観光地ケポス(Quepos)からは、マニュエル・アントニオ国立公園を始めとしたいくつかの観光ツアーが出ている。その中で興味を惹かれたのは、ナウヤカの滝とロス・カンペンシーノの滝だった。私たちはレンタカーを借りているので、ツアーには参加せず、自力で行ってみることにした。

最初に向かったのはナウヤカの滝(Cataratas Nauyaca)。ドミニカル(Dominical)から国道243号を内陸に向かっておよそ10km進んだ渓谷にある。滝に行くには、Nauyaca Waterfallsという名前の個人経営のツーリズム会社のオフィスでエントリーチケット(外国人は10米ドル)を購入する必要がある。

トレイルの入り口。

オフィスから滝までのトレイルは往復でおよそ12km。車があればオフィスから駐車場までの2kmを車で移動できるので、歩くのは往復8kmになる。そこそこアップダウンがあって、それなりにキツいらしい。歩きたくない人はジープで滝のそばまで連れて行ってくれるサービスもあったが、歩くことにした。途中、食べ物や飲み物の買える場所は一切ないので、要持参である。

バル川を渡り、二次林、そして一次林を歩き、目的の滝へと向かっていく。一生懸命歩いたので、途中の写真を撮るのを忘れてしまった。

ナウヤカの滝は2つのレベルからなる滝で、上段の滝は高さ45メートル。

コスタリカには迫力のある滝が多いなあ。

その下方に高さ20メートルの滝がある。広い滝壺には、たくさんの人が泳いでいた。そして、なんとこの滝は飛び込みスポットになっているのだ。滝は階段状になっており、下の方の段から飛び込む人、中程の段から飛び込む人、てっぺんから飛び込む強者(おそろしい!)など、その人の勇気に応じたチャレンジが繰り広げられている。ただし、勝手に飛び込むのは許可されない。必ず係員の補助を受けて飛び込むというのがルールだ。

実は、滝壺で泳げるというのを知らなかったので、この日は私たちは水着を持っていなかった。水がとても綺麗だったので、泳げなくて残念だなあとも思ったけれど、水着を持参していたら自分も飛び込みチャレンジをしなければならないような気分になっていたかもしれない。まさか、てっぺんから飛び込むことはあり得ないけど、真ん中あたりからやってみようかという考えが頭をよぎっていただろうか。

うーん。水着がなくて、むしろよかった。怖いことを考えなくて済んだから。

勇者たちのチャレンジをしばし見物し、往路についた。途中で、目の前の木の上にオオハシが止まっているのが見えた。オオハシにはいろいろな種類がいるが、コスタリカで最もよく見かけたのはこのクリハシオオハシ( Ramphastos swainsonii)だ。

さらに歩くと、セクロピアの木にミツユビナマケモノがぶら下がっている。

ノドチャミユビナマケモノ (Bradypus variegatus)

野生のナマケモノは今までに何度も見たことがあるけれど、いつも葉の生い茂る密林の高い木の上にいて、お尻しか見えないことがほとんどなので、こんなにはっきりと姿を見ることができて感激だった。しかも、ゆっくりと体を動かし、移動する姿を観察することができた。ナマケモノは一生の大部分の時間を木にぶら下がって過ごし、地面には1〜2週間に一度くらい、排泄のために地面に降りてくるだけだというが、もしかして今がそのトイレタイムなのだろうかと少し期待してしまった。残念ながら下には降りて来なかったけれど。それにしても、なぜわざわざ排泄のために手間暇かけて地面に降りる?木の上からすればよいではないか?気になって調べてみたところ、ナショナルジオグラフィックのこんな記事が見つかった。

ナマケモノ、危険なトイレ旅の見返りは?

ナマケモノを眺めていたら、観光客を乗せたジープがオフィスの方からやって来た。ナマケモノには気づかなかったのか、スピードをさげずにそのまま滝の方向へ走り去った。

なかなかくたびれるトレイルではあったけれど、ナマケモノをじっくり見ることができたから、ジープの送迎サービスを頼まずに自分で歩いた甲斐があったなあ。

 

 

 

コスタリカ北部の2つの国立公園、アレナル火山国立公園テノリオ国立公園のトレイルを楽しんだ後、私たちは南へと向かった。目的地はオサ半島だが、一気に移動するのはキツいので、中間地点のケポス(Quepos)に3泊することにした。ケポスは太平洋に面した国立公園、マニュエル・アントニオ国立公園(Parque Nacional Manuel Antonio National) に隣接した町で、コスタリカの一大観光地である。なんとなく予想はしていたが、実際に行ってみるとオーバーツーリズム気味でうるさく、好みの場所ではなかった。大人気のマニュエル・アントニオ国立公園のチケットも到着の翌日とその次の日の分はすでに売り切れており、滞在3日目のチケットをかろうじて抑えることができた。

さて、それまでの二日間は何をしよう?

すぐに思い浮かんだのは、ケポスから国道34号を40kmほどさらに南下した、ドミニカル(Dominical)にある野生動物保護区、ハシエンダ・バル (Hacienda Baru)だった。

いつも旅行を計画する際には、ガイドブックやネットで情報を集めるだけでなく、その国に関する書籍を探して読むことにしている。今回、下調べとして読んだ本のうちの一冊はコスタリカの自然に関するエッセイ集 “Monkeys Are Made of Chocolate – Exotic and Unseen Costa Rica“。米国人の著者、Jack Ewing氏は1970年代の終わりにコスタリカに土地を購入し、以来、自然再生及び野生動物の保護活動を続けている。とても興味深く読んだので、Ewing氏がハシエンダ・バルと名付けたその保護区に行ってみたいと思った。

 

ハシエンダ・バル入り口

ハシエンダ・バルは自然観察ツアーを提供する宿泊施設も兼ねていて、敷地にはこじんまりとした居心地の良さそうなコテージが並んでいる。この自然保護区について知ったときにはすでにケポスの宿を予約してしまっていたので、ここに泊まるのは断念したのだった。もっと早くに知ってここに滞在できたらよかったのにと少々後悔。

 

太平洋と国道34号に挟まれた、広さおよそのハシエンダ・バルの敷地はかつては牛牧場で、およそ150ヘクタールに渡って森林が破壊されていた。

1972年に撮影された航空写真。左下は太平洋。画像は敷地内の説明用立て看板の写真を撮影したもの。

 

個人のイニシアチブから始まった自然再生の試みだったが、Ewing氏らの継続的な活動の結果、敷地は多くの野生動物の生息地として蘇り、1995年、ハシエンダ・バルは国の野生動物保護区に認定されている。

自然再生が進んだ現在の様子。

 

敷地内にはいくつかのトレイルがあり、料金を払えば、宿泊者以外のビジターも歩くことができる。私たちも歩いてみることにした。

野生動物を観察したいなら、早朝か夕方が良い。昼間の暑い時間帯は動物たちは茂みなどの奥に隠れて休んでいるからだ。このときはちょうど昼間で、あまり動物は見られないだろうなあと期待していなかったが、意外に多くの生き物に遭遇した。

 

シロボシクロアリモズ (Thamnophilus bridgesi) これはメスかな?

 

鬱蒼とした茂みに挟まれた小径を歩いていくと、前方数十メートルの地面に何やら茶色い大きな物体が横たわっている、、、、と思ってよく見たら、それは3羽のオオホウカンチョウ (Crax rubra )のメスだった。

もう少しよく見ようともう一歩足を進めたら、そのうちの1羽が飛び上がり、横の茂みに入った。茂みの中から心配そうな声を上げ、仲間の2羽に呼びかけている。しまった、怖がらせてしまった。ごめんなさい。

オオホウカンチョウ(大鳳冠鳥)はコスタリカでは特に珍しい鳥ではないが、体長90cmにも及ぶその大きさと見事な頭の冠羽が特徴的で、目にするたびに目を見張ってしまう。

ちなみに、これは別の場所で撮った写真だが、オスは体全体が真っ黒で、嘴の上に黄色い大きなコブがある。

日頃、ドイツでバードウォッチングをする際、コーネル大学が開発した野鳥識別アプリ、Merlin Bird IDが大いに役に立った。グローバル対応のこのアプリは地域ごとのパッケージがあるので、現地に着いたら該当するパッケージを追加で無料ダウンロードすればすぐに使えて便利だ。コスタリカのネイチャーガイドさんたちも皆、使っているようだ。紙のフィールドガイドなら、やはりコーネル大学出版から発行されているシリーズのRichard Gariguess “The Birds of Costa Rica: A Field Guide” が良い。

 

胴の赤さが鮮やかなコシアカフウキンチョウ(Ramphocelus passerinii)のオス

こちらはメス。メスはコスタリカの東部と西部でカラーバリエションが異なる。このように胸元のオレンジ色が濃いのは西部(太平洋側)で見られる。

ナツフウキンチョウ (Piranga rubra)のオス。

ナツフウキンチョウ (Piranga rubra)のメス。

イグアナもいた。イグアナはフィールドガイドを見ても、種がよくわからない。(わかる方がいらしたら、是非是非教えてください)

 

哺乳類はクビワペッカリー( Tayassu tajacui) とマダラアグーチ(Dasyprocta punctata)に遭遇!

ペッカリーにはクチジロペッカリー (Tayassu pecari)というのもいるが、これはクビワペッカリーの方、なぜなら、

ほらっ!首の周りに白い毛がリング状に生えている。

巨大なネズミのような、あるいはリスのような、なんとも不思議な見た目のアグーチ。群れることなく単独で行動するが、昼行性の動物だから遭遇するチャンスはまあまあある。主に果物や植物の種を食べ、森に種を散布する、生態系において重要な役割を持つキーストーン種だ。

ざっくり2時間ほどのトレイルだったが、いろいろな生き物が見られてとてもよかった。エントランスに戻ってカフェエリアで飲んだ、冷えたスムージーもとてもおいしかった。次回はぜひハシエンダ・バルに宿泊して、ガイドツアーに参加したい。

 

 

 

前回の記事に書いたアレナル火山国立公園へ行くには、近郊の町、ラ・フォルトゥナを拠点とするのが一般的である。ラ・フォルトゥナは観光地化が進んでいて、欧米からの移住者も多く、洒落たレストランやカフェが立ち並び、英語もよく通じる。ただ、ローカル感が薄くて、個人的にはなんとなくつまらなく感じる。そこで今回はアレナル湖北岸に位置する小さな町(村?)、ヌエヴォ・アレナル(Nuevo Arenal)を拠点にしていた。

ヌエヴォ・アレナル。向こうに見えるのはコスタリカ最大の人工湖であるアレナル湖

スペイン語で「新アレナル」という意味のヌエヴォ・アレナルは比較的新しい集落だ。1978年にアレナル湖を造る際に立ち退きを余儀なくされた住民らの移住先として政府主導で整備された。これといって何があるわけでもない。観光客向けインフラとしては宿がいくつかとレストランがいくつか、それになぜかジャーマンベーカリーが一軒あるが、それだけ。でも、のんびりしていて気に入った。外国人の経営する各国料理レストランが多いラ・フォルトゥナとは違い、ヌエヴォ・アレナルはもっとローカルで、英語もそれほど通じない。

メインストリートにあるローカルレストラン。

たいした料理が出てくるわけではないけれど、味は悪くなく、サービスも田舎の食堂らしい感じで、暢気な心地よさがあった。

チキンタコスを注文したら出てきた料理。あまりにシンプルでちょっと驚いたけれど、味はよかった。

店内にあるテレビではローカルニュースをやっていた。スペイン語なので半分くらいしかわからなかったが、タコスを頬張りながら「インフレで個人経営の会社が次々倒産しています」とか、「グアナカステ県の橋の工事がイースター休暇後に始まります」「ポアス火山の噴火活動が活発化しているため、状況によってはハイキングルートが閉鎖になる可能性があります」なんていうニュースを見て、少しはコスタリカ国民の生活に近づいた気分で楽しかった。私は、現地の人の生活する場所と観光客が滞在するエリアが分かれているのが好きではなくて、大型リゾートなどに滞在する気にはなかなかなれない。コスタリカは大型リゾートが少ないという点でも気に入っている国だ。

前置きが長くなった。この記事の本題は、アレナル火山国立公園 からさらに北西に位置し、ヌエヴォ・アレナルからアクセスしやすいテノリオ火山国立公園について。テノリオ火山国立公園にはセレステ川(Rio Celeste)という、水の色が空のように青いことで知られる川が流れている。セレステ川沿いを歩くトレイルがあると知り、行ってみることにした。

 

ナビによると、ヌエヴォ・アレナルからセレステ川トレイルの入り口までは片道およそ1時間20分と表示されたが、道路の状態が悪く、思いのほか時間がかかった。詳しく後述するが、今回のコスタリカ旅行では、車での移動に本当に苦労させられることになる。

コスタリカの自然保護区はオーバーツーリズムによる自然破壊を避けるため入場制限をしており、事前に政府の自然保護区管理組織、Systema Nacional de Áreas de Conservación(SINAC)のサイトで予約し、チケットを購入しなければならない。人気の高い自然保護区はすぐに定員に達してしまうので、ある程度早めに予約をしておくことが重要だ。

トレイルの入り口から1.5kmほど離れたセレステ川の滝(Catarata Rio Celeste)に向かって、雨が上がったばかりのしっとりと濡れた熱帯雨林を歩いていく。トレイルの途中で、いろいろな野生動物の姿を見ることができる。

 

トレイル脇の地面に小さいマツゲハブ(Bothriechis schlegelii)がいた。目の上にまつげのような突起があることからマツゲハブと呼ばれる。樹上性のヘビだが、若い個体は地面近くにいることも多いらしい。

 

高い木のてっぺんにナマケモノの姿も見かけた。また、シロバナハナグマ(Nasua narica)が餌となる虫を探して地面を掘っている場面に遭遇した。

野生のシロハナグマはコスタリカで最もよく見かける哺乳類だと思う。よく群れで国道脇などに現れ、観光客から餌をもらっていたりする。もちろん、餌付けは禁止されている。

 

生き物を眺めながらゆっくりと歩いているうちに滝に到着した。

「空色の川」を意味するセレステ川の滝壺の水の色は確かに青かった。ただし、その青色は天候や季節によって変化するようだ。この日は雨が降ったり止んだりしていたので、やや白濁して見えた。

 

トレイルはさらに続く。

青い池、Laguna Azul

 

セレステ川は本当に美しいが、残念ながら泳ぐことはできない。

 

火山活動による熱水が噴き出す場所(Borbollones)も。

 

さらに歩き、真っ青な川にかかった小さな橋を渡ると、ブエナヴィスタ川(Rio Buenavista)とケブラダ・アグリア川(Rio Quebrada Agria)という二つの川が合流し、セレステ川となる場所、Los Teñiderosに行き着く。ブエナヴィスタ川もケブラダ・アグリア川もまったく青くはない。両者が合流することによって初めて、セレステ川の神秘的な色が生み出されるのだ。

 

ブエナヴィスタ川の水はアルミノケイ酸塩を含んでいる。ケブラダ・アグリア川の水と混じり合い、水の酸性度が変化することで、それらの粒子が184nmから570nmへと大きくなるのだという。粒子の一部は川底に沈み、白い沈殿物となるが、大部分は水の中に分散し、漂う。水面に日光が当たると、大きくなったこれらの粒子が光を強く散乱させる。波長の比較的短い青い光は散乱しやすい。水が青く見えるのはこのためだ。ふと、北海道、美瑛の「青い池」を思い出した。あれも同じような現象だったはず。

 

美瑛の青い池

 

セレステ川沿いのトレイルは往復約6km。高低差もそれほど大きくなく、歩きやすかった。

 

 

 

首都サン・ホセを出発した私たちがまず向かったのは、アレナル火山国立公園 (Arenal Volcano National Park)だ。計画では、旅の最初の3日間はモンテヴェルデ熱帯霧林自然保護区(Monteverde Cloud Forest Nature Reserve)でバードウォッチングを楽しむはずだったのだが、こちらの記事に書いたようなハプニングの連続で、その3日間が丸ごと吹っ飛んでしまったのだ。ああ、無念。でも、嘆いていてもしかたがない。仕切り直していこう。

アレナル火山国立公園は、サン・ホセから北西におよそ90kmに位置する。アレナル火山とチャット火山という二つの火山を囲む、広さ1万2000haの自然保護区だ。

アレナル火山はコスタリカで最も活動の激しい火山で、1968年からずっと噴火活動が続いている。富士山にも似た円錐型が美しい山だけれど、てっぺんが雲に隠れていることが多く、上の写真のようにくっきりと全容が見るのはなかなか難しいらしい。私がボルカン・アレナル国立公園を訪れるのはこれが2度目で、写真は前回の滞在時にかつてのスミソニアン研究所の火山観測所を改装したホテル、Arenal Observatory Lodge & Trailのテラスから撮ったもの。このときは1週間滞在して、溶岩原のトレイルを歩いたり、ネイチャーガイドによるナイトハイクに参加したり、近郊のタバコン温泉に浸かったり、ジップラインで熱帯雨林を滑走したりした。ジップラインについては書きたいことがあるので、別の記事にまとめよう。

今回の滞在では、前回やり残した、フォルトゥーナ滝までのトレイル(La Fortuna Waterfall Hike)を歩いてみた。

ちなみにトレイルは有料で、チケットは1人20米ドル。トレイルの長さは片道1.2km。たいしたことがないなと思ったけれど、高さ70メートルの滝を見るためには、急な階段530段を降りなければならない。

途中で木の上にホエザルがいるのを発見。

 

途中のプラットフォームから見たフォルトゥーナ滝。遠くてスケール感がよくわからない。

 

間近まで行って見ると、なかなかの迫力。

滝壺で泳いでいる人たちもいたけれど、危ないので私はここでは泳がずに、

少し離れた場所で泳いだ。透明なブルーの水が綺麗で、大きな魚もたくさんいてテンションが上がる〜。

しばらく泳いだ後は、また530段の急な階段を登って帰らなければならない。そこそこキツい。でも、これはまだ序の口。観光地だけにこのトレイルはよく整備されていて歩きやすく、後から思えば、これからコスタリカ滞在中に歩くことになる数々のトレイルのための準備運動だった。

さらに今回は、アレナル火山の西側、人口湖アレナル湖の南端近くに位置する蝶園、 Butterfly Conservatoryへも行ってみた。

これが意外にとてもよかった!「きっと観光客目当ての施設で、たいしたことないんだろう」となんとなく思っていたが、とんでもない先入観だった。

ブルーモルフォ (Morpho)

メムノンフクロウチョウ (Caligo memnon)

オオカバマダラ (Danaus plexippus )

シロモンジャコウアゲハ (Parides iphidamas iphidamas)

ラウレンティアアメリカコムラサキ (Doxocopa laurentia cherubina)

キングスワローテイルバタフライ (Heraclides thoas)

コスタリカにはおよそ1500種の蝶がいるとされている。中央アメリカに生息するすべての蝶の90%がコスタリカで見られる。今回の滞在中には至るところでたくさんの蝶を見ることになったが、常にひらひら動き回っていて写真を撮ることはおろか、じっくり見るのすら難しかったので、この蝶園でいろんな種が見られたのはよかった。

蝶だけでなく、カエルもいろいろ飼育されている。

アカメアマガエル(Agalychnis callidryas)。コスタリカは中央に山脈が走っており、その西(太平洋側)と東(カリブ海側)とでアカメアマガエルのお腹の色が違う。これはカリブ海側のアカメアマガエル。

マダラヤドクガエル(Dendrobates auratus)

そして、さらに嬉しいことに、蝶園の敷地内にはトレイルもあり、熱帯雨林の中を歩くことができる。観光客にはそれほど存在を知られていないのか、私たちの他にはほとんど誰もいなかった。

なんて癒される空間だろう。素晴らしいー!

 

 

この記事の参考サイト:

Arenal Volcano National Park

Costa Rica Butteflies, motos, and the Blue Morpho Butterfly

 

前回の記事に書いたように、出発時点からハプニングが連続し、すっかり出鼻を挫かれた今回のコスタリカ旅行だったが、延々3日半にわたる奮闘の甲斐あって問題がどうにか解決し、ようやく旅は始まった。

 

今回の旅のテーマは「生き物」だ。約3週間の滞在中にできるだけ多くの野生動物が見たかった。

 

コスタリカは世界の生物多様性ホットスポットの一つに数えられる、生き物大国である。世界の生物種のうちのおよそ5%にあたる種が生息するという。コスタリカで見られる鳥類はおよそ900種。ハチドリだけでも52種も生息する。哺乳類はおよそ230種、植物に至っては12000種という多様性を誇る。

ズアカエボシゲラ (Campephilus guatemalensis)

 

コスタリカの生物多様性がこれほどまでに高いのには、多くの要因がある。

 

  • コスタリカはおよそ300万年前に北米大陸と南米大陸が陸続きとなってできたパナマ地峡に位置する。パナマ地峡では両大陸の生物が互いに移動し、大規模な種の交換が起こった
  • 北緯10度という赤道に近い位置と北太平洋の暖流のおかげで、多くの生物種が最終氷期を生き延びた
  • 太平洋と大西洋に挟まれ、中央を山脈が走っているため、国土の西側と東側で気候が異なっている
  • 海岸沿いの低地から標高3000メートル近くの山間部まで、あらゆる高度があり、緯度との組み合わせによって多数の異なるエコシステムが存在する

セスナ機から見下ろしたオサ半島の熱帯雨林

 

生き物の宝庫コスタリカは自然保護を国の政策として大々的に打ち出しており、国土の26%が自然保護の対象である。小さな国土に25の国立公園を持ち、自然保護区の数は100を超える。エコツーリズムは国内総生産の6%を占める一大産業だ。フアン・サンタマリア国際空港に降り立つと、カラフルな野鳥や鋭い目をしたピューマの特大写真が観光客を迎え、期待感を大いに高めてくれる。オオハシやナマケモノなどのイラストがプリントされた土産物のパッケージも洗練されていて、「野生動物の楽園コスタリカ」としてのブランディングが実に上手いなあと感心してしまう。豊かな生態系をアピールして世界中から観光客を呼び寄せ、彼らが落としていくお金で自然保護のための措置をさらに強化していく。コスタリカは同時に、再生可能エネルギー率95%を誇る自然エネルギー推進のトップランナーでもある。

色のついているエリアは自然保護区。

 

コスタリカが環境保護先進国となったのは、20世紀後半、集約農業によって環境破壊が急激に進み、危機感が広がったことがきっかけだった、コーヒー、バナナ、パイナップルなどのプランテーション栽培で1945年には国土の75%を占めていた森林が1983年には26%まで減少したという。1996年に大々的な植樹を行い、2023年には60%まで回復している。

 

もちろん、すべてが理想的というわけではないだろうが、その先進性と実際の自然の豊かさが、コスタリカを訪れる価値のある国にしていることは間違いない。

 

ではこれから、コスタリカの自然を自らの足と五感で味わっていこう。

 

私たちは車に乗り込み、首都サン・ホセを後にした。

 

この記事の参考文献およびサイト:

待ちに待った日がようやくやって来た。今年こそ、寒くて暗いドイツの冬を脱出して、コスタリカの熱帯雨林にまた身を置くのだ。

2015年の冬、コスタリカを初めて訪れて以来、私は「コスタリカの最後の秘境」、オサ半島の虜になっていた。地球上で生物多様性が最も高いと言われるオサ半島は、そのその驚くほどの自然の豊かさで私を魅了した。植物が鬱蒼と生い茂る森を歩くと、大きな青い翅を輝かせながらモルフォ蝶が目の前を舞っていく。足元では葉切りアリたちが長い列を作り、不揃いな木の葉の断片をせっせと巣へ運んでいる。木々の上ではクモザルやリスザルが枝から枝へと飛び移る。森を抜け、海岸に出て「そらいろ」と形容するのに最もふさわしい青い空を見上げれば、そこには赤、青、緑、まるでマジックインキで塗ったかのような鮮やかな羽色のコンゴウインコたちがやかましいほどの鳴き声をあげながら飛び交っている。森の中のエコロッジで寝泊まりしていた私たちは、毎朝、まだ暗い森に轟くホエザルの吠え声で目を覚ました。赤道付近では、午後6時近くにもなれば黒い幕を下ろすかのようにストンと一気に陽が落ちる。その真っ暗な空にかかった天の川の迫力に圧倒されながら、星々は地球上のどこにいても必ず私たちの頭上にあるのに、その存在感は場所によってこんなにも違うのかと不思議に感じた。

このときの自然体験が忘れられず、またどうしてもオサ半島へ行きたいと思いながら8年が経過した。そのとき一緒だった夫は、その後、息子を伴って二度もオサ半島を再訪しており、彼らの持ち帰った野生動物の写真や土産話は私のオサ半島への想いをますます燃え上がらせた。そして、2024年1月18日の朝、私は夫とともに再びコスタリカへ向けてベルリンの空港を飛び立とうとしていた。準備は万端。ぬかりはないはずだ。

いよいよ!

始まる!

願い続けたこの旅が!

・・・・・・・・・・

ところが、搭乗開始時間を過ぎても、一向に搭乗手続きが始まらない。10分、20分、30分と時間が経っていき、ようやく機内に乗り込んだときには出発予定時刻を2時間も過ぎていた。これがその後延々と続く、負の連鎖反応の始まりだった。この遅延のために、経由地のパリ、シャルル•ド・ゴール空港でコスタリカ行きの飛行機に乗り継げないという事態が発生したのだ。

その日は他にパリからコスタリカへの直行便はなく、パナマまたはコロンビア経由の便はあったものの、サービスカウンター前の長蛇の列に並んで順番を待っている間にそれらの便は出発してしまった。やっとカウンターの前に立つと、私たちが乗れる可能性があるのはなんと翌日ではなく、翌々日の米国経由便だという。しかし、米国でトランジットするには電子渡航認証システム、ESTAを取得していることが条件である。大急ぎでパソコンを立ち上げ、ESTAを申請するも、許可が下りるまで一体何時間かかるかわからない。ヤキモキしながら許可を待ち、どうにか2日後の米国経由便に座席を確保したときには胸を撫で下ろしたが、もうすっかり日が暮れていた。ホテルへ移動しなければならない。預けているスーツケースを受け取ろうとすると、係員はそれはできないという。

「できないって、どういうことですか?2日間もパリで過ごさなければならないのですよ。お願いだから、スーツケースを出してください」

いくら頼んでも、係員はできないの一点張り。あなた達のスーツケースは二日後の米国経由便に積み込まれるから何も問題ないと言い切られ、洗面道具セットすらももらえないまま私たちは空港の外へ放り出されてしまった。これから熱帯へ行くのだからと家を出るときに着ていた冬の上着はベルリンの空港でスーツケースの中に入れてしまったので、上着すらない。翌日丸一日時間があるからといって、パリ観光に出かけることもできないのだ。

それよりも何よりも、2日も遅れて現地に着くことになるので、予約しているホテルやレンタカーの変更手続きをしなければならない。以前、米国旅行をした際、似たような状況で予定日に出発できず、レンタカー会社に連絡しようにも時差のため連絡が取れないまま飛行機に乗ってしまったら、約束の日に現れなかったという理由で予約がキャンセル扱いになって3週間分のレンタカー代が吹っ飛んだ上、新たに契約できるのはレンタル料がより高い車種しかなかったという大打撃を被ったことがあった。その二の舞になっては大変である。私たちはパリのホテルから必死の形相で各方面に電話したりメールを送ったりし、すっかり疲労困憊。

二日後にようやくシャルル•ド・ゴール空港から飛び立ったときにはすでに精神的にヘトヘトだったが、アトランタ空港で私たちを待ち受けていたのは、「スーツケースが飛行機に積まれていなかった」という現実であった。ああ、案の定!だから、スーツケースを一旦出してくれとあれだけ言ったのに!

スーツケースが載っていなくても、私たちはそのまま乗り継ぎ便に乗るしかない。数時間後、コスタリカのサン・ホセ空港に到着したが、スーツケースがなければ旅を始められない。予定ではその翌日に首都サン・ホセを離れるはずだったが、スーツケースを受け取るまでサン・ホセに足止めされることになってしまった。何の罰ゲームよ。

不運はこれで終わらなかった。スーツケースが来ようが来るまいが、レンタカーは予定通り受け取らなければならない。レンタカー会社へ出向き、夫のクレジットカードでデポジットを払い、無事、車は受け取った。ふう。しかし、その直後に現地の通貨コロンを引き出しておこうと、レンタカー会社そばのATMでキャッシングしようとしたら、エラーが出たのだ!夫がコスタリカへ行くたびに利用している、いつものATM、カードは数分前にデポジットを払うために使ったばかりのいつものクレジットカードである。周辺の複数のATMを試したが、いずれもダメである。

夫は携帯電話でドイツの銀行に電話したところ、電話口で延々何十分も待たされた挙句(国際電話なんだけど!)にわかったことは、レンタカー会社でデポジットとして1000ドルほど払ったのが「不審なトランスアクション」だとして銀行側が設置する検出システムに引っかかり、クレジットカードが自動的に止められたということ。夫は怒り心頭で、直ちに元通りにしてくれと訴えたが、電話口の人は自分にはその権限がないと言う。まったくもって運の悪いことにその日は日曜で、月曜にならないと執行権限のある人がオフィスに出てこないと言うのだ。私たちはすっかり窮した。飛行機の遅延からロストバゲージまでの一連のハプニングのせいで、予約してあるホテルには泊まれず、そのキャンセル料がかかるだけではなく、新たにその日の宿泊先を見つける必要があるのに、クレジットカードが使えないとそれすらもできないのである。

だったら、私のクレジットカードを使えばいい?それがなんとも運の悪いことに、私のクレジットカードはその1ヶ月ほど前に銀行(名前はここに出さないが、同じ銀行である 怒!)側のミスによって削除されており、新しいカードの発行を再三要求していたにもかかわらず、出発までに手元に届かなかったのだ。これにもかなり憤慨していたが、届かないものはしかたがないのでそのまま出発した。私たちは何も悪いことをしていないのにダブルで罰せられて路頭に迷うという信じられない事態。ああ、私たちの旅は始まる前に終了してしまったのだろうか。

それにしても今日、どこで寝よう。

「大丈夫。車の中で寝られるよ」

私は努めて明るく言った。しかし、夫は頭を横に振り、ため息をついた。「いくらなんでもそれは」。

「現金で泊まれるところを探そう」

空港に戻り、財布の中にあったユーロ札をバカ高い手数料を払って両替した。それほどの金額ではない。夫のクレジットカードがいつ復旧するのか、スーツケースは無事受け取れるのか、不確定要素ばかりであるから現金も慎重に使わなければならない。幸い、空港の近くの住宅街にわずかな現金で泊まれる民宿が見つかった。

泊めていただいたおうちの中庭

宿主は大変感じの良い夫婦で、私たちの不運に大いに同情してくれた。空港や銀行の職員とのやりとりに神経がすり減っていたので、温かい対応に涙が出そうになる。部屋は簡素だけれど清潔で、居心地は悪くない。民家に泊まることになったのも悪くないな、と思った。というのも、コスタリカは中米の国の中では治安が良いとされているが、首都サン・ホセの民家には泥棒よけなのか、格子のシャッターがついていることがほとんどだ。前回の滞在時、あのシャッターの奥で、市井の人々はどんな暮らしを営んでいるのだろうと気になっていたのだ。他人の家の中をジロジロと見るわけにはいかないけれど、コスタリカの人の生の生活をほんの少しでも肌で感じられるのは嬉しい。

中庭のソファーに座って、奥さんの淹れてくださったコーヒーを啜りながら、スーツケースは果たして届くのだろうかと心配しながら、夜になるまで中庭の木にやって来る野鳥を眺めて気を紛らわせた。

キバラオオタイランチョウ(Pitangus sulphuratus)コスタリカのどこにでもいる、やかましい鳥。

 

ソライロフウキンチョウ (Thraupis episcopus)

 

やがて夜になり、ブリキ屋根の下で寝た。どれだけ眠れたのかはよくわからない。朝が来て、宿の奥さんが磨き上げられた大きな木製のシステムキッチンで作ってくれた典型的なコスタリカの朝ごはんはとても美味しかった。

コスタリカコーヒー、ガジョピント(お豆ご飯)、焼いたプランテンバナナ、スクランブルエッグにフルーツ。コスタリカの朝ごはんメニューはどこへ行ってもこんな感じで、この後、繰り返し同じものを食べることになるのだが、今、思い返してみても、この朝のガジョピントが、滞在中、一番美味しかったと思う。

続く。