ケニアで訪れた3つ目の生物保護区、サンブル生物保護区(Samburu National Reserve)は、前日に滞在したオルペジェタ生物保護区(Ol Pejeta Conservancy)から、ケニアの地理的中心とされるイシオロ(Isiolo)の町を通過し、北東に150kmほど移動したところにある。イシオロの町には、服装からムスリムとわかる人がとても多かった。サンブル族、ボラナ族、トゥルカナ族、ソマリ族などの民族が暮らしているが、特にムスリムのソマリ系の住民が多く、また、ナイロビと北部の都市を結ぶ交通の要所で、エチオピアやソマリア方面との交易の拠点でもあることから、イスラム文化が根付いているらしい。

ケニア山周辺の緑多い景色から一転して、窓から眺める景色は乾燥した大地となり、民家もまばらになっていった。ルーカスさんによると、朝晩は気温が下がり比較的過ごしやすいケニア南部と比べ、ケニア北部は反砂漠気候でとても暑いとのこと。

サンブル国立保護区は行政区画サンブル郡にあり、隣接するイシオロ郡のバッファロースプリングス国立保護区(Buffalo Springs National Reserve)シャバ国立保護区(Shaba National Reserve)と共に、総面積およそ600㎢の繋がりのある生態系を形成している。「サンブル」という名前はこの地域に古くから住んでいるサンブル族に由来する。サンブル族は、マサイ族と近い関係を持つナイル系の牧畜民族で、伝統的に牛やヤギ、羊を飼いながら半遊牧生活をしている。文化や言語もマサイ族に似ている。サンブル生物保護区の特徴は、野趣溢れる美しい景色と、「サンブル・スペシャル・ファイブ」と呼ばれる独特な野生動物だ。

サンブル・スペシャル・ファイブとは、

  1. グレビーシマウマ(Grevy’s Zebra) 一般的なシマウマよりも体が大きく、縞模様が細かい。
  2. アミメキリン(Reticulated Giraffe) 体にくっきりとした網目模様がある美しいキリン。
  3. ソマリダチョウ(Somali Ostrich) Blue-necked ostrichとも呼ばれる首と大腿が青味がかったダチョウ族の一種。
  4. ゲレヌク(Gerenuk) 首が長く、後ろ足で立って木の葉を食べる珍しい草食動物。
  5. ベイサオリックス(Beisa Oryx) まっすぐ伸びた角を持つ美しいアンテロープ。

さて、果たしてこれらを見ることはできるだろうか。

 

サンブル国立保護区の方が知られているのでタイトルにはサンブル国立保護区と書いたが、実は私たちが滞在したのロッジはエワソ・ニーロ川(Ewaso Ng’iro River)を挟んで南側にあるバッファロースプリングス国立保護区内にあった。生態系も生息する動物も川の北側と南側で変わりないが、運営が違うので両方でサファリをする場合には入場料が2倍かかってしまう。そういう事情で、私たちがサファリを楽しんだのはバッファロースプリングス国立保護区である。

エワソ・ニーロ川沿いに立つロッジのベランダからの眺めは素晴らしかった。ヒヒの群れが水浴びをしに川へと向かっている。

プールからはゾウの家族がゆっくりと歩く姿を眺めることができた。夢のよう。

ロッジの敷地内にはジリスやコビトマングースがいた。

ジリス (Ground squirrel)

コビトマングース (common dwarf mongoose, Helogale parvula)

今回のケニアでのサファリ旅行を通じて少し残念だったのは、観光客が自由に歩けるのは基本的にフェンスに囲まれたロッジの敷地内だけなこと。サファリでは車に乗っているだけなので運動不足になってしまうし、自然の中を散歩したいという欲求があった。でも、町ならともかく、生物保護区には危険な生き物がたくさんいるのだからしかたがない。

さて、いよいよサファリの時間である。

バッファロースプリングス国立保護区。

早速、見つけた!

これが赤道以北でしか見られない、グレビーシマウマ (Gravy´s zebra, Equus grevyi)。確かにシマが細かくて、見ていると目が回りそう。お腹の部分には模様がなく、白い。

オリックスの群れがいた。向こうに見えるのはアミメキリン?

ベイサオリックス (East African Oryx, Oryx beisa)

真っ直ぐ伸びた長いツノ、前脚には黒い帯模様。顔はかなり牛っぽい。

赤ちゃんオリックスもいた。

お母さんが来て、体をきれいにしてくれた。

アミメキリン (Reticulated giraffe, Giraffa reticulata) 

トゲトゲのアカシア上手にしごいての葉っぱだけ取って食べている。

ケガして治った跡?

こちらはゲレヌク (Gerenuk, Litocranius walleri)の親子。ほんと、首が長い。

そして、スペシャル5の5つ目は、ソマリダチョウ (Somali Ostrich, Struthio molybdophanes)。

「ダチョウ」と付くけどダチョウではなく、ダチョウ属に属する別の主だそう。

オス

メス

ここでしか見られないスペシャル5、あっさり全部見れてしまった!が、バッファロースプリングスで見られるのはこれらにとどまらない。翌日のサファリではさらなる感動が待っていたのである。

その2に続く。