シチリア島でエトナ山を軽く見た後、カターニアを離れ、エオリエ諸島(Isole Eolie)へ向かった。エオリエ諸島は海底の火山活動によりティレニア海南部に形成された、リーパリ島(Isola Lipari)、サリーナ島(Isola Salina)、ヴルカーノ島(Isola Vulcano)、ストロンボリ島(Isola Stromboli)、パナレーア島(Isola Panarea)、フィリクーディ島(Isola Filicudi)及びアリクーディ島(Isola Alicudi)の主要7島から成る火山弧である。
シチリア島からはミラッツォ(Milazzo)の港からフェリーが出ている。シチリアを経由せずにイタリア本島のナポリ港から直接行くことも可能だ。
車ごと乗り込み、1時間ほど船に揺られていると、エオリエ諸島のうち最もシチリア島に近いヴルカーノ島が見えて来た。
うわー!美しい景色に気分が一気に高揚する。青い海に飛び込みたーい!しかし、私たちが滞在するのはこの島ではなく隣のリーパリ島。もうしばらくの我慢である。
ヴルカーノ島から20分ほどでリーパリ島に到着した。事前に調べたところ、リーパリ島はエオリエ諸島の中で最も魅力的というわけではなかったが、7つの島の中で一番大きく道路も発達していて、またボートで他の島へも移動しやすいのでリーパリ島を拠点とすることにしたのだ。港のそばに島唯一の町があり、宿泊施設やレストランが集中している。しかし、私も夫もうるさい場所が苦手。町から少し離れた山の上にアパートメントを予約していた。
町からの直線距離はたいしたことがないが、細い蛇行した坂道はとてもきゅうで、舗装されていない部分も多い。車で上るのはなかなか大変だった(といっても運転したのは夫なので、私がした苦労ではないのだけれど)。通りに名前はなく、ナビで見ても宿の場所がわからないので管理人に電話したらバイクで迎えに来てくれた。
坂道を上るのはちょっと大変だけど、アパートメントのテラスからの眺めは抜群だ。ここで約1週間を過ごすことになる。やりたいことはたくさんあるが、まずは泳ぎにでも行こうか。
最寄りのビーチは上の地図の緑アイコンのSpiaggia Valle Muriaというビーチである。「坂を降りればビーチ」と管理人はこともなげに言ったが、そんなに楽な話ではなかった。坂道というか、崖のようなところを15分くらい降りると海岸に着く。行きはまだいいけれど、帰りはその崖をまたよじ登って来なければならないのだ。ちょっとひと泳ぎするだけでやたらと疲れる。これがハードモードなエオリエ諸島滞在の始まりであった。
誤解のないように付け加えると、島にはCannetoのビーチなど楽にアクセスでき、観光客向けに整備されたビーチもある。でも、自然を楽しみにエオリエ諸島に来たわけだから、アクセスの良い場所だけ見るというのもなんだか違う気がするしね。
上の写真の右側に白とグレーの層が縞状に重なった崖が写っているが、リーパリ島の地表は軽石と黒曜石で覆われている。白っぽくてスカスカの軽石とガラス質の黒曜石は互いに似ても似つかない見た目だけれど、どちらも同じ流紋岩質のマグマが冷えて固まってできた岩石である。黒曜石といえば石器時代、ナイフや槍の先端などの素材として使われた岩石で、黒曜石が豊富に採れるリーパリ島はその交易で栄えたのであった。今でもリーパリ島の主な土産物として黒曜石のアクセサリーがたくさん売られている。
また、リーパリの軽石もとても上質で、主に建材などの用途に世界中へ輸出されて来た。現在は主に島の北東部の石切場で採取されている。
軽石や黒曜石だけでなく、リーパリ島では粘土鉱物カオリナイトも採れる。リーパリ島におけるカオリナイトの利用は紀元前3-4世紀に遡る。島に入植したギリシア人が土器作りに使っていた。第二次世界大戦後から1970年代初めにかけては主にセメントの材料として大々的に採掘されていたが現在はもう採掘は行われていない。その跡地を歩いてみよう。
普段住んでいるドイツでは日常的に散歩をしているけれど、同じ散歩でもリーパリ島ではまったく違う体験だ。平坦で直線的な北ドイツとは対照的に起伏が激しく表情豊かな風景に圧倒される。
海岸線も複雑だ。
以下は夫がドローンで撮影した写真。かなり高いところに登って撮っているので、危ないから真似しない方がいいです(私もドローン免許持っているけど、恐ろしくてこんなの絶対に撮れない)。
島の南部へ行ってみると、そこにも軽石の石切場があった。
島の南の先端近くには地質学観測所があり、そこからはヴルカーノ火山がよく見える。
よし!次に向かうのは、あの島だ!