いつからか、野生の生き物を観察することが大きな趣味の一つとなっている。自宅の庭や周辺でバードウォッチングをするほか、アニマルトラッキングや野生動物のモニタリングボランティアなどもしている。しかし、私の住んでいるドイツは国の北側にしか海がなく、北海やバルト海は夏でも水が冷たくて泳ぐのにはあまり適していない。だから、トロピカルな海に飢えているところがある。

そんなわけで、セイシェルではシュノーケルで海の生き物を見ることをとても楽しみにしていた。10日間のクルーズ中、毎日数時間シュノーケルをすることができたので、とても満足だ。セイシェルの内部諸島の多くはこちらの記事に書いたように、花崗岩の島だが、その周囲をサンゴ礁が囲んでいるので、シュノーケルスポットは豊富にある。たくさんのシュノーケルスポットに連れて行ってもらったうち、特に気に入った場所は、サン・ピエール島の周辺。その他、マエー島近くのサンタンヌ海洋公園(Sainte Anne Marine National Park)のサンタンヌ島とモワイヨンヌ島の間のコーラルリーフもとても良い。

サン•ピエール島。この島は花崗岩ではなく、海の生物の死骸が堆積してできた石灰岩でできた小さな無人島だ。

たとえばどんな生き物が見られるのか、GoProで撮った動画をいくつか貼っておこう。

イカの群れ。

シマハギ、パウダーブルーサージョンフィッシュ、ニシキブダイなど。

サンゴ礁は世界の海全体の1%に満たないが、海の生き物の25%がサンゴ礁に生息するとされている。セイシェルのサンゴ礁はおよそ300種のサンゴが形成し、魚は400種ほどだという。ただ、セイシェルの海でもやはり気候変動によるサンゴの白化現象はかなり進んでいるように見えた。サンゴには浅い海に分布する造礁サンゴと深い海に分布する宝石サンゴがある。シュノーケルで見えるのは造礁サンゴで、本来は褐色系の地味な色をしているものが多い。それは、サンゴは共生する褐虫藻が光合成によって作る栄養分に依存して生きているから。ところが、海水の温度が上がると褐虫藻が抜け出し、サンゴが餓死してしまう。つまり、白くなったサンゴは死んでいる。それでもかなりいろいろな魚を見ることができたけれど、本当に残念で、心配だ。

たぶん、ニセタカサゴの群れ。

スズメダイやマツカサの群れ。

ツバメウオ、スナブノーズポンパノなど。

マダラトビエイ。

ナンヨウブダイかな。

過去にシュノーケルをしたときには水中動画や写真は撮らなかったので、水中にいるときには感動しても、時間が経つと何を見たのだったかすぐに忘れてしまった。今回はこうして記録できたので、図鑑を見ながら種の同定を試みている。まったく知識がないので、図鑑を見てもあまりに種類が多くて、最初のうちはなかなか同じ魚を見つけられなかったけれど、しばらく取り組んでいたら少しづつ大まかなグループが把握できるようになって来てとても楽しい。また、水の中で見ているときには1つの種だと思っていた魚が実は微妙に異なる3〜4種だということがわかったりして面白い。地味な魚は同定が難しいけれど、ブダイやベラなどの派手なものは調べやすい。でも、ブダイだけでもすごくたくさんの種類があるんだなと驚く。未知の世界に足を踏み入れてしまった。

サザナミヤッコの幼魚

これは何ブダイ?

ミヤコテングハギ

ニシキブダイ

チェッカーボードベラ

トゲチョウチョウウオ、キガシラチョウチョウウオ

これまでに見分けることができたのは50種ちょっと。写真を撮れなかったものや、不鮮明でよくわからないものも多いので、ざっと70種くらいは見ることができたかな。

シュノーケルは本当に楽しい。お魚の種類を調べるのも楽しい。これで、ハマることがまた一つ増えてしまったのだった。

 

この記事の参考文献:

Mason-Parker & Walton “Underwater Guide to Seychelles” (2020) John Beaufoy Publishing Limited.

山城秀之 「サンゴ 知られざる世界」(2016) 成山堂書店