ナイバシャ湖のすぐ南にはヘルズゲート国立公園(Hell´s Gate National Park)という小規模の国立公園がある。

1984年に設立された「地獄の入り口(ヘルズゲート)」という怖い名前のこの国立公園は、東アフリカ大地溝帯(グレート・リフト・バレー) の一部を成し、火山活動によって形成された渓谷や岩の絶壁 が特徴である。これまで回って来た国立公園や保護区では基本的にサファリカーに乗ったままの観光だったが、ヘルズゲート国立公園は大型肉食動物が少ないので(いないわけではない!)、徒歩やサイクリングでも回ることができる。運動不足の日が続いていたので、サイクリングをすることにした。サルマックヴィレッジのヘルズゲート国立公園通り(Road to Hell´s Gate National Park)にある貸し自転車ショップで自転車を借りると、エルザ・ゲートまでは貸し自転車ショップのスタッフがバイクで自転車を運んでくれる。

エルザゲート

あらかじめルーカスさんがサイクリングツアーを手配してくれており、ここでもガイドさんがついた。でも、ここでのサイクリングにはガイドは特に必要ないと思う。

サイクリングにしゅっぱーつ。

ゴージロード(Gorge Road)と名付けられた道路を8km走り、ヘルズゲート渓谷(Hell´s Gate Gorge)を目指す。道路の左右には赤い岩壁が続き、晴れ渡った青空とのコントラストが素晴らしい。

岩は火山活動による玄武岩で、溶岩流の冷却によってできた柱状節理が水の侵食や風化によって露出し、荒々しい景観を作り出している。赤みがかっているのは酸化鉄(Fe₂O₃)を含むため。

道路の砂利には黒曜石が含まれていて、ところどころキラキラ光っていた。

サイクリングルートは片道8km 。道路のコンディションはそう悪くなく、傾斜も緩やかなのだけれど、古い安物の貸し自転車なので全然スピードが出ない。 途中、何ヶ所か自転車を降りてガイドさんの説明を聞くこともあり、たった8kmに1時間近くかかった。

さて、ヘルズゲートには、火山の噴火によって形成されたタワー状の岩がいくつかあり、見どころとなっている。その一つが、フィッシャーズ・タワーFischer’s Towerだ。

フィッシャーズタワー。発見者のドイツ人、フィッシャーにちなんで名付けられた。

高さ25mのこの岩は過去の大規模な火山噴火による溶岩の固まりで、周囲の地層が侵食され、硬い部分だけが残ってこのようなタワー状になった。

ロッククライマーにも人気。

岩のうえにロックハイラックス(Procavia capensis),がいた。

公園内のもう一つの有名な岩の塔、セントラル・タワー(Central Tower)

ヘルズゲート国立公園は、ハゲワシや猛禽類の生息地としても有名だ。

「あの岩の白っぽくなっているところにハゲワシの巣がありますよ」とガイドさんに言われ、目を凝らした。遠くてよく見えないので双眼鏡を目に当てる。

何羽かのアフリカハゲワシ(Rüppell’s Griffon Vulture, Gyps rueppelli) とおぼしき鳥が見えた。生まれたてのヒナというより、もうだいぶ大きくなっているようだ。

火山活動が活発なヘルズゲートは ケニア最大の地熱発電所 があるエリアで、地熱で温められた間欠泉や温泉 があり、地面のあちこちから蒸気が噴き出している。地熱エネルギーはナイロビなどの都市へ供給されている。

渓谷、ヘルズゲート・ゴージの入り口まで行ったら、自転車を停めてキャニオンウォーク。

ヘルズゲート・ゴージは、火山の噴火による堆積物(火山灰・軽石・火砕流)と、その後の侵食作用 で形成された渓谷だ。数十万年前~数千年前の大規模な火山噴火(主にロンゴノート山)で分厚く降り積もった火山灰や軽石(テフラ)から成る地層が水や風、そして地熱によって侵食を受けてできた。

火山灰の層には過去の噴火の記録が刻まれている。

この滝の水は実はお湯で、温泉水である。

この渓谷は映画『トゥームレイダー2』(2003年)のロケ地として使われたそう。

渓谷は奥に進むにつれ、狭くなっている。雨季には鉄砲水が発生することがあり、とても危険だ。2019年に観光客とガイドが突然の豪雨による鉄砲水に巻き込まれて亡くなるという事故があり、現在、危険なエリアにはロープが貼られ、一番奥まで行くことはできない。

ヘルズゲート国立公園はナイロビからのアクセスも良く、サファリ以外のアウトドアアクティビティを楽しめる場所として人気が高い。