(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)
ボカス・デル・トーロ県コロン島には1週間滞在したが、滞在中にぜひ訪れたいと思っていた場所がある。それはスミソニアン熱帯研究所だ。スミソニアン熱帯研究所(STRI)は米国ワシントンに本部のあるスミソニアン研究所に属する機関で、パナマシティの近郊、バルボアに本部がある。そのSTRIの研究施設がコロン島にもあり、私たちの滞在している場所のすぐ近くだった。毎週、木曜と金曜に見学が可能とのことだが、私たちがコロン島に到着したのは金曜の夜で、コロン島を離れるのは1週間後の金曜の朝だったので、研究所を見せてもらうとすると滞在最終日の木曜しかない。そんなわけでコロン島に滞在中ずっと楽しみにしていたのだ。
とうとう木曜日がやって来て、張り切って研究所へ行く。米国人の夫婦が門の前で待っていたので一緒にそこで待機していると、所内を案内してくれる研究者と思しき若い女性が出て来た。
「ブエナス・タルデス。今日はようこそお越しくださいました。みなさん、スペイン語はおわかりになりますか?」と挨拶されたので、「ポキート(ほんの少しだけ)」と答える。「そうですか。じゃあ、英語でご説明しますね」となるかと思いきや、返って来た言葉はなんと「そうですか。じゃあ、ゆっくり話しますね」。えええ!?案内、スペイン語なの???ショック。スペイン語圏なのだから案内がスペイン語でも文句を言う筋合いはないとわかってはいるが、説明を理解する自信がないよ、、、。
どうにか少しでも聞き取ろうと必死に耳をそばだてたけど、半分くらいしかわからなかった。残念。
スミソニアン熱帯研究所はコロン島のマトゥンバル海洋保護区(Matumbal Marine Reserve)の湾に面した敷地を有し、そこに25名ほどの研究者が常在して生物の進化や気候変動や人間の活動がカリブ海の生態系に及ぼす影響などについて研究を行なっている。ボカス・デル・トーロは小さなエリアに非常に多くの生き物が生息し、生物多様性の研究に適しているそうだ。パナマの中でも特に雨が多く、湿度が高いのがこの地域の特徴だと研究者の女性が説明してくれた。確かにコロン島の湿度は半端ではない。今は雨季なのでボケテ高原も雨がちだったが、霧雨だったのであまり気にしていなかった。しかしコロン島にきてからは降るとなったら滝のような雨が降り、雨が止んだら止んだで蒸し暑い。洗濯物が乾く暇が全くないのだ。ランドリーの乾燥機で乾かしてもらい、ホカホカの状態で受け取っても、数時間経つとまた湿ってしまう。シーツもタオルもすべてがジメッとして、ガイドブックも水分を吸収してしなしなになってしまった。
研究湾はマングローブ林に縁取られている。コロン島には3種のマングローブがあるそうで、これはmangle rojo(直訳すると、赤マングローブ)。根が赤っぽい色をしている。マングローブは魚や貝などだけでなく、鳥や昆虫、哺乳類など多くの生き物に生息環境を与えるため、マングローブ生態系を保護することは”muy importante(大変重要だ)”だと言われた。重要だということはわかるけど、具体的にどのように重要なのか詳しいことが知りたかったけれど、質問したくてもスペイン語が出て来ない(悲)。
カイメンの実験設備。
ちょうどここで実験作業をしていた研究者の方は英語話者だったので、少し説明して頂いた。栄養液で満たされたこの水槽にはいろんな種類のカイメンが飼育されている。カイメンは細菌と共生関係にある。マーカーを含むこの栄養液中でカイメンを飼育した後、カイメンと細菌を分離し、マーカーを使ってそれぞれがどのくらいの量の栄養を体内に取り込むのかを量的に分析しているそうだ。ということだけ聞いた時点で案内役の人が歩き始めてしまったので慌ててついていく。もっと詳しくカイメンの話を聞きたかったのにー。
水槽を見て初めて気づいたのだが、私は今までサンゴとカイメンの区別がついていなかった。アイランドホッピングに参加した際にサンゴ礁でスノーケルをして「カリブ海のサンゴはカラフルで綺麗だなあ〜」と感動していたが、私がサンゴだと思っていたものの多くは海綿だったみたい。無知で恥ずかしい。海の中を自分で実際に見る機会は少ないから、と言い訳してみる。でも、興味が湧いたので家に帰ったら海の生き物の図鑑を入手して調べることにしよう。
敷地内には沼もあり、ワニやカメなどもいる。
カイマンが見えた。
施設では研究に使う水は雨水をこのようなタンクに溜め、
濾過装置で濾過した後、紫外線で殺菌している。
展示スペースには大きな鳥の巣が展示されていた。「これ、オオツリスドリのですよね?」。こちらの記事に書いたように、私たちの滞在している部屋の窓からはオオツリスドリが巣を作るために植物の繊維を集めているところが観察できた。でも、周りに大きな葉が多くて視界が遮られ、作った巣を確認できなかったのでここで見られたのは嬉しい。ここでは巣を横向きに展示しているけれど、実際には細い方を上に枝に吊り下げるようだ。親鳥は上の方に開いている穴から巣に出入りして子育てするんだね。
この研究所には日本人の研究者の方もいらっしゃると聞いた。お目にかかることはできなかったが、北海道出身でカエルの研究をされているそうだ。どんな研究をなさっているのだろうか。
施設を見学することができたのはよかったけれど、スペイン語力がなくてまともな質問が何もできなかったことにがっかり。読むのはそれなりにできるようになったんだけど、、、。悔しい思いをしたので、これからスペイン語を学ぶモチベーションになりそう。