前回の記事の続き。

せっかくはるばる自然保護区ベルトリングハルダー・コークまでやって来たからには、できるだけくまなく保護区を見て回りたい。自転車を車に積んで来たので、保護区内をサイクリングすることにした。

地図に入れた紫のラインが今回のサイクリングルート。ホテルArlauer Schleuseを出発し、北回りでだいたい25kmくらいかな。カオジロガンの群れのいる見晴らし台Aussichtturm Kranzを通り過ぎ(カオジロガンの群れについては前記事の通り)、1kmくらい進んだところで左に曲がり、Lüttmoordammという舗装された道を海に向かって真っ直ぐ走る。

この写真は翌日に撮ったので曇っているが、サイクリングをした日は快晴で気持ちがよかった。

真っ平らなので、野鳥に興味がなければ単調な景色に感じるかもしれない。しかし、至るところにいる野鳥を眺めながら、自転車を走らせるのは最高なのである。三角形をした保護区の北西側に広がる湿った草地や淡水池、塩沼にはたくさんのシギがいた。

エリマキシギ (Kampläufer)

オスのエリマキシギ。繁殖期のオスの体の模様にはいろいろなバリエーションがある。首の後ろの羽を襟巻きのように広げて求愛行動をおこなう。残念ながら、広げている姿は見られなかった。

オグロシギ (Uferschnepfe)。草地の地面に巣を作る。

タゲリ(Kiebitz)の姿もあちこちで見られた。

周囲の色と一体化していて、よく見ないとわからないものも。

ミヤコドリ(Austernfischer)。

ソリハシセイタカシギ (Säbelschnäbler)

ここにもたくさんのカオジロガンが。

こちらはコクガンの一種であるネズミガン(Ringelgans)。

ツクシガモ(Brandgans)

巣で抱卵中のガン。

ハイイロガンのヒナはすでにたくさん生まれていて、家族連れで歩いているのをそこらじゅうで見た。

保護区内ではウサギもたくさん駆け回っている。

リュットモーアダムを先端まで行くと、保護区のビジターセンターがあり、ベルトリングハルダー・コークの生態系やその保護についての展示が見られる。

ビジターセンターを見た後は、すぐ前の堤防に上がってみた。

堤防からは海へ線路が延びている。

干潮時にしか利用できないこの線路はHalligと呼ばれるワッデン海特有の小さな島へと続いている。高潮時の海面からわずか1メートルほどの高さしかないHalligが、ワッデン海には10つある。

ハリク、ノルトシュトランディッシュモーア(Nordstrandischmoor)。この小さな島はかつて、シュトラント島というもっと大きな島の一部だった。1634年に起きた高潮によってシュトラント島は海に沈み、ノルトシュトランディッシュモーアはかろうじて残ったその断片なのだ。盛土がされた場所にいくつかの建物が見える。わずかながら人が住んでいて、学校もある。ドイツで最も生徒の少ない学校だそう。

さて、サイクリングを続けよう。

堤防を南に向かって走ると、左手には塩沼に縁取られた塩湖が広がっている。その南側は立ち入り禁止の野生ゾーンだが、その縁を徒歩または自転車で通ることができる。出発地点に戻る途中にはさまざまな景色があり、いろいろな野鳥がいた。

ヨーロッパチュウヒ (Rohrweihe)

 

ヨシキリ(Schilffrohrsänger)

ツメナガセキレイ (Schafstelze)

タゲリ(Kiebitz)とツルシギ(Dunkelwasserläufer)

姿を見たけれど写真撮れなかった野鳥や声を聞いただけの野鳥もたくさんいて、正味1日半の短い滞在だったけれど、大満足。次回はぜひ、ハリクのいくつかを訪れたい。

 

 

 

 

野鳥を見に、ワッデン海国立公園へ行って来た。ワッデン海はオランダからデンマークまで続く世界最大の干潟を持つ沿岸地域で、その特殊環境はユネスコ世界遺産に登録されている。そのうち、ドイツの沿岸にあたる部分はニーダーザクセン・ワッデン海国立公園、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン・ワッデン海国立公園、ハンブルク・ワッデン海国立公園という3つの国立公園から構成されている。ワッデン海へ行くのはこれが2度目。こちらの記事に書いたように、前回はニーダーザクセン・ワッデン海国立公園を訪れた。夏の終わりで渡鳥のシーズンにはまだ早かったにもかかわらず、たくさんの野鳥を見ることができて大感激し、次に来るときには野鳥の種類が特に多くなる春にしようと決めていた。

今回目指したのは、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン・ワッデン海国立公園のベルトリンクハルダー・コーク(Beltringharder Koog)。港町フーズム(Husum)から北西におよそ15kmのところに位置している。ベルトリンクハルダー・コークに限らず、ワッデン海沿岸には地名にコーク(Koog)とつく場所が多くある。聞く慣れない言葉だが、潮の満ち引きの影響で時間帯によって冠水したり陸地になったりする地形、つまり塩性湿地という意味だと知った。

ベルトリンクハルダー・コークは堤防によって海と隔てられた自然保護区で、塩湖や淡水池、塩沼、湿った草地など異なるゾーンから成る。その環境の多様性ゆえに、さまざまな野鳥がここに集まるのである。

現地で入手したパンフレットの地図。環境ゾーンが色分けされている。

今回の2泊3日の旅行ではバードウォッチングに集中したかったので、ベルトリンクハルダー・コーク唯一のホテル、Hotel Arlau-Schleuseに泊まった。抜群のロケーションで、部屋も快適。

 

ホテルのすぐ前の堤防に上がると湿地が広がっている。

ホテルから堤防に沿って北にわずか数分歩くと、Aussichtsturm Kranzと呼ばれる見晴らし台が立っている。到着した日、見晴らし台に登り、辺りを見渡して驚いた。なんとそこにはおびただしい数のカオジロガンがいたのだ。

一体何羽いるんだろう?

カオジロガンたちは堤防を挟んで海側の湿地と畑を行ったり来たりしているようだった。

 

頭の上を黒いベールが風に乗って通り過ぎていくかのようで、圧倒される。

Zugvögel im Wattenmeer – Faszination und Verwantwortung“(タイトルを訳すと、「ワッデン海の渡鳥 〜 その魅力と私たちの責任」となる)という資料によると、カオジロガンは真冬の間は沿岸よりもやや内陸で過ごし、ワッデン海の塩沼には植物が豊富になる3月の終わりにやって来る。そこでお腹いっぱい食べてエネルギーを蓄え、4月の終わりから5月にかけて旅立ち、ノンストップで繁殖地である北極圏のカニン半島へ移動する。ちょうどシーズンなので今回見られるかもしれないとは思っていたが、ここまで大きな群れとは想像していなかった。これを見られただけで、来た甲斐があった。

お腹が丸々しているのはたっぷり食べている証拠

カオジロガンはドイツ語ではWeißwangengans(直訳すると「白い頬のガン」)またはNonnengans(「修道女ガン」)と呼ばれる。修道女と言われると、確かにそんな風に見えなくもない。

野鳥天国ベルトリングハルダー・コークで見られるのはもちろんカオジロガンだけではなく、今回のわずか1日半の滞在中にいろいろな野鳥を見ることができた。それについては次の記事に記録しよう。

 

(おまけ)ホテルの朝食。ドイツの朝食は一般的にはパンとハム、チーズだけれど、海辺ではお魚もあるのが嬉しい。

 

 

野鳥の繁殖シーズンが今年もやって来た!2020年の春、庭のナラの木に初めてカメラ付きの巣箱を設置してから、2020年2021年2022年と3年連続でシジュウカラの子育ての様子を観察することができた。ヒナたちが無事に巣立つこともあれば、いろいろなハプニングで悲しい結果になることもあり、毎年ハラハラである。今年は3月にエジプト旅行に出かけていたので清掃した巣箱を木に戻すのが少し遅くなってしまい、3月31日にようやく設置。すると、すぐさまにアオガラが巣材を運び入れ始めた。他の年も、最初に巣箱に入るのはいつもアオガラだった。しかし、ほんのわずかのコケを運び入れた後、そのまま放置し、いつ本格的に営巣を始めるんだろうと思っているうちにシジュウカラがやって来て巣箱を占領するというのがいつものパターン。だから、今年もそうなるのでは?

 

と思ったら、今年は最初から本気モードで、わずか半日で基盤がおおかたできてしまった。手慣れたものである。ここまで進めたのなら、もう中断はしないだろう。今年は初めてアオガラの子育てが観察できそうだ。

 

メスの作業中、パートナーのオスと思われるアオガラも頻繁に巣箱を訪れている。でも、ちょっと不思議なのである。オスが来るとメス(アオガラのアオちゃんと名付けた)は食べ物をねだって口を開けるが、オスは食べ物を見せるだけで食べさせないのだ。見せるだけ見せて巣箱の出口に戻る。それを数回繰り返す。これはどういうことなんだろう?まるで、食べ物で釣ってアオちゃんを巣箱の外におびきだそうとしているかのよう。このような場面がなぜか数日間に渡って繰り返し見られた。

 

営巣開始から11日目にカメラの映像を見ていると、大変なことが起こった。アオちゃんが巣にいるところにまたオスがやって来た、と思いきや、2羽の間で激しいバトルになったのだ。ということは、やって来たアオガラはパートナーのオスではなく、別のメス???アオちゃんは床にねじ伏せられ、大ピンチ!

実は去年のシジュウカラの営巣では、メスが巣を留守にしている間にクロジョウビタキが巣に侵入し、戻って来たシジュウカラのメスが怒って激しく攻撃した結果、侵入者のクロジョウビタキが命を落とすという事件があったのだ(そのときの記録はこちら)。そんなことがあったものだから、また死闘を目撃することになるのではと焦ったが、格闘の末、1羽が巣箱から出て行き、決着がついたようだ。勝者がどちらなのか、映像からははっきり判断できないが、巣に残ったのはアオちゃんの方であると信じたい。でも、もしかしたら乗っ取りかもしれない。すごく気になる、、、。

 

その翌日、巣に残ったメスは卵を一つ産んだ。口移しで食べ物をくれそうでくれないオスといい、前日のバトルといい、いろいろ謎が残るのだが、めでたく卵が産み落とされたことだし、便宜上、卵を産んだこのメスがアオちゃんだという前提で記録を進めたい。

 

卵の数は毎日1つづつ増えていき、10日後に10つになった。すごいすごい。

 

そして、いよいよ抱卵モードに!ヒナが孵るのが楽しみである。どうか途中でハプニングがありませんように。

 

(続く)

ドイツはもうすぐ復活祭。まだまだ気温は低いけれど、日が長くなり、庭では春のエネルギーが爆発している。冬の眠りから覚めた動物たちが動き回り、野鳥たちが冬超えをしていた南から続々と戻って来て、恋のパートナーを求めて高らかにさえずっている。今、窓の外を眺めながらこの文章を書いている間にも、クロウタドリ、ホシムクドリ、コマドリ、カケス、ズアオアトリ、モリバト、アオサギ、といろんな野鳥が次々に目の前に現れた。

1年のうちで、この時期が一番好きかもしれない。毎日、庭で繰り広げられる野生の生き物たちの活動から目が離せない。裏の家と我が家の庭の境に古い大きなナラの木がある。その木がいろんな生き物の生活の場になっている。

リスが枝の上で器用に毛づくろいをし、

アカゲラが森から運んで来たマツカサを木の隙間に挟んで種を食べ、

アオガラが巣箱で営巣を始めた。古い木が存在することの大切さを強く実感するのも春である。

 

そして、いつものように、春になるとマガモのカップルがなぜか毎日やって来る。

これから初夏にかけて、クロウタドリやシジュウカラ、ゴジュウカラ、アオガラ、クロジョウビタキ、アカゲラなどが一斉に子育てをし、夜にはハリネズミが庭を歩き回り、池にはカエルやヤマカガシが産卵にやって来るのがとても楽しみだ。毎日必ず面白いことがあるので飽きることがない。彼らを観察することが最高のエンタメなのである。サブスク代も払わないのにこんなに楽しませてもらっていいのかな。

(以下は庭にやって来る生き物たちの過去の画像)

とはいえ、今の場所に住むようになって17年になるが、最初から田舎暮らしを楽しんでいたわけではない。もともとは都市育ちで、若い頃は自然にはそれほど興味がなかったし、庭なんて手間がかかって面倒くさいと思っていた。

だけど、今は生き物たちと空間を共有することをとても幸せに感じるようになった。自然がこれほど大きな喜びや心の安定を与えてくれることを、自然の中で暮らしてみるまでは想像できなかった。このブログ、旅ブログとして始めて、今もそのつもりなのだけれど、いろんな理由でかつてのように気軽に旅ができる世の中ではなくなりつつある。自分も歳を取っていくので、いつまでも旅ができるわけではないだろう。たとえ遠くへ行けなくなったとしても、身近にもワクワクするものはいくらでもあると教えてくれたのは生き物たちだ。

今年も忙しくも楽しい春の庭をおおいに満喫したい。

 

 

内陸部に住んでいるので、あまり海に行く機会がない。ドイツにも北部に海はあるのだけれど、真夏でも水が冷たくて泳ぐ気になれない。海の楽しさを忘れかけていたが、去年の秋にセイシェルに旅行に行って、シュノーケルが大好きだったことを思い出した。

セイシェル・ヨットクルージング④ シュノーケルで海の生き物を観察

カラフルな熱帯魚と一緒に泳ぐほど幸せなことはない!と強く感じた日々だった。シュノーケルでもこんなに感動するなら、ダイビングはきっともっと素晴らしいに違いない。ああ、海に潜ることができたら!

しかし、私は自他共に認める運動オンチ。そんな私にダイビングのような難しそうなこと、できるわけがない。いや、もしかして、やってみたらできるかも?ダメダメ、無理だって。やる前から諦めずにやってみる?やめとけ。試すだけでも?一人二役押し問答をしばらく続けた末、「できなかったらやめればいいことじゃないか。とりあえずやってみよう」という結論に達した。

そんなわけで、ダイビングのメッカ、紅海へ行って来た。紅海はアフリカプレートとアラビアプレートが分裂して形成された細長い海で、その海岸線に沿ってサンゴ礁がおよそ4000kmも続いている。世界で最も長い一続きのサンゴ礁だ。気候変動の影響で世界中でサンゴの白化現象が進む中、紅海では今のところ良い状態が保たれているという。これまでに確認されている魚は1200種を超え、そのうちの約10%は固有種というのだから、世界中のダイバーの憧れの的なのも頷ける。

滞在先は南エジプトのマルサアラム(Marsa Alam)に決めた。ポピュラーなのはフルガダ(Hurghada)だけれど、メジャーな場所が好きではない天邪鬼な私なので、まだあまり観光地化されていないマルサアラムのダイビングリゾート、The Oasisを予約した。ベルリンからマルサアラムまでは直行便があり、4時間50分で行ける。

上のマップで一目瞭然なように、ホテルは海に面しているが周りはどこまでも続く砂漠で、それ以外には何もない。

パッと見は普通のビーチリゾートホテル風。でも、実は全然違う。このホテルはダイビングをするため「だけ」の宿泊施設である。

部屋はこんな感じで広々としていて、悪くない。でも、部屋にはテレビもWiFiもルームサービスも何にもない。ここに宿泊する人はダイビングのみが旅の目的のようで、余計なものは求めていないようだ。

目の前は海で、海岸線を縁取るように浅い礁池がある。砂浜から海へと延びた桟橋の先から水の色が急に深い青になり、白波が立っている。そこはドロップオフと呼ばれる、深い海へと続くサンゴ礁の断崖だ。ダイビングライセンスを持っている宿泊客はここで1日に一度、ホテル併設のダイビングセンターが提供するガイド付き無料ダイビングツアーや有料のナイトダイビングに参加できる。

マルサアラムの海岸線はところどころが入江になっていて、砂浜からダイビングの装具を身につけて歩いて海に入ることのできる場所もある。このホテルの便利なところは、毎日、午前と午後に1回づつ、ジープでいろいろな入江に連れて行ってくれるダイビングツアーが組まれていること。

ダイビングセンターの壁に貼ってあるダイビングスポットの説明を読んで、行きたいスポットのリストに名前を書き込んで参加する。

面倒な手続きなしにいろんな場所でダイビングができるシステムが便利だ。とはいっても、私はまだダイビングをしたことがないので、まずは体験ダイビングに申し込んだ。

体験ダイビングには経験もスキルも要らない。インストラクターが海の中を案内してくれるので、自分は呼吸と、ときどき耳抜きだけすればよく、難しいことはなにもなく、ひたすら素晴らしかった。わずか20分くらいの間だったが、6メートルの深さまで潜った。普段はシュノーケルで水面から見ていたサンゴ礁を横から見るとまた違った感動がある。昔話に出て来る竜宮城が頭に浮かんだ。ミノカサゴがゆらゆらと揺れていたり、大きなイカが頭上を静かに泳いで行ったり、海の中は陸上とは生き物の動きが異なり、なんだか神秘的である。ダイビングでは重力を感じずに水平に進むというのも新感覚だ。なにより感動したのは、シーグラスの生えた海の底を泳いでいたら、上から2匹のコバンザメをくっつけたアオウミガメがゆっくりと降りて来て目の前に着地し、シーグラスを食べ始めたこと。テレビのドキュメンタリーで見るような世界が目の前に広がり、夢を見ている気分だった。

これで心は決まった。ダイビングライセンスを取得してダイバーになろう。

夫と一緒に初級ライセンス「オープンウォーター」の講習に申し込んだ。では早速始めましょうということになったが、まずは学科を学んだり、プールで練習したりするものかと思っていたら、最初からダイバー達と一緒にジープに乗せられ、入江に連れて行かれてびっくり。

たくさんある入江の一つ。一見、遠浅の海に見えるけれど、スロープ状になっていてすぐに深くなる。

砂浜に敷いたシートの上でウェットスーツを着、ウェイトベルトを締め、BCD(ベスト)を羽織り、タンクを背負ったらインストラクターと一緒に海に入る。初めて装具を身につけて、あまりの重さに驚愕。なんと10kg近くものウェイト(鉛の錘)を腰に巻くのである。紅海は塩分濃度が高くて沈みにくいことや、初心者は呼吸で浮力をうまく調整できないので、多めのウェイトが必要だということらしい。こんな重い装具を背負って腰を痛めたらどうしよう〜と思いながらヨタヨタと水辺まで歩きながら、「ダイビングって、こんなに大がかりスポーツなんだ、、、」と、海に入る前にすでに不安になって来た。

で、講習はどうだったかというと、、、、。

それはそれは大変でございました。いわゆるクラッシュコース的なもので、わずか56時間ほどで必要な技能と学科を全部終わらせる。短期間でライセンスを取ってすぐに潜り始めたいという人には便利に違いないが、運動オンチを誇る私には無理があった。ちなみに、講習の言語は英語またはドイツ語。私のインストラクターはスイス人だったので、ドイツ語で指導を受けた。

海から出たら、水を張ったタライにシューズのまま入って砂を落とす。

ダイビングの装置のこともダイビングテクニックもまるっきり何も知らないまま、プシューとベストの空気を抜いて海の底に降りるという生まれて初めての体験。そしてその状況下でレギュレーター(呼吸のための器材)を口から外してまた入れろとか、ダイビングマスクを外してまた付けろとか、ウェイトベルトを外してまた付けろとか、ええ?というタスクを次々に課される。しかも、インストラクターの指示がよくわからず、確認しようにも水中では喋れない。はっきり言って、かなり怖い。

これはヤバいことになった、、、。なんでこんなこと始めちゃったんだよう〜。

慣れれば一つ一つはそれほど難しいことではないのかもしれないが、たったの3日では心の準備をする暇も慣れる時間もない。休暇先でのクラッシュコースではなく、家の近くのスクールで時間をかけてゆっくり学ぶべきだったようだ。途中までがんばったけど、胃が痛くなったので、泣く泣くギブアップ。憎たらしいことに、夫は最後まで受講してライセンスを取得した。その後は私はダイバーたちを眼科に眺めながら一人シュノーケル。

そんなわけで、せっかくエジプトに行ってダイビングリゾートに泊まりまでしたのに、ライセンスが取れなかった私である。しくしく。やっぱりダイビングなんて、私にはどだい無理だったのね。

としょんぼりしていたのだけれど、実はダイビングのライセンスには「オープンウォーターダイバー」の手前に「スクーバダイバー」なるレベルがあって、その基準はすでに満たしているとのことで、私も認証機関ISSの「スクーバダイバー」の認証を得ることができたのだ。自動車の運転免許でいうと仮免のようなものかな?「オープンウォーター」ではプロの同伴なしで18メートルの深さまで潜ることができるのに対し、「スクーバダイバー」はプロがついていれば12メートルまで潜って良い。そして、未履修の講習を受けて学科テストをクリアすれば「オープンウォーターダイバー」に昇格できるらしい。よかった、すべてが無駄になったわけじゃなかった。

帰る前日に最後にもう一度インストラクターとダイブしたら、そのときには怖さはかなり軽減していて、時間をかければ、やっぱり私にもできそうな気がして来た。自動車の運転だって最初は怖い怖いと言っていたけど、乗っているうちにだんだん慣れたもんね。ダイビングもそうだと信じたい。

想像以上に美しかった紅海。シュノーケルでも楽しめるけれど、せっかく紅海へ行って潜らないのはもったいない。次回こそ「オープンウォーターダイバー」を取得して、驚異の海中世界を味わいたいものである。

 

以下はシュノーケル中に撮ったマルサアラムの水中動画。

 

 

 

こちらの記事に書いた通り、去年の春からドイツ・ブランデンブルク州にある野外教育機関、Wildnisschule Hoher Flämingでアニマルトラッキングを習っていた。私が受講したのはドイツ語ではWeiterbildungと呼ばれる成人向けキャリアアップ講座で、半年間、月に4日間のキャンプ実習を通してアニマルトラッキングの技術を学ぶというものだった。予定では昨年の10月に終了しているはずだったのが、先生がコロナに感染して9月のモジュールが延期になり、今月の振替モジュールをもって講座が完了。私も全モジュールに参加して終了証書をもらうことができた!

「アニマルトラッキングって、地面についた動物の足跡を見て、なんの動物かを言い当てるんだよね。面白そう」というだけで飛び込んでしまった講座の内容は、想像をはるかに超えていた。終了証書には講座の重点が以下のように記されている。

  • 環境中にフィールドサイン(つまり、野生動物の痕跡)を見つけ、スケッチし、測定し、記録する
  • 野生動物の歩行パターンを学び、地面に残った足跡からその動物の動きを読み取る
  • 足跡がついた時間を推測する
  • 野鳥の地鳴きと囀りを区別する
  • 野鳥の警戒声とその意味を解釈する
  • 生態系における相互関係を理解する
  • 野生動物について、問いを立てる
  • ストーリーテリングを通して自然について学ぶ
  • 五感を研ぎ澄ませて自然現象を認識する
  • 異なる種の間のコミュニケーションについて学ぶ
  • 直感を使ったトラッキングの方法

野外でのいろんな練習やネイチャーゲームを通しての学び、のべ150時間。濃かった〜。キャリアアップ講座なので、参加者の中には野生動物保護組織の職員、環境保護活動家、学校教師など、野生動物について事前知識や経験が豊富な人が多く、単に「野生動物が好き」というだけの私は、正直、ついていくのに必死だった。グループの中で落ちこぼれていたので、メンターに個別特訓されつつ、どうにか完走。ブランデンブルク州に生息する哺乳類の足跡はそれなりに見分けられるようになり、その他のフィールドサインを見つける目も少しはできて来たという実感がある。

うちのあたりの森に生息するシカは、ノロジカ、ダマジカ、アカシカ。足跡を見てどの種か言えるようになった。この足跡はダマジカのもの。

 

ムナジロテンの足跡

 

歩行パターンを読み取る練習。これが難しくて、泣かされた。

 

足跡だけでなく、地面に落ちているものもよく観察する。これはフンではなく、フクロウなどが食べ物のうち消化できなかったものを吐き出したもの。「ペリット」と呼ばれる。

 

キツツキは木の幹に環状に穴を開けて樹液を飲む。

 

換毛期には森の中にごっそりと抜けた毛が落ちていることも。これはイノシシの毛。

シカの下顎の歯

 

フィールドサインを見つけることができるようになると、本当に楽しい。アニマルトラッキングを始めると、山奥などに行かなくても、生き物の痕跡は家の周りの至るところにあることに気づく。単調つまらないと感じていた風景も、実は常に変化し続けているのだと感じられるようになった。

講座を終了したとはいっても、アニマルトラッカーとしてスタート地点に立ったばかり。野生の世界は知らないことばかり。足を踏み入れた世界を進んでいこう。