自宅の庭でバードウォッチングをしよう!と思い立ってから1年が経過した。それ以前にも庭で野鳥の姿を目にすることはよくあったのだけれど、真剣に見たことはほとんどなかった。真っ黒でクチバシが黄色く、ひときわ歌声の良いクロウタドリ(Amsel)だけはさすがに認識していたが、他の鳥はどれが何なのか、さっぱりわからない。だって、鳥ってやたらと種類がいるしねえ。

クロウタドリ(Amsel)

 

鳥に疎い私であったが、おととし休暇でパナマを訪れ、多くの美しい野鳥を見たのがきっかけで(わいるどパナマ観光)、突如、野鳥ファンになってしまった。そう、私はちょっときっかけを与えられると、どハマりするたちなのである。

ドイツにだって野鳥はたくさんいる。まずはドイツの野鳥が知りたい。そうだ、手始めに庭に来る野鳥を観察しようと決め、どのように始めたのかについては、以下の過去記事に記した通りである。

→  ドイツのネイチャーツーリズム2 自宅の周りでバードウォッチング

→  シジュウカラの育児観察記録その1 巣箱の設置 (シリーズでその10まであります)

始めてみると、これが思いのほか楽しくて、今ではすっかり趣味として定着した感がある。1年間観察し、自宅の敷地内だけでも以下の22種の野鳥を確認できた。

アオガラ(Blaumeise) シジュウカラ(Kohlmeise) エナガ (Schwanzmeise) ズキンガラス(Nebelkrähe) スズメ(Feldsperling) イエスズメ(Haussperling) ヨーロッパコマドリ(Rotkehlchen) ゴシキヒワ(Stieglitz) ゴジュウカラ(Kleiber) クロウタドリ(Amsel) カケス(Eichelhäher) モリバト(Ringeltaube) ホシムクドリ(Star) シロエリヒタキ(Halsbandschnäpper) クロジョウビタキ(Hausrotschwanz) アカゲラ(Buntspecht) クマゲラ(Schwarzspecht) キクイタダキ(Wintergoldhähnchen) カンムリガラ(Haubenmeise) ウタツグミ(Singdrossel) マガモ(Stockente) カササギ(Elster)

2023年3月7日最終追記: さらに、アオゲラ(Grünspecht) コアカゲラ(Kleinspecht) マヒワ(Erlenzeisig)ハシブトガラ(Sumpfmeise) ヒガラ(Tannenmeise) ムナフヒタキ(Grauschnäpper) マダラヒタキ(Trauerschnäpper) アオサギ(Graureiher) ズアオアトリ(Buchfink) アトリ(Bergfink) シロビタイジョウビタキ (Gartenrotschwanz) シメ(Kernbeißer) ウソ(Gimpel)がやって来た。

我が家の周囲は森と湖なので、自宅周辺も含めるともっともっと多くの野鳥がいる。森の縁を猛禽類が飛んでいたり、森からフクロウの鳴き声が聞こえて来る。渡りの季節にはガンやツルの群れが庭の上を飛んで行く。

種を特定するには、鳥を見つけたらまず写真を撮り、それを本やネットの鳥の画像と見比べて判断する。鳥は素早いのでうまく写真が撮れないことも多いし、どうにか撮れても似たような外見の鳥がたくさんいて識別はなかなか難しい。でも、だからこその面白さがある。わかる鳥が一つづつ増えていくのは楽しい。ドイツでは野鳥観察はメジャーなので、関連書籍がたくさん出ており、ネット上にも情報がたくさんある。ほとんどはドイツ語の情報だけれど、ラテン語の学名が併記されているので、そこから和名を検索することができる。

以下は、私が野鳥観察に活用している情報リスト。

野鳥関連のドイツ語情報ソースまとめ

 

書籍

ドイツには自然観察のためのガイドブックが非常に豊富にある。中でも自然科学の啓蒙本に特化したKosmos出版のフィールドガイドは定番中の定番だ。どこの書店にも置いてあるし、野鳥関連フィールドガイドも目的別、フィールド別にたくさん出ていて、重宝である。どれも見やすく、サイズ感良く、装丁も綺麗なので眺めてるだけでもワクワクする。

  • Kosmos出版の野鳥ガイド

Welcher Gartenvogel ist das? Kosmos Basic : 126 Gartenvogel einfach bestimmen (2019)

庭によく来る野鳥126種の情報を収めたフィールドガイド。ポケットサイズで片手で持ちながらパラパラ見ることができて便利。

Welcher Gartenvogel ist das? 100 Arten beobachten und erkennen

こちらも同様に庭に来る野鳥のガイドブックで、私はこれを愛用している。掲載されているのは100種と、上のポケットガイドよりも少し少ないが、画像が大きく見やすい。ドイツの庭で見られる野鳥に関する背景情報が多く載っていて、専用のアプリ、KOSMOS Plusを使えば掲載されている鳥の鳴き声を聞くことができる。

Was fliegt denn da?

ヨーロッパの野鳥540種を収めた充実のフィールドガイド。こちらも、アプリKOSMOS Plusが使える。

Der Kosmos Vogelführer Alle Arten Europas, Nordafrikas und Vorderasiens

ヨーロッパだけでは飽き足らない!という人にはこちら。アフリカ北部と西アジアの野鳥も掲載。

Vögelbeobachten in Norddeutschland

ドイツ北部のバードウォッチングスポットを集めた詳しい〜フィールドガイド。GPS位置情報付き。

Vögelbeobachten in Ostdeutschland

上のフィールドガイドのドイツ東部エリア版。

Vögel futtern, aber richtig: Das ganze Jahr füttern, schützen und sicher bestimmen

野鳥に餌をやる際に留意すべき点について解説した本。ヨーロッパでも野鳥の個体数は激減しており、保護のため、特に冬場に庭に野鳥の餌を用意することが奨励されている。でも、その種ごとに適切な餌の与え方があって、間違ったやり方をすると逆に野鳥の健康を損ねてしまうこともある。我が家でも庭に餌台を設置しているので、この本を購入した。

  • それ以外の出版社の本

Die Vogelwelt der  Nuthe-Nieplitz-Niederung

我が家からもっとも近い野鳥保護区、Nuthe-Nieplitz自然公園で見られる野鳥の本。ベルリンの南西40kmに位置するNuthe-Nieplitzでは、特に冬場は渡り鳥がたくさん見られるので、カメラを持って散歩に行くのがとても気に入っているのだ。

Vögelstimmen: Unsere Vögel und ihre Stimmen

ボタンを押すと鳥の鳴き声が聴こえる。とっても素敵な図鑑。この本のおかげで、夏場の夜に森からよく聞こえてくる鳴き声はモリフクロウ(Waldkauz)の鳴き声だということがわかった。

Zugvögel im Wattenmeer: Faszination und Verantwortung

北ドイツ、ワッデン海に見られる渡り鳥とその保護についての書籍。9月にワッデン海へ休暇に行き、野鳥の世界に魅せられて思わず購入してしまった。専門的な内容なのでさらっと読める本ではないが、時間のあるときにじっくり読みたい。

雑誌

野鳥ファン向けの雑誌もいくつか刊行されている。プロの野鳥写真家による美しい写真と共に最新の野鳥関連情報や特集記事を読めるのが良い。

Der Falke

Vögel

ウェブサイト

  • NABU

野鳥に関する情報なら、ドイツ最古の野鳥保護団体、NABUのサイトの情報が充実している。NABUは現在は自然保護活動全般に取り組んでいて、サイトには野鳥以外の情報も多い。野鳥の情報なら、例えば以下のページが参考になる。

Vögel

NABU-Vogelporträts

Beobachtungstürme in Brandenburg(ブランデンブルク州の野鳥観察塔マップ。各州の自然保護区についても同様の情報がある)

  • ドイツ・アヴィファウニスト協会 Dachverband Deutscher Avifaunisten (DDA)

ドイツ・アヴィファウニスト連盟はドイツ全国の野鳥モニタリングプロジェクトのコーディネイトを行う包括的組織。

DDAのWebサイト

DDAの野鳥データバンク、Ornitho.deでは、ドイツ国内で観察できる野鳥の情報をほぼリアルタイムで得ることができる。(ドイツ語の他、英語、フランス語のページもあり)

Ornitho.de

  • Wikipediaにある関連ページ

ドイツの野鳥リストを科ごとに分類したリスト

List der Vögel in Deutschland

ドイツ国内の野鳥保護区リスト

Vogelschutzgebiete in Deutschland

  • 羽関連のサイト

鳥の羽から種を特定するためのサイト

Vogelfedern – eine Bestimmungshilfe

鳥の羽標本が数多く登録されているデータバンク

Featherbase

博物館

ドイツ全国の自然史博物館では、その地域に生息する野鳥の展示が見られる。私がこれまでに行った中では、以下の博物館の野鳥関連展示が特に充実していた。

Altenburg: Mauritanium

Bamberg: Naturkundemuseum Bamberg(「鳥の間」が美しい!関連過去記事はこちら

Berlin: Museum für Naturkunde

Frankfurt am Main: Senckenbergmuseum

Halberstadt: Heineanum

Hannover: Landesmuseum Hannover

You Tube

You Tube上にも野鳥関連のドキュメンタリー動画などが数多くアップされている。以下は私のお気に入り動画。

Vogelkunde mit Dr. Uwe Westpha

130種の鳥の鳴き声を真似できる鳥博士、Dr. Uwe Westphal先生がすごすぎ!!

ARTE:  Zugvogel Storch

北東ドイツでよく見られる渡り鳥、シュバシコウに関するドキュメンタリー

Arte: Die fantastische Reise der Vögel

渡り鳥に関するドキュメンタリー

アプリ

NABU Vogelwelt

NABUのドイツ野鳥識別アプリ。機能はシンプルだけどその分使いやすいので、散歩中に鳥を見かけたときなど、忘れないうちにさっと調べられて便利。無料。

Merlin Bird ID

コーネル大学が開発した世界対応のすごい無料野鳥アプリ。スマホで野鳥を撮影し、どこで見かけたのかなどいくつかの質問に答えると、種を推定して教えてくれる。種ごとの分布マップを見たり、鳴き声を聴くこともできる。このアプリで調べた野鳥のデータはデータバンクに登録されるので、コーネル大学の野鳥研究に貢献できる。

BirdNET

鳴き声を録音すると、何の鳥か識別してくれるアプリ。鳥の姿が見えないけれど声がよく聞こえるときに便利。

BirdID

鳥ゲームアプリ。野鳥の画像が表示され、種を当てる。いろいろな角度から撮った画像が使われているので、実際のバードウォッチングの練習になってよい。

野鳥インフォメーションセンター

NABU Naturschutzzentren

ドイツ全国にあるNABUの自然保護センターではそれぞれの地域の野鳥の情報が得られる。リンク先のマップが便利。

SNSアカウント

SNSで野鳥関係アカウントをフォローすると、何もしなくても可愛い野鳥の写真や動画、ニュースが流れて来るので、いつの間にか野鳥の知識が増えていく。

NABUのTwitter アカウント

NABUのInstagramアカウント

Nordrhein-Westfälische OrnithologengesellschaftのTwitterアカウント

DDA(Dachverband der landesweiten regionalen ornithologischen Verbände in Deutschland)のTwitter アカウント

Landesbund für Vogelschutz e.V. のTwitterアカウント

 

e-ラーニング

Naturguckerakademie

ドイツの野生動物について本格的に学べるNABUの無料eラーニングサイト。現在(2022年3月29日)、野鳥講座、脊椎動物講座、哺乳類講座の3つがアップされている。それぞれの講座の内容を終了すると終了証明書がメールで送られて来て、ウェビナーへの参加資格が得られる。(野鳥講座を受講しましたが、とても充実していました)

 

とりあえずはこんなところ。もっと見つけたら随時追加します。

 

 

 

新型コロナウイルスが猛威を振るっており、現在、移動や旅行が楽しめる状況ではない。こんな時期には他の人の書いた旅行記をじっくり読んで、また自由に旅ができるようになったときのためにアイディアを膨らませておくのもいいかもしれない。近頃はブログやSNSで手軽に情報収集できるようになって便利だが、書籍としてまとまったかたちで旅行記や滞在記を読むのもやっぱり良いものだ。

ドイツに住むようになってから、ドイツ人の書いた旅本も読むようになった。そして、ドイツで出版され、読まれている旅本は日本で目にするものとはちょっと趣向が違うということに気づいた。私が日本でよく読んでいたのは、旅先で異文化やその土地ならではのライフスタイルに触れるという内容のものが多かったが、ドイツの書店で目につく旅本は体を張った冒険記が多い。

そして、それらの冒険記のスケールの大きいこと!!

ドイツで生活していてしばしば感じることでもあるが、ドイツ人には(ドイツ人に限らないかもしれないが)体力のある人が多い。散歩が国民的余暇で、日頃からよく歩く。アスリートでもない人が「ちょっとサイクリング」と30〜40kmの距離を自転車で移動するのもザラである。日本のメディアではよく「欧州の人はバカンスではなにもせず、ただ海辺でのんびりするだけ」と紹介されたりするが、必ずしもそうではない。山登りだサイクリングだスキーだラフティングだヨットだ、、、etc.とアクティブ休暇を楽しむ人もとても多く、そのためのインフラも整っている。

だからドイツではちょっとやそっとの旅コンテンツでは書籍化されないのだろう。とうてい真似できないスケールの個性的な冒険記が多い。著者らの体力が自分とは違いすぎて、ただただ圧倒される。でも、そんな凄すぎる旅本を読むのが私は好き。人間っていろんなことができるんだなあ、自分ももっと、体力と能力の範囲でやりたいことに挑戦してもいいんだよね?という気持ちになれるから。

そんなわけで、私がこれまでに読んだドイツ語の冒険記の中から面白かったものをいくつか紹介しよう。

 

魅惑的な野生の世界へ引き込まれる冒険本

Gesa Neitzel著 “Frühstück mit Elefanten   als Rangerin in Afrika”

タイトルは日本語にすると「ゾウと朝食を。アフリカでサファリガイドになる」って感じかな。ベルリンでテレビ制作の仕事に就いて忙しい毎日を送っていた著者はある日、「生活を変えたい」と仕事を辞め、サファリガイドになるための訓練を受けるために南アフリカへ旅立った。快適なアパートを手放し、インターネットはおろか常に危険と隣り合わせのアフリカのサバンナで野宿しながらサバイバルスキルを獲得し、自然そして野生動物に関する知識を蓄積していく。サファリガイドになるまでの訓練はとてもハードだったが、著者にとって心から満ち足りていると感じられる時間だった。

私は野生動物を見るのが好きで、これまでにコスタリカやパナマ、スリランカなどで野生動物観察ツアーに参加した。それが本当に楽しかったので、とても面白く読んだ。自分が今からサファリガイドになるのは無理だけど、いつかアフリカでも野生動物を観察してみたい。

Gesa Neitzel氏のウェブサイトはこちら

いくつになっても冒険は可能。困難なんて気にしない

Heidi Hetzer著 “Ungebremst leben: Wie ich mit 77 Jahren die Freiheit suchte und einfach losfuhr”

「ブレーキを踏まず生きる 〜 77歳で自由を求め、走り出した私」というこの本、凄まじい。車屋の娘として育った著者は子どもの頃から車が大好きだった。「女の子が車の運転なんて」と言われた時代に車を乗り回し、車修理工の資格を取って家業を継ぎ、ベルリン最大のカーディーラー経営者となる。カーレースの常連でもあった著者は歳を重ねても衰え知らず。77歳のとき、家族が止めるのも聞かずに1930年代物のハドソンに乗って一人で世界一周ドライブの旅に出る。

 

80歳近い女性が一人で世界一周ドライブというだけで凄いけれど、読んでビックリなのは、道中、車が壊れっぱなしで、旅自体を楽しむ余裕がほとんどなく、まるで「世界一周、車修理の旅」になってしまったこと。それでもめげずに旅を続けるのだから精神力が半端ではない。しかも、著者は旅の途中で癌にかかってしまうのだ。急遽ドイツに一時帰国し、手術を受けるが、すぐにまた旅を続行。えええ!? 著者は旅を無事に終えた後、残念なことに昨年、他界されたが、「ブレーキを踏まず生きる」というタイトル通りの人生を送られたのだろうなあ。

 

なぜわざわざ?ということを敢えてやることに意義がある

Markus Maria Weber著 ”Coffee to go in Togo: Ein Fahrrad, 26 Länder und jede Menge Kaffee”

「トーゴでコーヒーをテイクアウト たっぷりコーヒーを飲みながら26カ国を自転車で走る」っていうこの本もクレイジー。コンサルタントとしてバリバリ働いていた著者はある朝、いつものようにテイクアウトのコーヒーを手に電車に乗る。今やドイツの都市ではコーヒーのテイクアウトは当たり前の風景になった。忙しい朝、ゆっくり座ってコーヒーを飲んではいられない。でも、テイクアウトが一般的になって、世の中ますます忙しくなったのでは?著者ふと考えた。このコーヒーってどこから来たんだっけ?もしかしてアフリカのトーゴかな?トーゴで飲むコーヒーはどんな味なんだろう?そして、何を血迷ったか、「トーゴにコーヒーを飲みに行く!」といきなり自転車に乗ってトーゴへと出発した。自転車になんて、ほとんど乗ったこともないのに。


ドイツから目的地トーゴまでの道のりは14037km、通過した国は27カ国。著者が道中で出会った人たちの中には、単身で自転車世界一周中の女性も登場する。世界は広く、世の中にはいろんな人がいるね。私に同じことができるとは到底思わないし、したいわけでもないのだけれど、自分の知っている世界はごくごく小さいのだなあと感じた。

著者のウェブサイトはこちら

 

「フリーランスでノマド」の走り?発信しながら世界一周

Meike Winnemuth著 “Das große Los: Wie ich bei Günter Jauch eine halbe Million gewann und einfach losfuhr”

「クイズミリオネアで50万ユーロ当てて、旅に出た」。タイトルの通り、クイズ番組「クイズ・ミリオネア」のドイツ版”Wer wird Millionär”で50万ユーロの賞金を獲得した著者がそのお金で1年間、世界旅行をする話。でも、そのコンセプトが面白い。1年間、1ヶ月づつ違う国で生活するというもの。

 

旅というよりも、異文化体験年という感じ。特別ハードなことをしたわけではないのだけれど、もともと職業ジャーナリストの著者はそれぞれの国から発信しながら旅をしたのである。仕事をしながら旅をしたので、結局、50万ユーロには手をつけずに済んだというオチ付き。まあ、今で言うところのノマドなんだけれど、2011年の話なので、当時はかなり斬新なアイディアに感じられ、とても面白く読んだ。著者はこの旅以外にも常に何かしら面白い独自プロジェクトをやっている人で、1年間毎日同じ服を着るチャレンジ(注 同じワンピースを2枚持っているので洗濯は普通にする)とか、庭付きの家を借りて1年間園芸に勤しむチャレンジとか、次から次へと新しいことをする。今度は何をするのかな?と注目してしまう。

著者のウェブサイトはこちら

 

現在進行形の放浪の旅をフォローする

Christine Thürmer 著 ”Wandern, Radeln, Paddeln”

「ハイキング、サイクリング、カヤック」と、タイトルはあまり面白くないけど、最近、ネット上で偶然、著者のことを知り、気になって読んでみた。著者は現在、「世界で最も長距離歩いた人」なんだそう。今も旅の途中なので記録は日々更新されるが、今日(2020年10月23日)時点で著者Thürmer氏が歩いた総距離は47000km。かつてはバリキャリだった著者は解雇をきっかけに「別の人生も歩んでみたい」とハイキングしながら生活することを決断した。一年の大半はテントを担いで移動している。でも、決して世捨て人になったわけではないと、彼女は言う。キャリア派だったときの生活も気に入っていたが、今の生活も気に入っている。全然違う2通りの生き方をしてもいいよね?というスタンスだそうだ。Thürmer氏の冒険記はすでに3冊出版されており、これはそのうちの2冊目。ヨーロッパを徒歩と自転車とカヌーで合計12000km移動した記録だ。徒歩だけでなく自転車やカヤックも使うのは、同じ体の動きばかりすることで体の特定の部位が摩耗するのを防ぐためだという。

 

私は歩くのも自転車を漕ぐのもカヤックも好きだけれど、遊びでちょろっとやるだけで本格的な移動手段としたことはない。でも、コロナで向こう数年は宿泊を伴う旅行計画を立てるのは難しそうだから、この際、アウトドア旅行にチャレンジしようかなと考え中で、参考のために読んでみた。野宿も慣れればそれなりに快適かな?と思うものの、トイレのことを考えるとさすがに厳しいかなと躊躇するものがある。でも、SNSで著者が投稿する風景写真を見て、自由っていいなと羨ましくも思う気持ちもある。

著者のウェブサイトはこちら

 

今回紹介した冒険記5冊のうち、4冊の著者は女性である。私も女性なので女性による冒険記を読むことが多いが、男性著者の冒険記はさらに数が多いので、いろいろ読んでまた紹介することにしよう。

 

野鳥観察をするようになって約1年、どうやらすっかり趣味として定着したようである。夏の間は葉っぱに隠れて鳥達の姿がよく見えず寂しかったが、これからの季節は視界を遮るものが少なく、バードウォッチングが楽しい季節だ。ブランデンブルク州には渡り鳥の休憩地がたくさんあり、私の家の近くでも冬の間は多くの渡り鳥を見ることができるのが嬉しい。でも、だんだん欲が出て来て、少し遠出をして野鳥が見たくなった。そこで、自然の好きな友人数名を誘い、ブランデンブルク州最大の野鳥の生息地として知られる自然保護区、ギュルパー湖(Gülper See)へ鳥を見に行って来た。

 

西ハーフェルラント自然公園(Naturpark Westhavelland)内に位置するこの自然保護区はドイツで最も古い自然保護区の一つで、その大きさは776ヘクタールにも及ぶ。ベルリン中心部からは北西に100km弱。最寄りの町、ラテノウで友人達をピックアップし、車でギュルパー湖に向かった。ブランデンブルク州自然保護基金(Naturschutzfonds Brandenburg)のネイチャーガイドさんによる無料の野鳥観察ツアーに申し込んであったのだ。

 

どんな鳥が見られるかな?ツルが来ているといいねと話しながら集合場所に向かう途中、運転していた夫が道路脇の畑に視線をやり、「見て!」と言う。

「あっ!ツル!」「いる!!」ツアー開始前にすでにツルを目にして興奮する私たち。

全部で何羽くらいいたかなあ。ブランデンブルクでクロヅルを目にすることは珍しくはないのだが、ここはとても数が多い。

鶴の飛ぶ姿は本当に優雅だね。

ひとしきりツルを楽しんだら、ギュルパー湖でのバードウォッチングツアーの時間になった。湖南岸の東側にある風車の下で集合し、ネイチャーガイドさんの説明を聞きながら、3時間ほどかけて南岸の堤防を歩く。ガイドさんらはギュルパー湖自然保護区の生態系とその保護活動について、たっぷりと説明してくださった。ギュルパー湖には年間を通じて多くの野鳥が訪れるが、秋から冬にかけては様々な種類のガチョウやカモ、カモメ、そしてツルの群れを楽しむことができる。

 

ギュルパー湖は車がないとアクセスが困難だという難点があるけれど、いざ湖に到着すれば視界を遮るものがほとんどなく、最高のバードウォッチングのロケーションだ。この写真は300mmの望遠レンズで撮ったもので、バードウォッチング用の双眼鏡があるとさらによく見える。友人はこのために50倍の双眼鏡を持参していたので、覗かせてもらったら最高だった。

 

突然、一羽が鳴き声を上げたと思ったら、ハイイロガンたちが一斉に空に舞い上がった。壮観!

 

ツアー最終地点の展望台に着き、眺めた景色の美しさは言葉で言い表しがたいものだった。湖の上に広がる空はパステルカラーのグラデーションに染まり、その中を隊列を組んで移動していくガチョウ達の鳴き声が響き渡っている。

暮れていく空をただただ眺め、時間が過ぎて行った。ついに日が落ちて、暗くなったので、懐中電灯で足元を照らしつつ、車のあるところまで戻る。気がついたらすっかりお腹が空いていた。

湖の近くにはレストランもカフェもないので、風車の下に設置されたテーブルに座って保温鍋に作って持参したスープを皆で飲むことにした。あたりには街灯もないので、テーブルの上部の梁に懐中電灯を引っ掛けて、その灯りだけで食事をする。いかにもアウトドア!という感じだ。長時間外を歩いて少し体が冷えていたので、あったかいスープを飲んで温まり、友人の手作りケーキを頬張りながら、「お天気に恵まれて本当に良かったね。ツルもガチョウも夕焼けも見られて、最高だねー」と言い合った。

 

しかし、感動はここでは終わらなかった。

 

ギュルパー湖は自然保護区であると同時に星空パークにも指定されている。ドイツ中で最も夜空が暗いとされるこの一帯は、西ハーフェルラント星空パーク(Sternenpark Westhavelland)として天体観測ファンの聖地なのである。定期的に天体観測イベントなども開催され、アストロ休暇を楽しむ人たちもいるらしい。この日は雲もなく、頭の上には無数の星が瞬いている。

もっとよく星を見ようと、懐中電灯を消して空を見上げた。

「うわあ、こんな凄い星空、初めて!」「天の川が見えるよ!」

暗闇の中、草むらに寝っ転がって、しばし無言で星空を眺める。その間もあたりにはガチョウ達の鳴き声が響いている。

 

(ご一緒した小松崎拓郎さんが撮影した写真)

 

この夜、私たちが満ち足りた気持ちで帰途についたのは言うまでもない。「何もない」としばしば形容されるブランデンブルク州だけど、本当はいろんなものがある。お金もかけず、こんなに豊かな体験ができるブランデンブルクはやっぱり素晴らしい。

 

小松崎さんもnoteで体験記をアップされていますので、是非あわせてお読みください。

滞独日記「ブランデンブルクは自然の宝庫。ギュルパー湖で渡り鳥達が大合唱する風景を鑑賞」

 

追記: ご一緒した佐藤ゆきさん(@yuki_sat)の記事がアップされました。こちらも是非お読みください。

満点の星空を眺める

 

 

その地方に特徴的な建材に興味がある。古い建物の多くにはその土地で採れる木や石が使われている。建材が町並みや村の風景を作り、地方ごとに異なる味わいを生み出しているのが魅力的だ。

ベルリンやその周辺のブランデンブルク州は大部分が平地で石切場がほとんどない。こちらの記事に書いたように、古い建物は氷河によって北欧から運搬されて来た野石を積んでものか、レンガ造りが多い。レンガの建物は古くは中世から建てられていたが、教会や修道院などに限られていた。一般的な建物にもレンガが普及したのは、技士フリードリヒ・エドゥアルト・ホフマン(Friedrich Eduard Hoffmann)が考案し、1859年に特許を取得したホフマン窯(Hoffmannscher Ringofen)によってレンガの大量生産が可能になってからである。(ホフマン窯については、過去にウェルダー市グリンドウで窯を見学した際にまとめたので、興味のある方は以下の記事をお読みください。)

レンガは粘土から作られる。ベルリン周辺(つまり現在のブランデンブルク州)には粘土の産地がたくさんある。その中で最も規模が大きかったのはベルリンの北にあるツェーデニク(Zehdenick)を中心とする地域だ。19世紀後半にベルリンに多くの労働者が流れ込み市内の人口が急増したとき、大急ぎで住宅を建設する必要があった。その際に建材として使われたレンガの多くがツェーデニク産だった。ドイツ再統一後、ツェーデニクではもうレンガの生産は行われていないが、かつての工場跡地がレンガのテーマパークになっている。そのパーク、Ziegeleipark Mildenbergにブランデンブルク探検仲間のローゼンさん(@PotsdamGermany)と一緒に見学に行って来た。

うちから車で行ったのだけど、道を間違ったり、ナビに変な道に誘導されたりして、えらい時間がかかってしまった。辛抱強いローゼンさんは道中、文句の一つも言わない。延々3時間の移動後、ようやく現地に到着。で、結果から言うと、レンガパークははるばる行った甲斐のある、大変見応えあるミュージアムだった。

入り口のすぐ横にいきなり立派なホフマン窯が立っている。このテーマパークはヨーロッパ産業遺産の道(European Route of Industrial Heritage, ERIH)のアンカーポイントの一つ。その広大な敷地には4基のホフマン窯の他、粘土の処理施設や粘土の運搬に使われたレール、東ドイツ時代の設備などが残っていて、近郊で採掘された粘土が搬入され、レンガとなって隣接する港から搬出されるまでの行程や近代化の歴史を知ることができるのだ。(敷地の地図はこちら

パーク内に見どころが点在していて、どこから見始めたらいいのかわからない。入場チケット料金に列車でパークを一周するガイドツアーが含まれているので、先に全体像を捉えてから個々の展示を見るとわかりやすいと思う。

可愛い列車でパーク内を周遊。ワクワクする
ホフマン窯の内部

グリンドウのレンガ工場で見たホフマン窯は円形だったが、このパーク内のホフマン窯は全て楕円形である。窯の仕組みについては上記の過去記事に書いたのでここでは割愛しよう。

ツェーデニクを中心とするハーフェル川沿いの土壌に粘土が豊富に含まれるのは、ブランデンブルクの地形が氷河地形であることと関係がある。最終氷期(ヴァイクセル氷期)が終わったとき、溶けた氷は川となって一帯を流れた。その際に堆積した細かい粒子が深さ12mにも及ぶ粘土の層を作った。1885年から1887年にかけてこの地方に鉄道が敷かれた際、豊富に埋蔵する粘土が偶然見つかった。折しもベルリンは建設ブームの最中で、大量の建材を必要としていた。1890年にツェーデニクのミルデンベルク地区に最初のレンガ工場が建てられ、それから周辺に雨後の筍のように次々とレンガ工場ができていった。最盛期にはこの地域は63基ものホフマン窯が稼働する欧州最大のレンガ生産拠点の一つに発展した。それから東ドイツ時代を経て1990年にドイツが再統一されるまでの間、ここではノンストップでレンガが焼かれ続けたのだ。

ハーフェル川沿いのかつての港

焼きあがったレンガは隣接する港から水運でベルリンへと運ばれた。最盛期には1日に30槽もの船がレンガを載せてベルリンに向け出港した。帰りは工場稼働のための燃料となる石炭がツェーデニクへ運ばれて来た。

レンガというと、赤レンガを真っ先に思い浮かべるよね?でも、ツェーデニクのレンガはあまり赤くない。黄色から肌色、もしくはピンクがかった淡い色合いのものが多いのだ。そして、土壌の性質上、ツェーデニク産の粘土はあまり上質とはいえず、建物の外壁に使うのには適していなかった。そのため、首都ベルリンでは市庁舎など見栄えが大切な建物にはより上質な他の産地のレンガがよく使われ、ツェーデニク産のものは主に労働者用のアパートなどに利用された。上から漆喰を塗って隠してしまえば質はさほど問題にならなかったから。

バケットチェーンエキスカベーター

水分をたっぷり含んだ粘土は重く、掘り出すのも運ぶのも形成するのも大変だ。初期のレンガ生産は大部分が手作業で、ものすごい重労働だったが、次第に上記の画像のエキスカベーターなどを含むいろいろな機械が発明され、近代化されていく。

現在は草ボウボウでやや廃墟化しているけど、1839年に建設されたStackbrandtレンガ工場は当時、欧州で最も近代的な設備を備えていた。それまでは春から秋までの季節労働だったレンガ生産を通年で行うことが可能となり、生産性が飛躍的に向上した。

蒸気機関
東ドイツ時代の工場設備

第二次世界大戦後はツェーデニク周辺のレンガ工場が一つにまとめられ、人民公社となってレンガ生産が継続された。このエポックに関する展示も面白かった。

穴の空いたレンガ。穴を開けることで少ない量の粘土で焼き上がりが早く丈夫なレンガを作ることができる

パーク内の建物それぞれに展示があって、情報量が多い!5時間ほど滞在したけれど、半分くらいしか見ることができなかった。ツェーデニクのレンガ生産が多くの季節労働者によって支えられ、彼らがこの地域の社会文化の形成に重要な役割を担っていたことや、強制労働が行われていた時代もあったことなど、社会史もとても興味深い。ツェーデニクという地名は普段ほとんど耳にしないが、首都ベルリンはツェーデニクのレンガによって作られたと言っても言い過ぎではないだろう。今は過疎地が多いブランデンブルク州は「田舎」「何もない」などと小馬鹿にされることが多いんだけど、ブランデンブルクのかつての産業地を巡っていると、ベルリンの発展がいかにブランデンブルクに支えられていたかを感じるのだ。そのような視点で見るとブランデンブルクは実に面白い。

レンガパークでは展示を見るだけでなく、レンガ作り体験もでき、広ーい敷地には子どもの遊び場や小さな動物園もある。パークのすぐ外側にキャンプ場も整備されているので家族連れで訪れるのにも良さそう。でも、この日は平日だったからか、訪問者はほとんどいなくて、ほぼローゼンさんと私の貸切状態だった。入園料わずか8ユーロでなんと贅沢なんでしょう。