ドイツの運河探検、第4段!今回訪れたのは、北海とバルト海を結ぶキール運河(ドイツ語ではNord-Ostsee-Kanal)である。北海沿岸のブルンスビュッテルからバルト海に面したキールまで延びる、全長98.6kmの運河だ。長さはそれほどでもないが、年間3万隻以上の船舶が通航する国際的な航路として超重要である。

キール運河

この運河はドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の下で1895年に完成した。それまで、北海からバルト海へ出るにはデンマークのユトランド半島をぐるりと回るしかなく、とても時間がかかっていた。この運河の開通で航行距離は約250kmも短縮された。キール運河は全域にわたって完全に水平で、北海側の出入り口とバルト海側の出入り口に潮の満ち干による水位の変化を調整するためにそれぞれ建設された閘門を除いて、閘門設備を必要としない。

キール運河にあるいくつかの見どころのうち、絶対見たい!と思っていたのがレンズブルク(Rensburg)にある運搬橋(Rensburger Schwebefähre)というもの。鉄道橋の下に吊り下げられたゴンドラが、人や車を乗せてワイヤーで対岸へと渡るというユニークな仕組みらしい。

この運搬橋は、キール運河にかかるレンズブルク高架鉄道橋(Rendsburger Hochbrücke)の一部を成している。

この鉄道橋の存在感がそもそも半端ではなく、ハンブルクから電車でレンズブルクに近づくと、右手の窓からカーブを描く巨大な橋が目に飛び込んで来る。なんだろうと目を見張って窓の外を見ていたら、自分を乗せた電車はその橋に乗り、ループをぐるりと一周してレンズブルクの駅に到着した。遊園地のアトラクション的な体験で、これだけでも価値がある。橋の高さは地上から42m。レンスブルクのランドマークどころではなく、町の景観において大きな空間を占めている。なぜこんなに高い場所に橋を通したのかというと、キール運河は国際航路として大型船が通るため、運河をまたぐ橋は「少なくとも40m以上」のクリアランスが必要とされたとのこと。特異なループ構造は、その高さから徐々に高度を下げて地上の駅に降りるために考案されたもので、その結果、橋の全長は2,486mもある。

駅を出て、運河に向かって歩いた。

運河にかかる鉄道橋

この橋は1913年に完成したが、スチールという建材は当時、まだ新しく、住民は見慣れない巨大な建築物を不気味に感じたらしい。まだ溶接技術が実用化されていなかったので、橋の部品はすべてリベットで固定されている。使われているリベットの数は320万本!近代スチール建築の傑作と言えるのではないだろうか。レンズブルクの高架鉄道橋は今日、「鉄のレディ(Eiserne Lady)」の愛称で親しまれている。

さてさて、目当てはゴンドラである。運河の対岸に目をやると、おお!

あれが噂のゴンドラ(Schwebefähre)!すごい!あれに乗って運河を渡れるのか。

、、、と思ったら、ゴンドラは空。動いていないのか?運河沿いのレストランで聞いたら、なんと故障中だという。えええー、ガッカリ。乗る気満々でここまで来たのに、、、。

自分が乗れないまでも、動いている様子を見たかったのに、叶わず残念である。でも、それにしてもすごい仕組みだ。あんな高いところからワイヤーで吊り下げた構造物に揺られるなんて、乗っている時間はわずか2分ほどとはいえ、怖いと感じる人もいるのではないだろうか。このような運搬橋は世界中に20くらいしか作られていない。その中で現存するのはたったの8つだという。鉄道橋との複合構造になっているのは、たぶん世界でここだけ。超貴重だね。

今度来たら絶対に乗ってやる!