リーパリ島をぐるっと一周し、海でも何度か泳いだので、今度は日帰りでエオリエ諸島で3番目に大きい島、ヴルカーノ島(Isola Vulcano)へ行くことにした。火山のことを英語でvolcano、ドイツ語ではVulkanと言うが、それらの言葉の由来はこのヴルカーノ島である。そもそもなぜこの島がIsola Volcanoと呼ばれるようになったかというと、ギリシア神話ではこの島には火の神、へパイストスの鍛冶場があるとされた。ギリシアの神「へパイストス」に対応するローマの神は「Vulkanus」である。

ヴルカーノ島へはリーパリ島から観光ツアーも出ているが、リーパリ島とヴルカーノ島との間は頻繁に連絡船が行き来しているので、それを利用することにする。車はリーパリ島へ置いていくのでヴルカーノ島を自力で回ることはできないが、きっと現地ツアーがあるだろう。

ヴルカーノ島の港

ヴルカーノ島に到着。まずは観光案内所でパンフレットでももらおうかと思ったが、そのようなものはなかった。

港から集落への道

島に上陸すると、強い硫黄臭が鼻につく。ヴルカーノ島では古代ローマ時代から硫黄が採取されていた。キツくて危険で健康に悪い硫黄の採取作業は、古代ローマ時代には奴隷が、近代には囚人が担った。しかし、1880年から19990年にかけて起きた最後の噴火の際、硫黄の採取施設はすべて崩壊したそうだ。この噴火時に大規模な森林火災が起き、住民はボートでリーパリ島へ避難したという。

ヴルカーノ島には泥浴場があると読んだので、まずはその浴場を探しに行こう。地図を見ると、港からは目と鼻の先のようだ。

泥浴場は現在、閉鎖中だった。ガッカリ。

娘が「綺麗な洞窟があるらしいよ。それを見に行こう」と言う。案内地図を見ると、東の海岸に確かに洞窟があるようだが、陸路で到達できるようには見えない。島の西側のビーチへ行けば、そこからボートツアーが出ているのではないかと推測し、ビーチSpiaggia Sabbie Nereに向かう。

黒い砂のビーチの奥にボート乗り場があった。持ち主と思われる男性が何人か立っていたので、「洞窟に行くツアーはあるか?」と聞くも、言葉がまったく通じない。シチリア島もエオリエ諸島も基本的に英語はあまり通じないのだ。しかし、娘がどうしても行きたいと言うので、夫が諦めずに片っ端から船長風の人に声をかけていったら、ようやく洞窟までボートを出してもらえることになった。1時間クルーズで一人10ユーロ。さあ、真っ青な海とダイナミックな海岸線を眺めながらの小クルーズの始まりだ。

迫力ある崖の景色

「あの岩はライオンの横顔に見える」とか、、、

「あれはゾウの足にそっくり」とか、船長がいろいろ説明してくれたようだが、イタリア語がほとんどわからないので、他にどんな話をしてくれたのかは不明。こういうとき、現地の言葉がわからないと本当に残念。

そうこうしているうちに、見たかった洞窟、グロッタ・デル・カヴァッロ(Grotta del Cavallo)がいよいよ近づいて来た。

中はどのくらい深いのだろうか。遠くからだと暗くて中がよく見えない。洞窟の少し手前でボートを一時停止してもらったので、青い青い水に飛び込んで少し泳ぐ。最高。

泳ぎ終わってボートに上がると、船長がボートを洞窟の前に寄せてくれた。水面になにかがきらめいている。

 

うわー!

光って見えるものは水面に浮いた細かい軽石だそうだ。軽石と言われればそうかと思うけれど、まるでイルミネーションのようで美しく、魔法を目にした気分だ。ここでボートは来たルートを引き返し、出発したビーチに戻った。1時間ほどとはいえ、10ユーロで普段はできないことができたのだから、悪くない。

しかし、ヴルカーノ島でのアクティヴィティのハイライトはこれからである。vulcano(火山)という言葉の語源となったこの島で最も大きな火山、ヴルカーノ・デッラ・フォッサ(vulcano della Fossa)に登るのだ。

後ろに見えるのがヴルカーノ・デッラ・フォッサ

標高は391m。山頂付近には大きなクレーターがあり、グラン・クラテーレ(Gran Cratere)とも呼ばれる。赤っぽい山肌に斜めに通った黒いラインが登山道で、左上の煙の出ているところまで登るつもり。登山道はそれほど急ではないが、日陰がなく黒い地面が太陽光を吸収して熱いので、昼間登るのはやめたほうが良いとガイドブックに書いてある。夕方4時まで待って登り始めることにした。

午後4時過ぎでも暑ーい!あっという間に超汗だくになり、体力を奪われる。強い日差しにクラクラし、なんでこんなことやってるんだっけー?と叫びたくなった。

でも、1時間ほど頑張って登り、見下ろした景色の素晴らしさは感動的で、報われた。

ヴルカーの島の向こうにリーパリ島とその後ろにサリーナ島が見える。

そしてリーパリ島の東側にはうっすらとパナレーア島とストロンボリ島が見えるではないか。これはすごい!こんな景色、初めて見たよ。

山頂には直径500mほど、深さ200m のクレーターがある。

火山ガスの刺激臭が強くて、むせてしまった。長居はせずに下山しよう。

暑い中、登るのに1時間、降りるのに30分、港に戻るのにさらに30分くらいかかって結構疲れたけど、楽しかった!リパーリ島へのボートが来る時間まで、港のそばのレストランで美味しいご飯を食べて大満足である。充実してるなあ。

ところで、火山の噴火様式の一つに「ブルカノ式噴火」というのがあるが、それはこのヴルカーノ島(ブルカノ島とも表記される)でよく見られる噴火様式のことで、粘り気の強い溶岩の火山で爆発的な噴火が特徴である。桜島など、日本の火山にも多いタイプ。別の噴火様式に「ストロンボリ式噴火」があるが、それもこのエオリエ諸島の一つ、ストロンボリ島の火山が名前のもととなっている。

次回はいよいよそのストロンボリ火山に挑戦だ。