(この記事は以前、他の場所で公開していた2019年6月のパナマ旅行記をリライトしたものです。)

つれたさパナマシティ に滞在中、偶然見つけてとても気に入ったレストランがある。それはCorozal地区にある魚レストラン、Maa Goo´s Fisch Tacosだ。入り口に大きな魚拓が飾られていたので、なんとなく惹かれて立ち寄った。

 

店内はお洒落カジュアルでいい感じである。

カウンターで注文して自分で料理をテーブルに運ぶ形式。小腹が空いていたのでいくつか料理を注文した。セビーチェとフィッシュタコス、フィッシュサラダなど、お魚づくし。

セビーチェとトルティーヤチップス。シンプだけれど、とても美味しい。フレッシュパイナップルジュースを頼んだら、紙製のストローがついて出てきた。最近、ヨーロッパではプラスチックストローの使用をやめようという動きがあり、紙製のものに置き換える店が増えているが、パナマでもそのような動きがあるのだろうか?これまで観察した限りでは、パナマはプラスチックごみがとても多いと感じていたので、意外に感じた。個人的には、紙製ストローはすぐにふやけて使いづらいし、そもそもストロー自体が不要なのでは?と思うのだけれど、このレストランは環境に配慮していることが感じられた。

フィッシュタコスとサラダもとても美味しい。焼きたてのお魚がたっぷり入っている(写真は撮り忘れてしまった)。美味しい美味しいと頬張っていると、夫がビールをカウンターに取りに行って、なかなか戻らない。注文に手こずっているのかなと思っていたら、ようやく戻って来た。

「オーナーが話しかけて来てさ。なんかすごく環境保護に熱心な人みたいだよ。持続可能なフィッシングを実践していて、その方法を伝えるために釣りツアーやスノーケリングツアーもやっているらしいよ」。「へえ、そうなの?」興味が湧いた。

食事を済ませて店を出ると、エプロン姿のオーナーが網に乗せた魚を燻製器に運んでいるところだった。会釈すると、元気な声で話し始める。「どうだった、フィッシュタコスの味は?美味しかった?それはよかった。今ね、釣れたての魚をスモークするところだよ。よかったら見てって」

わー、美味しそう。

濡らしたウッドチップを炭火に投入し、釣れた魚をスモークする。

燻製装置

米国から移住して来たというオーナーは燻製器の蓋を閉め、「この店で出す魚はすべて自分たちで釣ったもので、魚市場では一切買っていないんだよ」とカジュアルな口調で説明してくれた。

「うちでは持続可能な方法で釣った魚だけをお客さんに食べてもらっているんだ。刺し網を使う従来の方法は環境を破壊するからね。ゴーストフィッシングっていって、破棄されたり流されて紛失した網が海の中でサンゴ礁や海の生き物を傷つけるんだよ。これは単なる知識で言ってるのではなくて、スノーケルやダイビングをして実際に海中の環境がどうなっているのかを自分の目で見ているから言えることなんだ。エビのトロール漁法も問題だ。網にかかる捕獲物のうち、エビの割合はどのくらいだか知ってる?たった10%だよ。90%はバイキャッチ(混獲)だ。10%のエビを獲るために90%が無駄に捕獲される。これはどうにかしなければならないよね」

パナマのエビはすごく美味しい。でも、そのエビを食べるために他の生き物が多く犠牲になっているという。

「もちろん、地元の漁師たちをリスペクトしなければならない。でも、啓蒙することも大事だ。だから、自分が見たことをこうしていろんな人にシェアしているんだよ。君達もぜひ、他の人に伝えてね」

これからエビを食べるたびに彼の話を思い出すかもしれない。私たちはパナマには観光のためにやって来た。美味しいシーフードを食べ、森や海の景観を楽しみ、動物や植物を観察して感動的な毎日を過ごしている。でも、それだけではない。この3週間の間に、JunglaRaquel´s Arkという二つの野生動物保護施設、コロン島のペットボトル村無人島でウミガメの保護ボランティアをする青年、そしてこのMaa Goo´s Fish Tacosのオーナーさんのような人たちと知り合い、彼らのプロジェクトについて直接、お話を伺うことができた。どれもパナマの美しく豊かな自然環境を守る真摯な取り組みである。そのような活動をしている人たちがいると知ったことも今回の旅で得られた大きなものだと感じている。

「ところで、店名のMaa Gooってどういう意味ですか?」

「ああ、それはね。うちの息子が赤ん坊だった頃、ミルクを飲むマグカップのことをMaa Gooと呼んでたんだ。それがすっごく可愛かったから、いつか自分のレストランを持つことができたら、店の名前をMaa Gooにしようって決めてたんだよ」

店内の壁はオーナーさんのご家族の幸せそうな写真で飾られていた。