(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)
パナマは自然がとても豊かだ。熱帯雨林、雲霧林、マングローブの林やサンゴ礁に様々な野生動物を見ることができる。でも、そんなパナマも環境破壊の問題を抱えている。観光客の私たちに特に目につきやすいのはゴミの多さだ。あちこちにゴミがポイ捨てされていて残念だ。
もちろん、ゴミ問題はパナマに限ったことではない。特に海に流れ込むプラスチックごみは増加する一方で、2050年には海にいる魚の量を上回ると予測されている。そんな中、私たちの滞在しているコロン島にプラスチックごみ問題に対するユニークなプロジェクトがあることを知った。それはペットボトルでできた村、Plastic Bottle Village。なにやら面白そうだ。見学に行ってみることにしよう。
ここが噂のPlastic Bottle Villageだ。メタルフレームでできた塀の中に使用済みのペットボトルがぎっしり詰まっている。
門が開いていたので入ってみた。四方の壁がペットボトルでできた建物があった。中を覗いていると、一人の男性が現れた。
ビレッジのオーナー、Robert Bezeauさんだ。「私のビレッジについて知りたいかい?」。オーナーから直接お話を聞けるなんてラッキーだ。コンセプトを説明して頂いた。
カナダ人のRobertさんは10年前にコロン島へ移住して来た。コロン島に住むことにしたのはここが気に入ったからだが、せっかくの自然豊かな素晴らしい場所なのにゴミが多いことが気になっていた。そこで、Robertさんは捨てられたペットボトルを拾い始めた。拾ったペットボトルはあっという間に山となる。拾っても拾っても追いつかない。このゴミをどうしようか、、、。考えて思いついたのが、ペットボトルでできた村、Plastic Bottle Villageだった。
「わたしが子どもの頃にはペットボトルなんてものは存在しなかった。40年前だよ、ペットボトルがこの世に登場したのは。それが世界をすっかり変えてしまったんだ。プラスチックは地球を汚染し続けている。これから生きていく子ども達がかわいそうだと思わないかい?私たちはみな、無思慮にプラスチックを消費することで環境を破壊するという犯罪を犯しているんだ。私も、あなたたちもだ!犯罪者は罪を償わなきゃ。このビレッジは罪を犯した者を収監する刑務所なのだよ」
Robertさんはプラスチックごみの問題について人々に考えてもらうためにコロン島のこの場所に刑務所風のリゾートを建設することにしたのだ。主に若者向けに低料金の宿泊施設を提供する。
まだ完成前(2019年6月時点)なので雑然としているが、これが刑務所風宿泊所。
鉄格子がはまっているような内装デザイン。
すでに宿泊している人がいた。収監者はここで犯した罪を反省し悔い改めると、出所の際にお勤めを果たしたという証明書を発行してもらえる。
もちろん刑務所云々というのはあくまでジョークで、リゾートで寛ぎながら宿泊者同士が環境についてインスパイアし合うというのがRobertさんのコンセプトなので、こんな広いプールもある。現在、プール横にバーを建設中で、敷地内に軽食コーナーも設ける予定だそう。
ビレッジには城もある。中に案内してもらった。
イベントスペースもある。
ビレッジの敷地はかなり広く、宿泊するだけでなく区画を購入してマイホームを建設することもできる。1区画は800平米、購入価格は19,000米ドルから。周囲はジャングルで野生のサルも生息している。1km先は海岸、ボートの停泊場もあるというから贅沢な環境だ。
土地を購入すると、Robertさんがペットボトルを利用した家の建て方を教えてくれる。コロン島のあるボカス・デル・トーロ県は雨がとても多く、湿度が高いのだけれど、基礎にペットボトルを使えば地面から湿気が上がって来るのを防ぐことができるそうだ。また、ペットボトルでできた壁はボトルの中の空気が断熱材となるので涼しい。島に溢れるペットボトルごみを減らしつつ、少ないお金で快適な家を作ることができるという。
Robertさんは子どもたちへの啓蒙活動にも熱心で、定期的に小中学校のクラスを招き、私たちが日常的に使用するプラスチックがいかに海の生態系を破壊しているかをこのような絵を使って説明しているそうだ。また、ペットボトルのリサイクルを普及させるため、ボトルに貼るステッカーも考案した。
子どもたちがこのフットプリントデザインのスティッカーが貼られたペットボトルごみを拾い集めると、1本につき5セントがもらえる。といっても現金ではなく、拾い集めた金額に応じて食べ物または文房具と交換してもらえる仕組みだ。
さらにRobertさんは丈夫で再利用可能なボトルを試作したと言って見せてくれた。
レゴブロックのように組むことができ、縦横に繋いで他の用途に使うこともできる。「災害時には被災地に大量の飲料水が支援物資として運ばれるよね。衛生的な飲料水の供給は不可欠だけど、それで被災地にゴミが増えるのでは意味がない。繰り返し使えて他の用途にも使える容器があったらいいと思うんだ」
Robertさんは工事を急ぎ、9月にはPlastic Bottle Villageをオープンさせたいと言っていた。完成を見ることができなくて残念だけれど、素敵なビレッジが出来上がると良いな。成功を祈ります!
(2022年追記: ビレッジはすでに運用開始しており、BBCを初め、多くのメディアで取り上げられている。詳しくはこちらを )