コスタリカ北部の2つの国立公園、アレナル火山国立公園テノリオ国立公園のトレイルを楽しんだ後、私たちは南へと向かった。目的地はオサ半島だが、一気に移動するのはキツいので、中間地点のケポス(Quepos)に3泊することにした。ケポスは太平洋に面した国立公園、マニュエル・アントニオ国立公園(Parque Nacional Manuel Antonio National) に隣接した町で、コスタリカの一大観光地である。なんとなく予想はしていたが、実際に行ってみるとオーバーツーリズム気味でうるさく、好みの場所ではなかった。大人気のマニュエル・アントニオ国立公園のチケットも到着の翌日とその次の日の分はすでに売り切れており、滞在3日目のチケットをかろうじて抑えることができた。

さて、それまでの二日間は何をしよう?

すぐに思い浮かんだのは、ケポスから国道34号を40kmほどさらに南下した、ドミニカル(Dominical)にある野生動物保護区、ハシエンダ・バル (Hacienda Baru)だった。

いつも旅行を計画する際には、ガイドブックやネットで情報を集めるだけでなく、その国に関する書籍を探して読むことにしている。今回、下調べとして読んだ本のうちの一冊はコスタリカの自然に関するエッセイ集 “Monkeys Are Made of Chocolate – Exotic and Unseen Costa Rica“。米国人の著者、Jack Ewing氏は1970年代の終わりにコスタリカに土地を購入し、以来、自然再生及び野生動物の保護活動を続けている。とても興味深く読んだので、Ewing氏がハシエンダ・バルと名付けたその保護区に行ってみたいと思った。

 

ハシエンダ・バル入り口

ハシエンダ・バルは自然観察ツアーを提供する宿泊施設も兼ねていて、敷地にはこじんまりとした居心地の良さそうなコテージが並んでいる。この自然保護区について知ったときにはすでにケポスの宿を予約してしまっていたので、ここに泊まるのは断念したのだった。もっと早くに知ってここに滞在できたらよかったのにと少々後悔。

 

太平洋と国道34号に挟まれた、広さおよそのハシエンダ・バルの敷地はかつては牛牧場で、およそ150ヘクタールに渡って森林が破壊されていた。

1972年に撮影された航空写真。左下は太平洋。画像は敷地内の説明用立て看板の写真を撮影したもの。

 

個人のイニシアチブから始まった自然再生の試みだったが、Ewing氏らの継続的な活動の結果、敷地は多くの野生動物の生息地として蘇り、1995年、ハシエンダ・バルは国の野生動物保護区に認定されている。

自然再生が進んだ現在の様子。

 

敷地内にはいくつかのトレイルがあり、料金を払えば、宿泊者以外のビジターも歩くことができる。私たちも歩いてみることにした。

野生動物を観察したいなら、早朝か夕方が良い。昼間の暑い時間帯は動物たちは茂みなどの奥に隠れて休んでいるからだ。このときはちょうど昼間で、あまり動物は見られないだろうなあと期待していなかったが、意外に多くの生き物に遭遇した。

 

シロボシクロアリモズ (Thamnophilus bridgesi) これはメスかな?

 

鬱蒼とした茂みに挟まれた小径を歩いていくと、前方数十メートルの地面に何やら茶色い大きな物体が横たわっている、、、、と思ってよく見たら、それは3羽のオオホウカンチョウ (Crax rubra )のメスだった。

もう少しよく見ようともう一歩足を進めたら、そのうちの1羽が飛び上がり、横の茂みに入った。茂みの中から心配そうな声を上げ、仲間の2羽に呼びかけている。しまった、怖がらせてしまった。ごめんなさい。

オオホウカンチョウ(大鳳冠鳥)はコスタリカでは特に珍しい鳥ではないが、体長90cmにも及ぶその大きさと見事な頭の冠羽が特徴的で、目にするたびに目を見張ってしまう。

ちなみに、これは別の場所で撮った写真だが、オスは体全体が真っ黒で、嘴の上に黄色い大きなコブがある。

日頃、ドイツでバードウォッチングをする際、コーネル大学が開発した野鳥識別アプリ、Merlin Bird IDが大いに役に立った。グローバル対応のこのアプリは地域ごとのパッケージがあるので、現地に着いたら該当するパッケージを追加で無料ダウンロードすればすぐに使えて便利だ。コスタリカのネイチャーガイドさんたちも皆、使っているようだ。紙のフィールドガイドなら、やはりコーネル大学出版から発行されているシリーズのRichard Gariguess “The Birds of Costa Rica: A Field Guide” が良い。

 

胴の赤さが鮮やかなコシアカフウキンチョウ(Ramphocelus passerinii)のオス

こちらはメス。メスはコスタリカの東部と西部でカラーバリエションが異なる。このように胸元のオレンジ色が濃いのは西部(太平洋側)で見られる。

ナツフウキンチョウ (Piranga rubra)のオス。

ナツフウキンチョウ (Piranga rubra)のメス。

イグアナもいた。イグアナはフィールドガイドを見ても、種がよくわからない。(わかる方がいらしたら、是非是非教えてください)

 

哺乳類はクビワペッカリー( Tayassu tajacui) とマダラアグーチ(Dasyprocta punctata)に遭遇!

ペッカリーにはクチジロペッカリー (Tayassu pecari)というのもいるが、これはクビワペッカリーの方、なぜなら、

ほらっ!首の周りに白い毛がリング状に生えている。

巨大なネズミのような、あるいはリスのような、なんとも不思議な見た目のアグーチ。群れることなく単独で行動するが、昼行性の動物だから遭遇するチャンスはまあまあある。主に果物や植物の種を食べ、森に種を散布する、生態系において重要な役割を持つキーストーン種だ。

ざっくり2時間ほどのトレイルだったが、いろいろな生き物が見られてとてもよかった。エントランスに戻ってカフェエリアで飲んだ、冷えたスムージーもとてもおいしかった。次回はぜひハシエンダ・バルに宿泊して、ガイドツアーに参加したい。