タオルミーナ(Taormina)からエトナ山公園周辺をドライブしながら火山による地形を見て回った後、一足先にドイツに戻らなければならない娘をカターニア空港へ送り届け、私と夫はさらにシチリア島ロードトリップを続けることにした。

次に向かったのはパンタリカの岩壁墓地遺跡(Necropoli di Pantalica)。パンタリカはカターニアの南のイブレイ山地に位置する。アナポ川やカルチナラ川が刻む渓谷の間にある台地である。そのパンタリカには大規模な古代墓地遺跡(ネクロポリス)があるという。リーパリ島で見たギリシア・ローマ時代のネクロポリスもとても興味深かったが、パンタリカの古代墓地はさらに古く、岩壁に紀元前13世紀から紀元前7世紀まで使われたと考えられる墓穴がなんと5000以上も残っているという。それは是非とも見に行きたい。

パンタリカでは、アグリツーリズモ(Agriturismo)と呼ばれる農家の宿に泊まった。今回のシチリア・エオリエ諸島旅行では、アパートメントタイプの宿、B&B、アグリツーリズモといろいろなタイプの宿泊施設を利用してみたが、その中でダントツ気に入ったアグリツーリズモ。コロナ禍のこともあり、なるべく田舎の空いているところがよかったので利用したのだが、景色のいい静かな場所で広々とした部屋に泊まれる上に、そこで育てている新鮮な野菜を使った美味しい料理を出してくれるのがいい。アグリツーリズモにもいろいろあって設備やサービスはまちまちのようだけれど、少なくとも私たちが今回利用したところはどこもとてもよかった。プールがあったり、馬やロバに乗れたり、アクティビティが充実しているアグリツーリズモも少なくないようだ。コンセプトがすごく気に入ったので、今後、イタリアを旅行する際はいろんなアグリツーリズモを泊まり歩きたい。

さて、パンタリカの岩壁墓地遺跡はかなり広範囲に散らばっていて、行き方は何通りかあるが、基本的には渓谷の小道を長時間ハイキングすることになる。私たちは東側からアナポ川沿いを往復15kmほど歩いた。

アナポ川

ゴツゴツした石灰岩に開けられたトンネルをくぐり抜けて進む。中は真っ暗なので懐中電灯が必要

一帯は自然保護区に指定されている。いろんなカナヘビがいて楽しい

しっぽが切れてるのも

茶色く見えるのは紅葉ではなく、山火事で焼けた跡

絶壁に圧倒されながら2時間ほど歩いた。

そしてついに岩壁に開いた墓穴が見つかった!

シチリア島の先住民族は、もともとは海岸付近に集落を作って生活していたが、外部から人が侵入するようになると、海辺の集落を捨て、内陸部の山の中へ避難して住むようになった。パンタリカに形成された集落は規模が特に大きいものだったと考えられているが、この古代墓地(ネクロポリス)と関連のある集落の跡はまだ見つかっていないらしい。しかし、ネクロポリスからはギリシアのミケーネ文化の影響が見られる陶器や装飾品などの副葬品が出土しており、それらは50kmほど離れたシラクーザの考古学博物館に展示されている。

それにしても、あのような崖の上の、一体どうやってアクセスしたのかわからないような場所にわざわざ穴を掘って死者を埋葬したのには、どういう意味があったんだろう?パンタリカの岩壁墓地遺跡はシラクーザとともにユネスコ世界遺産に登録されている。でも、そのわりにはパンタリカのネクロポリスに関する詳しい情報が少なくて、なんだかよくわからない。後日、もう少し良くわかったら書き足すことにしよう。

2時間半ほどアナポ・バレーを歩いたら、パンタリカ・ネクロポリス駅に着いた。といっても、これはかつてこの谷を列車が走っていた頃の名残である。小道はまだずっと先まで続いていたけれど、見たかった墓穴も見られたことだし、ここから来た道を引き返して宿に戻った。

この日もよく歩いたなあ。