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コスタリカ・ジャングル旅行2024 ⑪ 夜のジャングルを歩く(注意: 虫やヘビの画像が含まれます)
私たちの滞在したオサ半島のエコロッジ、エコトゥリスティカ・ラ・タルデ(Ecoturistica La Tarde)は熱帯雨林に囲まれている。熱帯雨林には人為的な影響を受けていない原生林である一次林(primary forest)と、人為的な活動により破壊された原生林が再生した二次林(secondary forest)があるが、コルコバード国立公園のロス・パトス・レンジャーステーションから5kmの地点に位置するエコロッジの周辺は主に一次林だ。多くの異なる植物種による多層的な林冠構造をした一次林は、多種多様な生き物の生息地として極めて重要だ。
私は、ロッジ周辺を地元のネイチャーガイド、ルイスさんに案内してもらうのをとても楽しみにしていた。ルイスさんはラ・タルデで生まれ育ち、ジャングルを知り尽くしているベテランのスペシャルガイドだ。2022年に夫と息子がコルコバード国立公園を徒歩で横断した際、ルイスさんに同行して頂き、素晴らしい体験ができたと繰り返し言っていた。ルイスさんは野生動物の痕跡にもとても詳しいとのことで、アニマルトラッキングを学んでいる私(過去記事)は、ぜひともルイスさんと一緒にラ・タルデのジャングルを歩きたかったのだ。
ところが!直前になってルイスさんからメッセージが入り、「体調を崩してしまい、同行できなくなった」という。なんと、、、。本当にガッカリである。それが目的で来たのに。
代わりに、ジョセフさんという若いネイチャーガイドさんに案内してくれることになった。エコツーリズム大国コスタリカにはネイチャーガイドが大勢いる。でも、正直、レベルはそのガイドさんによってまちまちだと思う。ジョセフさんはガイドになってまだ数年で、経験値ではルイスさんに及ばないが、とても知的でモチベーションの高い、良いガイドさんだった。
まずはナイトハイクに連れて行ってもらった。
ゾクゾクする体験だった。ナイトハイク自体は以前も参加したことがあったが、メジャーな観光地で大勢の旅行者と一緒にゾロゾロとホテルの周辺を1時間程度歩いただけだった。今回のようにジョセフさんと私と夫の3人だけで真っ暗なジャングルに足を踏み入れ、たっぷり2時間半も歩くというのは全く別の体験だといっていい。
記事タイトルに注意書きをしたように、このナイトハイクで見たものは主に昆虫などの小さな生き物だ。虫は苦手な人が多くて、画像を目にするだけでも無理という人もいるので、ネット上に画像を上げるときには気を遣ってしまう。かく言う私も若い頃は虫がとても苦手だった。でも、一時期ナショナルグラフィックの記事を翻訳する仕事をしていたことがあり、その際に昆虫の記事が多かったので、だんだんと面白いと思うようになった。毒のあるものや刺してくる虫は困るけど、そうでなければOKだ。
ナイトハイク中、セミがバサバサと何度も体にぶつかって来た。
ジョーセフさんが懐中電灯であたりをチェックしながら進み、何かを見つけると説明してくれる。
後尾中のヤスデ
緑のナナフシ(ナナフシモドキ?)
昆虫は種が多くて、フィールドガイドを見てもどの種なのかよくわからない。ナイトハイクの難点は、ガイドさんに生き物の名前を教えてもらっても、暗くてその場ではメモできないのですぐに忘れてしまうこと。(と書いて気づいたけど、スマホで音声入力すればよかった)
これはなんというクモだったっけな?
このクモを眺めていたら、ジョセフさんが「この辺りにはタランチュラがいるんですよね」と言う。え、タランチュラ?
「あっ。ここにいた!見て。早く早く!」数十メートル前を歩いていたジョセフさんに言われて急いで近づいたが、タランチュラは地面の穴にサッと隠れてしまった。惜しい!野生のタランチュラを目にする機会なんてまずないのに、残念だなあ。
ところで、毒のある虫にも注意しなければならないが、気をつけるのはそれだけではない。ジャングルの中にはトゲトゲの木や植物がたくさんある。足元が不安定だからといって、よく見ずに近くの木を掴んだりしてはいけない。
ものすごい棘。でも、虫が敵から身を守るのには便利みたいだね。
植物も生き物同様に様々な生存戦略を持っているのが興味深い。英語ではBullhorn acacia(「牛の角のアカシア」の意)と呼ばれるアカシア・コルニゲラ(Vachellia cornigera)は、牛の角のようなかたちをした棘を持つ。この棘は仲が空洞になっていて、先に開いた小さな穴からアリが出入りしている。アリがアカシアの樹液を狙う動物を攻撃してアカシアを守る一方で、アカシアはアリに住処を提供している。つまり、アカシア・コルニゲラとアリと共生関係にあるのだ。
ベニスカシジャノメ (Cithaerias pireta)
羽が透き通ったとても綺麗な蝶がいた!暗闇と紅い羽のコントラストが美しく、うっとりしてしまう。写真がピンボケになってしまって、本当に残念。
再び歩き出し、数十メートル進んだときだった。ジョセフさんが「あっ、これは!」と地面を凝視しながら立ち止まった。「これは脱皮したテルシオペロの皮です」。テルシオペロ (Bothrops asper) は日本語ではチュウオウアメリカハブとも呼ばれる猛毒のヘビである。ジョセフさんは皮を拾い上げ、「まだ湿っている。脱皮したばかりです。まだこの辺にいるかもしれないので、気をつけないと」
ひえ〜。
「安全を確保するのはガイドの勤めです」と言いながら、ジョセフさんは持っていた先端の丸く曲がったスネークスティックで地面を慎重に確認し始めた。「このヘビの皮、もらっていいですか?」と夫が聞くと、「どうぞ」と返事が帰って来たので、夫は皮をそっと摘んでリュックに入れた。
そこからは、ヘビがいないか確認しながら進むジョセフさんの後ろをゆっくりゆっくりと歩いた。そして、出発から2時間ほどが経過し、もう少しでロッジというところで、前方の木の上で何か大きなものが動いた。
「アリクイだ!」
暗闇の中で白い毛が浮かび上がった。よく見ようと私たちが立ち止まった瞬間、アリクイは体の向きを変えて茂みの中に入ってしまった。顔は見えなかったけれど、大きな体は確認することができた。ついにアリクイに遭遇できて嬉しい!
いろいろな昆虫たちが生活を営んでいただけでなく、タランチュラが巣穴から顔を出し、毒ヘビが脱皮して這い、木の上ではアリクイが歩き回っていた夜の熱帯雨林。なんだかあまりに現実離れしているようで、不思議な感覚だ。
エコロッジの敷地に戻ると、澄み切った空いっぱいに星が瞬いていた。本当に夢みたいだな。そう思いながらベッドに横になり、眠った。
でも、夢ではない証拠に、翌朝起きたとき、拾って来たテルシオペロの皮はリュックの中にやはりあったのだった。
脱皮した後のヘビに遭遇しなくてよかったなあ….
コスタリカ・ジャングル旅行2024 ➉ コルコバード国立公園ロス・パトスセクターの拠点、エコトゥリスティカ・ラ・タルデ
コスタリカで最もリモートな場所、オサ半島。大部分が森林に覆われたオサ半島に町らしい町はほとんどない。旅行者のためのインフラといえば、コルコバード国立公園の周辺に点在する人里離れたロッジくらいである。2015年に初めてオサ半島を訪れた際には、半島南部のカラテ(Carate)という場所に滞在したが、今回はコルコバードのロス・パトス(Los Patos)セクターに隣接するラ・タルデ(La Tarde)にあるエコロッジに滞在することにした。ロッジの名は、エコトゥリスティカ・ラ・タルデ(Ecoturistica La Tarde)、通称ELT。2022年12月に夫と息子がコルコバード国立公園を徒歩で横断した際に拠点として利用したエコロッジで、夫が周辺の環境をとても気に入った。また、その際に案内してくれたネイチャーガイドのルイスさんがベテランの素晴らしいガイドで、本当にたくさんの野生動物やその痕跡を見せてくれたので、ぜひ私を連れて行って、またルイスさんに案内をお願いしたいと、それ以来言い続けていたのである。私もとても楽しみにしていた。
しかし、四輪駆動ではなく前輪駆動の車を借りたというミスのために悪路に悩まされており、オサ半島に近づくに連れ、私は不安を募らせていた。コスタリカ中心部ですら、メジャーな観光地をちょっと離れると途端に道が悪くなるのに、オサ半島のような極地で果たして私たちの車は走れるのだろうか。
ELTはかなりの奥地にある。国道245号をゴルフォ・ドルセ湾沿いに南下し、ラ・パルマ(La Palma)という集落からは山道を登る。こちらの記事に書いたように、二日前に山道をやっとの思いで乗り越えた(運転したのは夫なので私はただ横に座っていただけではあるが)ところだったので、またあの状態になるのかと憂鬱だった。
夫は「去年も通った道だから大丈夫だ」と言う。アップダウンは多いが、道路の状態はそれほど悪くないのだと。しかし、実際にはまったく違い、山道は凄まじいほど石ころだらけだった。「おかしい。こんなはずでは」と呟きながら夫も真剣な顔になる。「前回来たときはこうじゃなかったのに。たった一度の雨季でこんなにも道路状況が変わるとは」。移動は困難を極めたが、「もう無理」と途中で諦めるわけにもいかない。あたりに民家はまったくなく、携帯の電波も届かないので、助けを呼ぶことはできないからだ。しかし、泣き言を言って真剣勝負の夫にストレスをかけるわけにもいかないので、私はひたすらおとなしくしていた。
恐ろしく長く感じた夫の格闘の末、ついに私たちはエコロッジに到着。オーナーのエドアルドさんが笑顔で迎えてくれ、本当にほっとした。(ラ・タルデへ行く人は、絶対に四輪駆動の車で行くか、事前にロッジに送迎を頼んでおきましょう)
エコトゥリスティカ・ラ・タルデの入り口
夫が私を連れて行きたいと言っていたELTは、よく手入れのされた敷地内に小さなキャビンがいくつかとドミトリーが1つあるだけのアットホームなエコロッジで、私は一目で気に入った。「キャビンはすごくシンプルだよ。それだけは覚悟しておいて」と言われたようにキャビンはとても簡素な作りだが、パナマでこの宿に滞在して以来、私は自然を直に感じられる宿のファンになっているので、がっかりするどころか逆にワクワクした。
キャビンの内部。空調設備はないが、壁は下の部分のみなので、風通しが良い。
トイレと洗面所はキャビンの外側にあり、キャビンとカーテンで仕切られている。一応、ブリキ屋根の下なので、雨が降っても濡れることはない。
シャワーは完全に外でお湯は出ない。
きちんと清掃されていて、不潔感はまったくないけれど、アウトドアが苦手な人にはキツいかもしれない。水しか出ないシャワーというのは熱帯の国ではありがち。私は若い頃、東南アジアの安宿を渡り歩いていたことがあるから、水シャワーは体験済みで、これも難なくクリア。(とは言っても、お湯が出るならその方がいい)
ウッドテラス
キャビンのウッドテラスからの眺めはコルコバード国立公園へと続く広大な熱帯雨林である。地元の木材で作ったどっしりした椅子に座って森を眺める時間の素晴らしさといったら!昼間は目の前を蝶や野鳥が飛び交い、夕方になるとセミが大音量で鳴き出す。日が落ちると蛍が小さな光を放つ。そして、朝はホエザルの吠え声で目が覚める。これだからコスタリカはやめられない。
2月のコスタリカは乾期だが、ときどき雨が降った。熱帯雨林に降る雨もまた魅力がある。
霧の立ち込める森
ロッジの周辺にはいくつものトレイルがあり、地元のネイチャーガイドさんがその人の興味に応じたツアーを組んでくれる。トレイルについては次の記事に書くが、このロッジの敷地で過ごすだけでもとても楽しい。
私が特に気に入ったのは、入り口近くにある大きなマンゴーの木だ。
この木にはブランコとハンモックが取り付けてある。ハンモックに横になってゆらゆらと揺れながら上を見上げると、オオハシの大きな鳴き声が聞こえてくる。
オオハシの姿を探すと、いた!
クリハシオオハシ (Ramphastos swainsonii)
他にもたくさんの野鳥の姿を見ることができた。以下はその一部。
オリーブタイランチョウ (Tyrannus melancholicus)
Streak-headed Woodcreeper (Lepidocolaptes souleyetii)?
ホオグロミヤビゲラ(Melanerpes pucherani)?
オオハシノスリ(Rupornis magnirostris)
残念ながら写真は撮り損ねたけれど、とても印象に残った鳥がいる。その姿を目にしたときには、一瞬、頭が混乱した。それはあり得ないほど巨大なツバメだった。一体、あれは何?
フィールドガイドで調べると、ツバメトビ(Elanoides forficatus)というタカの仲間だった。本当にびっくりした。忘れないようにWikipediaのページを貼っておこう。
ツバメトビ
コスタリカ・ジャングル旅行2024 ⑨ コスタリカ最後の秘境、オサ半島コルコバード国立公園
マヌエル・アントニオ国立公園の最寄りの町、ケポス(Quepos)を出発した私たちは、いよいよ今回の旅のメインの目的地であるオサ半島に向けて国道34号を南下した。チャカリタ(Chacarita)で右折し、国道245号に入り、ゴルフォ・ドゥルセ(Golfo Dulce)湾を回る。
オサ半島の付け根、Rincon de Osaからのゴルフォ・ドゥルセ湾の眺め
ここでまず、オサ半島(Península de Osa)とコルコバード国立公園(Parque Nacional Corcovado)についてまとめておきたい。
オサ半島は、コスタリカ南部の太平洋に突き出た半島で、その大部分が熱帯雨林に覆われている。町らしい町はなく、半島南東部にある最も大きな集落プエルト・ヒメネス(Puerto Jimenez)でも、人口は1800人に満たない。半島の東海岸沿いには道路が通っているが、西海岸は最南端部分を除いては車の通れる道路はない。このアクセスの困難さが、オサ半島が「コスタリカの最後の秘境」と呼ばれる所以だ。ゴルフォ•ドゥルセ森林保護地区から続くオサ半島の熱帯雨林のうちのおよそ4200ヘクタールが1975年に国立公園に指定されたコルコバード国立公園である。
コルコバード国立公園(画像はWikipediaより)
コルコバード国立公園は世界で最も生物多様性の高い場所とみなされており、エコツーリストや野生動物ファンにとって究極のデスティネーションだろう。公園内にはいくつかのトレイルがあるが、コスタリカの他の国立公園同様、観光客の人数を制限しており、また、認証を受けたネイチャーガイドと一緒でなければ入ることはできない。公園はいくつかのセクターに分かれており、6つのレンジャーステーション(La Sirena, Los Patos, La Leone, Los Planes, San Pedrillo, El Tigre)が置かれている。
6つのレンジャーステーションの中でも最もアクセスが困難なラ・シレナ・レンジャーステーション(La Sirena Rangerstation)は多くの人の憧れの地で、私もどうしても行きたいと思っていた。
ラ・シレナへの行き方は何通りかある。一つは、半島の南海岸に位置するカラテ(Carate)という集落から海岸沿いを歩いて公園にエントリーする方法だ。集落といっても、カラテにはロッジがいくつかあるだけで、店などはない。
まず、カラテに辿り着くだけでも相当に大変だ。首都サン・ホセからプエルト・ヒメネス(Puerto Jimenez)までは道路のコンディションは悪くないが、車やシャトルバスで5、6時間かかる。プエルト・ヒメネスには飛行場があり、コスタリカの国内線ネイチャーエアで移動することも可能だ。そこまでは良い。問題はそこから。プエルト・ヒメネスからカラテまでは半島を沿岸沿いにぐるっと回って行くか、Alfa Romeo Airという会社でセスナ機をチャーターして熱帯雨林を飛び越えるしかない。カラテまでの道路はかなり悪く、橋のない川を2度超える必要がある。2015年に初めてオサ半島を訪れた際にはセスナを選択した。私たちが乗ったセスナ機はけっこう古くて、こんなんで大丈夫なのかと離陸の際にはちょっと怖かった。
しかし、飛び立ってみれば、これ自体が特別な非日常体験で、恐ろしさは瞬時に吹き飛んだ。機体が一気に高度を上げると眼下に緑深いジャングルが広がった。私たちを乗せた小さな飛行機の横をコンゴウインコの群れが飛び、ジャングルを飛び越えて太平洋側の海岸沿いの滑走路を降りるとき、海の向こうに夕陽が沈んでいった。わずか7、8分の飛行時間だったが、あまりの感動でしばらく言葉が出なかったほど。
カラテ空港
このとき宿泊したのは、カラテの海岸から2kmほど内陸部に入ったLuna Lodgeというエコロッジ。オーナーのラナ・ウェドモア(Lana Wedmore)さんは米国人で、オサ半島の自然を守るため、コルコバード国立公園に隣接する土地を購入し、エコロッジを経営しながら保全活動に励んでいる。ここでは詳しいことは割愛するけれど、ルナロッジとその周辺環境は本当に素晴らしい。陳腐な表現だけれど、大自然を全身で味わうことのできる夢のような場所だとだけ書いておこう。
ちなみにラナさんは以下の映画『最後の楽園コスタリカ』にも登場する(2:00頃)。
さて、カラテからは海岸沿いを歩いてコルコバード国立公園にエントリーすることができる。ラ・シレナまではおよそ20km。
カラテの海岸
しかし、海岸はとても暑く、砂の上は歩きづらい。それに、コスタリカの太平洋側の海岸は離岸流が発生するので、満潮時は危険である。私はとても歩ききれそうになかった。それでこのときにはラ・シレナの手前にあるラ・レオーネ・レンジャーステーションまで日帰り往復するのに留めた。
ラ・レオーネ・レンジャーステーション
様々な動物の頭蓋骨が展示されている
カラテからラ・シレナまで歩くのは、体力のある人でなければ難しいということがわかった(2016年に夫と息子がコンプリートした)。でも、カラテ周辺の森や、ラ・レオーネまでハイキングするだけでもかなり楽しめる。
2つ目のルートは、ロス・パトス・レンジャーステーションに近いラ・タルデの集落からラ・シレナまで歩いて移動するルート。公園の縁を歩くカラテルートとは違い、ジャングルのど真ん中を突っ切るので、よりハードコアな体験になる。このルートは2022年12月に夫と息子が挑戦した。公園の北東にあるエコロッジEcotouristico La Tardeを出発点とした。後述するが、ラ・タルデも素晴らしい場所だ。
ロス・パトスからラ・シレナへのトレイル
ラ・タルデからラ・シレナまでの移動距離はおよそ30km。ハイキングに慣れている人からすれば、それほどの距離ではないと思うかもしれない。しかし、極度の高温多湿環境の中、アップダウンの多いジャングルトレイルを30km歩くのは相当にキツいらしい。慣れている人でもラ・シレナまで最低8時間、平均だと10〜11時間かかるという。
このトレイルは雨季には通ることができない。夫らが行ったのは雨季が終わったばかりの季節で、トレイルはまだ整備がなされておらず鬱蒼としていて、さらに難易度が増した。それに、このルートは川を何度も歩いて渡らなければならない。
夜6時になれば日が落ちて真っ暗になるので、それまでにレンジャーステーションにたどり着く必要があり、休み休みのんびり歩くというわけにもいかない。どうにか歩き切った夫と息子も極限まで疲れたそうだ。でも、夫に言わせれば、まさに一生に一度の体験で、道中目にした野生動物の多さでも、これ以上の体験はまずないだろうとのこと。それを聞いて本当に羨ましく思うけれど、残念ながら私の体力では到底無理で、このルートは諦めるしかない。
アリクイ (Tamandua )
3つ目のルートは、半島の北西のドラケ湾(Drake Bay)からボートでアクセスするというもの。ほとんどの旅行者はこのルートを取る。今回、私たちもこのルートでラ・シレナへ行くことにした。このルートは歩かなくていいので体力を温存できるけれど、でも、ドラケ湾はかなりリモートな場所なので、まずそこまで行くのもそれなりに大変だ。シエルぺ(Sierpe)という場所から出ているボートでマングローブの林を通り、ドラケ湾まで行き、さらにそこからボートでラ・シレナに向かう。ドラケ湾には飛行場があるので、時間がなければサン・ホセから飛行機でドラケ湾に一っ飛びし、ボートでラ・シレナにアクセスすれば移動はぐっと楽になるだろう。
でも、それだとラ・シレナだけをピンポイントで訪れることになり、コルコバード国立公園の魅力を十分に味わうことは難しいのではないかと思う。一番楽な方法が一番素晴らしいというわけではなく、労力を使った分だけ深い体験ができるのがコスタリカ最後の秘境、オサ半島なのだろうね。
私たちは今回、ラ・シレナへの移動は3つ目のルートを選んだけれど、ラ・シレナに向かう前に2つ目のルートの拠点となるラ・タルデに数日滞在してコルコバード国立公園のロス・パトス(Los Patos)セクターの自然を楽しみ、ラ・タルデから陸路でドラケ湾へ移動した。そしてそれがまた困難の極みだった。それについては今後の記事で。
コスタリカ・ジャングル旅行2024 ⑧ マヌエル・アントニオ国立公園
ケポス(Quepos)滞在4日目に当初の目的だったマヌエル・アントニオ国立公園 (Parque Nacional Manuel Antonio)にようやく入ることができた。
マヌエル・アントニオ国立公園は、コスタリカで最も小さい国立公園であると同時に、最も多くの観光客が訪れる国立公園でもある。入場制限をしているものの、かなり人が多かった。
公園入り口はケポスの中心部から海岸沿いに7km南下したところにある。徒歩で公園へ行けるから便利だろうという理由で私たちは入り口付近のホテルに泊まっていたが、これが失敗だった。道路を隔ててビーチに面しているのもあり、観光客でごった返していてとてもうるさいのだ。
公園入り口に並ぶ人々
入る前からやや興醒めしていたけれど、せっかく来たからにはやっぱり公園内に入りたい。列に並んで、荷物検査を受け(食べ物は持ち込み禁止、公園内に飲食スペースあり)、中に入った。
マヌエル・アントニオ国立公園が人気なのは、コンパクトな公園ながら野生動物が多いこと、海に面しているので熱帯一次林、マングローブ、海岸と変化に富んだ自然を短時間で体験できるからだろう。
野生動物の姿は実際にたくさん見ることができた。
木の上のイグアナ
オジロジカ (Odocoileus virginianus)
ただし、野生動物のいる場所には常に複数のガイドツアーのグループが固まっていて、それが数十メートルおきなので、他の国立公園や自然保護区のように自分のペースで動物を探して歩けるわけではない。
昼寝中のホエザル
特にたくさん見たのはノドジロオマキザル (Cebus capucinus)だった。
お母さんの背中に乗る子ザル
寄生虫のチェック中
そこらじゅうにいるので、間近で彼らの行動をじっくり見られて面白い。でも、ノドジロオマキザルって見た目はかわいいけれど、かなり怒りっぽいようで、すぐに威嚇する。
そして、薬草になる植物を使いこなすなど、とても頭が良いらしい。
ノドジロオマキザルはMonkey´s brushと呼ばれるこの植物を使って、毛皮の中に入り込んだ寄生虫などを除去する。
食べ物持ち込み不可なのに、スナックを持ち込んだ人がいたらしい。
ビーチは綺麗だけれど、荷物をその辺に置きっぱなしにするとすぐにサルに荒らされるので注意!
マングローブ林の遊歩道
マヌエル・アントニオ国立公園、一度は行っておきたかったので実現してよかったけれど、ここで見た野生動物は他の場所でも見たものばかりだったし、激混みとまでは言わないもののかなり混んでいるので、一度でいいかな。
ケポスは宿もレストランも高いし、その割に質は、、、という感じで、正直に言うとあまり好みの場所ではない。でも、眺めの良いカフェやレストランがいくつもあって、連日のハードなハイキングの後、くつろげるのはよかった。
Emilio´s Cafeからの眺め
レストラン El Avionからの眺め
さて、いよいよ翌日はコスタリカ旅行のハイライトとなるオサ半島に向けて出発だ。
コスタリカ・ジャングル旅行2024 ⑦ 悪路の果ての天国 ロス・カンペシーノス自然保護区
数日来、何度か頭に浮かんでいた疑問を口にしたのは、出発から15kmほどの地点に到達したときだった。
「ねえ、どうして四輪駆動の車を借りなかったの?」
コスタリカに来て以来、私たちは連日、車でメジャーな観光地を離れたさまざまな場所を訪れていた。舗装されていない砂利道、でこぼこの道、くねくねと曲がる山道、穴の空いた道。走りやすいとは言い難い道が多かったが、このときまでは楽観視していた。
夫とロードトリップをするようになって、30年以上になる。これまでに世界の多くの国を訪れ、あらゆる悪路を通って来た。オフロード好きの夫は石ころだらけの急斜面や狭い崖の道など、都市生活をしていれば通る機会のない道を繰り返し走った。助手席の私は怖い思いをしたことが何度もある。最初のうちは「なぜこんな道を通らなければならないの」と文句も言っていた。でも、いつの間にか慣れてしまったのだ。運転が得意な夫は、どんな道も難なく走り抜けて来た。今回もきっと大丈夫だろう。そう軽く考える癖がついた。
ただ、いつもなら四輪駆動の車を借りる夫が今回借りていたのは、なぜか前輪駆動の車。いつも旅行の計画を立て、飛行機や宿の予約をするのは私だが、レンタカーだけは運転手の夫に任せている。サン・ホセのレンタカー会社で車を受け取った際、あれ、おかしいな?と思ったのだが、そのとき私は何も言わなかった。というのも、こちらの記事に書いたように、今回の私たちの旅行はハプニングに次ぐハプニングで始まっており、最初の数日はその処理に追われ、ストレスでかなり参っていた。ようやく車を借りられてほっとしたところで新たな問題提起をする気にはなれなかったのだ。
この日、私たちは滞在中のケポス(Quepos)から、25kmほど離れたロス・カンペシーノス(Los Campesinos)と呼ばれる、山間の小さな自然保護区へ向かっていた。そこでハイキングをするつもりだった。
この日も「なんとかなるさ」という気持ちで出発したが、山道を進むにつれ、道路の状態はどんどん悪くなっていく。本当にたどり着けるのだろうか?それで、とうとう口にしたのだ。「なぜ四輪駆動の車にしなかったのか」と。私の問いに夫は「予約するときにうっかりしてた。後から気づいたけど、四駆じゃなくてもなんとかなるだろうと思って、変更しなかった」と言う。えええ?
なんとかなるのか、これ?
ならないんじゃない?
難所に次ぐ難所。ただ横に座っているだけでも心臓が縮みそうだ。
結論を言うと、相当な時間をかけてソロソロと進み、どうにかこうにか目的地に辿り着くことができた。ロス・カンペシーノス自然保護区があるのはケブラダ・アロヨ村という、民家がいくつかあるだけのとても小さな集落だった。ロス・カンペシーノスとはスペイン語で「農夫達」を意味する。地元の農協メンバーのイニシアチブで一次林および二次林から成るおよそ33ヘクタールの土地が保護されるようになった。保護区内にはいくつかの小さなコテージがあり、宿泊客はさまざまな自然体験をし、持続可能な農業について学ぶことができる。ガイドツアーへの参加なしでも受付で入場料を払えば、保護区内のトレイルを歩くことが可能である。受付の女性は英語はまったく通じなかったので、私のカタコトのスペイン語の出番だった。
ロス・カンペシーノ自然保護区のトレイルマップ
保護区内には2本の吊り橋と2つの滝がある。
この日、私たちの他に観光客の姿は見当たらず、聞こえるのは鳥や蝉の声だけ。
コスタリカには吊り橋がたくさんある。私の知っている限りでは、コスタリカの吊り橋は目の細かいネットでできた幅の細いものが多く、吊り橋というよりも平均台とトランポリンを足したような感覚で、歩くとボヨヨン、ボヨヨンとしなるのが楽しい。
向こうに滝の見える長い吊り橋。
トレイルを歩くこと自体も素晴らしかったが、この自然保護区のハイライトはトレイルの終点にある大きな滝だ。期待を上回る美しい空間がそこには広がっていた。
滝の水は透き通る糸のように岩壁をつたい、岩の窪みに流れ落ちている。滝の下にはエメラルドグリーンの水を湛える天然のプールができている。この滝はこれまでにコスタリカで訪れた他の滝のような力強さはないが、その分、穏やかでとても落ち着く。前日のナウヤカの滝では水着を持参せず泳げなかったので、今回は忘れずに持って来た。着替えてさっそく天然プールに入る。最高!しばらく泳いでから、まるで露天風呂のような風情の小さな滝壺にも入ってみた。
ひんやりした水が気持ち良い。あ〜、ここは天国?こんな場所を独占できるなんて、信じられない。はるばる苦労してやって来た甲斐があったよ。
コスタリカは国立公園や国が指定する大規模な野生動物保護区の他にも大小様々な自然保護区が無数にあり、それぞれの場所でハイキングを楽しんだり、ネイチャーガイドによるツアーに参加できるのが素晴らしい。さすがエコツーリズム大国である。ガイドブックに載っているようなメジャーな保護区以外は混み合うこともなく、このように大自然を独り占めするチャンスもある。
素晴らしい自然を堪能した後、石だらけの道を慎重に戻り、無事にケポスに戻ることができた。
が、悪路に悩まされたのはこのときが最後ではなかった。「四輪駆動の車を借りなかった」というミスは、私たちにつきまとい、とんでもない結末を生むことになる。この時点ではまだそれを知らずにいたが、、。
コスタリカ・ジャングル旅行2024 ⑥ 飛び込みチャレンジスポット、ナウヤカの滝
観光地ケポス(Quepos)からは、マニュエル・アントニオ国立公園を始めとしたいくつかの観光ツアーが出ている。その中で興味を惹かれたのは、ナウヤカの滝とロス・カンペンシーノの滝だった。私たちはレンタカーを借りているので、ツアーには参加せず、自力で行ってみることにした。
最初に向かったのはナウヤカの滝(Cataratas Nauyaca)。ドミニカル(Dominical)から国道243号を内陸に向かっておよそ10km進んだ渓谷にある。滝に行くには、Nauyaca Waterfallsという名前の個人経営のツーリズム会社のオフィスでエントリーチケット(外国人は10米ドル)を購入する必要がある。
トレイルの入り口。
オフィスから滝までのトレイルは往復でおよそ12km。車があればオフィスから駐車場までの2kmを車で移動できるので、歩くのは往復8kmになる。そこそこアップダウンがあって、それなりにキツいらしい。歩きたくない人はジープで滝のそばまで連れて行ってくれるサービスもあったが、歩くことにした。途中、食べ物や飲み物の買える場所は一切ないので、要持参である。
バル川を渡り、二次林、そして一次林を歩き、目的の滝へと向かっていく。一生懸命歩いたので、途中の写真を撮るのを忘れてしまった。
ナウヤカの滝は2つのレベルからなる滝で、上段の滝は高さ45メートル。
コスタリカには迫力のある滝が多いなあ。
その下方に高さ20メートルの滝がある。広い滝壺には、たくさんの人が泳いでいた。そして、なんとこの滝は飛び込みスポットになっているのだ。滝は階段状になっており、下の方の段から飛び込む人、中程の段から飛び込む人、てっぺんから飛び込む強者(おそろしい!)など、その人の勇気に応じたチャレンジが繰り広げられている。ただし、勝手に飛び込むのは許可されない。必ず係員の補助を受けて飛び込むというのがルールだ。
実は、滝壺で泳げるというのを知らなかったので、この日は私たちは水着を持っていなかった。水がとても綺麗だったので、泳げなくて残念だなあとも思ったけれど、水着を持参していたら自分も飛び込みチャレンジをしなければならないような気分になっていたかもしれない。まさか、てっぺんから飛び込むことはあり得ないけど、真ん中あたりからやってみようかという考えが頭をよぎっていただろうか。
うーん。水着がなくて、むしろよかった。怖いことを考えなくて済んだから。
勇者たちのチャレンジをしばし見物し、往路についた。途中で、目の前の木の上にオオハシが止まっているのが見えた。オオハシにはいろいろな種類がいるが、コスタリカで最もよく見かけたのはこのクリハシオオハシ( Ramphastos swainsonii)だ。
さらに歩くと、セクロピアの木にミツユビナマケモノがぶら下がっている。
ノドチャミユビナマケモノ (Bradypus variegatus)
野生のナマケモノは今までに何度も見たことがあるけれど、いつも葉の生い茂る密林の高い木の上にいて、お尻しか見えないことがほとんどなので、こんなにはっきりと姿を見ることができて感激だった。しかも、ゆっくりと体を動かし、移動する姿を観察することができた。ナマケモノは一生の大部分の時間を木にぶら下がって過ごし、地面には1〜2週間に一度くらい、排泄のために地面に降りてくるだけだというが、もしかして今がそのトイレタイムなのだろうかと少し期待してしまった。残念ながら下には降りて来なかったけれど。それにしても、なぜわざわざ排泄のために手間暇かけて地面に降りる?木の上からすればよいではないか?気になって調べてみたところ、ナショナルジオグラフィックのこんな記事が見つかった。
ナマケモノ、危険なトイレ旅の見返りは?
ナマケモノを眺めていたら、観光客を乗せたジープがオフィスの方からやって来た。ナマケモノには気づかなかったのか、スピードをさげずにそのまま滝の方向へ走り去った。
なかなかくたびれるトレイルではあったけれど、ナマケモノをじっくり見ることができたから、ジープの送迎サービスを頼まずに自分で歩いた甲斐があったなあ。