初めてのアフリカサファリとなったほぼ2週間のケニアでのサファリを終えて、今回の体験を振り返ってみたい。

ケニアサファリでは期待をはるかに超える数と種類の野生動物を見ることができた。ケニア旅行そのものも初めてだったが、全体的に良い印象で楽しい滞在だった。

特に良かったと思う点を具体的に述べると、こんな感じになる。

  • ツアーの手配を依頼した現地のサファリ会社の対応がとても良かった。
  • 組まれたツアーの内容(訪れた保護区のセレクトや数、スケジュールなど)にも満足できた。
  • サファリガイド兼ドライバーさんのサービスがきめ細かく、信頼できた。
  • 泊まったロッジ(ミッドレンジの価格帯)はどこも快適で、食事も美味しかった。

部屋の窓からシマウマやウォータバックを眺められるナイバシャ湖のロッジ

全体として、観光業が大きな産業であるケニアでは観光インフラが整っており、人々も観光客に対してフレンドリーで親切だという印象を持った。

一方で、少し残念に感じた点もある。

  • 夫と二人だけのプライベートツアーではあったものの、すべてをサファリガイドさんに委ねるかたちとなり、受け身の旅となった。私たちは通常、現地でレンタカーを借りて自力で移動するので、自分たちの好きなペースで移動し、気になるものを見かけたら車を止めて確認したり、その周辺を散策できることに慣れている。今回はそれができず、少々物足りなく感じた。ケニアでは外国人観光客のセルフドライブはあまり一般的ではないようで、また、あらゆるアクティビティにガイドを付けることが推奨されているので不自由だった
  • ゲームドライブと呼ばれるサファリカーに乗ってのサファリ体験は楽しかったが、大きい動物はよく見られる反面、車に乗った状態でトカゲや昆虫、花のような小さなものに着目することは難しい。その分、景色の解像度が下がる。
  • サファリカーから降りることは基本的にNGなので、自然の中を自分の足で歩いて自然と一体化する機会が少ない

 

私たちは自然体験や生き物観察の旅が好きで、過去記事に記しているように、これまでにコスタ・リカやパナマなどを旅して来た。野生動物を見るという点ではケニアと同様なのだが、ケニアでのサファリとの大きな違いは、コスタリカやパナマでのネイチャーウォークは「自分で歩いて動物を探す」点だ。視界の開けたサバンナと異なり植物の生い茂るジャングルにジープを乗り入れるのは現実的ではないので、自然の中に整備されたトレイルをネイチャーガイドさんと一緒に歩きながら、またはガイドさんなしで歩き、ジャングルの中にいる動物を探したり、植物を観察したりする。鬱蒼としたジャングルの中で動物を見つけるのはサバンナで動物を見つけるのよりずっと難しいし、いたと思っても、すぐに見失ってしまう。大型の肉食動物に遭遇することは極めて稀で(私たちはパナマで吊り橋の上からピューマを目撃したけれど)、見られるのは小さい生き物が多い。でも、生き物を見つけるのが難しいからこそ、見つけられたときの喜びは大きい。そして、リスクがないわけではないけれど、五感を働かせて危険を回避しながら歩くのは、とてもワクワクするのだ

高温多湿で足場が必ずしも良くないジャングルトレイルを歩くのは疲れるし、快適とは言い難い。だから、「安全に快適に、かつ簡単に野生動物が見たい」と思う人は、ケニアのサファリの方が圧倒的に向いているだろう。大型の動物をじっくり観察できるので、動物の生態に興味がある人も満足が得られると思う。でも、「自然を直に体験したい」「冒険感を味わいたい」人にはネイチャーウォークの方がより充実感を得られるかもしれない。

 

私はといえば、、、、どっちもそれぞれ良くて、どちらかを選ぶのは難しい。同じ野生動物観察でもまったく違う体験だと思う。

マサイマラ国立保護区でのサファリを持って、10日間のケニア旅行は終了するはずだった。2日目のサファリを終えて夕食を食べながら、「終わっちゃったね。楽しかったね」と余韻を楽しんでいた私たち。明日のこの時間には空港か、などと言いながらふとスマホに目をやった夫が「え?」という顔をした。

「ちょっと!帰りの飛行機キャンセルになったよ」「え?」

乗り継ぎの空港でストライキが行われるため、その空港行きの航空便は飛べないというのだ。代替便として提案されたのは、その丸2日後の便。さあて、どうする?ルーカスさんにケニア滞在が48時間延長になったと事情を話し、追加で2日間、ドライバーとしてお付き合い頂くようお願いした。問題は何をするかである。もう動物は十分に見た。ずっとサファリカーに乗りっぱなしで運動不足が続いていたので、体を動かすことがしたかった。どこかでハイキングがしたいと言うと、ルーカスさんが提案してくれたのはロンゴノット山登山だった。幸い、ハイキングシューズは持参していたので、登ることにした。

ロンゴノット山は大地溝帯にある標高約2,776mの成層火山で、ヘルズゲート国立公園にほど近い。大地溝帯とは周知の通り、アフリカ大陸が東西に引き裂かれつつある場所で、プレートが離れる「拡大境界(divergent boundary)」にあたる。プレートが引っ張られて地殻が薄くなっているので、地下のマグマが地表近くまで上昇しやすく火山活動が活発なのだ。ロンゴノット山が最後に噴火したのはおよそ2000年〜3000年前。山の上には直径約8kmのカルデラがあり、その縁を一周することができる。

遠目には平たく見えるこの火山、山肌にやたらと縦の溝ができている。あのヒダヒダの斜面を登るのだ。聞けば、「ロンゴノート」とはマサイ語で「険しい」とか「アップダウンが激しい」という意味らしい。

ロンゴノート国立公園のゲート

マサイ族の若いガイドさんが登山に同行してくれることになった。というか、ガイドは要らないと思ったけれど、ガイドをつけることが「強く推奨」されているそうで、ルーカスさんがアレンジしてくれるのを断れなかった。

まずは緩やかな坂道を登っていく。砂の上には動物たちの足跡がたくさん付いていた。この国立公園にも多くの野生動物が生息しているのだ。アニマルトラッカーの私としては、足跡はスルーできない。

「これは、肉食動物の足跡ですね?」と尋ねると、ガイドさんはすかさず「ヒョウです。爪の跡がありませんが、表は爪を隠すんです。これは若い個体ですね」と。「え、ヒョウ?この足跡、ずいぶん新しいですよね?」。ヒョウの足跡のすぐそばにはハイエナの足跡があった。「僕はマサイ族なので、足跡からだけでなく、匂いでも動物を嗅ぎ分けられます。マサイの男子は18歳からの2年間、ブッシュにこもって修行するんです」。

他に草食動物や大型野鳥などの足跡を見ながら歩いていると、バッファローが道を横切った跡があった。

「あっ、走って行ったね!」「まだ、この辺にいるかもしれません。気をつけて」。ガイドさんはおもむろに地面に落ちていた大きめの石を拾い上げた。「先に行ってください。ちょっと確認するので」。私たちが先に進むと、バッファローの足跡が消えた茂みの方向をうかがっていたガイドさんが「あそこに隠れてますよ。見えますか?」と言うのでそちらを見ると、確かに茂みの奥にバッファローの姿が見えた。幸いこちらとの間には距離があり、私たちに向かって来ることはないだろう。ガイドなんていらないと思ったけれど、やっぱり付いてもらって正解だった。ロンゴノット国立公園内にはキャンプ場があるのだけれど、ヒョウやハイエナやバッファローがうろつき回るところでよくキャンプなどできるものだなあ。ケニアの人はやっぱり私たちとは感覚が違うのだろうか?

少し登ったところで、茂みの中からディクディクが顔を出した。これなら可愛いけどね。

クレーターの縁まで登るのに小一時間。細かいアップダウンが激しくて、写真を撮っている余裕がない。ようやくクレーターまで登り、ビューポイントからあたりの景色を眺める。

ナイヴァシャ湖が見える。

ヒダヒダの山肌

ロンゴノット山の噴火スタイルは主に爆発的な噴火と溶岩流の組み合わせで、山肌の溝は厚く積もった火山灰の層が侵食を受けることでできた。

眼下に平たく広がる丘は溶岩流が形成した

ロンゴノット山は頂上のクレーターの他にもいくつものクレーターを持つ。

「あ、キリンがいますよ」と言われて遠くに広がるブッシュに目をやると、ブッシュからキリンの頭が飛び出している。

すごい動物だなあ、キリンって。背が小さくて視界が低い私はキリンが羨ましい。

さて、クレーターまでは登ったので、あとはクレーターの縁に沿って歩くだけだ。

えっ?クレーター縁って、平らなんじゃないの?まさか、あのギザギザの上を歩く?一番尖っているところがロンゴノート山の頂上だ。ガイドさんに聞くと、8kmのクレーターを一周するのに3〜4時間かかるというが、ここまで来たら、歩くしかない。

クレーターの内側は鬱蒼とした森になっている。火山灰が風化して養分豊富な土壌が作られたのだ。あそこを歩いて横断することは可能ですか?との夫の問いに、ガイドさんの返事は「歩き慣れた人でも少なくとも半日はかかりますね。地面はゴツゴツの岩だらけで溝がたくさんありますし」。

登ったり降りたり登ったり降りたり。どうにか頂上に到達!

「やりましたね!高齢の方をここまでご案内するのは、これが2度目です。大抵の高齢の方はクレーター縁まで登って、さらにアップダウンがあると知ると、諦めて下山されますよ」

まだそこまで高齢じゃないつもりだけど!笑

頂上を超えても、まだまだアップダウンは続く。

超えてきたアップダウンを振り返る。

だんだん疲れてノロノロ歩きになっている私たちを、驚いたことにスポーツウェアに身を包んだ若い人たちが颯爽とジョギングで追い越していった。こんなところでジョギングとは、元気にもほどがあると思ったら、アスリートの高地トレーニングらしい。

はあ、ようやく一周し終えた。地球の割れ目の真ん中にある火山を歩いたんだと思うと、やっぱり感慨深いな。

さて、ここから一気に下山だ。

「高齢者」の私たちは、結局、合計6時間かけてゲートに戻った。まあまあハードな山登りだったので、やり切った感がある。ケニア滞在の終わりに少しは能動的なことができて、嬉しかったのだった。

もし、「マサイマラはどうだった?」と聞かれたら、一言目には迷わず「すごく良かった!」と答えるだろう。野生動物の密度と視界の良さでマサイマラ国立保護区に勝る場所はこの地球上でそうそうないのではないかと思われる。

その一方で、少し気になることもあったので、反省の意も込めて記録しておきたい。

気になることというのは、動物との距離がとても近いことだ。先にも述べたが、保護区では基本的にはサファリ客はサファリかーから降りることはできない。車に乗ったまま、風景の中の野生動物を見ることになる。しかし、例外もあり、許可された一部の場所では車を降りて休んだり、散策することが許されている。そのようなルールの中、とても楽しかったのはマサイマラで体験したピクニックだ。終日サファリの日はロッジにお弁当を作ってもらい、ピクニックツリーと呼ばれるアカシアの木の下でブランケットを広げ、お昼ご飯を食べる。ピクニックツリーはいくつもあり、程よい木陰のある木をガイドさんが見つけてくれる。

あの木なんか素敵!と思っても、要注意。木の下をよく見ると、、、

ライオンが昼寝中だったりする。

マサイマラでのサファリの1日目に車を止めたピクニックツリーの下に、何やら毛玉のようなものが落ちていた。

「ああ、ハイエナがここにいましたね。ハイエナは獲物を食べた後、消化しにくい毛を吐き出すことがあるんです」とルーカスさん。そうか、ここにハイエナがいたのか。

ブランケットを広げ、座ってランチボックスを開けたら、どこからともなくハゲコウがやって来た。

じっ。ハゲコウもランチ食べたいみたい。

美味しいものがたくさん詰まったランチボックス

さらにもう1羽のハゲコウがやって来て、2羽のハゲコウに両側から見られながらお昼ご飯を食べることになった。もちろん、野生動物に餌をやるのは御法度だ。でも、食べ残しをやる観光客も中にはいるだろうし、そうでなくても近寄って来て人間の食べ物を盗む動物もいるだろうと思われる。

しばらくしたら、急にハゲコウたちはそそくさと足早に離れて行き、遠くへ飛び去った。なぜ急に?と訝しく思い、ふと振り返ると、

そこにはヒヒがいた。ハゲコウたちはヒヒが近づいて来たから去っていったのだろう。そんな力関係を目にするのも興味深い。

二日目は別の木の下でランチタイム。この日はそう遠くない距離をゾウの群れがゆっくりと通り過ぎていった。こんなふうに、野生動物と同じ空間を共有していると実感できるのは素晴らしい。

その反面、サファリ客が動物に近づきすぎているのではと感じるシーンも多々あった。多くの動物たちはサファリカーに慣れていてリラックスしており、車が近づいても逃げるどころか、平気で車の目の前を横切るものもいる。人間は自分たちに危害を加えないと知っているからこその行動だろうから、それは特に問題ではないのかもしれない。しかし、サファリカーが動物にあまり接近するのはどうなんだろう?ビック5のいる場所には多くの車が集まり、至近距離で写真を撮ろうとみんなが身を乗り出す。車の数が多いと良いアングルの争奪戦となり、動物たちの周りではひっきりなしにエンジン音が鳴り響くことになる。私たちが滞在した2月はピークシーズンではないが、それでも大人気のマサイマラ国立保護区には多くのサファリカーが走っていた。ピークシーズンには一体どれほどの観光客が押し寄せるのだろうか。

自分自身もサファリをしているのだからサファリカーが多すぎると文句を言える立場にない。が、さすがにあればないんじゃないかという光景に出くわした。ライオンの赤ちゃんたちが寝ている茂みを道路から双眼鏡で観察していたときのこと、たくさん停まっていたジープの1台がふいにエンジンをかけたと思うと、草むらに分け入って行った。ルーカスさんによると、オフロードは禁止されており、見つかるとかなりの罰金を取られるらしいが、その車はルールなどなんのその。茂みの至近距離まで近づいた。すると、他のジープも次々に後に続き、茂みのある木の周りを取り囲んでぐるぐると周りはじ始めたのだ。赤ちゃんたちはゆっくり休めないどころか、包囲されて逃げることもできない。明らかなハラスメントではないのか?

とても嫌な気持ちになり、「もう十分に見たので、他の場所に行きましょう」とルーカスさんに伝え、その場を離れた。動物を近くで見たい、良い写真を撮りたいというのはわかる。でも、今の時代、良い双眼鏡やズームレンズがあるのだから、かなり離れていても良く見ることは可能だ。まあ、客の方からオフロードで近くまで行ってくれと頼んでいるわけではなさそうで、ガイドさんが客に喜んでもらいたいと思ってそうしているわけで、そこには願わくばチップを弾んで欲しい、良いレビューをつけて欲しいという気持ちもあるのだろう。彼らはそれで生計を立てているのだから致し方ない面があるのもわかる。だからそこは、客の方が「そんなに近づかなくて結構です」とキッパリ断るべきなんじゃないかとやるせない気分だった。

動物の側からすれば、サファリ客などそもそも来ない方が良いに決まっている。ただし、サファリ客が来てお金を落とすことで野生動物の保護が成り立つという構図になっている以上、サファリというアクティビティの良し悪しには簡単に白黒つけられない。人は見たこともないものを保護しようとは思えないものだし、実際に動物を見ることで学べることが多いのも事実。私はサファリに行ったことを後悔はしていない。けれど、自分の行動がもたらすかもしれない負の影響に無自覚でいてはいけないなあと思う。

 

 

 

マサイマラ国立保護区で見た草食動物については前回の記事に書いたので、次に肉食動物についてまとめよう。

ケニアへ行く前は「ビック5のうち、いくつか見られたらいいなあ。でも、そんなに簡単には見られないんだろうなあ」となんとなく思っていた。アフリカサファリのビック5とは、ライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファローの5つである。

ところが、現実は期待を遥かに上回り、マサイマラへ辿り着く前にライオン、ゾウ、サイ、バッファローはすでに何度も目にしていた。残るはヒョウのみ。夜行性のヒョウは目撃するのが一番難しいそうだ。「マサイマラで見られるといいですね。でも、1週間マサイマラに滞在しても見られない人もいます。運次第です」とガイドのルーカスさんは言う。まあ、ヒョウが見られなくても他の動物がいろいろ見られるのならそれでいいかな。ヒョウの代わりにチーターが見られたら嬉しいな。

願いはあっさりと叶った。

草むらに4匹のチーターの姿。

他の動物の場合、群れでいるのは大抵メスとその小さな子どもたちだ。しかし、チーターは兄弟が一緒に行動することが多いそうだ。逆にメスは単独行動で狩りをする。だとすると、体の大きさが同じくらいのこの4匹はオスの兄弟か。チーターといえば走ることにかけてはサバンナ最速、最高時速100km でダッシュする。まったりしている姿からはちょっと想像できないね。

精悍な顔のライオンと違って、チーターのオスは優しげな面構え。

ネコらしくてかわいい。

 

セグロジャッカル (black-backed jackal, Lupulella mesomelas)の姿も見ることができた。

ジャッカルは肉食というより、雑食性で、自分で小動物を狩って食べる他、果物も食べればライオンやハイエナの食べ残しを食べることもある。

保護区内をサファリカーで走りながら気づいたのは、広大な保護区に動物たちは満遍なく散らばっているのではなく、いろんな草食動物の群れが種混合で集まっているエリアと全く何もいないエリアとがあることだった。

「この辺には何もいませんね?どうして?」との答えにルーカスさんは、「草丈が高い場所を草食動物たちは好みません。捕食者が潜んでいるかもしれないので」と教えてくれた。なるほど、草丈が高ければ、肉食動物は獲物に気づかれずに近づきやすいだろう。そんなことを考えながらぼんやりと景色を見ていたとき、「このあたりの草むらにヒョウがいるという情報がありました!」というルーカスさんの声にハッとする。一生懸命、ヒョウの姿を探すが見当たらない。

「ほら、そこそこ!目の前ですよ」

遠くの方ばかり見ていたが、なんとすぐ目の前の草むらをヒョウが歩いているではないか。

おお、本当にヒョウだー!

びっくりしている間にヒョウはさっさと去っていってしまった。草に隠れると、ほんとに見つけづらい。

こんなに簡単にビック5を見れてしまうとは、なんとラッキーな私たちだろう。でも、サファリの真の面白さは特定の動物を「見られたか、見れなかったか」にあるのではなく、動物たちの行動を観察できるところにあるといって間違いない。サンブル国立保護区ではメスライオンたちが赤ん坊にお乳をやるところを間近で見ることができてとても感動したが、マサイマラではライオンの狩りの試みを見ることができたのだ。

マサイマラでのサファリの2日目、同じ群れに属するライオンのメス達が 分散し、狩りの体制に入っているようだとの情報が入った。少し離れたところにはバッファローの大群がおり、ライオン達のいるエリアとは反対方向へ少しづつ移動していた。バッファローの群れがいる草むらと道を挟んだ反対側に水場があり、バッファロー達は交代でそこに水を飲みにいっては群れに戻っていたが、群れが移動していく中で、2頭のバッファローが 群れからはぐれてしまった。

はぐれたバッファローたち

「あの2頭、ライオン達に狙われるね」私たちはそう言いながら、ライオン達の動向を見守った。

2頭のバッファローの間が少し離れた隙を狙って、メスライオンのうちの1匹がそうっと近づいていく。

仲間のメスライオン。

他のメスライオン達はそれぞれ離れたところに隠れて待機し、バッファローが逃げたら飛び出して囲むつもりのようだ。

しかし、バッファローもバカではなく、近寄って来たライオンの存在に気づいた時点でそれぞれ違う方向に向かって駆け出した。ライオン達は一瞬、どちらを追いかけるべきか迷ったようだが、最初に狙った方を追い始めた。

最初に狙った1頭を追いかけることにしたメスライオン。

3匹でバッファローを追いかけるライオン達

 追いつくか?と思われたけど、バッファローはなかなか逃げ足が早く、

結局、逃げ切った。

「あーあ、失敗しちまったわ」。手ぶらで戻って来るライオン。

百獣の王といえども、いつも成功するとは限らないのだった。見ていた私は狩りが失敗して残念なような、バッファローが死ぬ場面を見ずに済んでホッとしたような、複雑な気分。

メスライオン達は狩りに失敗していたが、その頃、サバンナの別の場所では、、、。

バッファローの足が落ちている。

さては、ライオンの食べ残しか?食べられてからそう時間が経っているようには見えない。ということは、近くにオスライオンがいるんだろうか?あたりをキョロキョと見回すと、いたいた。

 

 

満腹して熟睡中の様子。そりゃあ、あんな大きな獲物を食べればね。

太ももの1箇所にやたらとハエがたかっている。バッファローを倒したときに返り血を浴びた場所だろうか。

 

ライオンの興味深さは言うまでもないが、私が今回のサファリ旅行でとても興味を引かれたのはハイエナである。広大なサバンナで草を喰むアンテロープ達の間をハイエナ達がウロウロと歩き回り、獲物になりそうな個体を探している光景はとても印象に残っている。

獲物の品定めをするブチハイエナ (Spotted Hyena, Crocuta crocuta)たち

意外にも、草食動物達はハイエナが近づいてもすぐに逃げるわけではなく、ハイエナの動きに注意しながら草を食べ続けていた。ハイエナ達がお腹がぺこぺこで今すぐにでも狩りをしようとしているのか、それほどでもないのか、動き方で見極めているらしい。ハイエナの姿を見つけるたびにいちいち逃げていたらエネルギーを消費してしまうから、当然なのかもしれない。また、ハイエナ達もぶらぶら巡回することで、ケガをしている個体や子どもなど、捉えやすい個体がいないかをチェックしているようだ。

「よしっ、あれをやるか」

しばらく観察していたら1頭のイボイノシシが標的になった。しかし、逃げられ、ハイエナたちも遠くの茂みの中に消えていった。

と思ったら、しばらくしたら口に何か咥えて戻って来た。どうやら狩りには失敗したものの、ライオンの食べ残しを見つけたらしい。バリバリと音を立てて骨を噛み砕いている。ハイエナの噛む力は相当強いらしいもんね。

他のハイエナたちは暑かったのか、水たまりに行って腰を下ろした。

「ああ〜、ひんやりしてて気持ちいい〜」

嫌われ者のハイエナだけど、リラックスしているときはなかなかとぼけた表情をしてるな。

ハイエナって、どんな動物なんだろう?今、私にとって一番気になる存在かもしれない。

 

今回のケニア・サファリツアーの最後の目的地は、野生動物の密度が高いことで世界的に知られるマサイマラ国立保護区(Massai Mara National Reserve)だ。ケニア南西部に位置するこの保護区は、隣国タンザニアの セレンゲティ国立公園 とつながっている。マサイマラとセレンゲティは同じ生態系に属し、国境を挟んで広がる 「マラ・セレンゲティ生態系」 を形成している。

ナイヴァシャ湖からマサイマラ国立保護区までの移動は、途中にあるナロック(Narok)の町までは国道なので比較的快適だが、そこからは道路状態が急に悪くなった。道路の中央は陥没して穴だらけなので、路肩を走らなければならず、道路の真ん中を走れないなら何のための道路か、と思ってしまう。ナイヴァシャ湖からナロックまで約2時間半、そしてナロックからタレックゲート(Talek Gate)の近くの宿泊施設までさらに2時間半、合計5時間ほどかかって到着した。(ナロックでマサイマラ大学の学生たちがデモをやっていて、道路を塞いでいたせいもある)

マサイマラで私たちが泊まったのは、コテージタイプのロッジではなくテンテッドキャンプ(tented camp)と呼ばれるテント式のロッジ。自分で選んだわけでなくサファリツアーに組まれていたのだけれど、テントだとより自然と一体感がありそうで、楽しみだった。

泊まったテント式ロッジ

中は普通に快適

テントの中にはシャワースペースもある。蛇口を捻ってからお湯が出るのに5分くらいかかる。

レセプションやレストラン、バーなどのスペースもすべてテント。

テンテッドキャンプは雰囲気たっぷりでいい感じ。夜中にはハイエナの鳴き声が聞こえたりと「アフリカのサバンナにいる」感が味わえる。ただし、自然と一体化していると感じるほどではなく、ワイルドさにおいては今までに経験したパナマのツリーハウス風コテージコスタリカのジャングルの中のシンプルなロッジの方がすごかった。私たちが泊まったのは公園の外にあるテンテッドキャンプだったが、公園内のテンテッドキャンプ(より割高)なら、もっと直接的に野生の世界を感じられたのかもしれない。

マサイマラ国立保護区では保護区を流れるマラ川の支流、タレック川沿いにあるタレックゲートから入園し、2日間の終日サファリを楽しんだ。

タレック川。乾季なので水が少ない。雨季にはまったく違う景色になると思われる。

タレックゲート(Talek Gate)

マサイマラ保護区内はサバンナが広がりアカシアの木が点在する、野生動物ドキュメンタリーで見るアフリカの景色そのもの。およそ1,500㎢の敷地を数えきれないほど多くの野生動物たちが歩き、走り、食べ、休み、後尾をし、子育てをし、狩りをする姿が見られる、先進国に住む私たちにとって、まさに非日常の世界だ。

この記事ではマサイマラで見た草食動物を中心に紹介しよう。肉食動物に関しては後の記事で。

まず、大型のアンテロープ、トピ(Topi、Damaliscus korrigum) がたくさんいる。

トピの群れ

トピはツヤのある茶褐色の体をしていて、顔と肩、腰部がまるでアザができたかのように黒いのが特徴。

特定の個体がシロアリ塚などの小高い丘の上に立って見張りをしているのがあちこちで見られた。トピに典型的な行動だそうだ。

 

イボイノシシ (Warthog, Phacochoerus africanus)

目の下と頬のあたりに「イボ」のような突起があり、口から上に反り返るように牙が生えている。どことなく愛嬌のある顔だな。

背中には短いタテガミ。走るときにはしっぽをピンと立てる。イボイノシシは草食ではなく雑食だが、主に草や根、塊茎、果実を食べる。イボイノシシは脚も首も短いので、草を食べるときは前脚を曲げて跪くことが多いらしい。残念ながらその姿は見られなかった。できればじっくりと観察したい動物だ。

 

マサイマラにいるキリンは「マサイキリン (Massai Giraffe, Giraffa tippelskirchi)」

 

そして、マサイマラにいるダチョウは、マサイダチョウ (Masai ostrich, Struthio camelus massaicus)。ソマリダチョウと違い、首や脚がピンクっぽい。

 

ゾウが水を飲んだり草を食べるところをゆっくり観察することができた。

鼻で草を根っこごと引き抜いて、振って泥をある程度落としてから口に運ぶ。美味しいところだけ食べて、不味いところは落とす。

鼻をストローにように使って水を吸い上げ、一度鼻の中にためてから口に注ぐのね〜。

 

マラ川(Mara River)。 毎年、7月~10月にはヌーの大移動のクライマックスとなる 川渡り が見られることで有名だが、今の季節はヌーの姿はない。しかし、カバはたくさん。

マラ川にはワニもいる。

黄色っぽくて小さいから、これは若い個体かな?

ワニがカバに近づいて行った。ガイドさんによると、このカバはメスで、自分の前の水中に赤ちゃんを隠している。その赤ちゃんをワニは狙っているらしい。

カバの群れもすごいが、圧倒的だったのはバッファローの群れだ。

一体全部で何頭いたのか。これだけの数のバッファローが移動する様はとにかく圧巻だった。

 

     ナイバシャ湖のすぐ南にはヘルズゲート国立公園(Hell´s Gate National Park)という小規模の国立公園がある。

1984年に設立された「地獄の入り口(ヘルズゲート)」という怖い名前のこの国立公園は、東アフリカ大地溝帯(グレート・リフト・バレー) の一部を成し、火山活動によって形成された渓谷や岩の絶壁 が特徴である。これまで回って来た国立公園や保護区では基本的にサファリカーに乗ったままの観光だったが、ヘルズゲート国立公園は大型肉食動物が少ないので(いないわけではない!)、徒歩やサイクリングでも回ることができる。運動不足の日が続いていたので、サイクリングをすることにした。サルマックヴィレッジのヘルズゲート国立公園通り(Road to Hell´s Gate National Park)にある貸し自転車ショップで自転車を借りると、エルザ・ゲートまでは貸し自転車ショップのスタッフがバイクで自転車を運んでくれる。

エルザゲート

あらかじめルーカスさんがサイクリングツアーを手配してくれており、ここでもガイドさんがついた。でも、ここでのサイクリングにはガイドは特に必要ないと思う。

サイクリングにしゅっぱーつ。

ゴージロード(Gorge Road)と名付けられた道路を8km走り、ヘルズゲート渓谷(Hell´s Gate Gorge)を目指す。道路の左右には赤い岩壁が続き、晴れ渡った青空とのコントラストが素晴らしい。

岩は火山活動による玄武岩で、溶岩流の冷却によってできた柱状節理が水の侵食や風化によって露出し、荒々しい景観を作り出している。赤みがかっているのは酸化鉄(Fe₂O₃)を含むため。

道路の砂利には黒曜石が含まれていて、ところどころキラキラ光っていた。

サイクリングルートは片道8km 。道路のコンディションはそう悪くなく、傾斜も緩やかなのだけれど、古い安物の貸し自転車なので全然スピードが出ない。 途中、何ヶ所か自転車を降りてガイドさんの説明を聞くこともあり、たった8kmに1時間近くかかった。

さて、ヘルズゲートには、火山の噴火によって形成されたタワー状の岩がいくつかあり、見どころとなっている。その一つが、フィッシャーズ・タワーFischer’s Towerだ。

フィッシャーズタワー。発見者のドイツ人、フィッシャーにちなんで名付けられた。

高さ25mのこの岩は過去の大規模な火山噴火による溶岩の固まりで、周囲の地層が侵食され、硬い部分だけが残ってこのようなタワー状になった。

ロッククライマーにも人気。

岩のうえにロックハイラックス(Procavia capensis),がいた。

公園内のもう一つの有名な岩の塔、セントラル・タワー(Central Tower)

ヘルズゲート国立公園は、ハゲワシや猛禽類の生息地としても有名だ。

「あの岩の白っぽくなっているところにハゲワシの巣がありますよ」とガイドさんに言われ、目を凝らした。遠くてよく見えないので双眼鏡を目に当てる。

何羽かのアフリカハゲワシ(Rüppell’s Griffon Vulture, Gyps rueppelli) とおぼしき鳥が見えた。生まれたてのヒナというより、もうだいぶ大きくなっているようだ。

火山活動が活発なヘルズゲートは ケニア最大の地熱発電所 があるエリアで、地熱で温められた間欠泉や温泉 があり、地面のあちこちから蒸気が噴き出している。地熱エネルギーはナイロビなどの都市へ供給されている。

渓谷、ヘルズゲート・ゴージの入り口まで行ったら、自転車を停めてキャニオンウォーク。

ヘルズゲート・ゴージは、火山の噴火による堆積物(火山灰・軽石・火砕流)と、その後の侵食作用 で形成された渓谷だ。数十万年前~数千年前の大規模な火山噴火(主にロンゴノート山)で分厚く降り積もった火山灰や軽石(テフラ)から成る地層が水や風、そして地熱によって侵食を受けてできた。

火山灰の層には過去の噴火の記録が刻まれている。

この滝の水は実はお湯で、温泉水である。

この渓谷は映画『トゥームレイダー2』(2003年)のロケ地として使われたそう。

渓谷は奥に進むにつれ、狭くなっている。雨季には鉄砲水が発生することがあり、とても危険だ。2019年に観光客とガイドが突然の豪雨による鉄砲水に巻き込まれて亡くなるという事故があり、現在、危険なエリアにはロープが貼られ、一番奥まで行くことはできない。

ヘルズゲート国立公園はナイロビからのアクセスも良く、サファリ以外のアウトドアアクティビティを楽しめる場所として人気が高い。

素晴らしい体験ができたサンブル国立保護区を後にし、次に向かったのは、巨大な大地の裂け目、東アフリカグレート・リフト・バレー(大地溝帯) に位置する淡水湖、ナイヴァシャ湖(Lake Naivasha)だ。

ナイヴァシャ湖は首都ナイロビの北西約90km、標高約 1,884m にあり、ケニアで最も高い場所にある湖のひとつ。気候は赤道直下にしては涼しく、輸出用の花の栽培が盛んである。湖沿いにはたくさんのビニールハウスが並んでいた。

予定されていたここでのアクティビティはボートサファリである。ナイヴァシャ湖は水鳥の楽園 として有名で、約 400種以上の鳥類 が記録されているのだ。1995年にラムサール条約湿地に登録されている。

ボートに乗り込んだ。サンブルの暑い空気と比べると、とても爽やかだ。

湖の浅瀬にたくさんの枯れ木があるのが目に付く。ナイヴァシャ湖の水位は変動しやすく、2020年には過去50年間で最も水位が上昇し、湖の面積は154㎢から193㎢へと大きく拡大したという。つまり、枯れ木の立っているところは、数年前までは陸だったのだ。「ナイヴァシャ」とはマサイ語で「大きな、動きのある水」を意味するらしい。

いくつかのリゾート施設も水没してしまっている。ひゃー。

ナイヴァシャ湖は、リフトバレーが形成される過程で火山活動と地殻変動 によってできた盆地に水が溜まって形成された。特徴的なのは、出口がないのに淡水湖であることだ。出口のない湖は蒸発によって塩分が濃縮されて塩湖になるのが通常だが、ナイヴァシャ湖は地下水や湿地を通じて水が流出しているので、淡水湖のまま 保たれているのだという。湖とその周辺には多様な生態系が発達し、鳥類だけでなくさまざまな生き物が生息している。

たとえば、カバ。ナイヴァシャ湖には1500頭ものカバが生息し、湖の象徴的な動物とされているらしい。サファリカーに乗ったままライオンを間近で見ても怖いとは感じなかったが、カバだらけの湖でボートに乗るのはさすがに怖いものがある。なんといってもカバは体重1.5〜3トンもあるし、縄張り意識がすごく強くて攻撃的だという。ケニアにおける野生動物による死亡事故はカバとの遭遇によるものが一番多いそうだ。もちろん、ガイドさんはカバの習性を熟知しており、危険な距離まで近づいたりはしないだろうけれど、、、。

びっくりしたのは、浅瀬の水の中に立って魚釣りをしている人たちがたくさんいたことだ。カバが怖くないのだろうか?と思って観察していたら、しばらく後、なんらかの合図のようなものがあり、急にみんな岸に上がって走り去った。ボートサファリのガイドさんによると、「彼らがやっているのは違法なんです。ライセンスを持っていなければ漁業はできません。今、取り締まりの警察が来たので、急いで逃げたんですよ」とのことだ。ほとんどの人は上手く逃げたが、何人か逃げ遅れた人がいて、岸に上がるのは諦め、泳いで岸から離れようとしている。なんてこと。カバに気をつけてー。

すっかりカバに気を取られてしまったが、目的は野鳥。ボートサファリ中、いろいろな野鳥が観察できた。

カワウ (Great cormorant, Phalacrocorax carbo)。近くの木に大きなコロニーを作っていた。

魚を捕まえたヒメヤマセミ (Pied Kingfisher, Ceryle rudis)

モモイロペリカン (Great white pelican ,Pelecanus onocrotalus) 目の前でど迫力。

アフリカトキコウ (Yellow-billed Stork, Mycteria ibis)

キエリボタンインコ (Yellow-collored lovebird, Agapornis personatus)

ハダダトキ (Hadada ibis, Bostrychia hagedash)

さっきの違法な漁師の人から買った魚をガイドさんがボートから湖面へ放り投げると、すぐにサンショクウミワシ(African Fish Eagle, Haliaeetus vocifer)が取りに来た。

写真を撮れなかったけれど、他にもたくさんの野鳥を見ることができた。

さて、岸の方に目をやると、岸辺の水面にはホテイアオイ(Water hyacinth, Pontederia crassipes)がびっしり。 涼しげで綺麗だなと思ったけれど世界の侵略的外来種ワースト100の一つなんだってね。ここナイヴァシャ湖でも問題になっているらしい。

ウォーターバックがホテイアオイの葉をムシャムシャ食べていた。ウォーターバックは平気で水の中に入るからウォーターバックというのだと教えてもらった。ライオンなどの捕食者が接近したときに、サッと水の中に逃げる。でも、水の中にはカバがいるんじゃ?肉食のライオンと違って草食のカバは、縄張りに侵入して怒らせない限り大丈夫ということなのだろうか?とにかく、ナイヴァシャ湖付近にはウォーターバックがたくさんいてホテイアオイを食べてくれている。増殖のスピードの方が速そうだけれど。

 

ボートを降りた後は、別のガイドさんと一緒に湖の周りを歩き、陸の動物を観察した。ケニアではとにかく、何をするにもガイドさんをつけるように言われる。いろいろ説明してくれるのはありがたいけれど、その都度チップをお渡しするので、チリも積もればでそれなりの出費になる。

ウォーターバックのボス

ガイドさんによると、強いオスは水辺の良い場所に縄張りを持ち、メスの群れを引き寄せる。しかし、ずっとボス(territorial bull)でいられるわけではなく、チャレンジャーの他のオスが闘いを挑んで来ることがある。闘いに敗れるとボスは交代し、負けた元ボスは群れの外に追いやられるのだという。

「ウォーターバックの鼻のかたちはハート形なんですよ」と言われてよく見ると、

ほんとだ!かわいい。

バッファローもたくさんいた。レクリエーション客が普通に歩く場所なのに、危ない生き物たちが普通にいるなあ。

地面のあちこちに大きな穴が空いていた。「イボイノシシがシロアリ掘り出して食べるんです」

これはカバの寝ぐら。糞でマーキングしてある。昼間は水の中にいるカバたちは、日が暮れると岸に上がって来る。のっそりしてそうな体型だけれど、陸に上がると意外とすごいスピードで歩く動くらしいのだ。

カバの足跡があった。4本の指の跡がくっきり。ナイバシャ湖の湖畔にはロッジが並んでいる。夜間にロッジの敷地を出て、湖の周りをウロウロするのは危険だ。サファリガイドさんの言うことを聞かずに勝手に出かけた観光客がカバに襲われて亡くなったケースがあるらしい。おお、こわこわ。ほんと、カバには気をつけよう。

 

 

サンブル地域でしか見られない珍しい動物、「サンブル・スペシャル5」をしっかり見ることができ、来た甲斐があったと感じるサンブル国立公園(Samburu National Reserve)でのサファリ(厳密には隣接するバッファロースプリングス国立保護区)Buffalosprings National Reserve)だったが、実はさらに素晴らしい体験ができた。アンボセリ国立公園では遠目に姿を認めただけのライオンを間近にじっくりと観察することができたのだ!

サンブルには2泊したので、1日目は夕方のサファリ、2日目は早朝からの終日サファリができた。1日目に前述のサンブル・スペシャル5を見て大満足し、そろそろロッジに戻る時間かなと思ったとき、無線で他のサファリガイドとスワヒリ語でコミュニケーションを取っていたルーカスさんが、「ちょっと遠いですが、面白そうなものが見られそうな場所があるようなので、行ってみましょう」と言う。保護区の中は当然ながら住所などはないので、「〇〇のところまで行ったら右に曲がって、△△のところで左の道に入って、300mくらいのところで云々、、、」などとお互いに説明し合うのだろう。移動中、ルーカスさんはずっと仲間のガイドとやり取りを続けていた。スワヒリ語はわからないが、ときどき「シンバ」と言っているのだけは聞き取れた。

シンバ、、、、もしかして、ライオン?ワクワクしながら、凸凹道に揺れるサファリカーの枠につかまり、窓の外に目を凝らす。

30分は経っただろうか。日が沈みかけた頃、前方に何台かのジープが止まっているのが見えた。あそこにライオンが?

車を横付けし、エンジンを切ると、一台のジープの運転手が茂みを指差して小さな声で言う。「あそこにライオンの赤ちゃんがいますよ」「え、どこどこ?」

双眼鏡で覗くと、いた!

全部で何匹いるんだろう、他の2匹は倒木の上でじゃれあっている。

赤ちゃんライオンの側にはメスライオンも潜んでいると思われるが、よく見えない。「きっと近くにオスもいますよ。あの辺かな?」とルーカスさんが少し離れた場所の茂みを指差した。すると、、、。

出て来た!!私たちのいる道路に向かって歩いて来る。

えっ?まさかのトイレタイム。

そして、なんとおすライオンがもう1匹姿を現した。

「兄弟ライオンです。」「一つの群れに複数のオスがいることもあるんですか?」「そういうこともありますよ。兄弟が協力すれば、広い縄張りを守るのに有利なんです」「メスはどちらとも交尾するんでしょうか?」「はい。でも、どちらと交尾をするか、決める決定権はメスにあります」

すぐ目の前に強そうなオスライオンが2頭も現れ、圧倒されてしまう。なんだか現実のこととは思えない。言葉もなく、しばらく眺めていたらいよいよ日が暮れて来た。「そろそろロッジに戻りましょうか。きっと、赤ちゃんライオンが隠れているあの木の下は今夜の彼らの寝ぐらですよ。明日の朝、ここに戻って来ましょう」。ルーカスさんはそう言ってエンジンをかけた。

翌朝。

サファリカーに乗り込んだ私たちは、真っ先にライオンの寝ぐら付近へと向かった。すると、近くの原っぱに赤ちゃんライオンを連れたメスたちが歩いているのが見えた。

おお!!

赤ちゃんがたくさん!そして、赤ちゃんたちは一斉にニャオニャオと鳴き始めた。

「あの子たち、お腹が空いていますよ」。そっか、お腹が空いて鳴いているのね。

日陰に戻ったメスライオンたちは地面に体を横たえた。

お乳を求めておしくらまんじゅうの赤ちゃんたち

満腹になってゴキゲンの赤ちゃんたち

近くではお父さんが見張っている。

ああ、なんて素晴らしい光景だろう。この後のサファリで他にもいろんな動物を目にしたが、ライオンの授乳風景が目に焼き付いて離れず、それ以外のものがかすんでしまうほどの感動的な体験だった。

サンブル国立保護区はアンボセリ国立公園やマサイマラ国立公園ほど有名ではないが、その分、観光客がそれほど多くなく、ゆっくりと動物たちを観察できるのがとても良い。そして、野趣あふれる景観と、そこでしか見られない希少な動物に遭遇するチャンスがあるという意味でも素晴らしい場所だと思う。すっかりお気に入りの保護区になった。

 ケニアで訪れた3つ目の生物保護区、サンブル生物保護区(Samburu National Reserve)は、前日に滞在したオルペジェタ生物保護区(Ol Pejeta Conservancy)から、ケニアの地理的中心とされるイシオロ(Isiolo)の町を通過し、北東に150kmほど移動したところにある。イシオロの町には、服装からムスリムとわかる人がとても多かった。サンブル族、ボラナ族、トゥルカナ族、ソマリ族などの民族が暮らしているが、特にムスリムのソマリ系の住民が多く、また、ナイロビと北部の都市を結ぶ交通の要所で、エチオピアやソマリア方面との交易の拠点でもあることから、イスラム文化が根付いているらしい。

ケニア山周辺の緑多い景色から一転して、窓から眺める景色は乾燥した大地となり、民家もまばらになっていった。ルーカスさんによると、朝晩は気温が下がり比較的過ごしやすいケニア南部と比べ、ケニア北部は反砂漠気候でとても暑いとのこと。

サンブル国立保護区は行政区画サンブル郡にあり、隣接するイシオロ郡のバッファロースプリングス国立保護区(Buffalo Springs National Reserve)シャバ国立保護区(Shaba National Reserve)と共に、総面積およそ600㎢の繋がりのある生態系を形成している。「サンブル」という名前はこの地域に古くから住んでいるサンブル族に由来する。サンブル族は、マサイ族と近い関係を持つナイル系の牧畜民族で、伝統的に牛やヤギ、羊を飼いながら半遊牧生活をしている。文化や言語もマサイ族に似ている。サンブル生物保護区の特徴は、野趣溢れる美しい景色と、「サンブル・スペシャル・ファイブ」と呼ばれる独特な野生動物だ。

サンブル・スペシャル・ファイブとは、

  1. グレビーシマウマ(Grevy’s Zebra) 一般的なシマウマよりも体が大きく、縞模様が細かい。
  2. アミメキリン(Reticulated Giraffe) 体にくっきりとした網目模様がある美しいキリン。
  3. ソマリダチョウ(Somali Ostrich) Blue-necked ostrichとも呼ばれる首と大腿が青味がかったダチョウ族の一種。
  4. ゲレヌク(Gerenuk) 首が長く、後ろ足で立って木の葉を食べる珍しい草食動物。
  5. ベイサオリックス(Beisa Oryx) まっすぐ伸びた角を持つ美しいアンテロープ。

さて、果たしてこれらを見ることはできるだろうか。

 

サンブル国立保護区の方が知られているのでタイトルにはサンブル国立保護区と書いたが、実は私たちが滞在したのロッジはエワソ・ニーロ川(Ewaso Ng’iro River)を挟んで南側にあるバッファロースプリングス国立保護区内にあった。生態系も生息する動物も川の北側と南側で変わりないが、運営が違うので両方でサファリをする場合には入場料が2倍かかってしまう。そういう事情で、私たちがサファリを楽しんだのはバッファロースプリングス国立保護区である。

エワソ・ニーロ川沿いに立つロッジのベランダからの眺めは素晴らしかった。ヒヒの群れが水浴びをしに川へと向かっている。

プールからはゾウの家族がゆっくりと歩く姿を眺めることができた。夢のよう。

ロッジの敷地内にはジリスやコビトマングースがいた。

ジリス (Ground squirrel)

コビトマングース (common dwarf mongoose, Helogale parvula)

今回のケニアでのサファリ旅行を通じて少し残念だったのは、観光客が自由に歩けるのは基本的にフェンスに囲まれたロッジの敷地内だけなこと。サファリでは車に乗っているだけなので運動不足になってしまうし、自然の中を散歩したいという欲求があった。でも、町ならともかく、生物保護区には危険な生き物がたくさんいるのだからしかたがない。

さて、いよいよサファリの時間である。

バッファロースプリングス国立保護区。

早速、見つけた!

これが赤道以北でしか見られない、グレビーシマウマ (Gravy´s zebra, Equus grevyi)。確かにシマが細かくて、見ていると目が回りそう。お腹の部分には模様がなく、白い。

オリックスの群れがいた。向こうに見えるのはアミメキリン?

ベイサオリックス (East African Oryx, Oryx beisa)

真っ直ぐ伸びた長いツノ、前脚には黒い帯模様。顔はかなり牛っぽい。

赤ちゃんオリックスもいた。

お母さんが来て、体をきれいにしてくれた。

アミメキリン (Reticulated giraffe, Giraffa reticulata) 

トゲトゲのアカシア上手にしごいての葉っぱだけ取って食べている。

ケガして治った跡?

こちらはゲレヌク (Gerenuk, Litocranius walleri)の親子。ほんと、首が長い。

そして、スペシャル5の5つ目は、ソマリダチョウ (Somali Ostrich, Struthio molybdophanes)。

「ダチョウ」と付くけどダチョウではなく、ダチョウ属に属する別の主だそう。

オス

メス

ここでしか見られないスペシャル5、あっさり全部見れてしまった!が、バッファロースプリングスで見られるのはこれらにとどまらない。翌日のサファリではさらなる感動が待っていたのである。

その2に続く。

1日半、アンボセリ国立公園でのサファリを楽しんだ後は、ケニア中央部にあるオル・ペジェタ生物保護区(Ol Pejeta Conservancy)へと向かう。移動に8時間近くかかるので、早朝6時に出発である。ロッジの朝食は6時からなので、朝ごはんを食べている時間はない。ガイドのルーカスさんが車の中で食べられるようにとコーヒーや朝食を箱詰めしたものを手配してくれていた。

ナイロビを通過し、ケニア山の西側山麓を回って北上した。残念ながら車の中からは写真が撮れなかったが、山頂の尖ったケニア山とその周辺の青々した森林風景はとても美しい。山麓の剥き出しになった土壌はこれ以上あり得ないと思うほど赤い。かつて活発な火山だったケニア山の周囲には火山噴出物が豊富に堆積し、それが長年にわたって風化し、酸化鉄(Fe₂O₃)を多く含む赤土が形成された。このような土壌はラテライト(latelite)、日本語では紅土と呼ばれ、高温多湿な環境で形成されやすい。ケニア山の麓は比較的雨が多く、化学風化が進みやすい環境であるらしい。

ナニュキ(Nanyki)という町で幹線道路を降りて、さらに14km。道路のコンディションが悪く、だんだん移動に嫌気が差してきた頃、ようやく宿に到着。ロッジはオルペジェタ生物保護区のゲートの目の前にあった。ランチを食べて少し休憩の後、保護区内に入った。

オルペジェタ保護区のゲート内の管理棟

オルペジェタは国立公園ではなく、国際NGOであるFauna & Flora Internationalが管理する保護区(Conservancy)だ。総面積は360km2とアンボセリ国立公園に匹敵し、ビックファイブを始めとする多様な野生動物が生息している。この保護区について特筆すべきは、絶滅の恐れのある種の保護に力を入れていることで、虐待や違法取引から救助されたチンパンジーたちや地球上に残る最後の2頭のキタシロサイを保護している。

この保護区ではサファリカーによるドライブサファリの他にもブッシュウォークやナイトサファリ、犬を使ったアニマルトラッキングなどいろいろな面白そうなアクティビティが提供されている。しかし、私たちは翌朝には次の目的地に向かって出発することになっていたので、保護区内を楽しむ時間は残念ながらこの日の午後の2時間ほどしかなかった。チンパンジーの保護センター(Chimpanzee Sanctuary)が16:30に閉まってしまうので、先にそちらに行きましょうとルーカスさんに提案されて、まずはそちらを見学することにした。

Chimpanzee Sanctuary

案内してくれたレンジャーさんの説明によると、この施設はケニアで唯一のチンパンジーの保護施設で、密猟や虐待から救助されたチンパンジーが適切な環境で回復し、社会性を取り戻せるように支援している。チンパンジーたちはフェンスで囲まれた広い敷地で群れを作り、専門家によるケアを受けながら自然に近い生活を送っている。ビジターはフェンス越しにチンパンジーの生活の様子を観察することができる、、、、のだけれど、私たちが行ったとき、ちょうどチンパンジーの食事どきに当たっていて、大部分のチンパンジーは敷地の奥へ移動していた。かろうじて3匹がフェンス付近にいたが、私たちの姿を見るとサッといなくなってしまった。レンジャーさんは「あの子たちは、目の前で親を殺されるという壮絶な体験をしたのでそれが強いトラウマになっていて、人間が嫌いなのです」と説明してくれた。そして、「あれはチンパンジーたちの宿舎です。夜はあの中に入って寝るんです」と広大の敷地の向こうにある建物を指した。「自然に近い生活をしているのに、チンパンジーたちは建物の中で寝るんですか?」と質問したら、「人間にペットとして飼われていたチンパンジーは幼少期から家の中で寝ていたので、屋外で寝るのに体が慣れていないんです。外で寝ると風邪をひいたり、酷いときには肺炎になってしまうこともあります。だから、建物の中で寝かせています」とのことだった。

サンクチュアリーの入り口付近には展示小屋があり、チンパンジーとその保護についての説明がある。ジェーン・グドールの写真も。

サンクチュアリーで保護されているチンパンジーたち。

残念ながら私たちはチンパンジーの姿はよく見られなかったが、事前に予約をすれば敷地内に入って餌やりの様子を見学することができるそうだ。忠志、1日に最大6名までに限定されており、見学には60ドルかかる。

チンパンジーの保護施設を見学した後は、サイを見に行く。保護区内にはシロサイ(white rhinoceros, Ceratotherium simum)、クロサイ(black rhinoceros, Diceros bicornis) 、そして前述の2頭のキタシロサイ(northern white rhinoceros, Ceratotherium simum cottoni)がいる。

シロサイ

シロサイは保護区内に130頭ほどいるそうだ。大きくて、身近で見るとすごい迫力がある。恐竜のトリケラトプスを思い浮かべてしまう。でも、トリケラトプスはサイの倍以上の大きさで、哺乳類であるサイの先祖ではないのだよね。種類の全く違う生き物が似た特徴を持つようになることを収斂進化といい、トリケラトプスとサイはまさに収斂進化によって似たよう見た目になったらしいが、なんだか不思議だなあ。

ナイロビの国立博物館に展示されているシロサイ(右)とクロサイ(左)の頭蓋骨。ツノはシロサイの方が長い。

シロサイはドイツ語でBreitmaulnashorn(「口の広いサイ」)と呼ばれるよう、口の幅が広くて四角い。それに対し、クロサイはSpitzmaulnashorn(直訳すると「口の尖ったサイ」)と呼ばれ、口の幅が狭くて尖っている。シロサイ、クロサイと言うけれど体の色は関係なく、シロサイが口の幅がwide(アフリカの言葉でwijde)なサイと呼ばれていたのをwhiteと勘違いして広まってしまったらしい。では、クロサイの方は?

保護区にはバラカ(Baraka)という名前の盲目のクロサイが保護されている。

クロサイのバラカ

完全に失明しているが、自分の名前はわかるそうで、レンジャーさんが「バラカ、バラカ」と呼ぶとゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。フェンス越しに餌をあげさせてもらった。バラカというのは「神から祝福されている」という意味だそう。

バラカの背中に乗った鳥

サイやゾウなど、野生の動物の体にはその動物と共生関係にある野鳥が乗っているのをよく見かける。バラカにはツキノワテリムク (superb starling, Lamprotornis superbus)とアカハシウシツツキ(Rred-billed oxpecker, Buphagus erythrorynchus)がくっついていた。これらはサイの体についた寄生虫などを食べることでサイから利益を得ている一方で、ライオンなどサイを捕食する動物が近づくと警戒の鳴き声を上げてサイを危険から守っている。

さて、オルペジェタ保護区内の最大の目玉はキタシロサイだ。キタシロサイは特に1970年代から1990年代にかけて、中央アフリカの内戦や武装勢力の活動と絡んで、密猟が急増した。サイの角が漢方薬に使われ、高額で売買されているのは周知の通り。また、キタシロサイの主な生息地である中央アフリカのサバンナや森林が、人間の開発によって大きく縮小したことも原因である。2008年に野生での個体は確認されなくなり、事実上の野生絶滅が宣言された。地球上の最後のオス「スーダン」はここ、オルペジェタ保護区で保護されていたが、2018年に死亡し、ついにキタシロサイは生殖可能な個体がいない状態となってしまった。現在、スーダンの娘と孫娘である2頭、NajinとFatuが保護されている。スーダンの精子は冷凍保存されており、人工授精による復活が試みられているが、現時点では成功していない。つまり、キタシロサイは地球上、ここでしか見られない。

キタシロサイのNajin?それともFatu?

なのに、ああ〜。時間が押せ押せで、遠目にチラッとその姿を拝んだだけで保護区を出なければならないことになってしまった。なんとも無念。保護区内には保護活動について学べるMorani Information Centerもあるが、寄る時間はなかった。

いろいろと心残りのある訪問となったけれど、ゲートに戻る道中、アンボセリ国立公園では目にしなかったいくつかの動物が見られたので、よしとしよう。

ハーテビースト (Hartebeest, Alcelaphus buselaphus)

ウォーターバック(Waterbuck, Kobus ellipsiprymnus

 

オルペジェタ生物保護区は、もしまたケニアに行くことがあれば、優先的に再訪したい場所の一つだ。

 

この記事の参考サイト&文献:

オルペジェタ生物保護区のウェブサイト

ドイツ語ガイドブック Reise Know-How Verlag,   “Kenia – Reiseführer für individuelles Entdecken”

ナショナルジオグラック記事 最後の2頭となったキタシロサイ、「脱絶滅」技術で救えるか

前回の記事に書いたように、今回のケニアでのサファリ旅行の行程は現地のサファリ会社、Meektrails Safariに組んでもらった。ナイロビ到着が夜遅くだったので、到着日は空港近くのホテルに泊まり、翌日の早朝にスタッフにピックアップしてもらい、清算を済ませたらドライバー兼サファリガイドのルーカスさんと最初の目的地、アンボセリ国立公園(Amboseli National Park)に向けて出発した。

アンボセリ国立公園は、ケニア南部、タンザニアとの国境近くに位置する国立公園で、タンザニアに位置するキリマンジャロ山をバックに野生動物が見られることで知られている。ナイロビからの距離は240km なので2、3時間で着くかと思ったら、ケニアは道路のコンディションが良くないので、4時間半ほどかかった。でも、アンボセリ国立公園までの道は良い方。エリアによっては相当凸凹な場所も少なくないので、車酔いしやすい人にはキツイかな。酔い止めを持参するのをお忘れなく。

国立公園や生物保護区以外の場所でも野生動物の姿は見られる。写真はナイロビからアンボセリ国立公園へ行く途中に車の中から撮ったもの。シマウマやキリンが普通に道路を横断したりする。

まずは公園近くのロッジにチェックインし、昼食を取ってしばらく休憩。ロッジの敷地内にも、いろいろな生き物がいて楽しい。

シママングース (Banded Mongoose, Mungos mungo)

 

ロックハイラックスの仲間Bush Hyrax, Heterohyrax brucei 

 

サバンナモンキー (Vervet monkey, Chlorocebus pygerythrus)

さて、少し休憩したらガイドのルーカスさんと共に私たちの初のサファリ(英語ではgame driveと言う)となる午後のサファリに出発だ。

このキマナゲートから入園し、この夕方と翌日の二日間、たっぷりとサファリを楽しむことになる。

標高約1,150mにあるアンボセリ国立公園は、1974年に設立され、1991年からは生物圏保護区に指定されている。面積392㎢の公園内には乾燥した平原、湿地、アカシア林、塩類平原などの多様な環境があり、多様な生き物が生息している。

特に個体数が多いのはレイヨウ(Antelope)で、いろんな種を目にした。

トムソンガゼル (Thomson´s Gazelle, Gazella thomsonii) 側面にクッキリとして焦茶のラインがあるのが特徴。

グランドガゼル (Grant`s Gazelle, Nanger granti) トムソンガゼルよりも大きい。

インパラ (Impala, Aepyceros melampus)。トムソンガゼルやグラントガゼルと違い、メスにはツノがない。

ディクディク (Kirk-Dikdik、Madoqua kirkii) 小さくて目がパッチリで可愛い

オグロヌー (Wildebeest, Connochaetes taurinus) これはメスかな?

もちろん、キリンもいる。キリンは動物園では見慣れた生き物だけれど、草原をゆっくりと移動する姿は本当に優雅で見惚れてしまう。それにしても、つくづく不思議なかたちをした生き物だ、と感じる。

アンボセリ公園で見られるのはマサイキリン (Masai Giraffe, Giraffa tippelskirchi) 。体の模様がギザギザしていて、その他の部分も黄色っぽい。

グラントシマウマ (Grant´s zebra, Equus quagga) 体型はロバに近い。子どものシマウマはシマシマが茶色っぽい。

 

砂浴びをする子どものアフリカゾウ (African Elephant, Loxodonta africana)

個体数およそ1,600頭と推定されるゾウは公園内の至るところで見られるが、特にオル・トカイ湿地(Ol Tukai Swamp)では水浴びをする姿が見られてとてもよかった。

水辺にはカバ (Hippopotamus, Hippopotamus amphibius)の姿も。昼間はこうして水場でグダグダしてるが、実は意外に活発で、かなり凶暴らしい。

サバンナヒヒ (Olive, Baboon, Papio anubis)の家族

サバンナヒヒ (Olive Baboon, Papio anubis)の群れ

そして、なんと草むらを歩くライオンの姿も見られて大感激。

こんなにたくさんの野生動物が見られるなんて、期待以上である。哺乳類の他に野鳥もたくさん見たのだけれど、野鳥については別記事でまとめたい。

国立公園ではサファリ客がサファリカーから降りることは禁じられており、サファリカーに乗ったまま、窓またはポップアップした屋根の下から動物を観察するのが原則だ。しかし、一部の特定の場所またはエリアでは車を降りてピクニックをしたり、歩いたりできる。

オブザベーションヒル(Noomotio Observation Hill)の下でサファリカーを降りて、丘を登る。遊歩道の途中には立て看板がいくつかあり、アンボセリ公園の地質やアフリカの最高峰キリマンジャロ山などについての説明を読むことができる。しかし、雲が多かったため、アンボセリ国立公園のウリである肝心のキリマンジャロ山の姿は拝むことができなかった。ちょっと残念だけれど、これだけたくさんの野生動物が見られたのだから、まあ、いいか。

丘の上から公園を見渡す。

大満足してサファリを終え、ロッジに戻ろうとしたところ、出口付近の道路脇からゾウが出て来た。至近距離で大迫力。このゾウはアンボセリ国立公園で最も年長のオスゾウだそう。恒例だからか、丸太を乗り越えるのに苦労しているように見えた。

もうずいぶん長いこと、「いつかアフリカへサファリ旅行に行きたい」と思っていた。サファリができるアフリカの国はかず多くあり、そのどこへ行くのが良いのか、最適な季節はいつかなど考えることが多く、なかなか決まらないでいたのだけれど、このたび晴れてサファリ旅行を実現することができた!わーい。

選んだのは、結局、サファリ旅行の目的地として最もポピュラーな国の一つ、ケニア。決定的だったのは、私たちは可能ならば1月もしくは2月に、寒くて暗いドイツの冬を脱出して暖かい国でサファリをしたいと思ったこと。多くのアフリカの国では1〜2月にかけては雨季でだが、ケニアやタンザニアは短い雨季の後の短い乾季に当たり、比較的天候が安定しているという。また、この時期は動物たちの出産シーズンで、動物の赤ちゃんを見るチャンスが多いと読み、この2つの国を比較検討した。ケニアの方がタンザニアよりも料金が安めだったので、ケニアに決めた。

国が決まったら次は旅のルートである。ケニアには国立公園や野生動物の保護区が数多くある。南西部、タンザニアとの国境近くに位置する有名なマサイマラ国立公園は外せないとして、他にどこをどういう順番で回ればいいだろう?ガイドブックを買って来て調べ始めたけれど、情報量が多くてなかなか考えがまとまらなかったので、ネットで調べてレビューの良い現地のサファリツアー提供会社、Meektrails Safari社に問い合わせてみることにした。10日くらいの日程で、という条件を出したら、次のようなルートを提案してくれた。

 

Day 1       ナイロビ空港でピックアップ、そのままアンボセリ国立公園(Amboseli Nationalpark)へ。夕方、公園内をドライブサファリ。

Day 2   終日、アンボセリ国立公園でドライブサファリ。

Day 3   オル・ペジェタ野生動物保護区(Ol Pejeta Conservancy)でドライブサファリ。保護区内にあるチンパンジーの保護施設およびサイの保護施設を訪問。

Day 4   サンブル国立保護区(Samburu National Reserve)へ移動。午後、 保護区内でドライブサファリ。

Day 5      終日、サンブル国立保護区でドライブサファリ。

Day 6     ナイヴァシャ湖(Lake Naivasha)へ移動。ナイヴァシャ湖でボートサファリ。

Day 7  ヘルズゲート国立公園(Hell´s Gate National Park)でサイクリング。

Day 8 マサイマラ国立公園(Masai Mara National Park)で終日、ドライブサファリ。

Day 9     マサイマラ国立公園で終日、ドライブサファリ。

Day 10    ナイロビ国際空港へ送迎。

 

ケニア南部の主要な国立公園や野生動物保護区をおおむねカバーするルートだ。私と夫、二人だけのプライベートツァーで、移動はサファリガイド兼ドライバーのスタッフが運転する四駆のバン(サファリ用に屋根がポップアップする仕様)とのこと。

特に不安な点はなかったので、このサファリ会社にお願いすることにした。申し込み時にデポジットとしてツアー料金の1/3を振り込み、残りは現地に行ってから支払うことになる。料金は季節によって変動があると思うけれど、2月は往復の飛行機代抜きの現地出発ツアーで、一人1日あたりおよそ250ドル。移動費用と宿泊費、食事3食と飲料水、そして国立公園への入園料が含まれている。

観光客としてケニアに入国する場合、ビザが必要だ。こちらのサイトでeVisaを申請できる。予防接種の義務はないけれど、最低でも破傷風のワクチンは接種しておいた方が安心。私は成人用の3種混合ワクチンを10年ごとに受けているので、その他に追加の予防接種は受けなかった。マラリアに関しては、滞在日数が少なく蚊の少ない乾季なのに、予防薬を内服して副作用で辛い思いをすることになったら旅の楽しみが半減してしまうと思い、予防薬は飲まないことに。もちろん、熱帯用の虫除けスプレーはたっぷりと持参した。

 

アフリカでのサファリは初めてなので、予習が必要。以下の本やポッドキャストが役立った。

ヒサクニヒコ 『サファリへ行こう 東アフリカのサバンナ実践ガイド

ポッドキャスト Yuka on Safari

 

次回以降の記事ではそれぞれの国立公園(または保護区)についてまとめる。