約1週間滞在したエオリエ諸島。堪能したので再びフェリーでシチリア島に戻り、タオルミーナ(Taormina)へ移動した。
タオルミーナの町は海沿いでありながら、タウロ山という山の中腹、およそ標高200mにある。ピークシーズンを過ぎていたのでそこまで人が多くはなかったが、メインストリートにはブランドショップが立ち並び、緑の多い、小綺麗でお洒落な雰囲気で、シチリア島きっての観光地である。
が、私たちはエオリエ諸島で坂道ばかり歩いていたので、すでに坂道に疲れていた。それに、1週間分の洗濯物が溜まっていて早く洗いたい。コインランドリーの場所を調べたら、アパートメントから山を20分くらい登った先だと気づき、ゲッソリである。道が狭くて車で移動するのも簡単ではないので、娘と洗濯物を入れたエコバックを肩から下げてノロノロと坂道を歩き、町外れのコインランドリーでやっと洗濯を済ませてホッとした。そんなわけでタオルミーナでは休憩モードで、あまり積極的に観光しなかった。ロープウェイで海岸に降り、ベッラ島(Isola Bella)でスノーケリングしたり、アパートのプールで泳いだりして過ごした。
タオルミーナについてはそれほど記録することがないが、一つだけ書いておきたいのはこのギリシア劇場についてだ。この劇場にはギリシア時代のオリジナル部分はほとんど残っておらず、大部分がレンガで修復されている。その点ではシチリア島の他のギリシア劇場ほど古くないが、海を見下ろし、同時にエトナ山を仰ぎ見ることのできるこの立地はやはり特別だ。
シチリア島の多くのギリシア劇場同様、この劇場でもよくコンサートが開催されているようだ。エトナ山を背景に古代の劇場の観客席に座ってパフォーマンスを鑑賞するなんて、想像しただけで素敵だなあ。もしまたここに来ることがあれば、そのときには観劇したいものだ。観劇中に噴火が見えたらダブルパフォーマンスだね、と冗談を言いながらエトナ山の方を眺めていたのだが、
実はまさにこのときエトナ山は噴火していたのだった。この角度からは黒煙は見えないので気付いていなかったのだが、後から知り合った人に「9月21日にエトナ、噴火したよね。うちの車に火山灰が降ったよ」と言われて気になってこのサイトを見たら、私たちがこの劇場に立ってエトナを眺めていた朝に確かに噴火していた。
さて、前置きはここまでにして、本題に進もう。書きたいのは、タオルミーナから国道185号線を北西に車で30分弱のところにあるアルカンタラ渓谷(Gole del’Alcantara)についてである。
柱状節理が見たくてこのジオパークへ行ったのだが、想像以上にすごい!この玄武岩の岩はエトナの北にあるネブロディ山脈からアルカンタラ川が流れる谷へエトナ山の噴火による溶岩流が流れ込んでできた。1万5000年前から4000年前の間に少なくとも3つの溶岩流が谷を流れ、それらが重なった場所では50mもの厚みの岩体となった。柱状節理は溶岩が冷えて縮むときに割れ目ができることで形成されるが、この深い渓谷も、冷えて固まった溶岩表面の亀裂に川の水が入り込み、長い年月をかけてゆっくりと亀裂を押し広げてできたものであるらしい(どうやってできたのか知りたくて、このイタリア語動画を日本語とドイツ語に自動翻訳して見ながら一生懸命考えたけれど、翻訳が不完全なので理解が間違っているかも)。これもまた、シチリア島の母なる火山、エトナ山の噴火活動が生み出した景色なんだなあ。
ほぼ垂直の岩壁の高さはおよそ25メートル、幅は狭いところで2メートルくらいかな。ガイドツアーの参加者らがヘルメットを被り、長靴を履いてざぶざぶと水の中を歩き、奥へ入っていく。ツアーに参加しなくても歩くことはできるけれど、水がすごく冷たいので、素足だと結構つらい〜。
アルカンタラ渓谷を歩いた後は、そこからエトナ公園の周りを西周りにぐるっとドライブすることにした。
アルカンタ川の別の地点、Cascate Alcantaraの景色。水がない川底を見るのも面白い。
さらにドライブ。1981年のエトナ山の噴火時にはエトナ山公園の北の郊外にあるランダッツォの町まで溶岩流が到達した。
この溶岩流でランダッツォのワイン畑は壊滅的な被害を被った。溶岩流はアルカンタラ川の岸辺にまで迫り、もし川に流れ混んで水と接触すれば大爆発を起こす危険があったが、幸いなことにその一歩手前で止まったそうだ。
火山周辺地域での危険と隣り合わせの生活をこうして目にすると、日本のことも思わずにはいられない。
さて、エトナ山公園の周りを1周することで、いろんな角度からエトナ山を見ることができた。ロープウェイで登り、タオルミーナの劇場から眺め、噴火が生み出した様々な景色を歩き、、、、。たっぷりとエトナ火山を観察することができた。火山探検はこの辺でそろそろ終了して、ここから先はシチリア島の他の魅力を味わうことにしよう。