(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)
私の夫と娘はネイチャー派で休暇は自然の中で過ごすのが好き、特に熱帯が大好きだ。私は昔はどちらかというと文化的な旅が好きだったのだが、彼らと一緒に過ごすうちにだんだん感化されて自然の中での休暇が大好きになった。
熱帯は楽しい。トロピカルな海で泳ぐのも大好きだし、日本やドイツでは見られない珍しい植物や生き物が見られる喜びは本当に大きい。私は果物アレルギーで果物は普段全く食べられないのだが、熱帯に行くと、なぜか一時的に果物アレルギーが治ってしまうのだ。熱帯に到着した瞬間からマンゴーやパパイヤやパイナップルをたらふく食べられる。だから、熱帯は私にとってパラダイスである。
とはいえ、熱帯には嬉しくないことも少なからずある。まず、虫が多い。私は虫は見る分には平気というか、むしろ好きだけれど、刺されるのはごめんだ。熱帯にはマラリアなど病気を媒介する虫もいるから注意しなくちゃならない。今回の旅行は蚊が多くなる雨季ということもあり、熱帯仕様の蚊除けスプレーと、万が一マラリアにかかったときのための薬を医者に処方してもらい、持っていった。
ボケテ高原は標高が高いせいか思ったほど蚊がいないなと安心していたのだが、ある朝、起きると全身に赤いポツポツができている。蚊に刺されたときほどではないものの、痒みがある。ベッドに何かいるのか?しかし、一緒のベッドに寝ていた夫は1箇所も刺されていない。「虫刺されじゃなくて、体の内側から来るものなんじゃない?」と夫は気味の悪いことを言う。でも、蕁麻疹が出るようなものを食べた記憶もないし、、。一体なんだろう?不思議に思ってツイートすると、青年海外協力隊員としてパナマに滞在されたご経験のある宮﨑大輔さんが、このように教えてくださった。
マガジン読みました!パナマを満喫されていますね。
パナマでは特に朝と夕方に「チトラ(他の国ではプリプリと呼ぶ)」という飛行する吸血虫が発生します。蚊よりも小さいので肉眼ではほぼ見えず、知らない間に肌に蚊に刺されたような腫れと痒みが生まれます。お気をつけください!— 宮崎大輔🍓イチゴテック (@JIBURl) June 18, 2019
チトラに噛まれたのだろうか。ありえない話ではない。あるいは、動物保護センターで動物を触ったから、もしかしてノミを移されたのかもしれない。2、3日様子を見たが改善しないので、薬局で薬を買う羽目にになった。幸い、薬局で買った薬がよく効いて最初に刺された(噛まれた?)分は良くなったものの、その後も次々と蚊に刺されるので、旅行中はずっと身体中、虫刺され跡だらけだった。
熱帯は湿度も辛い。気温は30度前後だったので暑さはそれほどでもなかったが、とにかく尋常ではない湿度の高さである。泊まった部屋には天井のファンかエアコンがあるから耐えられないほどではないけれど、問題は洗濯物で、洗ったものを干しておいても全然乾かない。日中、外を歩き回って汗をかいたり海で泳いだりするので汚れ物はどんどん溜まっていく。でも、洗っても乾かないので湿ったまま着るしかない。
最悪なのは靴だった。海へ行くときはビーチサンダルで良いとして、ジャングルの中を歩き回るにはしっかりしたトレッキングシューズが必要である。最低限、スニーカーは履かないと、とても歩けない。道は湿っており、雨の後はぬかるみ、すぐに靴がドロドロになってしまう。川が流れていて靴のままバシャバシャと歩いて渡らなければならないこともあるから、毎日のように靴が濡れる。一旦靴が濡れるとなかなか乾かないので、それをしばらく車の中に放置しようものなら悪臭を放って大変なことになる。もちろん、泥や砂、汚れた服や靴で車もどんどん汚くなっていく。
そして、当然、自然の中は危険が多い。
ある日、ドライブしていると道がぬかるんでいて、これ以上は車で進めなくなった。夫は「この先がどうなってるか、オレが一人で見てくるからここで待っていろ」と私と娘を車の中に残して夫一人で探検に行った。しばらくして戻った夫は「石の橋があって、その下が洞窟になっていたよ」と報告してくれた。
洞窟の中に入ってみたいけれど、雨が降っているし装備も用意していないのでやめておく、と夫。安全かどうかわからない場所では夫がまず一人で行って安全確認をし、問題がなければ私と娘を迎えに来るというのが夫の決めたルールである。夫は車の運転が得意で軍隊経験もあるので頼りになる。私も冒険好きだけど、一人で熱帯の自然の中を歩くのはリスクが大き過ぎる。
そんなわけで熱帯での自然探検はとても楽しいけれど、不快感もそれなりに伴うのである。まあ、とにかく汚いのだ。私たちは別に汚いのが好きというわけではないのだけれど、自然探検にはそれ以上に楽しいことがたっぷりあるから多少の不快さは許容しているというわけなのだ。
乾季に旅行すると比較的快適に過ごせるけれど、パナマは年間2/3が雨季ということもあり、その他いろんな事情もあって今回は乾季に来ることができなかった。雨季でも一日中ザアザア降るわけではないし、今回は3週間の日程なので雨が上がっている間に活動すれば十分楽しめるけれど、日程に余裕がない場合は、やはり乾季を選んだ方が良いと思う。
とはいえ、雨季には雨季の良さもある。コスタ・リカでネイチャーウォークに参加したとき、ガイドさんが雨季は「グリーンシーズン」と呼ぶのだと言っていた。乾季の熱帯はカサカサした景色になりがちだが、雨季の熱帯雨林は色鮮やかで瑞々しく、ジャングルらしさをより味わえる。