前述のサンブル・スペシャル5を見て大満足し、そろそろロッジに戻る時間かなと思ったとき、無線で他のサファリガイドとスワヒリ語でコミュニケーションを取っていたルーカスさんが、「ちょっと遠いですが、面白そうなものが見られそうな場所があるようなので、行ってみましょう」と言う。保護区の中は当然ながら住所などはないので、「〇〇のところまで行ったら右に曲がって、△△のところで左の道に入って、300mくらいのところで云々、、、」などとお互いに説明し合うのだろう。移動中、ルーカスさんはずっと仲間のガイドとやり取りを続けていた。スワヒリ語はわからないが、ときどき「シンバ」と言っているのだけは聞き取れた。

シンバ、、、、もしかして、ライオン?ワクワクしながら、凸凹道に揺れるサファリカーの枠につかまり、窓の外に目を凝らす。

30分は経っただろうか。日が沈みかけた頃、前方に何台かのジープが止まっているのが見えた。あそこにライオンが?

車を横付けし、エンジンを切ると、一台のジープの運転手が茂みを指差して小さな声で言う。「あそこにライオンの赤ちゃんがいますよ」「え、どこどこ?」

双眼鏡で覗くと、いた!

全部で何匹いるんだろう、他の2匹は倒木の上でじゃれあっている。

赤ちゃんライオンの側にはメスライオンも潜んでいると思われるが、よく見えない。「きっと近くにオスもいますよ。あの辺かな?」とルーカスさんが少し離れた場所の茂みを指差した。すると、、、。

出て来た!!私たちのいる道路に向かって歩いて来る。

えっ?まさかのトイレタイム。

そして、なんとおすライオンがもう1匹姿を現した。

「兄弟ライオンです。」「一つの群れに複数のオスがいることもあるんですか?」「そういうこともありますよ。兄弟が協力すれば、広い縄張りを守るのに有利なんです」「メスはどちらとも交尾するんでしょうか?」「はい。でも、どちらと交尾をするか、決める決定権はメスにあります」

すぐ目の前に強そうなオスライオンが2頭も現れ、圧倒されてしまう。なんだか現実のこととは思えない。言葉もなく、しばらく眺めていたらいよいよ日が暮れて来た。「そろそろロッジに戻りましょうか。きっと、赤ちゃんライオンが隠れているあの木の下は今夜の彼らの寝ぐらですよ。明日の朝、ここに戻って来ましょう」。ルーカスさんはそう言ってエンジンをかけた。

翌朝。

サファリカーに乗り込んだ私たちは、真っ先にライオンの寝ぐら付近へと向かった。すると、近くの原っぱに赤ちゃんライオンを連れたメスたちが歩いているのが見えた。

おお!!

赤ちゃんがたくさん!そして、赤ちゃんたちは一斉にニャオニャオと鳴き始めた。

「あの子たち、お腹が空いていますよ」。そっか、お腹が空いて鳴いているのね。

日陰に戻ったメスライオンたちは地面に体を横たえた。

お乳を求めておしくらまんじゅうの赤ちゃんたち

満腹になってゴキゲンの赤ちゃんたち

近くではお父さんが見張っている。

ああ、なんて素晴らしい光景だろう。この後のサファリで他にもいろんな動物を目にしたが、ライオンの授乳風景が目に焼き付いて離れず、それ以外のものがかすんでしまうほどの感動的な体験だった。

サンブル国立保護区はアンボセリ国立公園やマサイマラ国立公園ほど有名ではないが、その分、観光客がそれほど多くなく、ゆっくりと動物たちを観察できるのがとても良い。そして、野趣あふれる景観と、そこでしか見られない希少な動物に遭遇するチャンスがあるという意味でも素晴らしい場所だと思う。すっかりお気に入りの保護区になった。